日本の養豚は国際競争にさらされているが、国産豚肉が輸入物と質が違う点を示すことが生き抜く経営の必須条件である。当然、消費者が納得できる豚肉特有の食味を忘れず、あくまで商品用の豚肉を低コストで作らなければならない。養豚経営の技術は、近年かなり改善され、繁殖回転率、飼料要求率、上物率等の改善が認められる。しかし、疾病事故が増えていることも見逃せない。子豚は、数も生まれるが途中でダメになるとの声も、あちら、こちらで耳にする。とくに、設備が充実し、ガスヒ-タ-を使うようになってから、夜中の分娩豚舎の巡回をしなくなったことをその一因と指摘する向きもある。保温箱の時代から、温度の測定の習慣もなく新しい設備に安心して任せる時代となっても、管理を怠っては失敗する。 生まれた子豚の求める温度は35℃で、翌日以降2℃ずつ下がり、生後8日目で21℃が適温で、これが体重30~60kgまでは18℃が必要である。60kgから出荷までは13℃が豚の求める温度である。生まれた子豚は、人間の赤ちゃんと比較すると未熟児の状態である。 豚特有の生理的な変化がある。その一つとして、生時500万の赤血球数が350万に減少する生理的貧血がある。また、抗体も移行抗体として初乳から獲得するが、もらいものなので次第に失われ、25~30日齢あたりで僅少となり、あとは自力で抗体を蓄えなければならない。 貧血予防に鉄剤を利用するが、その生理値は変わらないといわれている。むしろマクロビンを使うと、子豚のバラツキがなくなり、早発性下痢症の予防にはっきりと差が現れる。マクロビンはタンパク同化作用を有するものとして臨床的に効果が認められており、子豚育成の必須条件である。移行抗体消長から考えて、免疫賦活作用を高め、疾病の予防を豚が自力で行える体質を作っておくことが大切であろう。 活性酵素食品ゴルデンエ-スを母豚を通して感化させ、生後は子豚に投与することにより、ワクチン接種後の抗体が上がり、その効果がはっきりわかる。 豚舎を巡視して、人の動きで豚が起き、あちら、こちらで咳があれば、肺炎を疑う。また、鼻の穴がホコリで黒くなっているか、アイバッチがないか、体表に発疹やスス病がないかと観察することも大切である。 一日の管理作業が終わり、豚舎を一巡して注射しながら歩くようなことでは、良い経営とは言えない。噂によると、豚丹毒で育成豚が数百頭も斃死した生産者も、一戸や二戸ではないようだ。また、肝臓廃棄全頭など、自衛手段のないような事例もたくさんあるようだ。 要点は、豚の赤信号を早期に発見することである。また、体温計を活用することである。そして、必要な薬剤を常備し、消毒は徹底的に実行する。坪当たり、石灰5kg散布。豚舎周辺、舎内は石灰乳または3%の苛性ソ-ダ液使用。もちろん、一般の消毒剤も有効に活用できる。 疫学とは、主に統計調査に立脚し推理を交えて公害病などの原因と結果の因果関係を突きとめようとする学問で、足を使って調査する仕事である。疫学=エビデミオロジ-をキ-ワ-ドに。