GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

ノンアルコール特許侵害訴訟と下町ロケット

2015-10-30 01:47:52 | FOOD&DRINK
阿部寛主演ドラマ下町ロケットが、期待通り面白い。
原作は池井戸潤さんの直木賞作品。半沢直樹のヒットから、一体この人の本はいくつドラマ化されたら気が済むんだろうってくらい次々とドラマ化されるが、そのどれもこれも面白いから困る。

今回も池井戸さんの得意とする銀行の実態と中小企業に対する仕打ち。大企業の傲慢さが描かれている。

元ロケット技師の阿部寛が打ち上げ失敗の責任をとって退職し、今は下町の工場(東大阪あたりの技術がしっかりしていい仕事をする会社をイメージしてくれ)佃製作所の二代目社長を演じる。
ドラマはこの佃製作所が大手取引先から取引中止を言い渡されるところからドラマは始まる。
更に大手企業のナカシマ工業(なんとか重機とか何とか製作所って名前の通った会社をイメージしてくれ)から特許侵害で訴訟を起こされる。
更にメインバンクの白水銀行(あなたの街の信用金庫や第二銀行をイメージしてくれ)からも追加融資どころか、研究費に莫大なお金かけてるからだとか理不尽な扱いを受ける。その他の大手銀行は相手にもしてくれない。
実はその裏には佃製作所の技術やノウハウをそのまま買収する目的が・・・。
ここに更に巨大企業帝国重工(松下とか日立とか東芝をイメージしてくれ)が独自でロケットを打ち上げる話が絡む。

今、二話が終わったところだけど、ここ迄でもハラハラドキドキな展開。この惨い仕打ちと現実を乗り切る信頼関係と判断力、そして最後に正義は勝つ痛快さが丁寧に描かれてる。半沢直樹のヒットで気をよくしたのか、予算もたっぷりあるのか、手間ひまかけてきっちり映像化してるドラマ。
種子島でのロケット打ち上げ、社員で埋め尽くされた帝国重工のセレモニー、ナカシマ工業の職場風景(同じエキストラを使ってるとは思うが)、何の手抜きもない。半沢直樹の時と同じくナレーションもいいし、時間の経過を夕陽で現してるのもいい。

しかも絶妙なキャストだ。メインバンク白水銀行から出向してきて周囲に誤解を招いてたが、「俺は佃製作所の人間だ!」と言い切る静かに熱い経理部長に立川談春。融資を断る冷たい白水銀行の担当に春風亭昇太。この人気落語家二人を対極に据えるなんて粋だねぇ。
更にもっとイヤミな支店融資課長を東国原英夫(そのまんま東)。ナカシマ工業の顧問弁護士が池畑慎之介(ピーター)。訴訟を起こしたナカシマ工業の法務グループマネージャーの橋本さとし。この4人の理不尽さ、イヤミさ、嫌悪感を抱くくらいのねちっこい仕打ち。悪人はやっぱりこう演じられなきゃイケナイって模範のような演技。

佃側の弁護士は最初、先代の時代からの阿藤快演じる顧問弁護士に頼むんだけど、これがまた頭が固くて勝てそうにも無い。プライドだけが高いこの古いタイプの弁護士を断って他の弁護士を探すも、みんな大手企業との訴訟は怖がって受けてくれない。ここらへんも結構現実的。俺も弁護士探すのかなり苦労したもの。弁護士って絶対勝てる見込みのある訴訟しか受けてくれないのよね。
それでも元妻の真矢ミキの紹介で、神谷法律事務所の恵俊彰演じる弁護士が引き受けてくれる。この弁護士みたいな人を探し当てられたらラッキーだろう。資料や事件背景をちゃんと調べ、代理人として裁判に挑んでくれる。こんな弁護士は理想だけど、そうそう見つけられないと思う。

もうネタバレしてるから構わずどんどん書くが、この弁護士恵俊彰の辣腕と戦略、逆訴訟、そして阿部寛演じる社長の技術者あがりならではの答弁で裁判に勝つ。そう、正義は必ず勝つ。これが池井戸ドラマの真骨頂だ。
遠山の金さんとか水戸黄門等のような勧善懲悪ドラマは日本人は大好き。貧乏人が悪代官や悪徳商人に理不尽な仕打ちを受けて困り果てるところを正義の味方が代わりにやっつけてくれる。考えてみりゃウルトラマンだって仮面ライダーだって、このパターンだ。ハラハラ感をもたして、絶体絶命、絶望、そこからの巻き返し、そして最後に正義は勝つ。この単純明快の痛快さを求めてる。誰が犯人なのか、誰が黒幕なのかいつまでも解らないようなドラマや、人間関係がドロドロのドラマが一時期は流行したが、やっぱり俺は勧善懲悪ドラマが好きだな。
現実ではなかなか味わえない、この痛快さを求めてるのかもしれない。

特許侵害の裁判は結構おこなわれてる。このドラマのように中小企業の特許を大手が正当化でぶんどる、喧嘩を売るような裁判はしょっちゅうおこなわれてる。中小企業からしたらたまったもんじゃない。裁判に時間かけるほど余裕もお金もないし。結局安く特許を使える(実際は横取り)の曖昧な条件で和解を受け入れるしかないのも現実。

中には大手企業同士のバトルもある。アップルとサムスン(iPhone)。日清(どん兵衛)とサンヨー食品(サッポロ一番)。サトウの切り餅、ヨネックス、鳥貴族・・・。特許や製法、商標での争い。
今回、アサヒビールとサントリーのノンアルコールビールの訴訟判決があった。
サントリーは「糖質やエキス分などを一定の範囲にしたノンアルコールビール」の特許権を2013年に取得。オールフリーって銘柄で販売してきたが、後発のアサヒビールのドライゼロがこの特許を侵害しているとして訴えた。

なんとまあこの裁判、サントリーの訴えを棄却って判決が出た。
特許庁が認めた特許を勝手に使われたのに裁判所が認めない?こんなおかしな判決があるか?
アサヒビールの主張「サントリーの特許は既存の製品から容易につくることができ、特許として無効」を認めたって事か?
だったら特許って何だ?

サントリーのオールフリーは30種類のデザインのトートバックキャンペーンで、東京オリンピックエンブレムのパクリ問題で揉めた佐野さんが槍玉に挙げた余波で、30種類のデザインのうち何種類かがデザイン盗用って暴かれてしまってキャンペーンもぼろぼろになってしまった。
そこに来て今回の訴訟が退けられたのは、やっぱりこの辺りが原因なのか?

美味しいんだけどな、サントリーのオールフリー。まだビールを飲むには早すぎる昼下がりにベランダでこれを飲む。ノンアルコールビールなんて、ニコチンタールが0の煙草と同じで、何で買うんだろうと最初は馬鹿にしてたが、意外とイケルのよ。
ビール味のする炭酸水って馬鹿にしてたが、しっかりビール(正確にはビールとは呼べないが)の味がしてでアルコールが0。しかも当たり前だがプリン体0。糖質も0。砂糖と甘味料と訳の解らない添加物まみれの炭酸ジュースを飲むくらいなら、是非このノンアルコールビールを飲む事を薦める。

話を強引に戻すがドラマ下町ロケット。
原作本を読んだ人は今後の展開は解ってるだろうが、今度はこの訴訟で手に入れた56億の使い道と、杉良太郎が社長を演じる帝国重工とのバトル。ロケット打ち上げに必要なバルブの特許を持つ佃製作所に、吉川晃司が演じる帝国重工宇宙航空部部長が特許を20億で売ってくれって依頼する。
特許使用料か特許売却か。佃製作所の安田顕演じる技術開発部部長の思いと裏腹に、給与や報酬に訴訟勝利や特許売却での還元を求める従業員や技術者、営業等の社員。

そしてなんか深刻な訳がありそうな、阿部寛の娘。演じるのは土屋太鳳。この企業や銀行、金・陰謀・取引といった重苦しい大人の世界を描くドラマに、彼女の演技が光る。
今じゃどのドラマも「おとうさん大好き」とか「お母さんと仲良し」、家族は友だちみたいなもんだみたいな演出が多い。実際仲良し親子って町中でよくみかけるし、バーベキューやレジャーランドでもみかける。でも、これってなんか白々しいのよね。なんで解り合えるの?まだ母親と仲良しってのは解るんだが、兄弟も仲良し、父親とも仲良し。更にはおじいちゃんやおばあちゃんも大切にって、現実にはあり得ないと思ってる。
親は子を理解できないし、自分の方針を押し付けようとするし、子は親に反発し、頭で理解できても反抗する。それが普通じゃないのかな。それでもなんとかそれで家庭や家族は持ちこたえて、子供は結婚してからようやく両親や家族と仲良しになるってパターンが多かったんじゃないのかな。
今、仲良し家族がTVや映画で描かれてるが、現実は虐待だって多々あるし、放任主義、無関心な親も増えた。電子レンジ食品やスーパーの惣菜、インスタント食品で育ってる子供、スマホが唯一のよりどころの子供、自分らしさを求める親。書いてて嫌になってきた。

まぁいいや。しばらくは現実逃避。これからの下町ロケット、どう展開するのか楽しみだ。(原作本を読んで結末知ってるくせにこんな事書くのはいいんだろうか?)
ちなみにサントリーやアサヒのビールCMにこの下町ロケットの出演者は誰も出ていないってのも不思議だ。