朱禪-brog

自己観照や心象風景、読書の感想
を書いてます。たまに映画も。

湯あたりについて

2022-03-13 07:57:50 | 日記
「ふぅ〜やれやれ終わったの」
昨日は休日であったが
朝9時から2時まで会議があり
長い半日を終えた。

この日は贔屓のさんわ湯は定休日
なので、どこへサッパリしに行こうかと
方角だけ決めて自転車のペダルを漕ぐ。

萬成湯にしよう。
毎日12時から14時30分まで
清掃に入るが、着く頃には営業してる
だろう。

さんわ湯もそうだが
ここ萬成湯も昭和の匂いを強く残し
建屋は古いが清潔感のある名湯だ。

サウナはなく湯船が二階建となっている。

一階部分には湯船が四曹あるが
階上があるために天井がやや低い。
この為に、半スチーム状態となり
いつも通りの時間、湯に浸かるのは
避けるのがぼくのしきたりだ。


二階部分には水風呂と塩風呂があり
天井は覆いのない露天風呂となる。
晴れた日には青空を眺めての
塩風呂はことに気持ちがいい。

一階部の湯船に向かうと先客が二名いた。
約10分程浸かり二階に移動して
5分程浸かり、降りてくると
一人のおじさんが、ポーズを変えずに
まだ浸かっていた。

(あれ?まだ入ってるんか?
大丈夫なんかな?)
ぼくと同時でも15分は深風呂に
入ってるので一抹の不安がよぎる。

しかし、手は湯船から出し
オーケストラの指揮者のように
リズムをとっていた。

(うーん)と見詰めていると
番台から店主が浴場にきて
○○さん○○さんと声をかけた。
反応はあるのだが鈍い…

(こらやばいで)と湯船から引き揚げる
心づもりをした。

店主に向かい
(お父さん、こらあかんで引き揚げよ)
「あぁ、そうでんな」
店主はご高齢である。
湯船に入り縁側へ押す
一旦、店主に支えてもらい
湯船から抜けた体を支えて降ろす。

その頃には、殆ど意識がない状態で
酔い潰れた体が三倍重いように
ずんと体重がぼくの中腰の上半身に
乗った。

血栓か梗塞の可能性もあるので
慎重に降ろさないといけない
頭でもぶつけたら
どうなるかわからない
必死でゆっくり降ろす。

40代くらいの娘さんが
店主とバトンタッチして小走りに
浴場に入ってきた。

(お姉さん、すいませんけどタオル
水で濡らして持ってきてくれませんか?それと救急車呼んで下さい。)
とお願いすると
「わかりました」ときびすを返した。

当のご本人の顔色は青い
医者でもないので何もできないが
とにかく呼びかけて反応を待つ。

(おっちゃん、おっちゃん、ここどこかわかるか?)
「風呂」
(そやそや、風呂や)

(この手握れるか?)と問うと
握り返してきた。

お姉さんが持ってきた濡れタオルを
後頭部の動脈部と首の動脈部にあてがい
救急車の到着を待つ。

長い…
およそ10分以内だったと思うが
旧型のパソコンの起動時間を待つよう
長い。

救急隊員が三名到着した。
瞬間、ホッとしたが
どうなるかわからない。
が、役目は終わったので洗体に戻った。

入浴を終えて脱衣場に向かうと
おっちゃんは座っており
救急隊員は「湯あたりでしょう」と
言い、去っていったと娘さんから聞く。

娘さんの仰った言葉が心に残る
「○○さん 迷惑なんかひとつも思って
ないから、体調が悪いなと思ったら
お風呂入る前にひと言言うてね。
これで済んだとは言え、○○さんが
危ないでしょ。
さ、お水、ゆっくり少しずつ飲んで
下さい。」

そして、ぼくに向かい
「どうもありがとうございました。
お手数お掛けしてすいません。」
と仰った。

風呂屋にくるお客さんは
ほぼご高齢のお客さんが多く
さんわ湯でもそうだが
長湯には神経を張っている。

湯あたりした事に気づかない
ことが多く、また体調がすぐれない
時が多いので常連でも歩き方などが
普段と変わってないか?
チェックしてるとさんわ湯の店主に
聞いた憶えがあった。

萬成湯の店主の気づき
娘さんの優しさ
救急隊員の的確な処置、判断
そして、ややこしい事には
関わりたくないという
その他大勢の本音もみた昨日の銭湯
だった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿