忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

「リメンバー」を忘れない

2023年10月02日 | 随感随筆



真珠湾攻撃のあと、米下院議員だったハミルトン・フィッシュは日本を指して「気の触れた悪魔を叩き潰せ」と米議会でアジった。そんなハミルトンは反共主義者でアメリカの対外介入に反対。敵は国内の共産主義者やリベラル、アメリカ系ユダヤ人などのグローバリストだった。つまり、愛国者だった。

今も昔も「アメリカは他国の戦争に介入すべきではない」は国民にウケて選挙は強い。だから選挙前になると無実の罪でマスコミが騒いだ。いまのトランプと似るが、こんなマトモな政治家が、日本に対しては50歳も過ぎているのに「陸軍に志願する」と言い出すほど復讐に燃えた。黄色人種差別を抜きにしても不思議な話だ。

理由は簡単。ハミルトンが議会でアジる頃は「ハル・ノート」を知らなかった。極秘にされていたからだった。真珠湾の詳細もまだ知らない。米太平洋艦隊がなぜに「動けぬアヒル」のように並んでいたのか、なぜに旧式のB18偵察機を配置していたのか、もまだ知らない。当時の米太平洋艦隊、航空母艦の水兵だったアレックス・エデルスタイン博士も世に出ていない。アレックス氏は真珠湾攻撃当日、何故に空母3隻だけで演習を行うのか、と疑問を持ちながら真珠湾から遠く離れた海域まで出発した。日曜日の外出禁止に文句を言った、と残るが、米海軍が日曜日に演習を行ったのはこれが「最初で最後」だ(「国破れてマッカーサー」西 鋭夫著)。

つまるところ「議会も米市民も彼に騙された(「ルーズベルトの開戦責任」ハミルトン・フィッシュ3世著)」というのが本当のところだった。「気の触れた」日本軍が発作的にアメリカに対して先制攻撃をしてきた。しかも奇襲という卑怯千万によって。これで得意の「リメンバー」を持ち出して、ハミルトンを含むみんなを騙した。

いま現在も「気の触れた」ロシア、プーチンが平和に暮らすウクライナにある日突然、発作的に侵略行為を行い、ブチャなどの戦争犯罪を繰り返し、世界の危険な国々と結託して、国際社会の正義、世界の平和を破壊しようと企てている、としなければ、SNSでの発信ですらままならない。頭の賢い保守論客も「ロシアが悪いのは前提」「侵略は認められない」を枕詞にしながら発信しているが、いずれにしても戦う大統領、英雄のゼレンスキーの悪口は聞こえてこない。

また、少々余談になるが、ロシア悪、ウクライナ善という二次元論の理由について、頭の賢いはずの保守論客の論拠は心配になる。「日本は西側諸国の一員だから」「侵略は絶対悪に決まっている」「シベリア、満州を忘れたのか」「北方領土を不法に占拠している国の肩を持つのか」などが目立つ。改めて心配になるが、それならいっそ、日本はアメリカの保護国だから論じても仕方がない、くらいの潔さも欲しい。我々には客観的に議論する理由がない、とでも言えばどうかと思う。それなら誰も言い返せない。事実だからだ。

2002年、ブッシュの息子がシンシナティの演説で「サダム・フセインは最近、軍に化学兵器の使用を許可したとの情報があります。あの独裁者が我々に持っていないと告げた化学兵器です」と言い、続けて時の国務長官だったパウエルが「イラクの生物兵器」に触れ、最大の懸念材料はこれら生物剤を製造する移動式施設の存在だと国連で言った。そして「イラクには少なくとも7つの移動式生物兵器製造施設があることがわかっている」と断定し、その生物剤は500トンと推定され「ロケット弾1万6千発」に搭載できる量だと言った。平和呆けのお花畑の住人でなくとも、ふつう、誰でもビビる。

そのときもビビった日本の親米保守論客はいまと同じく、ブッシュ政権の判断に賛同してフセインは絶対悪、気が触れたスカッドミサイルマンを倒せ、と日本国内の世論を煽った。翌年2003年、ついにブッシュは「生物兵器施設をふたつ発見」と発表した(2003年6月5日)が、イギリスの調査チームが翌日に「ブレアもブッシュも間違い。アレは生物兵器を製造する施設ではなく、フセインが言っていたとおり、砲撃用の観測気球のための水素製造装置」と発表。要するに風船に水素を入れる機械のことだった。そして結果、イラクからは「ひとつも生物化学兵器、大量破壊兵器はみつからなかった」というのが事実だったが、フセインはちゃんと殺された。処刑の際、目隠しはいらない、として堂々と逝った。

過去の「リメンバーシリーズ」はアメリカのプロパガンダだった可能性が高い、というか、完全に国外、国内の世論工作を目的とした扇動だった、というのは常識の範疇かと思う。それなら普通、いま現在の出来事も、少しは疑ってみる必要もある。岸田政権の一味でもないのに、自ら尻尾を振って傀儡に成りきる理由はない。もちろん、商売のためでもあるんだろうが、せめて「触れない」とか、己の矜持を汚さないことは可能だ。

いま、ゼレンスキーの英雄視は仕方ないが、日々、いろんな報道を見ているだけでも、アメリカの傀儡というだけの意味なら、メガネをしているかしていないかの差異だけで、日本も負けてはいないとわかる。また、バイデンファミリーの不正絡みの報道も、ようやく、米メディアは「さすがにバイデンでは戦えない」と悟って各局が報じて始めているが、日本ではまだ「トランプ元大統領がまた起訴された」しかやらない。ゼレンスキーも「ガーディアン」などが「財産を外国に隠し持っている」とか報じても、日本ではまったく触れない。代わりにプーチン大統領の悪口はいくらでも報じる。「おかしい」と思わないほうがおかしい。

アメリカの中間選挙もギリギリではあるが共和党が勝った。連中はどうせ、今回もいろいろとやったんだろうが、8千万票のバイデンで照れ臭かったのか、やったけど追いつかなかったのかもしれない。いずれにせよ、アメリカ国民による執念の勝利と言っていい。日本でも傀儡メガネ政権、岸田自民党に期待する声はなくなっている。比して、立ち上がったばかりの「日本保守党」は爆発的に支持を集めている。良いか悪いかは別として、明確に変化し始めている。

周囲で起こる様々な出来事、報じられるニュース、政治家や経団連の言動などをして「ンなわけあるかい」という冷静なツッコミを入れることができる日本国民が増えてきた証左だ。もう、旧態依然の世論操作は通じない時代が来たが、後がない連中は、このまま「打倒プーチン」が成らないとあきらめたとき、強引にでも新しい「リメンバー」をつくるかもしれない。




コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。