フツーのおばちゃんですが？

その人と初めて喋ったのは、知り合ってどのくらいだったか。

「ねぇ、あなたって普通の主婦？」と訊かれたのが（個人的に）最初の言葉だったような気がする。

普通がどんなものだか分からないが(笑)　ほぼ毎日家にいて掃除洗濯ゴミ出しご飯炊き。
そんな事の繰り返し。

自分で稼げるすべもないから夫から渡されるモノで、家計をやりくりしてその範囲内で映画を観たり、本を読んだり、ライブに行ったり。
家族にしわ寄せの来ない程度に心の栄養を摂り、自分の為、将来的には家人に負担を強いらない為にジムで嫌いな運動にも励んでいる。

日々幸せ、ありがたいと感じるほどの謙虚な気持ちもないけれど、大きな不幸も今のところやってきてはいない。
そりゃあ、父の死後、母や兄と疎遠になったり、息子が前の職場で病気をして再就職したもののいい歳なのに結婚もせず自宅から通っている、というのがネックと言えばネックだけれど、それとて私の力でどうしようもないこと、現実は現実として受け入れられないほどのものでもない。

時々、疲れが溜まってメニエールもどきの目まいがしたり、この間のようなパニック障害っぽい症状がでることはあるにしても、概ね健康。
食欲も旺盛(笑)

「普通の主婦ですけど」

「そうなの？？」


と少々意外そうな顔。

リアルに私を知っている人は、私がどこにでもいる平凡なおばちゃんで、目立つこともなく風景に紛れ込む、というのを分かっているだろう。

ただ、その人は、どういうわけか私を誤解しているフシがある。

先日もお渡ししたいものがある、と渡されたのが1冊の本で、youtubeで著者の名前を検索したらいくつも動画が出てくるような有名？な人のようだった。
思想家？？　啓蒙家？？　どういうジャンルといえばいいんだろうか。

ある種の溺れる者の藁になれるかもしれないであろう内容で、その人は今までに自分が悩んだり迷った時にこの著者の本を読んでずい分と救われた、と言っていた。
その人こそ、いきいきした毎日を過ごしているようで、迷ったり悩んだり深く考え込む時間もないほどに忙しくしている人だったので、その手の本を読んでいるというのが理解できずにいる。
見かけではなく、ひょっとしたら深い「闇」を抱えている人なのかも知れないと思った。

思ったけれど、それがなにゆえ、私に読ませようとする理由になるのか理解が及ばない。
これがひょっとして、なにかの団体？の勧誘とか洗脳の前触れなのか、それは私の深読みで、単に感動した本を渡して同じ感動を共有したいのか。

自慢じゃないけれど、私は神も仏もいないと思うようなドライな人間で、神仏に手を合わせることはあってもすがって叶えられた例などない。
悩みなんて、結局は日にち薬でいつのまにか消え去ったり、元の悩みが薄くなったころに次の何か・・・問題が起こって来て、、、前のものを悩んでいる暇が無くなったり、なんていう小さなアクシデントの繰り返しで、ひとつひとつを掘り下げて考えなきゃならないほどのものでもなければ、がっぷり組んで解決にあたろうと決心するほど、悩みを真剣に考えられるタイプではない（笑）

一応、事が起こった時、当初はちりちりするような不安にもかられるし心配もするけれど、怒りの感情でも同じで、そうそう長く続かない。

多分、悲観的な考え方をするほうではあるけれど、最後には開き直ってなるようになる、なるようにしかならん！と思える人間なのだ。

そんな私に、あの本は？？

親切心で渡されたものかもしれないけれど、意味を測りかねている。