カディスの緑の風

スペイン、アンダルシアのカディス県在住です。

現在は日本の古い映画にはまっています。

沖縄のことを考える

2015-10-24 00:20:10 | 言わせてもらえば


最近、沖縄の普天間基地から辺野古移設をめぐって

翁長知事は、ついに辺野古埋め立て承認取り消し、

という強硬な態度に出たことで、沖縄では大問題となっている。


この沖縄の基地問題に関して、わたしはこの数週間ネットで

状況を把握すべく、かなりの情報を得ているが、10月22日、埋め立て承認に

判をついた仲井眞(なかいま)前沖縄知事のラジオ出演によるお話をきいて、

なんとなくこの争いの原点がどこにあるのかがおぼろげながら

わかってきたような気がした。



仲井眞弘多前知事は、県知事選挙で翁長氏に敗北してから

ずっと沈黙を守ってきたが、昨日の青山茂晴氏のラジオ番組に出演し、

はじめて辺野古埋め立てを承認したいきさつを語っている。



仲井眞氏によると、埋立法という法律にかんがみ、そのプロセスを経て

環境、土木などの面を含むさまざまな観点から考察し、一年ほどもかけて

政府と審査したうえで、防衛省と政府の基準項目をクリアしてのち、

埋立ては目的にかなっているという結果を得て埋め立て承認した、と

いうのである。

それは「世界一危険」と言われる普天間基地の危険性を排除する、

という第一目的があったからである。

移設先はのぞむなら、県外がよいけれど、なかなかそうはいかない、であれば

県内もやむ負えない、ということで承認した、という。


つまり「普天間の危険性の除去」が最優先課題であったわけである。

それは普天間基地周辺住民の安全を確保する、という目的であった。

この仲井眞前知事のお話をじっくりうかがっていると、例えば沖縄の鉄道敷設の

必要性なども十分に考えていらして、沖縄のインフラ整備がすすむことによって

観光地としてさらに発展させ、貧しかった沖縄が経済発展し、

県民の生活が安定する、という沖縄県全体の利益を

考えていらしたことがわかる。

わたしはこの仲井眞前知事のお言葉と、沖縄を思う心はバランスがとれていて

実にすばらしいと思った。


ところが、仲井眞氏を破って当選した翁長知事は、基地問題を沖縄の

長い歴史などもからませて、『権力者としての国 vs 差別される県民』と

いうことにすり替えてしまったのである。


9月にジュネーブの国連人権理事会において、翁長氏は2分間のスピーチをし、

沖縄は日本政府によって虐げられてきた弱者である、と

いうような趣旨のことを訴えた。

理事会の前にはシンポジウムを行い、沖縄の少数民族の権利が

日本政府によって侵害されている、と堂々と述べている。


ところでこのジュネーブの国連人権理事会の翁長氏のスピーチの

行われた次の日、沖縄出身の、我那覇真子さん、という

弱冠26歳の女性がカウンタースピーチを行ったことは

日本のメディアではほとんど報道されなかった、というのは

実に残念なことである。


我那覇真子さんは、英語でスピーチをしたが、その要旨は

次のようなものである。



昨日皆様は、沖縄は紛れもない日本の一部であるにもかかわらず、

「沖縄県民は日本政府及び米軍から

抑圧される被差別少数民族である」とお聞きになったことと思います。

それは全くの見当違いです。

私は沖縄生まれの沖縄育ちですが、日本の一部として

私たちは世界最高水準の人権と

質の高い教育、福祉、医療、生活を享受しています。

人権問題全般もそうですが

日本とその地域への安全保障に対する脅威である中国が、

選挙で選ばれた公人やその支援者に

「自分たちは先住少数民族である」と述べさせ、

沖縄の独立運動を扇動しているのです。

我々沖縄県民は先住少数民族ではありません。

どうぞプロパガンダを信じないでください。



帰国した我那覇真子さんは記者会見で、

『沖縄人』という言葉を初めて耳にしました、でも

私は『沖縄県民』であり、そして『日本国民』なのです、と

力を込めて言っている。



我那覇さんがジュネーブの国連人権理事会に出かけていく

模様を密着取材をした動画が

チャンネル桜から発信されている。

この動画を見る限り、彼女は26歳の普通の女性のように

溌剌として初めての経験に興奮しているように見えるのだが、

いざ理事会の議場での堂々とした態度は実に感動的である。

動画の中で、これからのミッションの重さに武者震いしながら、

彼女がこういう場面がある。

「父親からこういわれました。我那覇家と、そして、

沖縄の先祖を背負っているのだからがんばってきなさい」と。


このような人たちが沖縄にいるのである。

翁長知事は『オール沖縄』というスローガンで選挙に勝ったけれど、

それも実は対立候補であった仲井眞前知事とは

10万票ほどの差であったという。


それをあたかもすべての沖縄県民の民意を背負ってたっているような

錯覚を起こさせる印象操作をしてきたのが、

沖縄の新聞メディアなのである。


しかしさすがに翁長知事の強硬なやりかたに、

沖縄県民からは反発が出ている。

辺野古埋め立て承認取り消しにより、普天間基地の固定化が確定する。

それに対抗して、この20日、「埋め立て承認取り消しの無効確認と

一人当たり1000万円の損賠賠償」を求める訴訟が

12人の原告によって提訴された。

原告団長の平安座唯雄氏、そして弁護士の徳永真一氏によれば、

もともと辺野古移設は、普天間基地の危険性を除去するため、

基地を移動して普天間を返還してもらうことが目的であったはずであった、

それが辺野古基地建設を白紙化することによって、普天間が固定してしまい

本末転倒である、ということである。

普天間基地のある宜野湾市の住民の声を翁長知事は一顧だにしていない、

という大きな不満が表面化してきている。


翁長知事のこれまでの言動だけを見ると、安倍政権の圧政にあえぐ

沖縄県民が一体となって反抗し、辺野古移設を阻止しようとしているように

見えるけれど、実のところ、辺野古埋立阻止には、安倍政権打倒という

スローガンのもと、共産党の全面支援によって沖縄県民ではなく

本土からのいわゆる「プロ市民」が駆けつけて違法テントやデモなどが

大々的に行われている、というのが実態のようである。


しかしなにゆえにこれほどまでかたくなに翁長県知事は辺野古移設反対を

強行しているのか。それには中国の影響が後ろにある、という見解がある。

先の知事選において、福岡の中国総領事が沖縄の華僑の方たちに密かに

接近し、仲井眞氏を落選させ、翁長氏を当選させる工作をしていた、という。

これはかなり有力な説であるが、実証する必要があろう。


しかし、昔は自民党推薦で那覇市長に当選した翁長氏は

普天間からの基地移転については賛成であったという。

それがいきなり反対の態度に180度転換した、ということの背景には

なんらかの事情があったに違いない。

そして翁長氏の辺野古埋め立て承認取り消し発表後の記者会見の動画を

みても、『瑕疵がある』とした論拠は実にあいまいであるし、

普天間固定化についての答弁は何度聞いても意味をなさない。

わたしが考えるに、翁長氏は普天間固定化となることは

避けたかったに違いないが、なんらかの圧力で辺野古承認取り消しを

余儀なくされたようなニュアンスがある。

それに翁長知事はこの基地問題に没頭し、ほかの山積みになっている

問題にはほとんど着手していない、という。


人権委員会で、沖縄の人たちが原住民族、少数民族であり、

本土から虐げられているという言及は、「独立」を目的とした主張と

見られてもおかしくない。

しかし沖縄の独立は、経済的にも地理的にいってもまず無理である。

これについては仲井眞元知事も、「独立」など酒飲み話、夢のまた夢にすぎない、

それよりも沖縄の人々の命と暮らしを守り、将来的には次第に米軍基地を

減らしていって負担を軽減していってほしいと思う、とおっしゃっている。

つまり、基地の問題は国の安全保障の問題であり、これは

県知事の判断で左右できるものではない、ということを、しっかりとわきまえて

いらっしゃる。外交と安全保障は国、また、内閣の担当なのである。



わたしには翁長氏の国連人権委員会でのスピーチより、仲井眞元知事の

地に足付いた発言のほうが、ずっと心に響く。

結局、何を目的としているか、それにつきるのである。

仲井眞元知事は沖縄のことを本当に考えていらした。

翁長現知事はなにか虚構の空論にしばられた幻想に

憑りつかれているように思えるのである。




沖縄ではさまざまなことが起きているようである。

巨大な『龍柱』建立の工事も再開されている。

この建設費の行方についても不明瞭であり、またなぜ『龍柱』を建てるのか、

という疑問も県民からあがっているという。



沖縄は決して『オール沖縄』ではない。翁長氏の言葉は沖縄県民全体を

代表するものではない。

我那覇真子さんのように、若くても翁長氏の県政に疑問を持ち

声を上げて活動している人たちもいる。

わたしにはこの我那覇さんの言葉のほうが、

SEALDsの若者たちの、「アベはやめろ、アベは死ね、俺たちなめんな、

国民なめんな」という感情的な言葉より、ずっと知的で理性的で、

そして魂がこもった言葉に聞こえるのである。





我那覇真子の「いきなり国連演説」の動画はこちら↓
(この動画、成田空港のホテルから出発、機内の様子、乗り換え、そしてジュネーブの模様など、
結構楽しめます、お勧めです。)





https://www.youtube.com/watch?v=X8edPGJvKpk



ザ・ボイス 「仲井眞弘多 x 青山茂晴」の動画はこちら↓
ラジオ番組ですが、音声だけでなく映像もみられる珍しい動画です。

https://www.youtube.com/watch?v=pw7qO-QDxsk



翁長知事記者会見 「辺野古埋め立て承認取り消し発表」2015年10月13日の動画はこちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=tOsGXqln65M





追記

ジュネーブの国連人権委員会には、世界各地から訴えをする人たちが

スピーチする機会を与えられています。

このメインスピーチに対抗するカウンタースピーチがなければ、

訴えに応じて、委員会ではその当事国に人権侵害是正勧告がなされることに

なっている、とのことですが、カウンタースピーチがあれば、

勧告が自動的に発令されることはなく、審査が行われる、ということです。

それで我那覇真子さんはカウンタースピーチをして

実際に人権侵害はない、ということを訴えたわけです。

この人権委員会では、いわゆる「従軍慰安婦」に関する訴えも

行われています。

また、チベットやウズベキスタンといった、実際に虐殺などが

行われている地域からの代表が続々と訴えのスピーチを行っている中、

沖縄の翁長知事が、沖縄先住民は抑圧されている、などと

訴えるなど、まさに「道徳的堕落」といわざるを得ないでしょう。

少なくとも、沖縄県知事、として公人としての「作法」をわきまえない

恥ずべき行為であった、と思うのですが…。



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