better half

こんな話をロックグラスを拭きながらマスターが話してくれた。

この世には、自分のbetter halfがいるって。
そばにいて、しっくり、ぴったりする人。
bestでもgoodでもなくて、better half。
ちょうどいい、もう一人の自分。
天から魂が降りる時、神様がなぜだかひとつを半分にして解き放すんだって。
だから、半分個にされた魂は、離れ離れになってしまった自分の片割れを探し求め、やがてそうとは知らずに惹かれあう。
エンジェルの矢のごとし、胸にキュンと突き刺さる衝撃的で運命的な出逢い。
もしかしたら、昔、昔、どこかで逢ったことがあるかもしれない気がする。
運命？魂の伴侶、ソウルメイト？あなたが？そんな伝説が世界中のどこにでも転がっている。
それだけ、恋人達はロマンチックを求めていて、
この自分たちの関係を世界で一番ステキなものと思いたくて、
ひとつずつヴェールをはいでゆく。
スリムになったお互いの肌と肌を重ねてみて、
そう、やっぱり、この人って思う。
不思議なくらいに、馴染む、妙な懐かしさ。重なる吐息に、胸の鼓動、
伝わる温もり、熱い息吹、愛の証。絡み合ったまま交わす愛の言葉は、
終わりのない時間を探し求めて止まない。
出逢えた喜びと、もう離れたくない気持ちが、行ったり来たり。
そして、瞳の奥に潜んでいた、もう一人の自分を発見した瞬間、
なんともいえない甘美な感情に押し上げられ、天へと昇って行く。
やっと、出逢えた運命の人。あなたをずっと探していた。

そんな『better half』を探してもらいたいんだよ。
俺はその瞬間にいたいからこの店をやってるんだ、
なーんて話はあの店の、あの太い腕のマスターからは聞けないな。。。