診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

オミクロンの功罪

2022年01月26日 | 新型コロナウィルス

昨年 11 月ごろより第 5 波が収束し、クリスマス、正月はのんびりと過ごせると思った 12 月下旬に、南アフリカから発生したオミクロン株が日本でも拡散しだした。今日も日本中は過去にない感染数を示しているようである。連日、発熱、咽頭痛、咳といった感冒症状を認めたと大騒ぎして、医療機関や無料 PCR 検査場は長蛇の列。1 2 時間並んでいるなどと新聞には書いてあったが、まるで TDL USJ のようである。まったく馬鹿馬鹿しいというか何を考えて検査を受けに行っているのか不思議でならない。感冒症状程度では自宅療養しかできないのにわざわざ寒い中、自分で体調を更に悪くしに行っているようなものである。検査陽性率が約 50 %であるということは、列の前か後ろの人のどちらかは感染している計算になる。12 時間も前後で並んでいれば、陰性の人も 3 日後には陽性になっている(オミクロン株の潜伏期 3 日)。いわば、検査に行っている人はほぼ全員感染する計算になる。既に報告されているように、オミクロン株は咽頭で感染し、肺胞細胞には感染しにくいことが判明している。いわゆる『 咽風邪 』 ということである。従来の風邪と変わらない。オミクロンから直接的に肺炎を起こすことは非常に稀であるということである。高齢者で心不全を繰り返す患者や、肺気腫など慢性の肺疾患を抱えている患者は普通の風邪を引くだけでも二次的に肺炎や心不全の悪化にて重症化することは珍しくなく、詳細は不明であるが、今回のオミクロン感染による重症化はそういったものと変わらないと考えられる。当院でも毎年、冬になると風邪を引いて数日後に肺炎を併発し、病院に入院するケースは珍しくない。大体は誤嚥性肺炎が多い。オミクロンの出現を予想していなかった 11 月ごろは、第 6 波は小さな波と推測していた。波の大きさから言えばこの推測は大きく外れたことになるが、実際オミクロンのお陰で重症者や死亡者は予想を大きく下回っている。正月明けごろより高齢者のワクチン効果(抗体価)は非常に低下し、くすぶっていたデルタ株に高齢者が中心に感染しだし、デルタ株感染が再燃しだし、重症者や死亡者が激増するものと考えていた。幸い、オミクロンのお陰で、そのデルタ株を追いやり、重症化を阻止してくれた形になっている。オミクロン様様である。当然、オミクロンの出現がなければ、今のような莫大な感染者数はなかったであろうが。今、慌てて 3 回目のワクチン接種を行おうとしているが、デルタ株が出現しだした頃には、ワクチンの効果は弱いかもしれないと専門家?から発表があったが、2 回接種した医療従事者や高齢者の感染は見事に抑えられた。しかし、今回は 3 回接種したにも関わらず、医療従事者はそこそこ感染している。確かに、2 回目に接種したときの 10 50 倍ほどの抗体価の上昇を認めるというデーターを先行発表しているところがあるが、にもかかわらず医療従事者等の感染者が以前より多いということは、オミクロンにはワクチンの効果はこれまでに比べ低いということである。診察中に患者さんから、今回のワクチンの効果が弱く、オミクロンの毒性が低く風邪程度なら、3 回目のワクチン接種はしなくていいのではと質問されることがある。私は先日接種したが、今回のオミクロン株の予防にはさほど期待していない(万が一、感染したら解熱剤を服用して 2 3 日大人しくしていればいいと考えている)。しかし、オミクロン株の次に来るであろう変異株への備えと考えている。その変異株の毒性が強かったら、今このタイミングで接種を逃してしまうと後悔することになってしまうであろう。まあ、その変異株にも効果が低ければ同じことではあるが。今、マスコミは数字ばかりを誇張し世間を煽りまくっているが、重症化することなく、肺炎になることもない今こそコロナ感染の息抜きの時期と思っている。


この記事についてブログを書く
« 令和4年 オミクロンと共に明... | トップ | 宇宙旅行 »
最新の画像もっと見る

新型コロナウィルス」カテゴリの最新記事