診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

宇宙旅行

2022年01月30日 | ブログ

先日、ZOZOTOWNの創業者である前澤氏が民間人で初めて宇宙旅行をしたと少しニュースになった。凄いことなんだと思ってはみたが、同伴者の分を含め 100 億円の費用がかかったとのことに更なる驚きを感じ、その額こそ我々には宇宙規模?といったところである。人類史上初めて月面着陸に成功したアポロ 11 号は、私が小学 2 年生の時( 1969 年)のことであった。月面に降り立った宇宙飛行士が星条旗を月面に立て、重そうな宇宙服を着ながらぴょんぴょん跳ねながら移動しているTV画面を今でも鮮明に覚えている。子供ながらこれが宇宙だという雄大さを感じ、父親の協力を得て、夏休みの課題にアポロ 11 号の記事をまとめた。着陸船がイーグル、司令船がコロンビア、船長はアームストロング、他 2 名の飛行士はオルドリン、コリンズなんていうことは 50 年以上経った今でも覚えている。地球から月までの距離が 38 kmである。地球の半径が約 6,400 kmであることから計算すると、地球を 30 個ほど並べた距離になる。『 30 個?』 近いような遠いような曖昧な感覚である。さて、今回の前澤氏の宇宙旅行であるが、TV取材では 『 地球はどう見えましたか? 』 なんて在り来たりの質問が飛んでいたが、実際どう見えたか計算してみた。彼が到達した宇宙は地球から 400 km の国際宇宙ステーション。月から見える青い球体の地球などを想像している人が多いと思われるが、たった 400 kmでは地球の全体像を見ることは不可能である。 400 kmといえば、東京~大阪を直線で結んだ距離に相当する。宇宙どころか地球規模でみても小さな数字である。具体例として地球をテニスボール( 直径 6.5 cm )に例えてみて計算すると、地球の直径は 12,800 km128×10⁷ cm)であるので、テニスボールの表面からたった 2 mm離れたところに旅行したことになる。『 えっ! 』 という驚きである。では地球はどう見えたか? 海辺で見える水平線や山から見える地平線同様、地上400kmから見える地球と宇宙の境界線は小学校?中学校?で学ぶ直角三角形の3辺の関係 A²+B²=C²で計算できる。A²+ 6,400² =6,400+400 ² よって A=2,298 。 要するに宇宙ステーションからは約 2,300 km先までしか見ることができず、この距離は沖縄から北海道の距離にほぼ等しい。従って、沖縄上空を通ったとき、ヨーロッパや、アメリカ大陸どころかハワイすら見ることはできず、せいぜい北海道までしか見ることができない。それくらい、地球に近いところを通っているということであり、地球が一つの球体として見ることなど全く不可能なのである。但し、宇宙空間ではこの宇宙ステーションは時速 27,700 kmという凄い速さで地球上を周回しているので沖縄~北海道間は約 5 分で通過してしまい、新たな地球の光景が次から次へと目に入って来ることであろう。無重力を味わえるものの窮屈な 1 週間の生活。贅沢な食事が出されるわけでもなく、のんびりと地球全体を眺めることができないこの旅行。100 億円は高すぎるのではないだろうか。まあ、どこまで値下がっても我々には手が届かない金額ではあるのだが・・・。コロナ禍で行き詰ったニュースばかりのこの時期に、明るい話題を提供してくれた前澤氏には大きな称賛である。ちなみに彼の総資産は 2,000 億円以上なので、 100 億円使っても痛くも痒くもなく、人にできないことをやり遂げてきている彼にしてみれば素晴らしい使い方なのかもしれない。次は月旅行を考えているらしい。凄く楽しみである。

 

参考; 果たして地球の上空どこからが宇宙になるのかと調べてみると、100 km(カーマン・ライン)以上が宇宙であるらしい。すぐそこですね。

 

 


オミクロンの功罪

2022年01月26日 | 新型コロナウィルス

昨年 11 月ごろより第 5 波が収束し、クリスマス、正月はのんびりと過ごせると思った 12 月下旬に、南アフリカから発生したオミクロン株が日本でも拡散しだした。今日も日本中は過去にない感染数を示しているようである。連日、発熱、咽頭痛、咳といった感冒症状を認めたと大騒ぎして、医療機関や無料 PCR 検査場は長蛇の列。1 2 時間並んでいるなどと新聞には書いてあったが、まるで TDL USJ のようである。まったく馬鹿馬鹿しいというか何を考えて検査を受けに行っているのか不思議でならない。感冒症状程度では自宅療養しかできないのにわざわざ寒い中、自分で体調を更に悪くしに行っているようなものである。検査陽性率が約 50 %であるということは、列の前か後ろの人のどちらかは感染している計算になる。12 時間も前後で並んでいれば、陰性の人も 3 日後には陽性になっている(オミクロン株の潜伏期 3 日)。いわば、検査に行っている人はほぼ全員感染する計算になる。既に報告されているように、オミクロン株は咽頭で感染し、肺胞細胞には感染しにくいことが判明している。いわゆる『 咽風邪 』 ということである。従来の風邪と変わらない。オミクロンから直接的に肺炎を起こすことは非常に稀であるということである。高齢者で心不全を繰り返す患者や、肺気腫など慢性の肺疾患を抱えている患者は普通の風邪を引くだけでも二次的に肺炎や心不全の悪化にて重症化することは珍しくなく、詳細は不明であるが、今回のオミクロン感染による重症化はそういったものと変わらないと考えられる。当院でも毎年、冬になると風邪を引いて数日後に肺炎を併発し、病院に入院するケースは珍しくない。大体は誤嚥性肺炎が多い。オミクロンの出現を予想していなかった 11 月ごろは、第 6 波は小さな波と推測していた。波の大きさから言えばこの推測は大きく外れたことになるが、実際オミクロンのお陰で重症者や死亡者は予想を大きく下回っている。正月明けごろより高齢者のワクチン効果(抗体価)は非常に低下し、くすぶっていたデルタ株に高齢者が中心に感染しだし、デルタ株感染が再燃しだし、重症者や死亡者が激増するものと考えていた。幸い、オミクロンのお陰で、そのデルタ株を追いやり、重症化を阻止してくれた形になっている。オミクロン様様である。当然、オミクロンの出現がなければ、今のような莫大な感染者数はなかったであろうが。今、慌てて 3 回目のワクチン接種を行おうとしているが、デルタ株が出現しだした頃には、ワクチンの効果は弱いかもしれないと専門家?から発表があったが、2 回接種した医療従事者や高齢者の感染は見事に抑えられた。しかし、今回は 3 回接種したにも関わらず、医療従事者はそこそこ感染している。確かに、2 回目に接種したときの 10 50 倍ほどの抗体価の上昇を認めるというデーターを先行発表しているところがあるが、にもかかわらず医療従事者等の感染者が以前より多いということは、オミクロンにはワクチンの効果はこれまでに比べ低いということである。診察中に患者さんから、今回のワクチンの効果が弱く、オミクロンの毒性が低く風邪程度なら、3 回目のワクチン接種はしなくていいのではと質問されることがある。私は先日接種したが、今回のオミクロン株の予防にはさほど期待していない(万が一、感染したら解熱剤を服用して 2 3 日大人しくしていればいいと考えている)。しかし、オミクロン株の次に来るであろう変異株への備えと考えている。その変異株の毒性が強かったら、今このタイミングで接種を逃してしまうと後悔することになってしまうであろう。まあ、その変異株にも効果が低ければ同じことではあるが。今、マスコミは数字ばかりを誇張し世間を煽りまくっているが、重症化することなく、肺炎になることもない今こそコロナ感染の息抜きの時期と思っている。


令和4年 オミクロンと共に明けた新年

2022年01月10日 | 新型コロナウィルス

令和 3 年は疾風の如く過ぎ去ってしまったような一年だった。昨年のコロナ第 5 波が終わり、暫く安堵な時期を過ごすことができ、外食や旅行など多くの人たちが楽しんでおられたのも束の間。年末からオミクロン株が急激拡散しだし、1 月になってからは二次関数的に増え続けている。これまでとどこが違うかと推測すると、この感染様式はデルタ株でも言われた数メートル四方の空気感染がもっと強烈になっているものと考えられる。要するに、マスクを外した感染者が数メートル四方に一人でもいれば、ほぼ全員感染するほど感染力が強いと考えられる。今まで以上に飲食店に行けば危険で、ほぼ確実に感染するであろうと思われる。つい立など全く効果なく、話しをするときだけマスクをしたって効果は低い。飲食店に行くなら、ある程度の覚悟を持って行かなければならないであろう。飲酒なんて関係なく、マスクを外すところに行けば全滅でしょう。安全を期するなら、3 回目のワクチン接種とオミクロン株感染のピークが過ぎてから飲食、旅行に行くのがいいだろうと思う。しかし、相変わらず重症者が少なく軽症で終わるという報告(報道)が中心になっている。この言葉、非常に曖昧で、我々が知りたいのは肺炎がどの程度起こっているのかということである。もう少し、TVに出てくる医者も芸能人気取りせず、ポイントを抑えた解説をしてもらいたいものである。インフルエンザもこの冬は流行するので是非ワクチン接種をするようになんて飛んでもないことを言うので、10 月ごろはクリニックの受付はパニックでした。こんなの流行する訳がないと否定するのも大変で、案の定、83 万人の堺市は 1 月現在で定点報告でゼロ。例年、12月には学級閉鎖が頻出している小中学生の感染もゼロである。専門家?? 全国の医療施設に迷惑をかけた分、牢屋にでも入っていて欲しいところである。高齢者は、従来の風邪でも肺炎を起こして入院したり、発熱が数日続いて食事が摂れなく脱水になり、そのまま重症化し入院になるケースもある。このようなものを重症といわれてしまうと、本来のオミクロン株に対する警戒感が変わってくる。兎に角、肺炎になるケース(年齢、体格、男女差など)を提示してもらいたい。恐らく、従来の風邪とあまり変わらないのではないかと推測する。私が医者でなければ、もし発熱、咽頭痛などが出てもPCR検査は受けない。黙って、自宅で療養しておく。数日経って悪化するならその時点で考える。家族に感染しても風邪がうつった程度なら大きな迷惑は掛からない。コロナの内服薬? そんなの数が少なくて廻ってこない 。しかし、今、現役の医者をしている以上、感染する訳にはいかず、私と私の家族は、11 月ごろに緩んでいた外食などは当分しないこととした。2 日前、53 歳のNさんからクリニックの受付に報告の電話があった(私は診察中だったので直接話を聞けなかった)。『 朝から少し悪寒をしたので体温を測ったが正常。薬局で無料で PCR検査をしてくれているので検査を受けたら陽性でした。 』 要するに感染の報告です。この後、ホテル療養なのか、自宅療養なのかは不明であるが、わざわざ PCR検査を受けなくても、自宅で 23 日様子を見ておけばよかったのではと思われる。最早、家族は感染していると思われる。他人に移しては迷惑だと律義に考えておられる方も多いと思われるが、感染拡大を防ぐことは 100 %不可能である。家族で誰かが罹れば皆掛かる。それぐらい、感染能力は強いようである。まあ、今まで以上にマスクを外した人のいるところに行かないことが唯一の予防になるのだが。当院で昨年末までのコロナ感染者は 10 数名(申告者)、死亡者 3 名だった。カラオケ、飲食店を頻繁に訪れる本人、家族からの感染、そして重症化(人工呼吸器装着)した患者さんは 85 歳以上の 2 名と 40 歳台、50 歳台の極端な肥満者の方という特徴があった。これは従来株、デルタ株でのことである。オミクロン株の注目すべき点は、兎に角、肺炎患者の割合とその特徴(年齢など)を早く公表されることである。昨年 12 月から始まった医療従事者の 3 回目のワクチン接種。昨日、私も接種を受けた。5 時間後より接種部位の筋肉痛を今日も感じているが、2 回目のような悪寒や倦怠感はなく、1 回目のような筋肉痛だけである。