診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

突発性難聴

2023年03月22日 | ブログ

『  あれっ、何となく左耳の詰まるような感覚がある。右耳は普通だが。 』と 3 日前の日曜日の昼前に感じだした。『 ムム、遂に自分にも来たか !?』 そう、 40 ~ 60 歳代に多くみられる疾患で当院を受診されておられる患者さんの中にも、時々この疾患に罹って耳鼻科に通院あるいは入院されている方がおられる。突発性難聴である。日曜日で天気も良く、大阪の桜開花宣言もされたこの日愛犬小梅を車に乗せて、ふたりで大仙公園に出かけた。駐車場は満車のところが多く、どうにか穴場の駐車場を見つけ、広々とした公園を気晴らしに散歩した。途中、柴犬の飼い主の男性と立ち話をしていると、何となく気になっていた左の耳閉感が急に聞こえにくくなってきた。2 時間弱、小梅と散歩し帰宅したが、やはり、出掛ける前に比べて遥かに音が聞き取りにくくなっていた。『 う~ん、2 年前に右眼の網膜剥離を来たし、慣れたとはいえ、常に右眼の前には多数の糸くずのような影がウヨウヨと泳ぎまくっていて煩わしい。今度は、左の耳が聴こえなくなるのか。まあ、右で頑張って聞こうとして慣れていくんだろうな。』 と早々にあきらめの境地。一般的には、突発性難聴の場合、ステロイド内服( または点滴 )治療がファーストチョイスではあり、その内服のタイミングが 1 ~ 2 週間を過ぎてからでは、効果が激減すると言われている。とりあえず、手持ちのステロイド( プレドニン )があったので 30 mg( 結構な量である )を服用した。翌日、目覚めても耳の調子は変わらず。午後の診察が終わってから近くの耳鼻科を受診することとし、午前中のクリニックの診察を開始した。聴診器が商売道具である自分にとって、左耳が聴こえなければ仕事にならないと思いながらの診察。35 年も循環器医をしていると、右耳一つだけでも心臓の音は良く聴こえ、血圧測定で聴こえる動脈のコロトコフ音も問題なく聴こえ、診療には影響しなかった。診療開始 2 時間ほどした頃だろうか、少し左耳の聴こえ方がましになっているように感じた。しかしこれとは別に 『 シーー 』という耳鳴りが小さくではあるが聴こえだしてきた。『 あれっ、治ってきてる! 早々に服用したステロイドの効果が出てきたのかな。』 まあ、そう思いながら午前の診療はやっと昼の 1 時半ごろ終わった。患者さんの介護保険の主治医意見書や、生活保護の医療申請書など役所から山ほどの書類を送って来られるので、翌日が春分の日の祝日であることもあって、昼休みの 1 時間半を節約して昼食抜きで書類書きをした。3 時から午後の診察をはじめ、5時半に終了。残した書類書きを継続しつつ、7 時前に予約の取れた耳鼻科を受診した。幸い、聴力検査などは既に左右差なく改善傾向にあった。まだ、小さいとはいえ耳鳴りが残る為、ステロイドは漸減しながら一週間継続することとなった。軽くて済んだことに胸を撫でおろした。突発性難聴は、重症ではめまい、吐き気、強い耳鳴りなどが突然でることもあるようで、私の場合は飛行機が着陸態勢に入った時に起こるような耳閉感が片方に起こることから始まり、その後数時間で全くではないものの対側に比べ明らかに音が小さく聞き取りにくくなってきた( 凡そであるが、右 vs 左 10 vs 2 )。1 ~ 2 週間以内に治療( ステロイドなど )を開始すれば約 40 %は完治、50 ~ 60 %は完治はしないものの何らかの改善がみられるようである。医者とはいえ、同じ人間。同じように病気になっていく自分にある意味感心( 寒心 )してしまう。先日の採血検査、完璧だったのだが・・・。