診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

ヨーグルトの罪

2015年10月30日 | 医療、健康

TVや雑誌のコマーシャルで「ヨーグルトは健康にいい!」なんていうフレーズに良く出くわす。一言でいうと便秘には少しいいかもしれない程度のことである。乳酸菌やビフィズス菌などと言われる善玉菌を増やしたところで「健康にいい!」などとは過言である。アレルギーを抑えるとか免疫を高めるとか適当な検査をして証明したなどとの戯言を食品メーカーは唱えている。医学的には、コレステロール特に悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化を進行させ狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の一員になるということがわかっている。クリニックにも折角、コレステロールのコントロールの良かった患者さんたちが、おかしなコマーシャルをみて過剰にヨーグルトを摂るようになって悪玉コレステロールが上昇した例が山積である。皆、その悪化した検査結果をみて「明日からヨーグルトをやめます」と口を揃えていた。


悪玉コレステロールは下げろ!

2015年10月29日 | 医療、健康
特にこれといった大きな病気にかかったこともない50歳台のSさん。人間ドックでコレステロールが高いと指摘されクリニックを受診。「 先生、自覚症状は何もないのですが治療は必要ですか?」と。「あなたの場合は悪玉コレステロール(LDLコレステロール)がかなり高いので治療を勧めます。乳製品や魚介類の過剰な摂取はありませんね。」「特に普通です。」ということで内服治療を開始し、1か月半後に血液検査を行った。「見事に下がって、理想的な値になりましたね。」「先生、こんなによく効くんですね!服用を止めたらどうなりますか?」「ほとんどの場合は、逆戻りです。」心臓治療(冠動脈カテーテル治療)を行っている私からすると、狭心症や心筋梗塞で治療をしてきた患者さんの血管には、べっとり(もはやカチカチ)にコレステロールの塊がくっついているのに頻繁に出くわすため、一般の医師に比べて積極的に治療を勧めています。

風邪の予防って?

2015年10月27日 | 医療、健康
「昨日から喉が痛くて風邪をひいてしまいました。しんどいです。」と日頃は元気なHさん。「先生は、風邪をひかないのですか?」「はい、風邪はひきませんね。年中うがいをしています。上手なうがいをすれば風邪なんて罹りませんよ。」「どうするんですか?」「私は特にイソジンなどの消毒液なども使用せず、水道水だけでうがいをしています。朝起きた時、午前の診察が終わった13時半ごろ、午後の診察が終わった18時ごろ、そして帰宅した時の4回は最低しています。手を石鹸で洗ってから一口の水を含んで喉の奥まで入れてオエッと少し涙目になるようなすすぎ方を2~3回します。喉の奥にくっついていたバイキンを吐き出すような感覚です。これでOKです。風邪の季節などで少し喉に違和感があるときは、さらにのど飴を1~2個舐めておけば予防は倍増です。」「へえ~、水だけでいいんですか。そういえば、先生は風邪の季節でも診察室でマスクをしていませんね。」「本来はマスクをした方が良いんでしょうね。しかし、咳を吹っ掛けられても 5~6時間以内に上手なうがいをしておけば予防はできるはずです。」

人食いバクテリア

2015年10月21日 | 医療、健康
またTVで放送されていたのか大げさに診察室に入ってきた Oさん。「 先日、脛のところがチクチクしたので人食いバクテリアかと心配して皮膚科に行ってきました。大丈夫といわれホッとしました」。「また、TVででもやっていたの?」。「すごく進行が早くて脚が腐って死んでしまうんですね!人を食べるなんて怖いですね!」。「???」。「日本でも調査され出して15年ほど経っているようですが、ここ数年に症例数が増えてきたので騒がれ出したのかもしれませんね」。死亡率は3割ぐらい。死亡しなくても手足の切断など大きな障害を残す怖い病気です。「私も死ぬのではと、一人でパニックになっていました(笑)」。元々、扁桃腺炎や丹毒、蜂窩織炎、とびひ(伝染性膿痂疹)などの原因菌(A群溶連菌)で珍しい細菌(バクテリア)でもなく、庭で草いじりをして虫刺されした後に汚れた手で特に爪を立ててかきむしった数日後に脛のあたりを赤く腫らして受診する患者さんが結構います。これは丹毒、蜂窩織炎で皮下組織までの侵襲であり抗生剤を服用すると間もなく治癒します。尤も、丹毒や蜂窩織炎は黄色ブドウ球菌感染の方が多いようですが。このA群溶連菌が筋肉や血液にまで到達すると劇症化して3日程度で死亡してしまうようです。今のところ年間300名ほどの感染者で死亡者は90名ほどですから、昨年の交通事故死亡数が4,100名強に比べると危険性は非常に低い数字と感じませんか。よくもこんな低い数字の疾患をTVで堂々と放送したかと思うとこれを計画したTV局スタッフのレベルの低さが示されている。「Oさん、今まで生きてきて交通事故にあったり、怖い目にあったことはありましたか?」。「いいえ、全くないです」。「なら、心配しなくていいですよ(笑)」

楽しく笑って死んでいく

2015年10月09日 | 医療、健康
「 お蔭さんで今月も調子良かったです。」とニコニコと診察室に入って来られたのは85歳のMさん。定期的な採血検査、心電図検査の結果が、まずまずであることを説明し、聴診と血圧測定を終えたところで、「 先生、最近2kg少々体重が増えました。食欲が旺盛で何を食べても美味しいんです。あきませんね!」と言われた。心筋梗塞の既往があり、当院でも日帰りで二度の心臓カテーテル検査を受け、更に数年前から間質性肺炎で大学病院にて2か月に一度の定期フォローを受けておられる。「 Mさん、何歳まで生きたいですか?」「先生、もう十分ですよ(笑)」「うむ。まあ、これ以上は太らない程度に好きなものを食べればいいじゃないですか。20歳も若ければ、食事制限は厳しく指導するところですがね(笑)」「ありがとうございます。好きなもの食べて、楽しく笑って死んでいきますわ。ハッハッハ。」。ほんと、人生が楽しそうです。陰ながら見守っています。お大事に。