診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

2023年の小梅

2023年12月20日 | ブログ

2023年の小梅


ダイアベティス

2023年12月07日 | 医療、健康

世間一般同様に医学界でも馴染んでいた呼称が変更されることが目立つようになってきた。痴呆症が認知症、高脂血症が脂質異常症、慢性腎機能障害が慢性腎臓病など。最近では糖尿病の呼び名をダイアベティスに変更しようという案が日本糖尿病協会がら先日発表された。糖尿病は英語では diabetes mellitus(ダイアビティース メリタス)となるが、医療現場ではその頭文字を取って DM(ディーエム)と呼ぶのが一般的である。確かに糖尿病とは如何にも尿に糖が出てくる病気と思われがちであり、間違いではないが、糖が出ない糖尿病などよくあることである。私は予てから、糖尿病という呼び方には納得しておらず、診察室ではよく患者さんに『 全身性動脈硬化症 』という病態であると説明している。脳動脈がガタガタになりそのうち詰まってしまう脳梗塞、冠動脈がガタガタになって詰まってしまう心筋梗塞、目の血管が詰まってしまう網膜症、腎動脈が詰まってしまい腎不全に陥り慢性透析に移行、下肢の動脈がガタガタになり詰まる閉塞性動脈硬化症などなど、血糖のコントロールを怠ると全身の動脈の内腔はどんどん狭くなり、カチカチ(石灰化)になり(動脈が硬化する)、やがて詰まって(閉塞して)しまう。しかしながら今となって糖尿病の呼称変更として英語用語をカタカナ表記にするなど昭和の英語教育みたいなセンスのない変更には頭をかしげたくなる。どうせ、糖尿病協会の古臭い幹部が提案したことであろうと予測できる。また、高脂血症が脂質異常症に変更された(高脂血症も併用可)ことにも納得いかない。コレステロールや中性脂肪を脂質というが、共に高値であることが問題(動脈硬化の大きな原因)であって、低値であることは何の問題もない。脂質異常症にしてしまえば、脂質の低値も問題であるかのような誤解を招く。にも拘わらず、高血圧は変更せずそのまま。高脂血症が脂質異常症なら、高血圧は血圧異常症だろうと反論したくなる。全く、どこの権力者が自己を誇張しようとしているのかバカバカしい。

余談になるが、医学で使う略語が一般社会で使われる略語と同じものがいくつかあるので紹介する。日本の力を世界に知らしめた野球大会 WBC は医学では白血球( white blood cell )、最優秀選手である MVP は心臓弁膜症の一つである僧帽弁逸脱症( mitral valve prolapse )、チャットGPT は肝機能の指標の一つである GPT( glutamic-pyruvic transaminase )、音楽グループの AAA は医学では腹部大動脈瘤( abdominal aortic aneurysm )、教育現場での PTA は医学では下肢動脈などの末梢血管のバルーンやステント治療( percutaneous transluminal angioplasty )となる。まだまだ沢山ある。略語も本来の意味を知った上で使いたいものである。