診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

軽症者、無症状者の数を数えても・・・

2021年08月15日 | 新型コロナウィルス

連日、新型コロナ感染者の増加で日本中はパニックになっている。今、注意したいのは唯一点、40 50 歳台( 40 歳以上)のワクチン非接種者の感染である。60 歳台以上はかなりの方が最低 1 回のワクチン接種を終えており、非常に安全な状況になっている。30 歳台前半以下の年齢層は一部の稀な例を除いて、感染しても無症状ないしは 1 週間程度のインフルエンザに似た感冒症状で終わっている。堺市のデーターを抜粋して計算してみると、ワクチン接種前の 2 月中旬~ 3 月中旬の 1 ヶ月間でのPCR陽性者の年齢層の比率は、60 歳以上が 36 %、40 50 歳台が 29 %、39 歳以下が 36 %( 30 歳台だけでは 11 %と少ない)であったが、ここ一週間の平均では、60 歳以上が 7 %と激減、39 歳以下が 64 %と激増、問題となる 40 50 歳台が 29 %と横ばいである。明らかにワクチンの効果は面白いほどに現れている。また、無症状、軽症で治癒してしまう 39 歳以下の若年層がかなりPCR陽性数を増やしているわけであるが、この数字はあまり大きな意味は持たず、問題なのは、ワクチン接種前、接種後にも同様に 30 %程度感染する 40 50 歳台が重要で、彼らはかなりの確率で中等度~重症化(死亡)してしまう。医療崩壊を起こし得るこの年齢層の人たちは、ワクチン接種までは厳重な感染対策が必要で、特に昼夜問わず外食は慎むべきである。ワクチン接種を終えた人は、感染することにさほど怯える必要はなく、ファイザーにせよモデルナにせよ、感染予防効果は 80 90 %であって、逆に言えば感染する可能性は 10 20 %ある。しかし、全国に散っている病院勤務の友人医師や近隣病院の医師の話や海外の報告によると、ワクチン接種者の感染は 3 4 日程度の微熱や咽頭痛、頭痛程度で、あるいは濃厚接触者としてPCR検査を受けたら陽性だったという無症状が大半のようである。いわゆる軽い風邪で終わるということで、このような感染を恐れる必要はない。先日、カリブ海のクルーズ船内で 27 人のPCR陽性者が出たと大騒ぎ。乗船者には事前にワクチン接種を義務付けていたのにとニュースになっている。しかし、ワクチンのお陰で、無症状か軽症であるということである。全員がワクチンを打っているのにわざわざPCR検査をして無理に風邪の患者を探しているようなものである。何故騒ぐのか意味がわからない。折角の楽しいクルーズが台無しである。感染者なんてゼロにはならない。一方、ワクチン接種を受けていない 30 歳台以下の若年層の場合、感染しても風邪ないしはインフルエンザ程度の症状で済むことが殆どであるので、彼らに大人しくしてくれるように指示しても聞いてくれないのは当然である。その代わり、遊びまわった揚げ句、熱が出たからと不安になってPCR検査を受けに行き、陽性と判断されればオドオドと保健所や医療機関に頼るなど非常に情けないことはしないで欲しい。大人しく 1 週間ほど家で養生しなさいということである。それに反して、医療崩壊のカギになるワクチン接種を受けることができていない 40 50 歳台の方々は、他の世代の方と同じような行動は、ワクチン接種ができるまで慎んでもらいたい。甘く考えていると死にますよ。連日、過去最高のPCR陽性者数を記録したと世間を煽りまくっているマスコミと、意味も分からず一緒に騒いでいる素人のコメンテーターには呆れてしまう。40 歳以上の非ワクチン接種の陽性者数だけ数えておけば良いものを、無理矢理、風邪症状の患者の数を数えて数字を増やしているようなものである。ワクチンを接種された人たちは、飲食店や観光業界を救う意味でも、感染対策は怠らず積極的に活動すれば良いはずである。何を恐れれば良いのか、もう一度整理する必要がある。緊急事態宣言なんてまだまだ数字が増えても必要ないはずである。兎に角、40 歳以上のワクチン接種をされていない方々だけは要注意で、同じ人間が 2 回接種する前に、彼らに 1 回でもワクチン接種を早くしてあげることが最善と考える。


3週間間隔接種は愚か!

2021年08月06日 | 新型コロナウィルス

5 / 19 から開始した新型コロナワクチンのクリニックにおける高齢者の個別接種は、昨日 8 / 5 を以って終了しました。合計 1,380 回の接種を行いました。看護師および事務スタッフの慎重かつ丁寧な作業により、1 回分のミスや無駄もなく無事任務を終えることができました。スタッフには感謝の念に堪えません。当院は国が推奨する 3 週間後の 2 回目接種を敢えて避け、他の先陣接種国のデーターを踏まえて、5 6 週間に 2 回目の接種を行いました(厚労省で許容される最大週 6 週)。幸いにも、最近欧米から報告されたデータでは、ファイザー製のワクチンでは 1 回目の接種後 11 日~ 2 回目接種までに 91.7 %の有効率がある(俗に 1 回目接種で 70 %程度の有効性があると言われていた)と報告され、2 回目接種から 1 週間~2 ヶ月後には 96.2 %の有効性があると報告されています。また、接種により得られる中和抗体の量は、3 週間後が最低で(残念ながら私は医療従事者として 3 週間後に接種されました)、12 週間後まで空けた接種を行った英国のデーターでは 3.5 倍もの抗体価を得たと報告されています。もっとも、3 週間後でも、有効な免疫反応を得ています。しかし、抗体価が多い方が感染予防や重症化の防止効果は優れており、更に長期にわたる免疫を得られるということです。2 回目の間隔をあまり空けすぎると、1 回目で得た免疫力が一時低下するため、英国やスペインなどのヨーロッパ諸国は12 週間後ではなく、8 週間後に 2 回目を接種しているようです。日本では未だに 3 週間後の 2 回目接種を推奨していますが、これはファイザー社の治験において、2 回目接種が 3 週間後であったという、只その理由からで、筋肉注射も別に皮下注射でも大きな問題はないものの、治験で筋肉注射であったからというまさしく、お役所的考えが貫かれている愚かな国といえます。世界の多くの国ではこの間隔を空けた 2 回目接種の効果は報道されているようですが、日本では、相変わらず低俗なマスコミが国に忖度してか、国からの報道規制があるのか、全く報道していません。5 月ごろに千葉大学が 3 6 週間後の 2 回目接種で同じような結果を得たというニュースが一晩だけ流れましたが、翌日からピシャリと報道されなくなりました。今回の新型コロナ感染症は人類史上初めての出来事で、医学的な教科書など存在しないにも拘わらず、なぜ先陣を切って報告してくれている他国のデーターを参考にしないか頭を抱えてしまいます。本当に、愚かな国に住んでいることに情けなく思う毎日です。東京は 1 万人以上、大阪も 5 千人程度の感染数は 8 月末までに起こってしまうことでしょう。前述の如く、1 回接種だけでも 91 %の有効性があるならば、より多くの人たちに 1 回でも早くワクチン接種をすべきであって、 2 回目の接種は先送りする方向転換を検討するべきと思われます。しかしながら、逆にワクチンの供給量が減少したからと、新規の予約を中止し、1 回目を接種した人の  2 回目接種を 週間後に優先接種するなど、馬鹿な大臣や役人どもの判断には怒りを通り超え、呆れ返ってしまいます。結局は、理論を説明することに努めるより、今までやってきたことを訂正することで多くの国民が騒ぎ立てることを防止する方策を選択している小心国家なのだと思います。当院でも、不満をいう方もちょこちょこおられ、2 回目の接種を集団接種で 3 週間後に予約した方が何人もおられました。 無駄な選択をしたことになりますね。