診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

1回目のワクチン接種終了

2021年06月29日 | 新型コロナウィルス

65歳以上の高齢者のクリニックでのワクチン接種予約は約750名でした。当院では2回目の接種を厚生省が推奨する3~6週間以内の6週間を採用し、1回目をできるだけ多くの皆さんに接種できるようにしました。週に120名の接種をスタッフの協力で行ってきました。丁度6週間では720名が接種でき、本日でその720名の接種が終わりました。明日から2回目の接種が始まります。他の医療機関は、皆3週間後にしているとのことで、2回目の接種を集団接種会場で予約できたとキャンセルする方もいくらかおられました。お陰で、当院で1回目の予約をキャンセル待ちされていた方が繰り上がることができました。そもそも、集団接種会場の予約をすることができ、会場まで足を運ぶことのできる方はそう願いたいところでした。老夫婦二人で生活され、予約も上手くできず、大会場まで足を運ぶこともできない方の為にクリニックでの個別接種を協力したわけですから、近々始まる65歳未満の方の接種に対しては、クリニックでは行わないことにしました(予約高齢者が終わるのがお盆ごろですので、そこまで待つメリットもありません)。スタッフの負担は大きく、一般診療の検査なども十分することができず、接種後の15分間を待機して頂くために点滴室のベッド2台を4名の椅子代わりに使用したりと治療にも大きな支障がでました。3月ごろより準備に関する厚生労働省や大阪府、堺市保健所などから連日、書類やFAXが届き、目を通したり書類を返送したりと、診療後に多大な時間を割いてきました。今日現在もFAXの連絡は止みません。保健所も連日大変な作業をしているようで、当院とのメールのやり取りでは、夜間11時頃に返信してくれたりしています。『 遅くまで大変ですね、頑張って下さい。 』 とメールをすると、『 労いの言葉、大変励みになります。』 と返信がきました。世間は、他人を批判ばかりしているようですが、現場は皆、一生懸命働いています。国が悪い、自治体が悪い、保健所が悪い、システムが悪いと簡単に批判するマスコミ同様、洗脳されたかのような発言をする高齢者には呆れ返ってしまいます。ワクチン接種が当然の権利のように受けておられますが、電話が繋がらず予約が取れないと受付に怒鳴りに来たり、2回目の接種が遅いと不満を訴えたり、『 もういい加減にしろ! 』 と言いたい気分です。予約だけして、当日接種券を持参し忘れたり、届いていないなどと適当なことを言ったり、もううんざりです。ワクチンの副反応が怖い? 何が怖いものか! 感謝して痛みと熱に耐えるべきでしょう。熱が出た時の為に解熱剤を依頼された折、ロキソニン(ロキソプロフェン)を処方すると、カロナールが良いと皆言っているのでそちらを処方して欲しいという高齢者。ロキソニンの方が効果がいいのに。医者を馬鹿にしているのでしょうか。私は、覚えてますよ、この方達を。信頼関係を損ねる発言。今後の治療に影響出なければいいですが。ワクチン接種が終われば飲食や旅行でも行くのかと尋ねると、怖いからどこも行けませんという答えが多い。以前もブログに記しましたが、優先順位が間違っていることをここに来て証明できたようなものです。どこも行かないのなら、ワクチン接種などしなければいいのに。何の為にワクチンを打ったのか?千葉大学が3週間後の2回目接種は一番抗体価が低かったと発表すると、政府が火消しに走ってか、一夜限りの報道で終わったことを知る人は少ない。モデルナワクチンの2回目接種は4週間以降になっている。当院では4月の医療逼迫状況時に3名の患者さんが感染し亡くなられました。60台、80台、90台の日頃は元気な方でした。60台のYさんは若い頃より透析を週3回受けておられ、当院が開業した20年前に透析病院より、かなり心臓が悪いようなので精密検査をして欲しいと紹介がありました。心臓カテーテル検査、心エコー検査などにて拡張型心筋症と診断し、当時は少し歩くだけでも息切れを自覚し、透析中の血圧変動も大きく透析そのものも危険な状態でした。最悪、心臓移植しかなく、当時は治療法も確立されておらず、βブロッカーの少量からの漸増療法が効果があるのではという論文があり、ご本人、ご家族に了承を得て治療を開始しました。私個人が当時この治療を行ったのは4~5例だけでした。幸運にも、みるみる心臓の動きは良くなり、半年後には正常下限まで動くようになり、1年後には全くの健常者の心臓と見劣りしないところまで改善しました。現在では、この治療は普遍的となっていますが、全ての症例に効果的というわけではありません。今年3月、診察時に、『 先生、お陰で20年長生きさせてもらえました。当時、小さかった子供も今は家業を継いでくれてます。本当に感謝しています。 』 というのが最後の診察室での会話でした。透析病院で1回目のワクチン接種を打つ間際の感染だったようです。2回目接種の予定者が終わるのを待っていたのかもしれません。もし、1回でも接種できていれば状況は変わっていたのではと思っています。残念でなりません。『 Yさん、元気でね! 』