窓に区切られた狭いはずの空。
お昼ごはんの頃に、窓から見えていた雲は、グレーの雨雲で、一度だけ稲光が見えました。
その、雲がみえなくなり、青い空が見えるようになった頃、上空で雷が鳴り、パタパタと音を立てて、雨が降ってきました。
今、4時半。
チンゲル亭の上空には、12時頃の南向きの窓の下のほうに見えていた雨雲がやってきたのです。
窓からの空は、ずーっと先のボクト山に区切られつつ、更にその先までの数十キロあるいはもっとそれ以上先の方まで見渡すことができます。
窓から見渡せる空は青い空。
べランダに出て、真上を見るとグレーの雲が広がっていました。
ちょうど、でかけようとしていた夫は、かまわず出かけていきました。
モンゴル人は雨が好きなんだ、と言いながら。
すぐにあがってしまったので、雨にぬれることはできなかったようでした。
フブスグル湖にいったときは、叔父が喜んだちょうど良いお湿りでした。
馬方さんと話していたとき、馬にとって、雨は草を生い茂らせる恵みの雨だけれど、馬方にとって、稼ぎ時の観光シーズンに降られる雨は、お客さんが馬に乗ってくれないから、困るんだと言っていました。
私達は、馬方さんと約束した時間には、雨が上りかけていて、ほんとに気持ちの良い乗馬ができたのです。
ただし、雨の間、鞍はしまっておいたのですが、鞍の下にかけてあるフェルト素材の布は、馬にかけたままだったようで、Gパンの鞍から外れた部分の太ももから下がぐしょぐしょに濡れ、靴のかかとが真っ黒に汚れていました。
モンゴルの風に乗って舞う土は、ほんとに細かいので、パタパタと払い落とせるので、乾いている限りにおいてはちっとも衣服を汚さないのです。
けれど、雨にあうと、その土は真っ黒に汚れをつけてしまうのです。
フブスグル湖の雨は、UBと違って、さすがに湖のそばだけあって、長く続くし量も多いのです。
知ったかぶりをして、「雨だねぇ、うれしいねぇ」と、語りかけたのに対して、笑顔を期待した私は、ちょっとがっかりして、申し訳なく思ったことでした。
あの馬方さんは、5センチくらいの大小2頭のヤクの彫り物をくれました。
青いTシャツを着て、満面の笑顔の馬を引いた少年のお父さんでした。