教育基本法改正案が秋の臨時国会で継続審議されることになった。
数の計算からいけば、臨時国会で成立する。成立したあと、学校教育法の改正があり、教育委員会も学校も、対応に追われ、疲れ果てるだろう。
しかし、改正が成立するかどうか、わからない要素があると思う。
自民党以外のところは、本心は自民党さんへのおつきあい。自民党が他の勢力と取引したり、なだめたりでなんとかまとめ上げた。
自民党は昔から教育基本法改正を言ってきたのであり、ついに悲願がかなうと盛り上がっている。
しかし、愛国心の表記で公明党と妥協しすぎたから、不満な議員さんがたくさんいる。
文科省はもともと、現行の教育基本法に問題を感じてはいない。「愛国心」みたいなイデオロギー問題に手を出して、面倒を抱え込みたくない。それでも文科省が改正に回ったのは、「教育振興基本計画」を盛り込むことで自民党と妥協が成り立ったため。
「教育振興基本計画」をやれば、予算がつくからである。ところがその後、財政難がはっきりして、予算が出ないことがわかる。それでも、すでに改正は動きだしてしまったから、進むしかない。
公明党は、もともと教育の国家主導には強い反発がある。それを神崎執行部がなんとかまとめ上げた。議員さんたちは不満な人がたくさんいる。背景になる池田大作の教育哲学はまっとうなもので、民間教育を基本にしたものである。
自民党と公明党の妥協はガラス細工で、壊れやすい。
教育界は、あんまり積極的じゃない。業界紙を読んでいてそう感じた。はじめのうちは、改正ですごくいいことがあるような記事が多かったけど、最近は改正批判派の記事が多い。
それもそうだと思う。教育基本法はこれまで、教育界で問題を起こしてはいない。「この改正をやっても、無意味に忙しくなるだけじゃないか」という予感が広がりつつあるのだと思う。
というわけで、「この改正案は素晴らしいから、なんとか実現してほしい」という人が意外に少ない。なんかのかげんで、成立しないメもあると思う。
なによりも、改正の必然性が弱い。改正案は政治からの発想であって、教育の現実を見据えたところから出てきていない。
教育の論理から発信を続けていれば、なにかいいこともあるんじゃないかと思っています。
来週の半ばに、私の本が出版されます。
「変えよう!日本の学校システム ――教育に競争はいらない」
平凡社 1680円(税込)
教育で、だれもが制度の枠にがんじがらめになっていることを、書いています。お手に取っていただけるとありがたいです。
まったく同感です。
むしろ、現行法で禁止されている行政から現場への「指導」のために、教員や子どもが振り回されている実態から目を背けていると言いたいですね。
「政治からの発想」は、「行政に都合の良い法律さえ作ってしまえば、どんなにそれが非教育的であろうとも現場は動かざるをえない」ということです。
すでに、現行法をかなり無視してそういう実態があるにもかかわらず、あえて法律を変えてしまおうというのは、結構恐ろしい狙いがあると思うのは私だけでしょうか。
日本の北朝鮮化が進むことを本気で恐れています。