分子研UVSOR松井研究室のブログページ

2018.03に分子科学研究所に異動、研究室を立ち上げ中です。

「秘すれば花」でよいのか

2023-04-20 08:07:11 | 研究紹介
最近、科研費が当たらなくて悩んでいます。

装置開発を前面に出して申請書を書くと、「サイエンスがない」というコメントが返ってくる。
応用展開を含めて書くと、「デモンストレーションにしか見えない」というコメントが返ってくる。
そこで、装置開発を抑えてサイエンスを前面にして書くと、
「サイエンスをやりたいのかデモンストレーションをやりたいのか曖昧」というコメントが返ってきました。

先日は、外部評価委員への研究ヒアリングで、デモンストレーションを超えるキラーアプリケーションはないか?
と聞かれ、その実例を示し、一応は納得してもらい、乗り切りましたが、
やはり華々しい応用研究ばかりがもてはやされる。

総じて、装置開発の評価は低い。開発する装置の使い方と有用性まで提示しないとユーザーには気づいてもらえない。
しかし、一度装置開発が軌道に乗り、その有用性が見えてくると、
それを利用するユーザーが参入し、その研究課題がどんどん採択されていく。
そうした利用研究には装置開発へのacknowledgementが全くないものも結構あります。
日本には「花」を愛でる文化はあるけれども、そこに至る過程を評価するのは野暮、そんな風潮があるのでは。
「花」だけ摘んで持っていかれてしまいます。
さらにいえば、手っ取り早く舶来ものの「花」を持っている人が目立ち、
地道に国産の花を育てている人は、いつの間に時代に取り残される。

何もreinvent the wheelをしたいわけではない。
wheelの摩擦を極力取り除く技術であったり、タイヤが外れないようにする安全設計を追求する技術、
それを大切にしたいということなのですが、多くの人は「花」にしか興味を示さず
「社会的に何に役に立つか」「サイエンティフィックに何が面白いか」とすぐ聞いてきます。
地道な装置開発がそんなにつまらないことなのか。No.1、only 1の技術以外は無駄なのか。
「顕微分光の信頼性と学理を確立」することがそんなに意味のないことなのか。

みんな、「花」しか見ていない。
みんな、「花」にしか期待していない。