野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

古くから親しまれた薬草イタドリ(「雑草」シリーズ05)

2019年09月19日 06時58分45秒 | 

イタドリは日本でも古くから親しまれた薬草であり、「痛みを取る」からイタドリと名付けられたとされている。スカンポという名前でも知られており、ぼくも子供の頃に茎の皮をはいで、酸っぱい味を味わったことがある。俳句の世界でも虎杖と書いて、馴染みの季語になっている。「いたどりを噛みしめ急かぬ旅にをり 田中英子」。アジア原産の「害草」で、ヨーロッパでは撃退に必死なようだ。

(2019-09 長野県 富士見市)

 

 

イタドリ(虎杖、痛取、Fallopia japonica、英語: Japanese knotweed)とは、タデ科の多年生植物。別名は、スカンポ(酸模)、イタンポ、ドングイ、スッポン、ゴンパチ、エッタン、ダンチ。ただし、スイバをスカンポと呼ぶ地方もある。


分布・生態
北海道西部以南の日本、台湾、朝鮮半島、中国に分布する東アジア原産種。日当たりの良い道ばた、土手、山野、荒れ地など様々な場所で生育でき、いたるところで見られる。やや湿ったところを好むうえ、撹乱を受けた場所によく出現する先駆植物である。谷間の崖崩れ跡などはよく集まって繁茂している。これは太く強靭で、生長の早い地下茎によるところが大きい。

世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 選定種の1つでもある。19世紀には、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトによって観賞用としてヨーロッパへ持ち込まれて外来種となり、特にイギリスでは旺盛な繁殖力から在来種の植生を脅かすうえ、コンクリートやアスファルトを突き破るなどの被害が出ている。2010年3月、イギリス政府はイタドリを駆除するため、天敵の「イタドリマダラキジラミ」を輸入することを決める。

一面に花が咲いていると、多くの昆虫が集まる。秋に昆虫が集まる花の代表的なものである。また、冬には枯れた茎の中の空洞をアリなどが冬眠用の部屋として利用しているのが見られる。イタドリハムシは、成虫も幼虫もイタドリの葉を食べる。

形態
草丈は1.5メートルほどになる大型の多年生草本で、肥沃な土地では高さが2メートルほどまでなることもある。

春、タケノコのような赤紅色の新芽が地上から生える。茎は中空で、若いときは紅紫点があり、多数ある節には膜質で鞘状の托葉があり、その構造はやや竹に似ている。葉は互生で、広卵形で先が尖った葉を交互につけ、特に若いうちは葉に赤い斑紋が出る。

雌雄異株で、夏から秋にかけて7 - 10月頃に開花する。花は雄しべが花弁の間から飛び出すように長く発達しており、花弁は雄花よりも雌花の方が大きい。また、白い雄花はすぐに枯れ落ちる。夏には葉腋と枝先に、白か赤みを帯びた小さな花を多数着けた花序をだす。特に花の色が特に赤みを帯びたものは、ベニイタドリ(メイゲツソウ)と呼ばれ、本種の亜種として扱われる。

雌株には、3稜ある果実ができ秋に熟する。種子には3枚の翼があり、風によって散布される。そして春に芽吹いた種子は地下茎を伸ばし、各所に芽をだし、群落を形成して一気に生長する。

利用
山菜
若い茎は柔らかく、春頃の紅紫色でタケノコ状の新芽は食用になり、根際から折り取って採取して皮をむき山菜とする。また、やわらかい葉も食用にされている。新芽は生でも食べられ、ぬらめきがあり珍味であると形容されている。かつては子供が外皮をむいて酸味を楽しんだ。この酸味はシュウ酸で、多少のえぐみもあり、そのまま大量摂取すると下痢をおこす原因になり、健康への悪影響も考えられ注意が必要となる。

山菜として採った新芽は、外皮を取り除いて生食するか、かるく湯通しして十分に水分を切ってから油炒めにして醤油・塩・胡椒で味付けしたり、短冊状に切って肉や魚などと一緒に煮付けにする調理法で食べられている。また、塩漬けにして保存し、食べるときに水にさらして塩抜きして食べられている。

高知県では「イタズリ」とも称され、皮を剥ぎ、塩もみをして炒め、砂糖、醤油、酒、みりん、ごま油等で味付けし、鰹節を振りかける等の調理法で食べられている。和歌山県では「ゴンパチ」、兵庫県南但では「だんじ」とそれぞれ称され、食用にする。新芽を湯がいて冷水に晒し、麺つゆと一味唐辛子の出汁に半日ほど漬け、ジュンサイのようなツルツルとした食感がある。秋田県では「さしぼ」と称され、水煮にして味噌汁の具に使ったりする。岡山県では「さいじんこ」、「しゃじなっぽ」、「しゃっぽん」などとも称される。

山菜として本格的に利用するときには茹でて水にさらすことであく抜きをするが、そうするとさわやかな酸味も失われてしまう。高知県では、苦汁や苦汁成分を含んだあら塩で揉む。こうすると、苦汁に含まれるマグネシウムイオンとシュウ酸イオンが結合し、不溶性のシュウ酸マグネシウムとなる。その結果、シュウ酸以外の有機酸は残したままシュウ酸だけを除去できる。

民間薬
根には、アントラキノン誘導体のポリゴニンを含み、加水分解することでエモジン、エモジンメチルエーテルなどを生じる。これら成分が、ゆるやかに下痢を起こす緩下作用、月経不順を整える通経作用、尿の出をよくする利尿作用として働く。薬効は、緩下、利尿、通経、常習便秘、膀胱炎、膀胱結石、月経不順、産後の悪露に効用があるうえで老人や婦人にも安全とされ、民間では、緩下薬として用いられている。

冬になる10 - 11月頃、地上部の茎葉が枯れた頃に根茎を掘り上げて採取し、水洗いして天日乾燥させたものは虎杖根(こじょうこん)という生薬になる。便秘や月経不順には、虎杖根を1日量5 - 15グラムを500 - 600 ccの水で半量になるまで煎じ、食間3回に分けて服用するとよいとされている。また、カンゾウといっしょに煎じて、咳を鎮めるために利用された。

若葉を揉んで擦り傷などで出血した個所に当てると多少ながら止血作用があり、痛みを和らげるのに役立つとされる。「痛み取り」が転訛して名付けられたというのが通説で、これが「イタドリ」という和名の由来になっている。

虎杖根を採るための栽培は、丈夫で土地を選ばないので容易であるが、切断した根からも発芽し駆除が困難なため、露地栽培はしない方がよいとの見方がされている。

なお、生薬となるコジョウコン(イタドリの根。指定については茎も該当。)は厚生労働省が定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収録されており、医薬品ではないサプリメントでは用いれなくなっている事情が存在する(なお、若芽については「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に収録されている。)。イタドリの根はレスベラトロールを比較的多く含み(英語版記事)、海外では廉価なレスベラトロールサプリメントの材料として用いられているが、日本ではこの事情により、イタドリの根・茎を用いた医薬品ではないレスベラトロールサプリメントは違法の扱いとなっている。

その他
戦時中、タバコの葉が不足した時にイタドリなどを代用葉としてタバコに混ぜた。インドや東南アジアでは、イタドリの葉を巻いたものを葉巻の代用とする。

イタドリに寄生するイタドリ虫(アズキノメイガ)は釣りの生き餌として使われる。

 

 

虎杖の花


いたどりに樋の水はやし雨の中 飯田蛇笏
いたどりに風百日の喪があける 高田律子
いたどりの一節の紅に旅曇る 橋本多佳子
いたどりの伸ぶるにまかせ暮るゝ春 大場白水郎 散木集
いたどりの花か頭か野を吹き抜け 金子皆子
いたどりの花の月夜の梁番屋 宮下翠舟
いたどりの花の豪雨となりにけり 吉田汀白
いたどりの花へ降りゆく鉄梯子 金箱戈止夫
いたどりの花月光につめたしや 山口青邨
いたどりの花活けてあり鮎料理 北川まどか
いたどりの茂れるさまも裾野かな 深川正一郎
いたどりの葉の斑ざしたる蛇籠かな 飯田蛇笏 山廬集
いたどりは竹の如くに伸にけり 妻木 松瀬青々
いたどりや人のむかしは妬きもの 赤松[ケイ]子
いたどりや汝と我の千曲川 原田喬
いたどりや海のぞく貌はやて打つ 角川源義
いたどりや着きて信濃の日が暮るる 及川貞
いたどりをかめば父の香走りけり 影島智子
いたどりを噛みしめ急かぬ旅にをり 田中英子
いたどりを噛んで旅ゆく熔岩の上 野澤節子
ここ過ぎてやがて飛騨路と思ふにぞ虎杖の紅き茎のさびしさ 生方たつゑ
みちのくの虎杖も木となり了んぬ 石塚友二
イワナ一尾々々包む虎杖の葉重ねて 河東碧梧桐
ゼリー置く虎杖の葉のとびし風 富安風生
一抱へ枯いたどりの焚かれけり 大場白水郎 散木集
刈りかけてある虎杖の林かな 比叡 野村泊月
初めて虎杖を噛む吐くべかりし 梅林句屑 喜谷六花
原虎杖や旅人はふと夏を折り 安井浩司 汝と我
古戦場虎杖に紅にじみ出で 鷹羽狩行
古根に浮きて虎杖の芽や真紅 西山泊雲 泊雲句集
大虎杖しがらみなして善知鳥の巣 文挟夫佐恵 遠い橋
大虎杖咲き群れ昼の月光る 岡田日郎
大虎杖花を忘れて長けにけり 堀口星眠 営巣期
大虎杖隣のつつかひ棒ならむ 柿本多映
天才を思い虎杖手折りけり 鳴戸奈菜
山深くなり虎杖の多くなり 稲畑広太郎
山陰に虎杖森の如くなり 正岡子規
山麓の溶岩隠り虎杖摘 高澤良一 さざなみやっこ
岩清水大虎杖の葉に掬ひ 白井新一
岳のもと虎杖を食ひ水を飲み 青柳志解樹
振人よ野は虎杖の闌け盛り 柿本多映
新道を開く虎杖刈りはじむ 比叡 野村泊月
旅人よ野は虎杖の闌け盛り 柿本多映
明月草とは虎杖の花のこと 滝沢鶯衣
最上川みる虎杖を手にあまし 皆川盤水
月の道虎杖われに錯綜す 金箱戈止夫
木になれず虎杖の花高きかな 市堀 玉宗
湯けむり立つ錆び虎杖のその向う 高澤良一 寒暑
潮の香の帰路のくらやみ花いたどり 田中英子
激流涼し虎杖巨林なせりけり 岡田日郎
登り窯いたどりは木となりゐたり 沢木欣一 遍歴
百姓は跼み虎杖ばかり伸ぶ 石塚友二
睡眠薬のなか大虎杖を噛みちぎる 和田悟朗
硫気噴き虎杖の芽の臙脂濃き 富安風生
硫黄の香虎杖黄葉したりけり 高澤良一 随笑
紅斑ある虎杖思ふのみに酸し 山口誓子
老人は大虎杖を笑ひけり 柿本多映
苅籠やわけて虎杖いさぎよし 飯田蛇笏
草むらや虎杖の葉の老けそめて 飯田蛇笏 山廬集
虎杖(どんがい)にまじりて歌はつくるまじ 齋藤玄 飛雪
虎杖がかぶさり青き水ねぢれ 細見綾子
虎杖さげしわらべ早し木がくれす 梅林句屑 喜谷六花
虎杖にまじりて歌はつくるまじ 斎藤玄
虎杖に伸び勝つ草もなかりけり 尾崎迷堂 孤輪
虎杖に山蚕かけたる黄繭かな 安斎桜[カイ]子
虎杖に樋の水はやし雨の中 飯田蛇笏 霊芝
虎杖に氷室の雪をこぼしゆく 大谷句佛 我は我
虎杖に澗水冽くながれけり 石原舟月 山鵲
虎杖に蜘蛛の巣に日の静かなる 原石鼎
虎杖に風うらが見え少年見え 吉田小机
虎杖のいとけなき葉の火山灰まみれ 加倉井秋を 午後の窓
虎杖のぽんと折るると折れざると 永田耕衣 吹毛集
虎杖のバリ~燃ゆる夏野かな 長谷川かな女 雨 月
虎杖の上より覗く吉潭かな 比叡 野村泊月
虎杖の尖葉ほどけず太さかな 西山泊雲 泊雲句集
虎杖の山深ければ人の丈 高澤良一 素抱
虎杖の揺れにのつたる河原鶸 安部孝一郎
虎杖の月にも枯るる音すなり 勝又木風雨
虎杖の朝です墓がじつくり 北原白秋
虎杖の梅雨づぶぬれを顧みる 小林康治 玄霜
虎杖の汐傷みして五能線 高澤良一 寒暑
虎杖の火山灰には強き花として 中村稲雲
虎杖の箸を涼しくまゐらせり 松山足羽
虎杖の自縛悪城の壁聳ゆ 河野多希女 納め髪
虎杖の花こぼしつゝ仔馬とぶ 石田雨圃子
虎杖の花しんかんと終るなり 新谷ひろし
虎杖の花に夕べの残りをり 大野 すみ
虎杖の花に天上天下かな 富安風生
虎杖の花に湯筧ざんざ洩れ 岡田日郎
虎杖の花に熔岩の日濃かりけり 勝又一透
虎杖の花に牧歌の生れけり 高浜虚子
虎杖の花に行燈あいまい屋 富安風生
虎杖の花に鏡山肌かくあらは 鈴鹿野風呂 浜木綿
虎杖の花に霜降る夏暁かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
虎杖の花のかむさる捨番星 森田峠
虎杖の花の散りこむマンホール 岡本 眸
虎杖の花の盛りの木馬道 松藤夏山 夏山句集
虎杖の花の終りの追悼会 瀧澤伊代次
虎杖の花の蜂起に道仏 上田五千石
虎杖の花を銜へて小鳥来る 佐々木六戈
虎杖の花吹き荒れて阿蘇近し 桝本 澄子
虎杖の花指さるるに思ひあり 石川桂郎 四温
虎杖の花昼の月ありやなしや 高浜虚子
虎杖の花月光につめたしや 山口青邨
虎杖の芽の群がりに野猿出づ 松村蒼石 雪
虎杖の芽は蓚酸の赤ならむ 新谷ひろし
虎杖の芽吹きや三里番屋趾 今井杏太郎
虎杖の酢も涸るる秋五十年 三橋敏雄 眞神
虎杖は人の長きに負けにけり 松瀬青々
虎杖は木になりたくて滝直下 小島千架子
虎杖は火の山の花夜も白し 米谷静二
虎杖やわれまつろはぬ民の裔 矢島渚男 船のやうに
虎杖やガンビ林の一 河東碧梧桐
虎杖や人の敗北馬柵潰ゆ 殿村莵絲子 遠い橋
虎杖や古屯田の墓所構 河東碧梧桐
虎杖や母ありし日の筒井筒 今瀬剛一
虎杖や狩勝峠汽車徐行 星野立子
虎杖や蕨の束に添へ括り 西山泊雲 泊雲句集
虎杖や蝦夷用水の辺に茂り 高濱年尾
虎杖や行くつもりなき丘見ゆる 池田澄子
虎杖や赤土山の松の中 浜田波静
虎杖をかつぎ虎杖林出づ 大橋宵火
虎杖をへし折りゆけり鬼無里の子 高澤良一 燕音
虎杖をむかし手折りぬ四月尽 石田波郷
虎杖を噛みつゝ地図をしらべけり 岸本白霧
虎杖を噛みつゝ島の道遠し 山田不染
虎杖を噛めば唾わく岨の青さ 榎本冬一郎 眼光
虎杖を四五本掴み山離る 吉田汀史
虎杖を手ぐさに雲を奔らしむ 本宮銑太郎
虎杖を折つて杖とし往きにけり 比叡 野村泊月
虎杖を抱へ渓より現れし 本西 満穂子
虎杖を食めば母郷の海光る 館岡沙緻
虎杖一本立つ滑走路のほとり 横山白虹
虎杖折る小気味よき音山中に 茂里正治
虎杖漬けし爪の青さに昏れゆけり 金箱戈止夫
青ざめて花いたどりも浜に老ゆ 金箱戈止夫
鬼いたどりあばれ川底乾きをり 河野多希女 納め髪
鳶低く来て虎杖の花煽る 柏原日出子


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