野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

もう馬酔木の花が開いていた

2020年02月11日 10時41分56秒 | 

もう開花していたアセビ(馬酔木)。日本特産の伝統的な木の花である。俳句でもよく知られている。公園などでは、池のほとりなどに植えられることが多い。「伊豆の旅誰か馬酔木の花折りて 細見綾子」。伊豆の山を登りながら、馬酔木のトンネルをくぐったことを思い出す。

(2020-02 川崎市 公園) 

アセビ
・山形県及び宮城県以南の本州、四国及び九州に分布するツツジの仲間。日本特産の常緑低木で、やや乾燥した林地や砂礫地、山の尾根などに群生することが多い。木全体に毒性があり他の動植物を寄せ付けないことからアセビだらけの景色を作るため、観光名所には奈良の春日大社や奈良公園などがある。

・万葉集にもその名が登場するほど古くから日本の庭園に使われており、灯篭や庭石の傍に植えるのが最も似合うが、花も葉も明るめであり、洋風の庭にも違和感なく使われる。

・呼び名はアセビ、アセボ、アシビと人によって地方によって様々で、何が正しいのかしばしば混乱を招く。英語名に含まれるアンドロメダは欧米に咲く別の花のことであり、日本固有の本種がアンドロメダに似ているため名付けられた。

・2月~4月になると枝先から多数垂れ下がるように花が咲く。花の直径は6~8ミリほどで、口のところが5つに浅く裂ける。自生するアセビの花色は白が基本だが稀に薄紅色のものがあり、園芸用としてはより人気が高い。また、花びらの付け根にある萼の色は個体によって薄紅色になったり黄緑色になったりと面白い。

 ・花の後にできるアセビの実は直径5ミリほど。ぶら下がっているように見えるが、熟すと上向きに開き(くす玉の逆!)、中から種子がこぼれ落ちる。実が熟す頃になると来春に向けた蕾ができており、アセビを見慣れない初心者では実と蕾を見分けるのが難しくなる。

 ・葉は枝先にまとまって付いているように見えるが、実際は互い違いに生じている。長さは3~7センチほどで両面とも毛はなく、ツルツルした感じになる。アセビの落ち葉には他の植物の成長を抑制する物質が含まれており、アセビの下では他の植物が育ちにくい。葉を煎じて畑などに散布すれば殺虫剤として使うこともできる。

・幹は株立ち状になるのが普通で、樹齢を重ねるとネジキのように捩れた感じになる。樹皮は赤みを帯び、縦に筋が入る。

・漢字名のとおり、馬がアセビの枝葉を食べると呼吸中枢が侵され、酔ったように脚が不自由になることから「アシビ(足痺れ)」の別名があるという。アセビという名前も「悪し実(あしみ)」から転じたとする説があり、こうした名の由来はシキミに似る。

・アセビの葉、花、枝に毒性(アセボトキシン/グラヤノイド)があり、アセビの葉を誤食すると嘔吐や痙攣といった症状が起き、花で作った蜂蜜で中毒を起こした例もある。

 


馬酔木 の例句 

あしびきのやまのひとつがやま火かな 加藤秋邨
あしびの花ゆれてもかなし大試験 山口青邨
あしび咲き机の上の夕景色 岡井省二 有時
あしび花房長し短し大試験 山口青邨
こころみに足袋ぬぎし日や花あしび 林翔 和紙
こそ~と鹿の目こぼるあせぼ原 土芳
このあたり鹿さへまれにちるあしび 百合山羽公 春園
この句碑のあしび蕾をそろへたり 山口青邨
さばかるる女難の顔のあせぼかな 飯田蛇笏 山廬集
たくましく婢の愁ひあるあせぼかな 飯田蛇笏 山廬集
とぼしらにあせびの花や瑠璃光院 星野麥丘人
ひと房にこゝだ馬酔木の花の壺 日野草城
まつりたる鼓緒忌の花の馬酔木かな 飯田蛇笏 霊芝
みさゝぎの馬酔木の花のありそめぬ 日野草城
むつびても黙してもふたり馬酔木咲く 及川貞 夕焼
よき庭や岩上馬酔木花皚々 山口青邨
わが袖に君が袖にと馬酔木ゆれ 阿波野青畝
万亭のあしび花咲く大石忌 高野素十
万燈を待つ間手ぐさに房馬酔木(奈良、春日神社万燈籠) 細見綾子
人遠し馬酔木の下のくぐり水 細見綾子
伊豆の旅誰か馬酔木の花折りて 細見綾子
函根路やあしびの花の珠と鳴り 山口青邨
別れ来てほつりと白し花あしび 楠本憲吉 隠花植物
利休忌に馬酔木みじかき花盛 平畑静塔
利休忌の馬酔木の花の一閃を 山口青邨
咲くよりは垂るるこころに馬酔木咲く 林翔
四時ある国の氷雨にあしび咲き 下村槐太 天涯
夕雲の馬酔木に居りて夜も去らず 水原秋櫻子 玄魚
夜に消える馬酔木鏡の奥黒猫 金子兜太
天井を馬酔木咲く野に低く吊る 下村槐太 天涯
奈良の夜は女人の匂ひ花あしび 飴山實 花浴び
奈良幽か朝のあしびに鐘わたる 阿波野青畝
奈良眠し馬酔木の花の落ち溜り 右城暮石 虻峠
妻活けし馬酔木の花や西行忌 山口青邨
小馬酔木咲けり我が家も奈良市域 右城暮石 句集外 昭和三十四年
山々の花馬酔木とも狎るる眠り 飯島晴子
左丹塗の春日明神花馬酔木 阿波野青畝
左千夫の墓花ごしらへの馬酔木垂れ 山口青邨
年酒酌み見立てし馬酔木六酒仙 水原秋櫻子 蘆雁
幼けなき祖師の御像花馬酔木 清崎敏郎
庭の中渓流ひびき馬酔木咲き 山口青邨
或る門のくづれて居るに馬酔木かな 水原秋櫻子 葛飾
折りとりて蚋おふ山の馬酔木かな 西島麦南 人音
新墓に馬酔木の花の咲きそめし 相馬遷子 山河
日当つて来し花馬酔木京は冷ゆ 山口青邨
日月のみ名のみ仏馬酔木咲く 野見山朱鳥 天馬
明るさや馬酔木夏芽の揃ひ立ち 高浜年尾
春の月馬酔木の花を照らしけり 山口青邨
春日野や夕づけるみな花馬酔木 日野草城
春隣り一位馬酔木にかしづかれ 飯田龍太
月に照る花おそければ馬酔木のみ 及川貞 榧の實
月よりもくらきともしび花馬酔木 山口青邨
月光の木陰の馬酔木君知るや 山口青邨
月光佛嫩芽の馬酔木供へある 水原秋櫻子 秋苑
末世の吾が手の馬酔木伎藝天(秋篠寺) 細見綾子
本丸の古道うづむあせぼかな 井原西鶴
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり 水原秋櫻子 葛飾
林なす花の馬酔木野巫女来ぬる 阿波野青畝
林泉に岩座の注連馬酔木咲く 右城暮石 句集外 昭和四十八年
樒かとまがふ山路の馬酔木かな 河東碧梧桐
水ひびくところ馬酔木の花用意 山口青邨
水温む奈良はあせぼの花盛 原石鼎 花影
渓澗にあしびの花のいくたりも 山口青邨
渓澗のおもむき馬酔木房短く 山口青邨
湖に帰る馬酔木群落を見てきて 金子兜太
湖畔あしび冬を花芽のかなしさよ 及川貞 夕焼
湯の香立つ山荘木藤垂れ馬酔木垂れ 山口青邨
献木のよくつき馬酔木花を垂れ 高野素十
珊珊と馬酔木の珠の鳴る日かな 上田五千石『琥珀』補遺
石楠花に馬酔木に蜂のつく日かな 原石鼎 花影
秋の雨さぞや馬酔木の雨雫 日野草城
紅梅に馬酔木も咲きて神の域 山口誓子
紫香楽の宮趾ひと本花馬酔木 松崎鉄之介
縁に立つ馬酔木の花はゆれやすし 山口青邨
腹落ちし鹿淋しさやあせぼ咲く 河東碧梧桐
花あしびかづきて鹿の子くぐり出づ 阿波野青畝
花あしび朝の薬に命継ぐ 角川源義
花あしび語りて神護寺さま若き 能村登四郎
花馬酔木ひねもすこぼれ彌山口 古舘曹人 砂の音
花馬酔木供へ隠るる行者像 右城暮石 句集外 昭和四十五年
花馬酔木大佛殿見ゆ白毫寺 森澄雄
花馬酔木軒にとどけるやどりかな 山口青邨
花馬酔木雨はうつぼ柱に鳴れる 山口誓子
花馬酔木魁けなれど春遅々と 清崎敏郎
草庵の塵掃き落す馬酔木かな 山口青邨
野鳥の嘴に馬酔木花房妻籠めに 金子兜太
関守に託す句碑なり花馬酔木 角川源義
雌鹿の瞳 もとより潤む 馬酔木咲く 伊丹三樹彦
雨降りて雨のごとしや花馬酔木 山口青邨
雨雫あしび花房長うせり 山口青邨
雪の歩廊が夢につづけり馬酔木花期 金子兜太
風吹て馬酔木花散る門も哉 政岡子規 馬酔木
馥郁と房垂れ馬酔木咲かむとす 林翔
馬酔木あり鹿の背摺りに鈴さわぐ 阿波野青畝
馬酔木咲き歳月戻す雨の中 古舘曹人 能登の蛙
馬酔木咲き金魚売り発つ風の村 金子兜太
馬酔木咲き黒人Kのさらなる嘆き 金子兜太
馬酔木咲く向うで欠伸夢の僧 金子兜太
馬酔木咲く夜明けの門にある喪章 有馬朗人 母国
馬酔木咲く奥より奈良の清掃車 右城暮石 句集外 昭和三十三年
馬酔木咲く村の祭にまぎれけり 岡井省二 鹿野
馬酔木咲く林道ふかし醫療地区 及川貞 夕焼
馬酔木咲く見れば遠きへ来つるごと 右城暮石 句集外 昭和十八年
馬酔木純林臭し静脈蒼きこと 渡邊水巴 富士
馬酔木野に人らよろこぶ声すなり 岡井省二 有時
馬酔木野の斑雪いくさを想はざる 石橋秀野
馬酔木野やかしこ法相ここ華厳 阿波野青畝
鹿寄せの少年馬酔木咲くなべに 伊丹三樹彦



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