野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

葛の花 踏みしだかれて 色あたらし(釈迢空)

2019年10月06日 08時25分49秒 | 

生い茂って、ときには樹木の姿を隠してしまうほどに成長力の強いクズ。嫌われ者で刈られてしまうが、花はとても美しい。大きな葉に隠れていることが多いが、もっと注目されてもいい。「隠るるごと葉裏葛咲き奥石見 能村登四郎」。俳句の世界ではとても好まれている季題だ。「捨て猫の舌の紅さよ葛の花 石田波郷」も鮮烈だ。「葛の花くらく死にたく死にがたく 渡邊白泉」も強烈。それでも忘れられないのは、釈迢空の歌「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」だ。葛の花をみるたびに、この歌が脳裏に浮かんで離れない。民俗学の泰斗だった折口信夫は調査のために人里離れた村をめぐりつつ、葛の花に目を慰めたに違いない。「あたらし」は「鮮らし」だろう。

(2019-09 川崎市 道端) 

クズ(葛、学名: Pueraria montana var. lobata)は、マメ科クズ属のつる性の多年草である。日本では、根を用いて食材の葛粉や漢方薬が作られ、万葉の昔から秋の七草の一つに数えられている。

和名は、かつて大和国(現:奈良県)吉野川(紀の川)上流の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。漢字は葛を当てる(「葛」で表記する場合もある)。

形態
地面を這うつるは、他のものに巻きついて10メートル以上に伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている。

根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、長さは1.5メートル、径は20センチに達する。

葉は三出複葉、小葉は草質で幅広く大きい。葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びている。

花は8-9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせる。花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、淡桃色のものをトキイロクズと呼ぶ。

花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ。

葛の花 の例句

あちら向く袖や有礒の葛の花 露川
いちりんの花葛影を見失ふ 三橋鷹女
いづかたも脚下なりけり葛の花 永田耕衣
おそろしき谷を隠すか葛の花 桃隣
こぼれつぐ葛の花屑雨の淵 高浜年尾
そこらをば藪になしてや葛の花 沙明
その昔 武装解除の 葛の花 伊丹三樹彦
とり沙汰も無事で暮けり葛の花 凡兆
どちらかと言へば好きなり葛の花 清崎敏郎
なまなまと簗の匂へる葛の花 石田勝彦 雙杵
わが行けば露とびかかる葛の花 橋本多佳子
一山の鬼と遊ばん 葛の花 伊丹三樹彦
丁子葛咲きぬ妻はもこやりし日 臼田亜郎 定本亜浪句集
三尊の 一尊笑う 葛の花 伊丹三樹彦
亡き母は 筆をくわえて 葛の花 伊丹三樹彦
人の身にかつと日当る葛の花 飯島晴子
人形のかほにたもとや葛の花 支考
仰ぎ見てまぶた明らむ葛の花 飯田龍太
僧兵駆け下るまぼろし葛の花 廣瀬直人 帰路
兎跳ね犬をどり入る葛の花 水原秋櫻子 古鏡
別るるは一語で足りし葛の花 中村苑子
千仭の谿より風や葛の花 石塚友二 磊[カイ]集
啄木鳥が穿てる洞や葛の花 石塚友二 玉縄抄
嘆きつつ葛の花踏み越えんとす 林翔 和紙
四五人の無用の客や葛の花 高野素十
坂うねり坂またうねり葛の花 林翔
坊毎に懸けし高樋よ葛の花 杉田久女
堰堤に匍ひもとほれる葛の花 富安風生
夕日には夕日の勢ひ葛の花 岡本眸
夢にのみひと隠れくる葛の花 野澤節子 花季
大学の中に弥生ケ丘葛咲いて 山口青邨
奥浄瑠璃てふ昔あり葛の花 能村登四郎
女人講いつもの西に葛咲けり 飯島晴子
威し銃とは間抜けもの 葛の花  伊丹三樹彦
実をつけて風船葛咲きのぼる 飴山實 句集外
山ふかみちるか凋むか葛の花 加舎白雄
山墓はみな修験者や葛の花 能村登四郎
山川や流れそめたる葛の花 高野素十
山桑をきりきり纒きて葛咲けり 富安風生
山葛にわりなき花の高さかな 正岡子規 葛の花
山道も吾妻郡葛の花 清崎敏郎
山雨来て葛の花打ちはじめたり(丹波黒谷二句) 細見綾子
島裏に廻る路なる葛の花 能村登四郎
川波を見る眼つむる眼葛の花 飯田龍太
廃堰堤ふかき亀裂に葛咲けり 能村登四郎
引き目鉤鼻に近くて葛の花 佐藤鬼房
御祓川丈けなす草に葛の花 右城暮石 句集外 大正十五年
愛染の匂ひの葛の花の山 岡井省二 五劫集
抱一の観たるがごとく葛の花 富安風生
捨て姨の血のにじみ出て葛の花 鷹羽狩行
捨て猫の舌の紅さよ葛の花 石田波郷
斧もたぬ身にも山気の 葛の花 伊丹三樹彦
斧負ひて善丁はやさし葛の花 能村登四郎
日に透ける葛の葉花を暗くしぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
有耶無耶といふ関葛の花襖 阿波野青畝
朝の雨まだ乾かずに葛の花(黒部峡二句) 細見綾子
朝霧浄土夕霧浄土葛咲ける 水原秋櫻子 晩華
木曽馬も花葛も見ず馬籠去る 高野素十
松風の秋ひきたつる葛の花 斎藤玄 雁道
桟(かけはし)も今は安けし葛の花 松本たかし
極小の 蝶も出尽くし 葛の花 伊丹三樹彦
死は一つながら哀れや葛の花 石塚友二 磊[カイ]集
母を夢みて七日通へば葛の花 中村苑子
水の面に落つばらばらと葛の花 石田勝彦 秋興
水迅く流るる葛の花流れ(富山県、八尾風の盆) 細見綾子
流れ継ぐ花葛の色まぎれなし 高浜年尾
流水を潜らせる音 葛の花 伊丹三樹彦
渋の湯の裏ざまかくす葛の花 水原秋櫻子 玄魚
滝の名の白糸村の子に葛咲く 大野林火 雪華 昭和三十六年
瀧音のまつしぐらなる葛の花 石田勝彦 秋興以後
瀬の魚の生簀小さし葛の花 水原秋櫻子 磐梯
無人バス来て引き返す 葛の花 伊丹三樹彦
独りでも踊ろうよ葛の花がくれ 橋閒石 虚 『和栲』以後(I)
玉葛の花とも云はず刈り乾しぬ 内藤鳴雪
珍客に早煮えの飯 葛の花 伊丹三樹彦
男老いて男を愛す葛の花 永田耕衣
白昼の闇したがへて葛咲けり 松村蒼石 雪
白足袋の 小町で老いて 葛の花 伊丹三樹彦
白露にないがしろなり葛の花 阿波野青畝
百日の夏の 余りの 葛の花 伊丹三樹彦
目のとどく限りの葛の花ざかり 飯田龍太
秋のうら秋のおもてや葛尾花 正岡子規 葛
筆休花葛を見て足らひけり 石川桂郎 高蘆
筑波路をつかれて下る葛の花 村山故郷
細道は鬼より伝受葛の花 平畑静塔
維盛の酢桶になふ葛の花 水原秋櫻子 蓬壺
翁道羽後に一歩や葛の花 松崎鉄之介
翡翠の巣かけしあとや葛の花 水原秋櫻子 重陽
老いゆくもたのし葛咲き楮さらす(京都府黒谷) 細見綾子
耳鳴りを騙す瀬鳴りの 葛の花 伊丹三樹彦
背のびして 骨のよろこぶ 葛の花 伊丹三樹彦
腰曲ってても出歩く 葛の花 伊丹三樹彦
花ながら葛ぞ引かるゝ水車 正岡子規 葛の花
花葛に突刺さりつつ山雨の箭 石塚友二 磊[カイ]集
花葛のあかるむ後山驟雨すぐ 飯田蛇笏 椿花集
花葛の戸に山賎の門火かな 阿波野青畝
花葛の果ての果てまで昼の海 飯田龍太
花葛の淡き模様の秋袷 三橋鷹女
花葛の濃きむらさきも簾をへだつ 橋本多佳子
花葛の粛とこたへし発破かな 阿波野青畝
花葛の谿より走る筧かな 杉田久女
花葛や崩れてけふの崖新た 上田五千石『森林』補遺
花葛や松ふきたふす田成畑 史邦
花葛山守る神は髪豊か 松本たかし
菩薩の数ほどな白雲 葛の花 伊丹三樹彦
葉には其うらみもあらむ葛の花 松岡青蘿
葛の花 あれは石仏刻む音 伊丹三樹彦
葛の花 仏を隠れ顔にして 伊丹三樹彦
葛の花 句友偲べば すぐ涙 伊丹三樹彦
葛の花 次のの まだ見えず 伊丹三樹彦
葛の花くらく死にたく死にがたく 渡邊白泉
葛の花こぼれその奥人住まず 大野林火  月魄集 昭和五十六年
葛の花こぼれて石にとゞまれり 山口青邨
葛の花こぼれやすくて親匿され 飯島晴子
葛の花と聞きしが淋し下山道 川端茅舎
葛の花のにほひの風を過ぎて知る 篠原梵 年々去来の花 雨
葛の花ひとりの湯浴みあけはなつ 水原秋櫻子 新樹
葛の花まだゆきてみぬ崖の道 平井照敏 天上大風
葛の花むかしの恋は山河越え 鷹羽狩行
葛の花トンネル口は風に満ち 鷹羽狩行
葛の花上へ上へと咲き競ひ 上村占魚 球磨
葛の花丹後へ汽車の下りそむ 松崎鉄之介
葛の花久女の墓は山の中 燕雀 星野麥丘人
葛の花冥途の飛脚通りけん 橋閒石 微光
葛の花匂ひ天草日の中ぞ 岡井省二 前後
葛の花天の限りを雨音す 大野林火 雪華 昭和三十五年
葛の花帰り来しもの未だ無し 橋閒石 卯
葛の花常なる息のややあやし 岸田稚魚 紅葉山
葛の花平家隠れし谷深き 鷹羽狩行
葛の花廃船の釘縦横に 能村登四郎
葛の花摘む七草をくちずさみ 大野林火 月魄集 昭和五十五年
葛の花来るなと言つたではないか 飯島晴子
葛の花松にのぼりて咲くもあり(黒部峡二句) 細見綾子
葛の花母見ぬ幾年また幾年 石田波郷
葛の花流人時忠ただ哀れ 山口誓子
葛の花渓へ傾く巫女 福田蓼汀 秋風挽歌
葛の花瀬つきの鮎に近寄れず 石川桂郎 高蘆
葛の花老いさらばふもそれなりに 飯島晴子
葛の花葉裏より穂をもたげたる 能村登四郎
葛の花葬られしごと峡に臥す 角川源義
葛の花裾に手を入れ道祖神 松崎鉄之介
葛の花豆腐桶まで這ひ上る 細見綾子
葛の花遠つ江へ怨み文 能村登四郎
葛の花都電本郷の坂上る 松崎鉄之介
葛の花雨に少女の喉甘ゆ 岸田稚魚 筍流し
葛の葉の吹きしづまりて葛の花 正岡子規 葛の花
葛の葉の花に成たる憎さかな 正岡子規 葛の花
葛の葉や吹き靜まりて葛の花 正岡子規 葛の花
葛咲いて紙漉谷をおほふかな 細見綾子
葛咲くやいたるところに切通 下村槐太 天涯
葛咲くや妻子に遠き膝頭 原裕 葦牙
葛咲くや嬬恋村の字いくつ 石田波郷
葛咲くや日々くもりこの日なほ曇る 能村登四郎
葛咲くや水が水追ふ檜枝岐 上田五千石『琥珀』補遺
葛咲くや濁流わたる熊野犬 水原秋櫻子 旅愁
葛咲くや父母は見ずて征果てむ 石田波郷
葛咲けり毛虫地に置く糞ゆたか 飯田龍太
葛咲けり沼の脇腹ひがしかた 佐藤鬼房
葛咲けり紙漉川をのぼり来て(丹波黒谷二句) 細見綾子
葛咲ける子不知に来て子を恋ふも 能村登四郎
葛咲ける崖の上茂吉記念館 松村蒼石 雁
葛散つて浴後のごとき夕べかな 岡本眸
葛散るや天の渚のくづれつつ 斎藤玄 狩眼
葛花や何を尋ねてはひまわる 正岡子規 葛の花
葛花や秋を尋ねてはひまはる 正岡子規 葛の花
蝋涙の煮立ちてゐたる葛の花 佐藤鬼房
蟻どもの 風吹かれの足 葛の花 伊丹三樹彦
谷の葛咲くと告げたる鵜匠かな 水原秋櫻子 葛飾
身ひとつを旅荷とおもふ葛の花 上田五千石 琥珀
車窓ふと暗きは葛の花垂るる 富安風生
迷えるを 後戻りさせ 葛の花 伊丹三樹彦
退屈な仏ばかりぞ葛の花 飯田龍太
送行の葛の花ふむ草鞋かな 飯田蛇笏 霊芝
這ひかゝる温泉けむり濃さや葛の花 杉田久女
道聞くがよいと一姥 葛の花 伊丹三樹彦
遠近に 雷神さわぐ 葛の花 伊丹三樹彦
遠野路のこんせい様に葛の花 松崎鉄之介
都辺に葛咲き折口先生忌 能村登四郎
野明りや跼むにやすき葛の花 斎藤玄 狩眼
野遊びに 発条(バネ)のはたらく 葛の花 伊丹三樹彦
金剛吉野かけて雨降る葛の花 松崎鉄之介
阿夫利嶺の雨つのらしむ葛の花 細見綾子
隠るるごと葉裏葛咲き奥石見 能村登四郎
隼の瀬音浴びをり葛の花 野澤節子 八朶集以後
雨ふれば雨に葛咲く山泉 飯田蛇笏 椿花集
雨風の阿賀が矢走る葛の花 小林康治 玄霜
風ののち匂ひ立ちたる葛の花 森澄雄
風音に如くはなかりき葛の花 斎藤玄 雁道
馬柵による波かぎりなし葛の花 水原秋櫻子 古鏡
馬柵直に嶺よりくだる葛の花 水原秋櫻子 古鏡
魚籠の鱒みな身は厚し葛の花 能村登四郎
鱒池に葛散る音の無きところ 細見綾子
鹿野焼や手のうらかえす葛の花 馬場存義



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