オシロイバナはすっかり生活に溶け込んで、俳句でも歌われているほどだ。白い花はおしろいを思わせるがふつうは赤などが多い。「種子には粉状の胚乳があり、これからオシロイバナの名がついた」というが、俳句で使いたくなるような名前だ。「おしろいの花や男の碌でなし 雨滴集 星野麥丘人」
(2019-08 川崎市 道端)
オシロイバナ(白粉花、白粧花、学名:Mirabilis jalapa)とはオシロイバナ科の多年草または一年草である。南アメリカ原産で江戸時代始めごろに渡来。花が美しいため観賞用に栽培されるが、広く野生化もしている。
茎はよく枝分かれして灌木状となるが節がはっきりしていて、木質化はしない。全体にみずみずしい緑。花は赤、黄色、白や絞り模様(同じ株で複数の色のものもある)などで、内、白と黄の絞りは少ない。花は夕方開き、芳香がある。このため和名としてはユウゲショウ(夕化粧)とも呼ばれるが、この名はアカバナ科のものにも使われているので注意を要する。英語ではFour o'clock、中国語では洗澡花(風呂に入る時間から)、煮飯花(夕飯の時間から)などと呼ばれる。夜間に開き花筒が長いので口吻の長い大型の夜行性鱗翅目でなければ吸蜜は困難である。日本のオシロイバナでは主にスズメガが吸蜜し、送粉に関わっている。オシロイバナは網状脈である。
花弁はなく、花弁に見えるのはがくで基部は緑色でふくらんでいる。また花の根元にある緑色のがくのようなものは総苞である。花が咲き終わった後、がくは基部を残して脱落し果実(種子を1つ含む)ががくの基部に包まれたまま熟して全体が黒い種子のようになる。種子には粉状の胚乳があり、これからオシロイバナの名がついた。根はいも状になり、暖地では冬に地上部が枯れてもこの地下部が生き残り次の年に根から芽を出す。
根や種子に窒素化合物のトリゴネリンを含み、誤食すると嘔吐、腹痛、激しい下痢を起こす。
利用
オシロイバナ属には観賞用に栽培されるもののほか、アンデス山脈周辺でいもを食用にするもの(maukaまたはchago、M. extensa)もある。
根を利尿、関節炎の生薬として処方される。また、葉は切り傷、たむしの治療に用いられる。
白粉の花 の例句(←ここをクリック)
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白粉の花 補遺
いつも誰もゐない椅子おしろいばなが散る 橋閒石 雪
いとゞよく出づるおしろい花のそば 細見綾子
おしろいのまづしきまでにおびただし 古舘曹人 砂の音
おしろいの匂へば匂ふ花を好く 篠原梵 年々去来の花 中空
おしろいの咲き出してもう少女ゐず 平井照敏
おしろいの咲くあたり遠昔かな 平井照敏
おしろいの濃花種花青楼趾 能村登四郎
おしろいの花にや触るゝ袖の丈 石塚友二 光塵
おしろいの花の夕ベの船魂社 星野麥丘人
おしろいの花の溺るる露葎 山口青邨
おしろいの花の紅白はねちがひ 富安風生
おしろいの花や島原子守唄 星野麥丘人 2003年
おしろいの花や男の碌でなし 雨滴集 星野麥丘人
おしろいの花白く子をたのみそめつ 大野林火 青水輪 昭和二十五年
おしろいは妹のものよ俗な花 正岡子規 白粉花
おしろいや こよい音なき稲光り 富澤赤黄男
おしろいを咲かせおびただしき露を 山口青邨
一つ木におしろいの花の黄と赤と 正岡子規 白粉花
一嵐おしろいの花倒れけり 正岡子規 白粉花
妹が庭や秋海棠とおしろいと 正岡子規 秋海棠
抜毛吹かれおしろい花の土は乾き 橋閒石 荒栲
染め汁の虎色の川よおしろい花(泉大津市に鈴木六林男氏を訪ふ) 細見綾子
白秋忌おしろいの花まだ咲いて 安住敦
白粉の花にホースの水流れ 星野立子
白粉花の闇の匂ひのたちこめし 深見けん二
花ならば爪くれなゐやおしろいや 正岡子規 白粉花
花火屑おしろい花に掃き寄せて 細見綾子
花白粉農の常口ひろやかに 石川桂郎 高蘆
賤が家に花白粉の赤かりき 正岡子規 白粉花
道端に白粉花咲ぬ須磨の里 正岡子規 白粉花
雨の降るおしろい花や時化んとす 阿波野青畝
露のおしろい跨がんとしてくつがへす 山口青邨