散歩路地《サンポロジー》      毎日が発見! 身近な自然が見えてくる!


 ☆ 多摩丘陵

 ☆ 世田谷の散歩道

 ☆ ネイチャークラフト

 ☆ 環境学習ゲーム

洋食?が好きなアゲハチョウ  

2013-10-04 | その他探訪記
昨日(10月3日)は、学生と共に、西葛西の緑道を歩いた。
テーマは秋の木の実。ドングリはもちろん、サンゴジュ、モッコク、ヒメリンゴ、ボケ、アカシデ、ユズリハなど、約20種ほどの木の実を採集した。あとで種子サンプルを作る予定だ。


モッコクの実 2013-10-03 西葛西

この途中で、ちょっとおもしろいものを発見。それは、花壇の一角に、ガーデンルーと言うハーブが植えられていた場所でのことだ。


ガーデンルーが植えられた花壇 2013-09-03 西葛西

ほんの1m四方程度のガーデンルーの植え込みに、アゲハチョウの幼虫がビッシリ。ちょっと見ただけでも、20頭程が数えられる。おそらく30頭以上はいるだろう。
ほんの数m先には、立派な夏ミカン(写真の区中央)があり、そちらを探してみると、ほとんどいない。さんざん探した末、やっと1頭見つけることができた。
チョウにあまり詳しくない人でも、アゲハチョウが、ミカンやサンショウなど、いわゆる柑橘系の葉を食草にしていることを聞いたことがあるのではないだろうか。アゲハチョウは、かなり都市化が進んだ場所でも見られ、小さな公園や、庭の片隅に生える、ミカンやサンショウなどで繁殖する、なじみの深いチョウだと思う。
それが、なんでハーブに…。


ハーブ(ガーデンルー)を食べるアゲハチョウの幼虫 2013-10-03 西葛西

「実は、僕もこの事実を、10年ほど前に初めて知った」僕は、学生に話し始めた。
たまたま実家のそばにある公園で、ハーブ類の植え付けをしたらしく、残った株を《ご自由にお持ちください》と書いた札と一緒に置かれていたのだ。ハーブなど育てたことはないのだが、軽い気持ちで、そこにあった3種類の株をもらって帰った。
早速リビングのすぐ外に植えたのだが…。その後すぐに異変が起こった。
例年だと、庭の奥のフェンス近くをよく通過するアゲハチョウが、リビングのすぐ前にやってくるのだ。不思議に思い覗き込むと、ハーブにとまったアゲハチョウが、産卵しているようなのだ。外へ出てみると、いくつもの卵が見つかった、さらに小さな幼虫も。大変なことが起こったと思った。
しかし、調べてみると…。
なるほど、ガーデンルーがミカン科の植物であることが分かったのだ。

 
ガーデンル 2013-10-03 西葛西            近くにあったナツミカン 2013-10-03 西葛西

柑橘系と言えば、丸っこい葉っぱの樹をイメージするが、こんなヒダヒダ、ヘラヘラの草のような植物(実は低木)ががミカン科とは。しかも、日本を代表する蝶の一種であるアゲハチョウがたべるとは。

学生と共に、幼虫を観察を始める。
次々と見つかる。そして蛹も。しかし、蛹は寄生蜂にやられ穴が開いていた。

いくつかの疑問が浮かんだ。

① 幼虫のサイズが小さい。
アゲハチョウの幼虫は、小さいうちは、黒っぽく、鳥の糞のような模様をしている、4回脱皮をしをした後に、緑色の幼虫の姿に変わる。昆虫の幼虫は、脱皮をするごとに令を重ね、最初が1令幼虫、次が2令と進み、アゲハチョウの場合、最後の脱皮で緑色の5令幼虫のなる。通常は、5令幼虫で50mmくらいになるが、ここに居るのは、どれも40㎜に満たない。それどころか30㎜にも満たない小さなものまでいる。

② アゲハチョウ(ナミアゲハ)とは異なる模様の幼虫が居る
後で調べた結果、模様、艶、臭角の色などから、ナガサキアゲハが混じっていると判断された。しかし、そのどちらとも異なる個体もいた。色彩は、オナガアゲハに似るが、決め手に欠ける。いまだに謎。

 
ナガサキアゲハの幼虫(3令ないし4例と思われる) 2013-10-03 西葛西

 
謎のアゲハ類幼虫(左)と、臭角を出したナガサキアゲハ幼虫 2013-10-03 西葛西

③ 寄生されている個体が多い。
蛹は寄生蜂が抜けた後のものだったが、幼中にも、明らかに寄生されたと思われるものが、多く見られた。今まさに、寄生蜂が産卵している最中という物も見られた。


寄生蜂に寄生(中央の黒い染み)されたナミアゲハ幼虫 2013-10-03 西葛西

 
寄生蜂(幼中の右) 2013-10-03 西葛西      寄生蜂の抜けた蛹 2013-10-03 西葛西 

①の大きさに関しては、
○在来のミカン類と比べ、ガーデンルーだと、植物の成分などで、やや小型化する。
○寄生率が高く、ほとんどの個体が寄生されており、その影響で大きくなれない。
○今年最後の発生で、気温が下降し始め成長が悪い。
などが考えられる。
よく考えると、今成長している幼虫は、蛹になり、そのまま冬を越し、来年春に発生することになる。1年に数回発生するタイプのチョウは、春に発生する春型と、夏型では、色彩や大きさにかなりの差がある。アゲハチョウの春型は、明るい色で、サイズは二回りほど小さい。
ということは、僕が知らなかっただけで、秋の幼虫は小型なのかもしれない。これについては、後で調べてみよう。

アゲハチョウという、日本在来のチョウが、突如入ってきた、ガーデンルーという洋物に強く惹かれている。このままでは、都会生活のアゲハチョウは次第に洋風化してしまうのだろうか。コメの消費が落ち、洋食化する日本人と同じではないか。
最近あまりコメを食べていない僕自身に対し、自戒の念を込めて、「在来種」を見なおさなければ…。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿