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未来の読書ノート

読んだ本のメモ。あくまでもメモでその本を肯定したとは限らない。そんなノート。

小川明編著『派遣村、その後』

2009-08-15 | 労働
 「これまで群馬では、生活保護申請は、住所が定まっていないと受け付けてもらえなかった。この間、国会でもこうしたことが問題になって、厚生労働大臣が世論に押され、『住所がなくても受け付ける』と答弁しています。運動が行政を動かし、行政も真剣に考えてくれている。そのホームレスの方は、私たちのチラシを『命のビラだった』と言いました。自信を持って進みましょう」。 ㌻9

 未来記=「年越し派遣村」のその後について、断片的に書かれたものはあるが、一冊の本として出版された意義は大きい。「命のビラ」という感慨をもった人がその後ボランティアとして協力している具体例などを多くの人に知ってもらいたい。
 私たちが力を合わせれば政治を動かし、社会を動かす力を持っていることに、「年越し派遣村」の体験などからつかみ、引き続き運動を強化していくことが求められている。

『季論21』第5号 森岡孝二「『資本論』とディーセントワーク」

2009-08-09 | 労働
 「労働日(一日の労働時間)の制限は、それなしには、いっそうすすんだ改善や解放の試みがすべて失敗に終わらざるをえない先決条件である。それは、労働者階級、すなわち各国民中の多数者の健康と体力を回復するためにも、またこの労働者階級に、知的発達をとげ、社交や社会的・政治的活動にたずさわる可能性を保証するためにも、ぜひとも必要である。」 ㌻63

 未来記=マルクス、ジュネーブ・国際労働者協会第1回大会「指針」の労働時間テーゼ。

『季論21』第5号 森岡孝二「『資本論』とディーセントワーク」

2009-08-09 | 労働
 「無料お試しキャンペーン実施中!一週間無料、一ケ月三五%オフ、三ケ月一三%オフ」。これは『労働ダンピング』で例示されている派遣の売り込みコピーである。派遣元と派遣先のあいだで、投売りされ、買い叩かれて、物同然に取引されている派遣労働者に、どれほどの労働者としての権利が保証されているというのだろう。 ㌻59

 未来記=中野麻美『労働ダンピング』を読んで、このコピーを知ったとき、本当に驚いた。派遣労働者がまったく人間として扱われていない実態をこれほど如実に現したものはない。労賃がいかにしてダンピングされ続けているか、『労働ダンピング』も一読の価値あり。

『季論21』第5号 浜林正夫「いま、なぜ、マルクスなのか」

2009-08-09 | 労働
 同一労働同一賃金の原則ももちろんだが、日本では法律で定めても企業がこれを守らず、行政も黙認しているケースがあまりにも多すぎる。最近どこかで労働局が違法摘発に乗り出したようだが、世論が高まれば労働行政も動かざるを得ない。世論の高まりがまだ不十分なのは私たちの責任である。 ㌻51

 未来記=企業、政府、行政の責任追求も大事だが、「私たちの責任」を問うことも重要だ。「年越し派遣村」であれほど世論が高まったのに抜本的解決には至っていない。私たちはこのことに真剣に取り組まなくてはならない。

山田敬男著 『新版 戦後日本史』

2009-08-04 | 労働
 「ゼネスト」が中止されたにもかかわらず、共闘の求めていた経済的要求はほとんど実現し、給与水準は二倍になり、各組合は労働協約を獲得しました。労働組合の幅広い共闘を実現し、経済闘争と政治闘争の結合する壮大な運動に発展することによって、経済要求の実現に成功したのです。 ㌻69

 労働戦線統一の条件を拡大したことにあります。ゼネストの中止によって、共闘、全闘は解体されますが、この共同行動の流れが全国労働組合連絡協議会(全労連)を発足させました(四七年三月)。組織労働者の八四%、四四六万人を結集しました。 ㌻69

 全労連結成によって、日本労働組合運動史上、初めて立場の違いを超えて全国組織統一が実現したのです。これは真の組織的統一の橋頭堡だったと言えます。 ㌻70

 未来記=「二・一ゼネスト」については、その中止、その是非をめぐる論議が重視されているが、ここに示された「二・一ゼネスト」運動の意味を考えることは重要だ。

山田敬男著 『新版 戦後日本史』

2009-08-03 | 労働
 歴史を支えているのは働く民衆であり、とりわけ歴史の転換期には、民衆の動向が歴史を動かす推進力の役割を果たします。一人一人の「力」は弱くても、それが連帯し、組織的に結集して運動化されれば、民衆の運動=社会運動が歴史を切り開くことになります。現代史、戦後史では、民衆の社会運動を抜きに歴史を語ることは不可能です。 ㌻2

 未来=著者は、この文のあとに「この間の社会運動の停滞から歴史における社会運動の役割を軽視する傾向があるように思えます」と、社会運動の軽視に警笛を鳴らし、同時に「社会運動の役割にこだわっていきたい」と述べている。
 この視点はすごく重要だ。社会運動が停滞しているように見えるが、公害訴訟や薬害HIV訴訟、薬害肝炎訴訟、原爆症訴訟などなど、多くの場面での社会運動が成果をあげている。「年越し派遣村」が政府を動かし、いまも大きな動きを続けている。これらの闘いの積み重ねが、政治を変えようという大きなうねりになっている。この転換をどのような方向に拓いていくのかは、まさに民衆の運動にかかっているだろう。

貧困研究会編 『貧困研究』 vol.2

2009-07-31 | 労働
 女性パート、派遣・請負労働者、外国人労働者など多様な属性、雇用形態の労働者が正社員と共に働く労働の現場で、それぞれの労働者はどのような意識を抱き、行動し、関係を結んでいるのだろうか。それを明らかにすることは、連帯の困難さと意識変革の可能性を探る作業となるだろう。 ㌻78

 未来記=「連帯」をどう切り開いていくのか、いまそのことが大きく問われている。希薄な関係しか結ばれていない現状もあるが、そうしたもとで、いかにして労働者全体の意識を変えていくのか。これまでの思考の枠を突破することが必要。

貧困研究会編 『貧困研究』 vol.2

2009-07-30 | 労働
 河添誠(首都圏青年ユニオン)
 低賃金で劣悪な労働条件の労働現場に労働者を集めるための、もっとも効率のよい方法として、派遣会社は「寮」をもつわけである。手持ちの金がなくなって貧困になると、このように仕事を選ぶ幅が狭くなってくるわけだから、非常に固定性が高まる。そこから脱出するということが難しくなる。 ㌻35

 未来記=派遣切りにあった人が、仕事と住まいを同時に失い、命からがら「年越し派遣村」にたどり着いた。そんな人が「もう寮付きの仕事はこりごり」と寮つき就業斡旋を選ばなかったと聞く。これは極端な例ではない。だからこそ「年越し派遣村」を頼ってきた人が大勢いたことを忘れてはならない。

貧困研究会編 『貧困研究』 vol.2

2009-07-28 | 労働
 「若年ホームレス生活者への支援の模索」沖野充彦執筆
 そして、わずか1年もたたないうちに、「派遣切り」とそれに伴う「屋根と仕事の同時喪失」の形で、危惧は現実のものになってしまった。労働組合が中心になった日比谷公園での「年越し派遣村」を見るとき、それはかつて35年前に釜が崎や山谷の日雇い労働者が、公園でテントを張り、炊き出しを行って、めしと寝床を確保して行政要求をせざるをえなかった姿そのものである。派遣や非正規の労働者を支援するには、「屋根とめし、そして仕事を」という、寄せ場の日雇労働者運動や野宿者支援運動が長らく行ってきたスタイルで、労働組合自身が取り組まなければならなくなったことに、事態の深刻さが見てとれる。 ㌻12

 未来記=「年越し派遣村」は、「課題」と「連帯の希望」を同時に示した。しかし、その解決には至っていない。ここをどう広げていくか、一人ひとりに問われている。そして、労働組合、政党などの今後の姿勢も問われている。

柴田徳太郎著『資本主義の暴走をいかに抑えるか』

2009-07-26 | 労働
 そもそも、株式会社は「株主のためのもの」であるのだろうか。ここから疑ってみる必要がある。 ㌻257

 自由放任主義の克服 第五に、「市場に任せることが望ましい」、「自己利益を追求していれば世の中はうまくいく」という考え方を改める必要がある。 ㌻262

 未来記=基本的な著者の「経済学」論には同意できないことが多い。付加価値という概念を使い、「労働分配率」の問題意識にとどまっている。剰余価値がどこから生まれ、労働者がいかに搾取されているかという論議はない。
 しかしながら、こうしたタイトルの本が書かれるのは、現在の新自由主義の問題を考える経済学者が増えてきていることの現われでもあろう。中谷巌氏が『資本主義はなぜ自壊したのか』で、「構造改革」を懺悔したこととも機をいつにするのか。『資本主義はなぜ自壊したのか』は、市場原理主義からの「転向」の趣旨は読めたが、歴史認識などについては読めたシロモノではなかったが。

労働者教育協会 『学習の友』2009年別冊

2009-07-26 | 労働
 深刻な雇用不安のなかで、青年たちの自衛隊入隊が増えているのです。この春高校を卒業した十八歳の女性が入隊の動機をこう語っています。
 「今の時代、大学に行っても安定した職に就けるとは限らないし、母子家庭なら給料をもらえて、寮生活で食事も出るからお金がかからないし、タダで資格も取得できてかなり親孝行だと思ったから」 ㌻25

 この「貧困」「憲法」「安保」をバラバラにとらえるのではなく、「日米同盟」=日米安保体制を機軸にして総合的に情勢をとらえ、運動の発展に寄与するために、労働者教育協会は、二〇一〇年に向けて「なくそう貧困、守ろう憲法、やめよ安保」の総学習運動をよびかけます。 ㌻107

 未来記=『学習の友』別冊は、「なくそう貧困、まもろう憲法、やめよう安保」特集号で、それぞれが密接に関連していることを裏付けている。
 生活のために軍隊に入隊せざるを得ないことがアメリカではごく普通になっている。貧困と軍隊、戦争がいかに結びついているかは、堤未果著『ルポ貧困大国アメリカ』が詳しい。

労働者教育協会『学習の友』2009年8月号

2009-07-25 | 労働
 政府による労働法制の改悪
 第二に、この経営戦略のために、労働者を保護する労働法制の改悪が大規模に行われました。自公政権による「構造改革」路線のもとで、民主党も一緒になってすすめた「労働分野の規制緩和」です。その一つが、低賃金で不安定な働き方=非正規雇用を新たな装いで広げる派遣労働です。八五年に労働者派遣法が制定され、九九年対象業務が原則自由化、〇三年製造業への派遣が解禁。八五年から〇七年にかけて非正規雇用は六五〇万人から一七〇〇万人へ二・六倍に増え、三人に一人が非正規となりました。 ㌻75

 未来記=同号には、SABU監督の映画「蟹工船」の紹介がされている。「蟹工船」化された職場を現代に復活させた政治の罪は重い。自公政権だけでなく、民主もそれに手を貸したことを我々は忘れてはならない。総選挙で審判をくだそう。

益川敏英著『科学にときめく』

2009-07-18 | 労働
 この時期、私は労働組合の書記長をしていた。我々の理学部で、秘書さんの解雇問題が生じていた。我々若い研究者の補助までしてくれている彼女等の解雇を見て見ぬふりをして、私は研究にのめりこむ事は出来なかった。 ㌻24

芹沢一也・荻上チキ編『経済成長って何で必要なんだろう?』

2009-07-15 | 労働
 湯浅誠 貧困ビジネスと一口でいってもいろいろなものがありますからね。多くの場合は、違法なところが何かしらありますから、そこは規制しないといけない。 ㌻165

 湯浅 もちろん私も、累進課税強化がいいと思います。だけど、いまその話をすると、「お前は共産党か」とレッテルを貼られる。そこには国会の勢力図だけじゃなくて、それを支持する中間層の動きがある。だから、私がいの一番に累進強化をいえないのは、戦略的な問題です。 ㌻192

 未来記=正しいと思っていることを、「お前は共産党か」と言われるから戦略って? どうなの?これでは、正しいと思うことをいえない雰囲気を自らのんでしまうことになるし、限界を自ら設けることになるのではなかろうか。