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未来の読書ノート

読んだ本のメモ。あくまでもメモでその本を肯定したとは限らない。そんなノート。

宇都宮健児×湯浅誠編 『反貧困の学校 2』

2009-09-02 | 労働
 みんな、しゃべりたい、訴えたいことがたくさんあるんです。それを受け止めてくれないのが労働組合です。みんな、労働組合では偉い人に任せておけばいいと思っちゃう。いくら言っても、私は名もないパートだから、とかね。今日は時間がないですが、今度、ここに車座になって、現場の話をとことん聞く会を、3つのナショナルセンターの人たちに持ってもらいたい。主役が逆転―働いている人たちがとことんしゃべって、これでもかと話を一方的にする。ナショナルセンターの人たちは聞くだけ。そういうのを一度やらないと。自分が役に立つ組織なら、進んでどんどん入っていくと思います。 ㌻64

 未来記=聞く力が試されている。

宇都宮健児×湯浅誠編 『反貧困の学校 2』

2009-09-01 | 労働
 自殺を考えて、2008年12月31日に死に場所を求めて歩いていました。その時に派遣村のことを知りました。その時まで正直言って、派遣村に集まるような人を見下していました。しかし、私は派遣村で命を救われ、その方たちと生活をしてきて、頑張っても、頑張っても派遣やアルバイトしかできない人間が本当にいることを知りました。 ㌻20

 未来記=「貧困」が可視化された現在も彼と同じような偏見を持っている人や、現状をリアルに理解できない現実がある。「反貧困」の運動は、真実を知らせることと並行して進める必要があるだろう。

浜林正夫著 『イギリス労働運動史』

2009-08-29 | 労働
 労働運動や労働者政党が衰退していく反面、核廃絶や環境保護や教育問題などに取り組む市民運動は発展を続けています。こういう市民運動と労働運動とがどのように連帯していくかがこれからの大きな課題となるでしょう。そのためには、労働組合もみずからの権利や生活を守るたたかいとともに、国民全体の連理と生活を守るたたかいに取り組むことが求められています。最近、企業の社会的責任が重視されるようになってきていますが、労働組合にもその社会的責任が問われているのではないでしょうか。 ㌻274

 歴史に学ばないものは当面の課題について場当たり的な対応しかできないのです。日本の労働組合も日本労働運動史の学習に取り組んでほしいものだと切望しています。 ㌻287

 未来記=浜林氏の著書にはいつも学ばせてもらっている。ここので指摘は重要であり、いま自覚的な労働活動家は新たな気持ちで運動に取り組んでいる。それを大きなうねりにしなければならない。いま、私たちは歴史に試されている。

浜林正夫著 『イギリス労働運動史』

2009-08-29 | 労働
新組合と旧組合の論争
 エンゲルスは新組合と旧組合との違いについて1889年12月9日付けのコンラート・シュミット宛の手紙で次のように書いています。「今懸命に活動している労働者層は、労働者階級の貴族だけを組織してきた旧式の労働組合よりも数限りなく多数で、精力的で、自覚的です。・・・老人たちはまだ『協調』を信じていますが、若者たちは労使間の利害一致を説く者はだれでも一笑に付してしまいます」
 この指摘のような対立を抱えた新旧組合間で1890年に論争が行われたことがあります。

中略

 この批判にたいしてトム・マンとベン・ティレットが共同で反論を展開しました。それはある歴史家に言わせると「イギリス労働者階級の歴史における偉大なドキュメントのひとつ」とされているものです。この反論の中心点は「『新』と『旧』との真の違いは、労働組合の仕事はこの国から貧困を一掃することだということを、前者は認識しているが、後者は認識していないという点にある」という主張です。 ㌻174-175

浜林正夫著 『イギリス労働運動史』

2009-08-29 | 労働
 19世紀にはロンドンは国際的な革命運度や労働運動の中心でした。イギリス以外の国では、これらの運動に対する取り締まりが厳しく、そのため、各国からの亡命者がロンドンに集まってきたのです。マルクスもそのひとりで、『共産党宣言』も、ドイツ語で書かれてはいますが、ロンドンで発表されたものです。

浜林正夫著 『イギリス労働運動史』

2009-08-27 | 労働
 なおここで、19世紀の末になって社会問題となる苦汗労働に触れていることも注目すべきことです。苦汗労働というのは、現代風にいえばワーキング・プアのことですが、それを生み出す制度を苦汗制度と呼んだのはこの文書が最初でした。 ㌻118

 未来記=この文書とは、ユナイテッド・トレーズ機関紙『労働同盟(レーバー・リーグ)』の組織の目的文書

浜林正夫著 『イギリス労働運動史』

2009-08-27 | 労働
 これまでは、結社禁止法のもとで労働組合運動が抑え込まれたために、労働者は打ちこわしという暴力的手段に訴えたのだと、解釈されてきました。しかし、最近は労働組合運動とラダイト運動を分離して考えるのは誤りだという説が有力になっています。 ㌻56

 もうひとつは、ラダイトの側が自分たちの行動の正当性を公然と主張し、それが民衆に支持されたということです。イギリスで民衆の英雄といえば、先ず思い浮かぶのはロビン・フットですが、ラダイトはロビン・フッドに匹敵する英雄とされました。 ㌻57

原武史編 『「政治思想」の現在』

2009-08-25 | 労働
湯浅誠
 「やっぱり正社員や公務員がああいう地位に座ってあぐらをかいているから、この人たちはいつまでも食えないんじゃないか」と、「もうこの場になったら四の五の言っていられない、分けあうしかないんだ」と言われて、低処遇化(長時間・過密労働)が一気に加速していくだろうと思います。
 じゃあ、それによって本当にその人たちに分け前がまわってくるのか?まわってこないですよね。その厳しい労働条件を背景に、またよりいっそう、その人たちの労働条件も下げられていってしまう。 ㌻156-157

 未来記=悪魔のサイクルはすでに進んでいる。根本的な取り組みが重要だ。

原武史編 『「政治思想」の現在』

2009-08-25 | 労働
鎌田慧
 大企業は自分の中に抱えているべき労働者を、生産現場の外にだしちゃったのです。労働者はいまどき流行のアウトソーシングで引っ張って来れる。労働者派遣法があって、労働者派遣業者があるから。ルートがあるわけですね。企業の外側に失業者を大量につくっておいて、必要なときに必要なだけピックアップする。これが労働者派遣法の論理なのです。
 これはトヨタのカンバン方式と同じなんです。大野耐一さんがさかんに主張していますけど、「ジャスト・イン・タイム」なんですね。必要な部品を必要なときに必要な量だけ下請けに運ばせる。トヨタは倉庫も在庫も持たない。部品工場からストレートに、僕の表現では、ホカホカの部品を組み立てて、ホカホカな車がラインから出てきて、ガソリンを注入されて、町に出て行く。まったく無駄がない。これと同じように、労働者を部品化して、必要なときに必要な量を調達する方法をつくったのです。労働者の「在庫」はいらない。それが労働者派遣法です。 ㌻70

 未来記=マルクス『資本論』に書かれている資本主義の本質が、労働者までをも部品化する極限として現れている。

濱口桂一郎著 『新しい労働社会』

2009-08-24 | 労働
 2008年8月28日、東京地方裁判所は、日本マクドナルド社で店長を務める高野広志さんが会社を相手取って訴えていた裁判で、会社側に残業代の支払いを命じる判決を言い渡しました。マスコミもこの判決に注目し、「店長は非管理職 残業代支払い命令」(『朝日新聞』)という見出しが躍りました。マスコミがそのように報道した以上、国民の多くも、この裁判の焦点は店長が残業代を払う必要のない管理職かどうかにあると考えたでしょう。この判決を下した裁判官も(細かいことは別にして)そう考えていたようです。しかし、それは高野さんが訴えたかったことではないのです。
 「残業月137時間 休日ゼロも」という状態の中で、高野さんは「手にしびれが走るようになり、医師から脳梗塞の可能性を指摘され」「命の危険も感じるようにな」りました(『読売新聞』)。「現職の店長が昨秋、くも膜下出血で突然死したことを明らかにし」「判決がもっと早く出ていれば・・・と声を詰まらせ」、妻も「一番大切なことは命があること」と涙ながらに訴えた(『東京新聞』)ということです。お金ではなく、いのちが問題だったのです。 ㌻23-24

 未来記=「殺されるッて分ったら?馬鹿ア、何時だ、それア。―今、殺されているんでねえか。小刻みによ。」
 「蟹工船」の漁夫たちのセリフが今も聞こえてくる。「蟹工船」化された労働のあり方を変えなくてはならない。

 本書について、根本的なところで異議があるが、いくつか参考点はあった。

小川明編著 『派遣村、その後』

2009-08-17 | 労働
 「国民が今日直面している失業多発、きわめて異常な性格をもっている。大量解雇の先頭に立っているのは、倒産の心配があまりない大企業である」。

 「従来のリストラは、いわゆる経営危機による場合が少なくなかった。だけど今回は、高額の株主配当、そして内部留保を、基本的に温存したままの『派遣切り』です。トヨタをはじめ真っ先に『派遣切り』に走ったのは、莫大な儲けを企業内に抱えている大企業ですよ」
 年度末「派遣切り」が横行した二〇〇九年三月、全産業の配当金総額は6兆円いじょう。前年よりもやや減らしたものの、〇七年三月時を上回った。〇三年三月に二兆五〇〇〇億円あまりだった株式配当金は、〇四年以降に急激に増加、〇八年三月には初めて6兆円をこえた。その流れは〇九年三月にも大きくは崩れなかったといっていい。たしかに深刻な「経営危機」とは思えない状況である。 ㌻219

 未来記=このことを忘れてはならない。

小川明編著 『派遣村、その後』

2009-08-17 | 労働
 派遣切りにあった労働者は、「一日も早く(労働者派遣)法改正してもらいたい。派遣社員がどれだけ痛い思いをしてきたかを思えば、今度は企業が少しは痛い思いをする番」と訴えている。この声にこたえるためにも、非正規労働者を「雇用の調整弁」として恥じない企業行動の転換を迫るたたかいが求められている。 ㌻188

小川明編著 『派遣村、その後』

2009-08-16 | 労働
 2008年末からの「派遣村」など、非正規労働者の悲惨な状況を目の前に突きつけられて、こういう労働状態を許してしまった日本の労働組合運動の責任について考えることが必要ではないでしょうか。 ㌻118

 龍谷大学の脇田滋教授は、『労働法を考える』で「労働組合に特別の権利を認められているのは、労働組合は自分の組合員だけでなく、すべての労働者の利益をまもることを期待されているからだ」と言っています。その通りだと思います。自分の働く会社だけ、正社員のことだけ守ろうとすれば、結局それも守れません。
 労働条件や雇用条件の劣悪な非正規労働者が激増すれば、それは正社員の労働条件や雇用に影響を与えます。
 「労働組合の社会的責任」を果たす運動を強めなければならないのではないでしょうか。 ㌻119

 未来記=この通りだと思う。私もそんな立場で活動していきたい。

小川明編著 『派遣村、その後』

2009-08-16 | 労働
 日本の大企業は、労働力が足りないとして、危険性の高い仕事を低賃金で働く労働力として外国人労働者を大量に利用しておきながら、経営状況が少し悪くなると一方的な大量解雇を行ったのです。愛知や静岡での自動車関連企業での日系ブラジル人の大量解雇も連続しており、JMIUだけでも1000人にのぼる外国人労働者が組合員になっています。 ㌻95

 未来記=派遣労働者のみならず外国人労働者への仕打ちも酷い。いずれも違法行為を伴っており、許せないことがたくさんある。そんな中で労働組合に加入し闘う人々が増えている。
 榑松佐一著『トヨタの足元で』には、現代の「強制連行」=人権無視の奴隷労働を強いられたベトナム人研修生・実習生の問題などが書かれている。派遣労働問題も外国人労働者問題も、根っこは無法な資本の利益追求の結果であり、根本から変えていくことが必要だ。

小川明編著 『派遣村、その後』

2009-08-15 | 労働
 「年越し派遣村で私たちが訴えた、公的なセーフティネットが何一つ実現していません」。
 二〇〇九年四月八日、東京・新宿区の日本青年館で記者に囲まれ、「年越し派遣村」村長の湯浅誠(40)が声をあげた。

 未来記=いまだに派遣切りは続き、抜本的解決はされていない。湯浅誠氏ならずともいらだちを感じる。