今治市と松山市とのちょうど中間当りに北条はある。
瀬戸内海に面した北条は、少し前に松山市に統合された小さな港町だ。
北条港の目と鼻の先に鹿島という島が浮かぶ。
小さな島で一人も住んでいない島。
この島には太田屋という鯛めしの店が在る。
実はこの店。
私が幼い頃のかすかな記憶を辿って探しつづけていたお店。
子供のころ、今はもういない親父に連れて行ってもらった四国旅行。
村上水軍の巡ったルートを水中翼船でめぐり、道後温泉で坊ちゃん湯に浸かる。
父「ここは坊ちゃんの主人公が浸かった湯じゃ。」
「そんな奴は存在しとらんのに浸かる訳がない」
夏目漱石の代表作「坊ちゃん」の名がつけられた道後温泉(本館)にいったときのこと。
「お前はほんとに夢がないのー。そういうことじゃいけん」
「おらんものはおらん。小説の中の人物じゃ」
小学校高学年のころ。
当時広島の有名進学塾に通う、こまっしゃくれた、いけ好かないがき。
「ほんなら入らんでええ!帰れ」
なぜかその日は意固地だった。
風呂も入らず、夕食も食べんと言い張って、悔しくて大泣きしていたように覚えている。
翌日、小さな港に連れて行かれ、そこから渡船に乗って沖合いの島に渡った。
目も合わさず、口も聞かず。
その島には宿舎のような施設があって、そこの大広間で鯛めしを出してもらった。
・・・
そこで食べた鯛めしがすんごいうまくてね。
死ぬまでにはもう一度食べて見たいんだよね。
その場所がどこにあるのか一緒に行った親戚も覚えてなくて、聞こうにももう親父もいない。
愛媛出身者に会うと必ず、そんな店を知らないかと挨拶代わりに聞いていた。
それはカシマ(加島)じゃないか。という人もいた。
ネットで調べても加島にはそんな店はない。
幻の店だったんじゃないかとさえ思っていた時期もあった。
先日来、今治に来ている。
こちらの出身で東京での仕事仲間が、丁度今日は今治にいるとの事。
飲みにいこうとの話になった。
ひとしきり今治グルメ(焼き鳥&叉焼たまご飯)について語ってたとき、鯛めしの話になった。
例の話をしてみると。。。
それは、ここから急行で一つ目の北条の鹿島だよ。
あそこの鯛めしうまいよね。
え、近くなの?
まだ在るの?
質問攻め。
是非行こう。
なんとしてでも行こう。
ネットで鹿島を調べてみると、覚えている建物の風景。
はやる気持ちを抑え、お店に電話してみる。
残念なことにシーズンオフで鹿島の本店は閉めているとの事。
ショックを隠し切れない私に朗報が。。。
北条市内に姉妹店が在ると。
場所を聞き、今日、早速店に出かけたみることにしたのであった。
続く