重陽の節句に下るカシオペア紀行。
久々の陽光に刈り入れ時を迎える稲の水分は一気に蒸発し雲を造る。
葉より丈の低い稲穂はもう一稔りで、
仄かな夕映えの空の下、赤と銀の列車が過ぎ行く。
2017年 重陽のヒガハスにて EF8198 9011レ
古くはバケットカー。
そして、混合列車。
人と貨物が一緒に運ばれた時代。
客車の最後に、ぽつんと有蓋車一両。
それが寒々しい景色にとっても温かい。
宅配便の人出が足らないのだったら、
鉄道で運んで駅で渡せばよいじゃないか。
何もかもが便利なのは、人をダメにする。
鉄道と人の温かいこれからの新たな関係論。
1982年10月 五能線ミキスト 陸奥黒崎~松神
刈り頃の田は、長雨明けの晴と共に収穫され、完熟前の稲穂を前に。
心地よい秋空の下ゆえか、スジが立って遅れが多いこの速達ライナーも今日は定刻通過。
2017年重陽 3054レ 蓮田~東大宮
冬の五能線の景色はリフレーン。
強い北西からの季節風に乗って、波は寄せて返し、
同じように鉛色した雪雲が辺りが見えない程の吹雪を齎したかと思うと、
雲が割れて光芒が海に落ちる。
客車が奏でるジョイント音は規則正しく繰り返して・・・、
五能線の冬を、秋の車窓に想像す。
1982年秋 五能線車窓
秋の姨捨に立つ。
宵闇に包まれる前のひと時、
善光寺平の街明かりと列車の窓灯とがマジックブルーの中、
色彩の競演を見せてくれた。
2011年秋 姨捨