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ウクライナ2022、予兆

2022-04-18 06:09:36 | その他、雑記
 さて私などはバイデン大統領の警告を真剣に受け止めずにのほほんとしていたのですが、餅は餅屋と言いますか、ちゃんと警告を発していた専門家もいます。見つけたのは以下の記事です。とはいえ全面侵攻の可能性をブラフ以上のものと考えていた人はほとんどいないようです。

 2021年初夏には、山添博史「2021 年春のウクライナにおけるエスカレーション危機」 防衛研究所・地域研究部米欧ロシア研究室「NIDS コメンタリー第 165 号」2021/05/13が出ていて、「あー、春にも危機があったのか」と今更ながら気づきました。ただここでもロシアの意図はウクライナ東部の切り取りと見ていて、「しかし、次の危機において、一方が相手の決意を低く見積もるなどの誤算があれば、軍事的緊張が発生し、制御不能なまでにエスカレーションを起こす可能性もある。」としているのみです。

 2021年秋には、Japan Forword (2021/11/17)「世界はこの冬、ロシアのウクライナ侵攻に警戒を」でも、「ウクライナ東部でのクーデターや内乱などに、注意した方がよいだろう。」と述べているだけで全面侵攻は予想していません。

 原子力産業新聞(2022/02/07)「日本が学ぶべきウクライナの教訓」は侵攻の20日弱前の記事ですが、「ロシアがウクライナに軍事行動を起こすとの見方には疑問が残る」と述べています。

 1ヶ月前の北野幸伯「ウクライナ侵攻をもくろむプーチンの「本当の狙い」はどこにあるか」Diamond Online(2022/01/29 5:20)でも、「ロシアがルガンスク、ドネツクを使ってウクライナとの緊張を保つことで、ウクライナのNATO加盟を阻止できる」というこを挙げています。

 実際、搦め手も含めてじわじわと東部を切り取るというこれまでの策略は成功していたわけで、それを一気に乱暴な手段に出たというのは不思議にも思えます。焦り? 相手を甘く見た? 米国などの対応を甘く見た?。確かに米国もヨーロッパ諸国も表立っての軍事力行使は行えなかったというのは読みどおりでしょうが、表立たない援助や経済制裁での結束は読みを外したのかも知れません。結果的には友好国と期待できそうな中国もインドも味方表明はできずに国際的孤立を招いています。共闘する国はベラルーシだけで、これではイタリアやソ連と共闘して第2次世界大戦に突入したドイツの方がまだ恵まれています。実際にポーランドもフランスも短期戦で全土が占領されてしまいました。参照Wikipedia「第二次世界大戦#経過(欧州・北アフリカ・中東)」

 あまりの結束の良さに「違和感を感じる」という人もいます。
 島田久仁彦「プーチンを煽りウクライナ侵攻させた“真犯人”は誰か?炙り出された悪魔の構図」MAG2 News (2022/03/07)

 はっきり書いてはいませんが、「米国と欧州諸国が示し合わせて、前もって準備しておいた上でプーチンを煽った」という筋書きを匂わせる書き方です。でも、そこまではどうかなあ?
 「全土侵攻も予測したうえで、前もって対応策のパッケージについての協議を行い」というのは確かに各国の事務方がやっていたのではないかと私も考えます。いや数ヶ月も前から危機感をもっていたなら、それがむしろ当然でしょう。素人にはわかりませんが、衛星で確認できる軍の集結状況を軍事専門家が見れば全面侵攻の危険は高く、万が一に備えて根回しを進めておくのは当然にやるべき仕事というものでしょう。それでも、その準備は無駄になった方が良かったはずです。特にヨーロッパ諸国の指導者達は隣で戦争が始まり難民が流れ込む事態など望んでいたはずがありません

 ただ、この記事の島田氏は紛争調停という現場に携わっていた(いる)人であり様々な実体験に基づく知識も豊富でしょうし、「あふれる情報も、色々と疑うことは必要だよ」という姿勢は大いに学ぶべきものだと思います。第3節第4節

 「世界中で一気に広がったと伝えられる「反ロシア・ウクライナとの連帯」という一般市民の声と感情は、どこまで国際世論を代表しているのか?
 そりゃあ、基本的には民主国家群中心と考えるべきで、中国を始めとする権威主義的体制国家やら反米的国家やらの世論は反映してないでしょうね。というか、権威主義的体制国家の一般市民の声なんてそう簡単には外部に伝わらないのが現状です。こういう政治的テーマに関する声なら特にそうです。にもかかわらず多数の国家が国連決議等で反ロシアに組みし、親露とみなされていた国家も棄権が精一杯という状況にはなっているわけで。

 「そして極めつけは、【非専門家・非当事者が嬉々として行う戦況のアップデートや軍備の分析や紹介、そこに無責任に群がって勝手な議論を展開する人たちの多いこと】にとても違和感を抱きます。
 まあそれは何事につけ、いつものことですって。それらのひとつだけとか自分の感情にとって受け入れやすい言説だけを受け入れて、事実と誤認しないように気をつけましょう、というのは当然の心得、だけどもなかなか難しいことではあります。
 逆に言えば、【群がって勝手な議論を展開する人たちは弾圧されて存在できないような国】の状況に比べれば遥かにましです。少なくとも情報や解釈を選択することはできるのですから。

 なお島田氏は、プーチンの狂気を悪用する、ウクライナ紛争で“得をした”人物リストでは、エチオピアの危機なんかも忘れないでほしい、との訴えもしていることを述べておきましょう。


 なんてことを書いて暖めているうちに事態はどんどんと進み、今更の記事になりそうです。
 報道1930(BS-TBS)の「“電脳空間”で指揮を執るゼレンスキー政権」(04/07)を見たところ、ウクライナの強さの一端が垣間見れたように思います。
 まとめれば、ゼレンスキー政権成立後からIT国家を目指した施策が進められ、それが結果的に戦時の情報戦の強さにつながり、物理的には分断されそうなはずの国家組織が機能を維持するという強靭さにつながっている、となります。これは日本も大いに学ぶべきところが多々ありそうです。支援も大切ですが、教えを乞うことも大切ですね。

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