サウスウエスト航空設立のきっかけになった図
◆絵は下手なほうがいい - 会社方針をうまく伝える図表の描き方(前編)
【生きのびるための中小企業デザイン】
こんにちは!中小企業のデザインコンサルタントの木全(キマタ)です。
中小企業の方々に向けて工業デザインのエッセンスについてお知らせしています。
中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください。
都内近郊であれば、初回は無料でお伺いして、ご相談を承ります。
designsoudan★goo.jp(★を@に)
2014年から2年間、日経BP社サイト「小さな組織の未来学」で「生きのびるための中小企業デザイン」というコラムを担当していました。
そのサイトは閉鎖されてしまいましたが、サイト編集の方と相談しながら考えた、中小企業の方々に役立つデザイン情報は今でも有効だと考えています。
そのコラムの内容を、これからまた隔週で発信していきたいと思います。再開第3弾は「絵は下手なほうがいい - 会社方針をうまく伝える図表の描き方(前編)」です。
■絵は下手なほうがいい - 会社方針をうまく伝える図表の描き方(前編)
紙ナプキンに描かれた図から生まれた航空会社
「会社方針をうまく伝える図表」と言われてすぐ思い出されるのは、アメリカのサウスウエスト航空の設立のきっかけになった、紙ナプキンに描かれた1枚の図でしょう。
テキサス州の3都市、ダラス、ヒューストン、サンアントニオの各都市間の移動が不便で費用も高いと感じていた銀行家ジョン・パーカーが、同州で小さな航空会社を経営していたロリン・キングに、テキサス州内移動のための地方航空会社設立を打診したのが、サウスウエスト航空誕生のきっかけです。
3都市の経済状況が良好であること、3都市間の距離が航空機移動に適していたこと、同業他社であるカリフォルニア州の地方航空会社2社の業績が優れていることを確認したキングは、上記3都市を結ぶ航空会社を構想し、1966年にサンアントニオのバーで、顧問弁護士ハーバート・ケレハーへとその話を持ちかけました。
ケレハーも「低運賃、定時運航、多便数の航空会社なら成功する」と予測し、キングとともにビジネスプランを検討しながら、店舗に備え付けの紙ナプキンに描いたのが、シンプルな三角形の図でした(上の図)。
このシンプルな三角形の図が、今や全米に路線網を持ち、黒字経営を続け、「世界で最も安全な航空会社トップテン」(2012年/スイスの航空輸送格付け機関による)の1社に選定される大手航空会社、サウスウエスト航空が誕生するきっかけになったのです。
そのときの紙ナプキンは、同社のダラス本社に額装されて飾られているそうです。
絵は下手で単純なほうがいい
何かを他人に伝えようとするとき、絵や図表は言葉にない力を持っています。実際に、筆者もデザインコンサルタントとして企業とお付き合いする中で、スケッチなどの絵を描いた途端、いろいろ動き出すことがよくあります。
では、絵や図表が持つ力とはなんでしょう?
例えば、初めて訪れる知人に会社までの道順を説明するとき、言葉だけで説明するより、地図を描きながら説明をするほうが圧倒的に伝えやすいし、道に迷うこともなくなります。それは、絵や図表は言葉より情報量が多いからです。言葉だけで伝えられる情報は1分間に400字程度ですが、地図も交えて説明すると同じ1分でその数倍の情報を伝えることができます。
また、絵や図表で説明した方が、記憶に残りやすいと言われています。人の脳は文章を暗記するより、絵を覚えるほうが得意なのです。
そして、その場で説明する際の絵や図表に関しては、上手下手はほとんど関係ありません。ケレハーの描いた三角形も、絵としては大したものではなく、これがサウスウエスト航空の本社に飾られるほどのものなのか、一見ピンと来ないかもしれません。
実を言うと、下手で単純な絵のほうが共感を呼ぶことがよくあります。ケレハーの三角の独創性は、他社との戦略の違いを明快に表していた点にあったのです。
(次回に続きます)
著作のご紹介
「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「売れる商品デザインの法則」(日本能率協会)
「中小企業のデザイン戦略 」(PHPビジネス新書)
「売れるデザインの発想法」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「マインドマップ デザイン思考の仕事術」(PHP新書)
「デザイン家電は、なぜ『四角くて、モノトーン』なのか?」(エムディエヌコーポレーション)
◆絵は下手なほうがいい - 会社方針をうまく伝える図表の描き方(前編)
【生きのびるための中小企業デザイン】
こんにちは!中小企業のデザインコンサルタントの木全(キマタ)です。
中小企業の方々に向けて工業デザインのエッセンスについてお知らせしています。
中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください。
都内近郊であれば、初回は無料でお伺いして、ご相談を承ります。
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2014年から2年間、日経BP社サイト「小さな組織の未来学」で「生きのびるための中小企業デザイン」というコラムを担当していました。
そのサイトは閉鎖されてしまいましたが、サイト編集の方と相談しながら考えた、中小企業の方々に役立つデザイン情報は今でも有効だと考えています。
そのコラムの内容を、これからまた隔週で発信していきたいと思います。再開第3弾は「絵は下手なほうがいい - 会社方針をうまく伝える図表の描き方(前編)」です。
■絵は下手なほうがいい - 会社方針をうまく伝える図表の描き方(前編)
紙ナプキンに描かれた図から生まれた航空会社
「会社方針をうまく伝える図表」と言われてすぐ思い出されるのは、アメリカのサウスウエスト航空の設立のきっかけになった、紙ナプキンに描かれた1枚の図でしょう。
テキサス州の3都市、ダラス、ヒューストン、サンアントニオの各都市間の移動が不便で費用も高いと感じていた銀行家ジョン・パーカーが、同州で小さな航空会社を経営していたロリン・キングに、テキサス州内移動のための地方航空会社設立を打診したのが、サウスウエスト航空誕生のきっかけです。
3都市の経済状況が良好であること、3都市間の距離が航空機移動に適していたこと、同業他社であるカリフォルニア州の地方航空会社2社の業績が優れていることを確認したキングは、上記3都市を結ぶ航空会社を構想し、1966年にサンアントニオのバーで、顧問弁護士ハーバート・ケレハーへとその話を持ちかけました。
ケレハーも「低運賃、定時運航、多便数の航空会社なら成功する」と予測し、キングとともにビジネスプランを検討しながら、店舗に備え付けの紙ナプキンに描いたのが、シンプルな三角形の図でした(上の図)。
このシンプルな三角形の図が、今や全米に路線網を持ち、黒字経営を続け、「世界で最も安全な航空会社トップテン」(2012年/スイスの航空輸送格付け機関による)の1社に選定される大手航空会社、サウスウエスト航空が誕生するきっかけになったのです。
そのときの紙ナプキンは、同社のダラス本社に額装されて飾られているそうです。
絵は下手で単純なほうがいい
何かを他人に伝えようとするとき、絵や図表は言葉にない力を持っています。実際に、筆者もデザインコンサルタントとして企業とお付き合いする中で、スケッチなどの絵を描いた途端、いろいろ動き出すことがよくあります。
では、絵や図表が持つ力とはなんでしょう?
例えば、初めて訪れる知人に会社までの道順を説明するとき、言葉だけで説明するより、地図を描きながら説明をするほうが圧倒的に伝えやすいし、道に迷うこともなくなります。それは、絵や図表は言葉より情報量が多いからです。言葉だけで伝えられる情報は1分間に400字程度ですが、地図も交えて説明すると同じ1分でその数倍の情報を伝えることができます。
また、絵や図表で説明した方が、記憶に残りやすいと言われています。人の脳は文章を暗記するより、絵を覚えるほうが得意なのです。
そして、その場で説明する際の絵や図表に関しては、上手下手はほとんど関係ありません。ケレハーの描いた三角形も、絵としては大したものではなく、これがサウスウエスト航空の本社に飾られるほどのものなのか、一見ピンと来ないかもしれません。
実を言うと、下手で単純な絵のほうが共感を呼ぶことがよくあります。ケレハーの三角の独創性は、他社との戦略の違いを明快に表していた点にあったのです。
(次回に続きます)
著作のご紹介
「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「売れる商品デザインの法則」(日本能率協会)
「中小企業のデザイン戦略 」(PHPビジネス新書)
「売れるデザインの発想法」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「マインドマップ デザイン思考の仕事術」(PHP新書)
「デザイン家電は、なぜ『四角くて、モノトーン』なのか?」(エムディエヌコーポレーション)