Paul Celan (13)

2016年05月08日 | Paul Celan






EIN AUGE, OFFEN



Stunden, maifarben, kühl,
Das nicht mehr zu Nennende, heiß,
hörbar im Mund.

Niemandes Stimme, wieder.

Schmerzende Augapfeltiefe:
das Lid
steht nicht im Wege, die Wimper
zählt nicht, was eintritt.

Die Träne, halb,
die schärfere Linse, beweglich,
holt dir die Bilder.






ひとつの目は開いたまま




時また時、5月の色をして、冷ややかに
もはや名づけようもないものが、激しく
口の中で聞こえる

ふたたび、だれでもない者の聲

痛む瞳の奥
まぶたは
邪魔だてをしない まつげは
入ってくるものを数えない

涙は二分の一
鋭くなった水晶体がよく動き
おまえにその像をもたらす







■俳句のように、無駄のない文体。sein動詞が入ると力が弱まるため、そして、リズムのために省略されている。最後のdie Bilderには定冠詞がついている。さらに複数形である。「その(さまざまな)像」とはなにか。ツェランの戦争体験に関係することが想像されるが、ツェラン個人の体験を超えた多様な戦争体験というニュアンスも感じられる。




Die Gedichte: Kommentierte Gesamtausgabe
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Suhrkamp Verlag Gmbh









Antonin Artaud (1)

2016年05月08日 | Antonin Artaud






Antonin Artaud(1896-1948)


Je crovais qu’elle avait mal aux dents,
et je vis sa chair tourner en bourriche,
une tonitruante bourriche
bondée de chair,
de quoi satisfaire
un régiment
de pourceaux
déments.




彼女は歯痛なんだと思っていた
そして彼女の肉がかごに変わるのを見た
大声でわめく
肉ではちきれんばかりのかごに
それは
錯乱した
豚の一部隊を
満足させるのに十分なものだった



■従軍慰安婦のような存在を思い浮かべるが、むしろ、un régiment/de pourceaux/déments(錯乱した/豚の/一部隊)は、普通の街娼に群がるお客たちをたとえたメタファーのような気がする。ここでは、一行目のJe crovais qu’elle avait mal aux dents,が面白い。いつも歯痛のように、しかめつらをしているのだろうか。



Suppots Et Suppliciations (Poesie/Gallimard)
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