詩「燃えるごみ」の朗読

2019年05月25日 | 朗読
詩「燃えるごみ」の朗読:連作散文詩「mouvement et temps 第10番」







燃えるごみ




燃えるごみの重さは水の重さである。傷んだトマトの水の重さである。レタスの芯の水の重さである。キャベツの堅い葉の水の重さ、胡瓜のヘタの水の重さである。プリントアウトしたモンサントの記事に引いた赤い線は、やがて包まれる炎の予兆であり、ティッシュの中の小さな蜘蛛は、命のまま炎に包まれた反逆者たちの悲鳴である。片方だけ残った古い靴下は、失われた大地と雲の記憶である。これらを一括りにして燃えるごみの袋へ入れる。燃えるごみの重さは火の重さである。燃えるごみの重さは大地の重さである。木曜の夜、ごみを出しに行くと赤い月が出ていた。やがて火となり水となり土となるごみを提げて、近くて遠い道のりを集積場へと歩いてゆく。燃えるごみの山の中へ袋ごとごみをほうり投げる。ドスッと心のように孤独な音がした。ふり返ると燃えるごみが燃えている。炎が高く月に届くほど燃えている。夜のごみ集積場はあかあかと燃えている。