らが作戦をたて、ブリュネと榎本が承認をしたことで、宮古湾海戦と呼ばれることになる世界レベルでみれば数すくないアボルダージュ、すなわち接舷攻撃が実現されることになった。
出撃するのは、回天、蟠竜丸、第二回天こと高雄丸の三艦である。
海軍奉行の荒井はもちろんのこと、子宮腺肌症 ブリュネやニコールと仏軍海軍、彰義隊や神木隊、遊撃隊、それから新撰組がそれぞれの艦にわかれて乗船する。
史実では、新撰組は蟠竜に乗船することになっている。
「なんだと?神木隊とかえろ?」
「ええ、副長。史実では、蟠竜は天候のせいではぐれてしまい、待機することになります。つまり、戦場にいきつくことすらできないのです。いまのところ蟠竜と高雄が主力で甲鉄を奪うことになっていますが、結局は回天が甲鉄にぶつかり、おれたちが斬りこむことになります」
「なるほど。でっ、利三郎が死ぬんだな?」
「はい。神木隊や彰義隊のだれかも同様です。名前まではわかりませんが、利三郎同様何人かは甲鉄に取り残されるわけです」
旗艦である回天に、彰義隊や神木隊とともに副長と利三郎とおれが乗船する。
「ならば、彰義隊もちがうという淡路島出身で箱館の殖産興業におおいに献身した豪商とその一族の墓がある。
本堂、それから観音像のある観音堂もある。
驚くほどでかいわけではないが、立派な山門もあったりして古式ゆかしい寺院である。
もっとも、現代では新撰組の屯所となったということが、この寺院の名を有名にしているのかもしれない。
本堂は、そこそこにひろい。が、の数は増加している。いろんな藩や隊から、移籍したり入隊しなおしている。ゆえに、本堂だけではひろさがたりない。そこに無理矢理詰め込まれているわけだから、雑魚寝状態ですごしているのが実情である。
食事は、基本的には当番制ではある。
俊冬と俊春が蝦夷にいるときには、時間のゆるすかぎり松前からわざわざここまできてつくっている。
古株の隊士たちは、以前から俊冬と俊春の手伝いをしたり、テクニックを盗み見しているため、そこそこのスキルがある。
ゆえに、ほかの隊と比較すると、かなりレベルの高い食事がでている。
ちなみに、この日は俊冬と俊春と相棒が山に狩りにゆき、たぬきを相当数仕留めてきた。
蝦夷たぬき、ってやつである。
しかも、喰うだけではない。その毛皮で防寒具をつくるという。
人類の叡智は、利用できるものはくまなく利用するしっかりさんでもある。
かれらの正体をしらされた直後、思わず『ターミ○ーター』系のアンドロイドを思い浮かべてしまった。
が、あれはあくまでも映画の世界の出来事である。
リアルの世界にいるかれらは、もっともっとすごいのである。
それは兎も角、鬼寒いこんな夜のたぬき汁は、体をあたためてくれるだけでなく、テンションをあげてくれる。
副長が酒をふるまってくれた。
常日頃の新撰組の働きに報いるためである。
そのため、全員のテンションはマックス状態になっている。
ちなみに、安富と久吉と沢は、馬たちとともに通常は松前城にいる。馬はもちろんのこと、安富らは厩の一画を改造し、そこで寝泊まりしているらしい。
今宵は、かれらもきている。
たぬき汁は、称名寺の僧たちにもふるまわれた。
じつは、最初は肉をいれなかった。
明治時代にはいって肉食妻帯をゆるすという布告はでるだろうが、いまはまだダメなのかと思ったからである。でささやいた。
「本日、われわれの神は休まれております。本日は、伴天連の神が見張る番。伴天連の神は許し給う」
マジかよ。
というわけで、かれらにも肉入りのたぬき汁と酒がふるまわれた。
いいのかよ、法然?
つい問いたくなってしまった。
もっとも、このおれに僧の倫理を問う資格などないことはいうまでもない。
美味いものに酒までくわわり、全員が夕餉を堪能した。
後片づけもおわり、いよいよミーティングの開始である。
とはいえ、出陣の概要を伝えて参加者を募るだけのごく単純な内容である。
「いきたい」
「そうだそうだ。
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