「は?なんでですか?」
沖田は眉を寄せて斉藤を見た。
「お前また熱がぶりかえってるだろ。くらくらするんじゃないか?」
沖田は驚いたような顔をした。
隊士達は雪の中血眼で坂本を追ったためべちょべちょである。沖田でなくとも風邪を引く。
「よくわかりましたねぇ…」
「美海が心配なのはわかるが寝てろ」
「大丈夫です」
自分の好きな人の側についていられない。そんな自分のすぐに壊れてしまいそうな脆い体に苛つきを感じる。
「総司!新撰組は総司が抜けたら終わりなんだよ。だから今は寝て、直ぐ治してくれ。俺らには総司が必要なんだよ」
「永倉さん…」
永倉は斉藤の代弁をした。
斉藤は口数が少なく、言葉が足りない。
「わかりました…」
きっと土方にも寝てろと言われるだろう。何より悔しいが皆の些細な気遣いが嬉しかった。
「美海大丈夫かな?」
藤堂が心配そうな顔をする。
「美海が倒れるなんてな…」
原田も顔を歪める。
「ようし!美海が元気になるように俺は隣で腹踊りをしよう!!」
ガバッと原田は立ち上がった。
「うるせぇ!」
ゴンッ
「ったぁ…」
原田は土方に頭を殴られ、しゃがみこんで頭を抑えている。
美海を部屋に運んだ後、藤堂、原田、土方で看病している。
布団に寝かされた美海の顔は赤く火照っていて、息が苦しそうだ。
「土方さん。松本先生はまだなの?」植髮價錢
「直につくと思うんだが…」
土方は障子を見る。
ガラッ
その時障子が開いた。
来たか!?
と土方と藤堂は気色を明るくしたが、すぐに濁ったような目になった。
「なんだ。お前らか」
立っていたのは永倉と斉藤だった。
「なんだとは失礼だなぁ!俺らは美海が心配で来たんだ!」
永倉が突っかかるが斉藤は静かに座る。
「斉藤くん。総司は?」
「総司は部屋に寝かしました」
「それでいい」
山崎は次の隊務で屯所にはいない。監察は忙しい。
バタバタバタバタ!
「誰か来たみたいだよ」
足音を聞きつけ、藤堂が言う。
ガラッ!
「美海くー――――ん!!」
そこには涙を浮かべた近藤がいた。
一同固まり、嫌そうな目で見る。
「はぁ…」
土方はため息をついた。
「立花くんの症状は?」
だがその声にふと近藤の後ろを見ると松本が立っていた。
「松本先生!!」
藤堂が声を上げた。
松本はうんと頷いた。
松本は美海の近くに寄り、いろいろと道具を下ろす。
「美海は今日の朝から体調は良くなかったように見えた。なにやらずっと治療室に籠ってこそこそしていたようだ」
土方が淡々と答える。
「熱は?」
「わかんねぇ。多分なかったが、寝不足っぽかったし、腹は減っていたと思う。朝も晩も食事にこなかったからな」
「ふむ…」
「あ。朝は冬なのに布団なしで寝てたから寒かったかもしれねぇ。そんで姿を消して帰ってきたら…つーか運ばれてきたときには倒れてて苦しそうだった」
「そうか。ありがとう」
松本は真剣な顔で言った。
まさかこの子まで労咳ではないだろうか…。そうなれば沖田くんはどうなるのだ。
一つの不安が頭を過る。
本当なら診察中は出てもらいたいのだが、彼らの心配そうな顔を見て今回は許した。
しかし、それが大問題に繋がるのだが。
近藤達は松本のする診察を見ているのだが全くわからないようだ。
「…立花くんは多分…」
「「「多分…?」」」
「風邪…?のようだな…」
松本はポツリ呟いた。
「よかったぁぁ…」
一同安堵の息をついた。
「ふぅ…」
土方はホッと息を吐いた。
結構な時間で看病していたため心配で仕方がなかったのだ。
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