DAWN BREAKER weblog~from Dusk till Dawnbreak~

ジャンル不問の音楽にまつわる独白集。
いわば「音楽百物語」。

ノリントンのマーラー「交響曲第5番」

2006-12-31 01:59:43 | CD
今日は仕事がいつもより早い目に終わったので、ゆっくりとクラシックを聴いている。
というか、普段から自室ではクラシックを流していることが多い。
古楽から現代音楽まで、クラシックに限っても「なんでもこい」状態である。
まあ、私にとっては、クラシックもこの世で最も刺激的な音楽の一つなのですよ。

さて、いま聴いているのは、ロジャー・ノリントン&シュトゥットガルト放送響によるマーラー・チクルスの三枚目。第5番です。
今回もヴィブラートなしの快速演奏。
マーラーなど本来巨大オーケストラのぶ厚い音響で奏でられる音楽の場合、ビブラートをしないと音の厚みがこれだけ減るのかとなおさら驚く。
スカスカと感じる人も多いだろう。
しかし、それだけ各楽器の音がクリアーに聞こえるので、新しい発見が随所にあるのが刺激的。
それに、分裂症丸出しのようなこの曲が、一本筋の通ったタイトなものとしてまとめ上げられていて、それだけでもすごいことだと思うなあ。
(なお、この音像のクリアーさ加減は、楽器の配置が現在のスタンダードと異なっているのも一因だろう。また、録音も非常によい。)

個人的には、良く言えばゴージャスで悪く言えばぶよぶよとした音響よりも、タイトですっきりとした音響の方が好みなので、そもそもピリオド・アプローチは大好き。
音楽の設計図というかレントゲン図みたいなのが透けて見えるのが好きだし。
だから、当盤も大いに楽しめたクチです。
宣伝のネタになっている、繊細なれど淡々と進む第4楽章「アダージェット」もよかったが、テンポチェンジが激しく推進力に富む第5楽章がやたらにおもしろかった。

でも、耽美的でドロドロしたマーラー、もしくはドラマティックなマーラーにこだわりがある人には苦しいだろうな。
そういう人にとってのマーラーを聴く醍醐味が本当にない演奏と言えるからね。

でも、一つの音楽をある固まったイメージの中に閉じこめてしまうというのには、個人的には反対。
ノリントンのような、既存の音楽に新たな角度から光を当てて、今まで気づかなかった面を提示してくれる音楽家というのは本当に刺激的でいいと思うし、またそういったものがなければ、音楽は進歩しないと思うからだ。

安全パイだけでは新しいものが生まれないのは、ロックもクラシックも同じ。
いや、すべての音楽に共通するのかも。
まあ、意気込みだけで内容が伴わないのは、それはそれでキツいけどね…。


やっと仕事納め…と思ったら、喉の調子が変。
熱が出る前触れのよう。
仕事の休みのときにうまく体調を壊す私はえらい?
まあ、しばしゆっくりするとしよう。










三津田信三「厭魅の如き憑くもの」

2006-12-29 02:11:05 | book
今年の話題作だったのに、いままで買ったまま読んでいなくて、ようやくここ数日の電車通勤中に読み終えた。

本格ミステリーとホラーの融合みたいなことを謳っているが、確かにその通り。
安直な表現だが、まさしく「一粒で二度美味しい」作品であり、とても楽しめた。

全編にわたって維持されるホラー特有の緊張感は見事。
そして、最終章における推理の波状攻撃はなかなかスリリングだった。
ネタバレはまずいので詳しくは書かないが、当該箇所を今の時節のもので喩えるなら、ベートーヴェン「第九」の第4楽章における「主題の回想と否定」やね。

トリックそのものには新味はないけど、意味わからんマスターベーション的な本格ものよりも、はるかに良いと思った次第。
ということで、少し前に書いた今年のベストを訂正しておきます。


毎日仕事で、年の瀬の実感ゼロ。
今日が何曜日かもわからない。
少しでも年の瀬の雰囲気を味わうべく、第九でも聴きますか…。
ちょうどケーゲルの第九ライヴが届いたところだし♪







EVERY LITTLE THING「CRISPY PARK」

2006-12-26 12:22:24 | CD
「DAWN BREAKER」でEVERY LITTLE THINGはないやろ?と思う人もいるかも知れませんが…最近はほんとに何でもアリなので。

最近、ELTって売れているんですか?
ドラマやCMとのタイアップはあるみたいだけど。

別に熱心なファンという訳ではないので、よくわからないんですが…、
先日ライヴを見たら、持田香織の声がかなり厳しい状態でかわいそうだった。
ネットなどで噂は耳にしていたけど…高音が全然出なくなっていて、聴いていてハラハラして疲れた…。
メスを入れたんだって?それだと以前と同じように唄うのは厳しいかもね。
古い曲などは壊滅的に唄えていなくて、そうした曲に何の思い入れもない私は、そんなのは唄わなかったらいいのに…と思ってしまったのだが。

ただ、最新作である本作収録曲は、現況をふまえて作ってあるためか、ライブでも比較的きちんと唄えていた。
その本作「CRISPY PARK」を、個人的には結構気に入っていたりする。
切なくて、郷愁を感じさせ、肩に力の入っていないロック。
ゴージャスなサビメロだけで印象づけるような安易な作りではなくて、ゆっくり胸に染み込むメロディを採用しようと意図しているのがわかる。
とりわけ⑤⑥⑪なんてとてもいい曲だと思う。
(⑥は持田香織の作曲らしい。それは驚きだ。)

個人的には、最近の方が音楽として深みのあるものをやっていると思うので、今後はこういう自然な路線を模索・選択して、持田香織が自然体で唄えるスタイルを築いていくべきなんじゃあないのかな。
グループとしても、ヴォーカリストとしても、まだ消えるには惜しいとライブを見て思ったから。
(もう少し、「見せるライヴ」の側面にも力を入れた方がいいように思ったが。)

ちなみに、持田香織はやっぱりかわいいと思った。
(↑最後はいつもソコ!)





SLEEPTHIEF「THE DAWNSEEKER」

2006-12-25 03:47:37 | CD
今日も仕事。
今年いっぱい休みがない…休みがほしい…。

で、明日の仕事の準備中にこれを書いている。
今聴いているのは、SLEEPTHIEFなるアンビエント系プロジェクトのアルバム。
(アルバム名がDAWN BREAKERみたいだ/笑)

DELERIUM、BALLIGOMINGO、CONJURE ONEなどのファンは集まれ!って感じの音。
実際、DELERIUMに参加しているKristy Thirskや、BALLIGOMINGOに参加しているJody Quineなどがヴォーカルを務めている。

が、このSLEEPTHIEFは、上記のユニットに比べて、ヴォーカルのメロディラインが明確でやや大仰な感じがする。
曲やヴォーカリストにもよるが、時にサラ・ブライトマン的なほどである。
とりわけ①はその傾向が強い曲。でも、とてもいいメロディを持った佳曲だと思う。

もしかすると、そうした大仰さ、押しの強さといった点で好き嫌いが出てくるかも知れない。
でも、クオリティは高いし、上記のユニットのファンならば一聴すべきアルバムであることは間違いない。


余談だが、
今日は仕事帰りに、よく行く韓国料理店で冷麺やチヂミなどを食べた。
最近、韓国料理にハマっている。
憑かれている、いや疲れている体にあの辛さがたまらんのです。








DIMMU BOIRGIR「STORMBLAST」

2006-12-24 02:37:41 | CD
「DAWN BREAKER」らしからぬ記事ばかり書いていたが、今日はクリスマス・イヴだし、ブラックメタルネタで(笑)。

DIMMU BORGIRのセカンドアルバム「STORMBLAST」のリ・レコーディング盤を先日ようやく聴いた。

昨日の犬神家の記事で少し書いたことだが、これは、レコーディングし直したせいでアルバムの価値がぐっと下がった典型的な例だ。

ちなみに、オリジナル・バージョン(以下、オリジナル盤とする)はブラックメタル史に残る名作だ。
かつて「DAWN BREAKER」でも、「基本中の基本アルバム」として推奨していた。

確かに、リ・レコーディング盤は、音像がクリアーかつブ厚くなり、演奏もタイトなものになっている。
だが、私は聴いていて退屈した。本当につまらなかった。

オリジナル盤にあった、寒々しく禍々しい雰囲気、狂気を孕んだ美しさがまったくなくなっている。
ブラックメタル史上に燦然と輝く名曲である①も、平凡なメロブラ・チューンに成り下がっている。
DIMMU BORGIRだから、ゴミだとは言わないが、このアルバムにはブラックメタルを聴く醍醐味はまったくと言っていいほどない。

でも、ネットを見ていると、リ・レコーディング盤の方を、「レコーディングし直したので、よくなった」と絶賛したり、逆に「昔の作品の焼き直しだから、イマイチ」と評したりする人がいて、まったくもって意味不明だ。

はっきり言うが、このアルバムに関して、リ・レコーディング盤の方がいいと思う人は、ブラックメタルを理解する耳を持っていないので、聴くのをやめた方がいいだろう。
そういう人は、モダンなヘヴィロックでも聴いていればよい。
(誤解してほしくないのだが、私はモダンなヘヴィロックも好きなものは好きだ。)

逆に、オリジナル盤の方を聴いていない人は、ブラックメタルを語る資格がないぞ。
迷うことなくこっちを買いましょう。






「犬神家の一族」2006年版

2006-12-23 02:25:23 | movie
話題の「犬神家の一族」リメイク版を見た。

この新版だが、76年オリジナル版の支持者を中心に、比較的辛口の意見が多いようだ。
「なるほど」と言わんとしていることがわかる意見も多い一方、「そこまで非難する必要はあるか?」と突っ込みたくなる盲目的な意見も目立つ。
ネットとは、誰もが何でも勝手なことを言える、便利な世界だなあといまさらながら思った次第。

個人的には、135分間、尿意に耐えながらも、またストーリーを完全に知っているにもかかわらず、飽きることなく楽しめたのだから、それはエンターテイメントとして十分に評価されるべきことだと思うけれど。
やたら豪華な出演陣も素直にすごいしね。
まあ、新版の公開を機に76年版のコレクターズエディションと銘打ったDVDも発売されたことだから、どちらとも楽しめばいいんじゃないでしょうか。
(えっ、もう品切れ?マジで??買っておいてよかった…。)

そもそも、76年版を見ていない人も今やたくさんいるんだしね。
だって、金田一耕助シリーズの原作は「金田一少年の事件簿」だと思っているような若者がいる時代だよ!
新版を機に金田一耕助が復権するのは(って、テレビドラマや映画は断続的に作られているけれども)、慶賀すべきことでしょう。

ちなみに、新版を見ていて、いろいろニヤニヤしてしまうところがあった。
一番ウケたのは、佐武が殺されて狂乱する竹子に突き飛ばされた小夜子が、転がって襖にぶつかり、その襖がボコっと小夜子の上に倒れるシーン。
(このシーンは予告編に収められているので、公式サイトなどで御覧あれ。)
あんな演出よく思いつくなあと、91歳の監督のキレ具合に感動。
まあ、変な演出は旧作にも散見したし、新版が作られたこの現代では、そうした点がかなり奇妙に映るのかもしれない。
でも、そんなところも含めて楽しむべきものなんじゃあないのかなあと思うわけです。

そうそう、上記の小夜子を演ずる奥菜恵の開き直りもグーだが、私は深田恭子の「はる」もかわいかったと思う。
彼女は女王姿よりも女中姿がよく似合う、と思う。


最後に余談かも知れないが…
新版を見ていて、画像がきれいすぎるのも、雰囲気が減ずることになるのだなあとあらためて思った。
そういう点で、新版に妖しさが欠けているという評価も首肯できる。
録音のきれいすぎるブラックメタルが退屈なのも、これと同じ理屈なのかも知れませんな。











平沢進「パプリカ」OST

2006-12-19 05:09:11 | CD
先日、映画館で「パプリカ」というアニメ映画を見た。
時間つぶしだったんで、積極的に選んだ訳ではないけど、結構楽しめた。
筒井康隆原作ってのはどうでもよくって…とにかくアニメーション技術の高さに吃驚。
特にアニメ好きというわけではないんで、アニメ映画なんて久しぶりだったから、余計に驚いたわけです。
ただし、ストーリーは複雑。
一緒に行った韓国女子と中国女子は、日本語堪能なれど、あまり理解できなかった模様。
ごめんね。

しかし、あれですな、アニメではやはり声優は声優がやるべきですな。
(専業の声優がという意味ね。)
話題作りのためによくタレントを起用したりすることが多いけど、あれはいただけません。
実際、下手やろ?
「パプリカ」ではそんなことがなくって、専門的なことまではわからないけど、著名な声優陣の見事なアフレコに感銘を受けた次第。
(これは余談だが、パプリカ役の林原めぐみの声は以前から好きだ。そそる。)

その「パプリカ」のサントラを担当していたのが、P-MODELの平沢進。
別に熱狂的なファンではないけど、独特の雰囲気漂う打ち込みとオーケストレーション、そして歌唱。
映画を見て、サントラ盤を買いたくなったというのは、それだけいい音楽を書いているという証拠と言えるはず。
テーマ曲的な②は、自宅での仕事中などによくエンドレスで聴いています。




私の「このミス」2666

2006-12-18 16:50:27 | book
久々の更新なのに、音楽の話ではありません。

今年の「このミス」や「本ミス」が刊行されました。
それにあやかって(?)、私のベスト6を書かせていただきます。

①東野圭吾『赤い指』
 うますぎるし、あこぎすぎるが、でも感動してしまう。
 個人的には、『容疑者X』よりも好み。

②今邑彩『いつもの朝に』
 いつものような端正なトリックはないが、代わりに感動が端正な文章で綴られる。
 今邑彩、大好き。なんでもっと評価されないのだろう?

③三津田信三「厭魅の如き憑くもの」
 ホラーと本格ミステリの融合ということだが、どちらの要素についても一級品。
 全編にわたる恐怖表現とその緊張感、最終章での推理の波状攻撃には脱帽。

④伊坂幸太郎『終末のフール』
 正直、『ラッシュライフ』以外はイマイチ好きになれなかったが、これはよかった。
 大きな仕掛けないが、この題材を扱う小説の中では際だって内容が充実している。

⑤広川純『一応の推定』
 新人作品の中ではベスト(おっさんらしいが)。
 地味なテーマを手堅くまとめているが、グイグイ引き込まれる。

⑥貫井徳郎『愚行録』
 恩田陸『Q&A』に似た趣向だが、こちらにはオチがある。
 読むとゲンナリする人もいるかも知れないが、個人的には純粋に楽しめた。 
 

海外作(あまり読んでないから一作だけ)
・カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
 静謐な文章を読み進めるにつれて、不思議な世界の恐ろしい正体が見えてくる。
 非常にうまい訳文だったが、原文でも読みたくなった。