DAWN BREAKER weblog~from Dusk till Dawnbreak~

ジャンル不問の音楽にまつわる独白集。
いわば「音楽百物語」。

直木賞に思う

2007-01-17 03:50:08 | book
第136回直木賞は「該当なし」だとよ。
確かにこれだ!という作品がなかったから、地味なレースだなあとは思っていたけど…。
コンスタントに佳作を発表している北村薫か荻原浩にあげればいいじゃん。
まあ、そもそも選考委員に●フォが混じっているから、賞をとることが純粋にすごいことだとは思わないけど。
でも、好きな作家さんが直木賞をとって、その本が(受賞作だけでなく他の作品も)よく売れることは、いいことだと思うから。

上記の●フォな選考委員というのは有名な話だから、私がわざわざ語ることではないけど、知らない人はこちらを参考にして下さい。

●フォな選評ばかり書く人♀(本当に見識がない●フォ。このページから大森望のサイトの記事→asahi.comの記事とさかのぼっていってほしい。)

作品を読まずに選考会に臨む人♂(こんな罪人は流刑にしてまえ。)

岸田るり子「天使の眠り」

2007-01-07 01:26:07 | book
第14回鮎川哲也賞受賞作の処女作「密室の鎮魂歌」は近年の鮎川賞では飛び抜けた出来だったし、第二作目の「出口のない部屋」についても、トリックにそれはないやろ~みたいな強引なところがあるものの、プロットはおもしろくて本当に最後の最後まで読み手をグイグイ引っ張り続ける筆力に脱帽した。
そんな岸田るり子の第三作目がこの「天使の眠り」。本日読了。

旭屋書店のサイトより、紹介文を載せておきます。
「(【彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていく…鮎川賞作家新作】)
13年前に激しく愛した女は、別人なのか……。彼女の周りで、次々と謎の死を遂げる男たち。
京都の医学部大学院に勤務する秋沢宗一は、研究室助手の結婚披露宴で、偶然ある女性を見かける。それは13年前、札幌時代に激しく愛しあった亜木帆一二三(あきほひふみ)だった。不思議なことに、もう中年であるはずの一二三は 20代の若さと美貌を持った別人となっていた。昔の燃えるような感情が甦り、どうしても彼女のことが忘れられない秋沢は、女の周辺を探るうち、驚くべき事実を個む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ……。
鮎川賞受賞の著者が放つ、書下し長篇ミステリー!」


トリックの一面には早い段階で気づいてしまったが、もう一面にはだまされた。
事件の背景については無理があるように思ったが、相変わらず魅力的な謎で読者をグイグイ引き込む手腕はさすが。
人物の内と外の描写もうまい。

だから、鮎川賞受賞者としての立場から仕方ないのかも知れないけれど、無理に本格にこだわる必要もないように思うなあ。
(まあ、今作はこれまでで最も本格度が薄くなっているけどね。)
もっともっとおもしろい話が書ける人だと思うし、いま読了直後にもかかわらずもっと読みたいと思わせる作家なのだから、トリックを考えている時間でどんどん作品を書いてほしいと思ってしまう。

それに、説明しにくいのだけれど、この作者の作品には独特のミステリアスな雰囲気が漂っていて、それが作品の格調を高めていると同時に、読み手の好奇心をも刺激する。
この点が一番の魅力かも知れないな。

ちなみに、作者は京都在住の奥さんらしい。
ブログはこちら

作品の舞台がいつも京都なのも個人的には好み。
京都と言っても2時間ドラマのような(≒山村美紗のような)ゲスな設定ではなく、京都という土地をセンスよく使っていると思う。

とにかく、次の作品も出たらすぐ買いますよ。


三津田信三「厭魅の如き憑くもの」

2006-12-29 02:11:05 | book
今年の話題作だったのに、いままで買ったまま読んでいなくて、ようやくここ数日の電車通勤中に読み終えた。

本格ミステリーとホラーの融合みたいなことを謳っているが、確かにその通り。
安直な表現だが、まさしく「一粒で二度美味しい」作品であり、とても楽しめた。

全編にわたって維持されるホラー特有の緊張感は見事。
そして、最終章における推理の波状攻撃はなかなかスリリングだった。
ネタバレはまずいので詳しくは書かないが、当該箇所を今の時節のもので喩えるなら、ベートーヴェン「第九」の第4楽章における「主題の回想と否定」やね。

トリックそのものには新味はないけど、意味わからんマスターベーション的な本格ものよりも、はるかに良いと思った次第。
ということで、少し前に書いた今年のベストを訂正しておきます。


毎日仕事で、年の瀬の実感ゼロ。
今日が何曜日かもわからない。
少しでも年の瀬の雰囲気を味わうべく、第九でも聴きますか…。
ちょうどケーゲルの第九ライヴが届いたところだし♪







私の「このミス」2666

2006-12-18 16:50:27 | book
久々の更新なのに、音楽の話ではありません。

今年の「このミス」や「本ミス」が刊行されました。
それにあやかって(?)、私のベスト6を書かせていただきます。

①東野圭吾『赤い指』
 うますぎるし、あこぎすぎるが、でも感動してしまう。
 個人的には、『容疑者X』よりも好み。

②今邑彩『いつもの朝に』
 いつものような端正なトリックはないが、代わりに感動が端正な文章で綴られる。
 今邑彩、大好き。なんでもっと評価されないのだろう?

③三津田信三「厭魅の如き憑くもの」
 ホラーと本格ミステリの融合ということだが、どちらの要素についても一級品。
 全編にわたる恐怖表現とその緊張感、最終章での推理の波状攻撃には脱帽。

④伊坂幸太郎『終末のフール』
 正直、『ラッシュライフ』以外はイマイチ好きになれなかったが、これはよかった。
 大きな仕掛けないが、この題材を扱う小説の中では際だって内容が充実している。

⑤広川純『一応の推定』
 新人作品の中ではベスト(おっさんらしいが)。
 地味なテーマを手堅くまとめているが、グイグイ引き込まれる。

⑥貫井徳郎『愚行録』
 恩田陸『Q&A』に似た趣向だが、こちらにはオチがある。
 読むとゲンナリする人もいるかも知れないが、個人的には純粋に楽しめた。 
 

海外作(あまり読んでないから一作だけ)
・カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
 静謐な文章を読み進めるにつれて、不思議な世界の恐ろしい正体が見えてくる。
 非常にうまい訳文だったが、原文でも読みたくなった。