DAWN BREAKER weblog~from Dusk till Dawnbreak~

ジャンル不問の音楽にまつわる独白集。
いわば「音楽百物語」。

岸田るり子「天使の眠り」

2007-01-07 01:26:07 | book
第14回鮎川哲也賞受賞作の処女作「密室の鎮魂歌」は近年の鮎川賞では飛び抜けた出来だったし、第二作目の「出口のない部屋」についても、トリックにそれはないやろ~みたいな強引なところがあるものの、プロットはおもしろくて本当に最後の最後まで読み手をグイグイ引っ張り続ける筆力に脱帽した。
そんな岸田るり子の第三作目がこの「天使の眠り」。本日読了。

旭屋書店のサイトより、紹介文を載せておきます。
「(【彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていく…鮎川賞作家新作】)
13年前に激しく愛した女は、別人なのか……。彼女の周りで、次々と謎の死を遂げる男たち。
京都の医学部大学院に勤務する秋沢宗一は、研究室助手の結婚披露宴で、偶然ある女性を見かける。それは13年前、札幌時代に激しく愛しあった亜木帆一二三(あきほひふみ)だった。不思議なことに、もう中年であるはずの一二三は 20代の若さと美貌を持った別人となっていた。昔の燃えるような感情が甦り、どうしても彼女のことが忘れられない秋沢は、女の周辺を探るうち、驚くべき事実を個む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ……。
鮎川賞受賞の著者が放つ、書下し長篇ミステリー!」


トリックの一面には早い段階で気づいてしまったが、もう一面にはだまされた。
事件の背景については無理があるように思ったが、相変わらず魅力的な謎で読者をグイグイ引き込む手腕はさすが。
人物の内と外の描写もうまい。

だから、鮎川賞受賞者としての立場から仕方ないのかも知れないけれど、無理に本格にこだわる必要もないように思うなあ。
(まあ、今作はこれまでで最も本格度が薄くなっているけどね。)
もっともっとおもしろい話が書ける人だと思うし、いま読了直後にもかかわらずもっと読みたいと思わせる作家なのだから、トリックを考えている時間でどんどん作品を書いてほしいと思ってしまう。

それに、説明しにくいのだけれど、この作者の作品には独特のミステリアスな雰囲気が漂っていて、それが作品の格調を高めていると同時に、読み手の好奇心をも刺激する。
この点が一番の魅力かも知れないな。

ちなみに、作者は京都在住の奥さんらしい。
ブログはこちら

作品の舞台がいつも京都なのも個人的には好み。
京都と言っても2時間ドラマのような(≒山村美紗のような)ゲスな設定ではなく、京都という土地をセンスよく使っていると思う。

とにかく、次の作品も出たらすぐ買いますよ。


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