《第90回・脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内》
依然としてコロナ禍が続いていますが次回の脱原発市民ウォークを11月29日(日)午後2時よりおこないます。集合場所はJR膳所駅前の広場です。どなたでも自由に参加できます。ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。
■■原発が脱炭素化の「主役」になりかねない
政府の温室効果ガス排出ゼロ宣言■■
皆さんもご存知のように新政権の菅首相は去る10月26日に行われた臨時国会での所信表明演説において、「グリーン社会」の実現のために2050年までに日本による温室効果ガスの排出をゼロとすることを宣言しました。その内容は以下のとおりです。
『グリーン社会の実現
菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。
わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。
鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資のさらなる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。
省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。』(下線は筆者による)
(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1026shoshinhyomei.html)
このたびの政府による温室効果ガス排出ゼロ宣言の最大の焦点は再生可能エネルギーの大幅な導入と原発の取り扱いです。演説の内容から分るように、政府は再生可能エネルギーの「最大限の導入」を唱ってはいるものの、同時に脱炭素化に向けて今後も依然として原発の利用を図り「安全優先で原子力政策を進める」ことも明言しています。安倍前政権では原発は単に「脱炭素化の選択肢」という表現に留まっていましたが、菅政権は原発に関して一歩踏み込んでおり、いずれ「安全優先の原子力政策」を条件として既存原発再稼動の一層の推進、原発の新設・増設が温暖化ガス排出量ゼロ実現のための重要な選択肢とされるのではないかと懸念されます。
原発の新・増設に関しては、去る11月4日の衆院予算委員会において、「原発の新・増設も選択肢という認識か。2050年を目標にしているが、いま稼動可能な原発も(2050年までに)耐用年数が切れる。新原発をつくることはありうるのか」という野党の質問に対して、菅首相は「原発の新・増設について現時点においては考えていない」と限定的に答えています。すなわち、首相の答弁は将来的な原発の新・増設を否定しているわけではありません。一方で、梶山経産相は「あらゆる選択肢を追及するなかで必要な限りにおいて原子力も利用する。原子力が2050年においても選択肢として活用できるよう技術開発等、普段の安全性向上に向けた取り組みを進める」と答弁しています(以上は2020年11月5日付け朝日新聞)。これらの答弁は、原発による未曽有の大事故を起こしてしまったにもかかわらず、形はどうであれ原発という発電手段を今後も放棄する意図が政府にはまったくないことを意味しているものと考えられます。このため政府による無炭素化宣言は実質的に原発維持・推進宣言をも意味しているということができるでしょう。
現行の国のエネルギー基本計画には、福島原発事故の信頼回復ができていない現状や世論を考えて、原発の新・増設は盛り込まれていません。また、新たな基本計画に盛り込まれるか否かは今のところ不明です。しかし、以前から自民党内や電力業界には新・増設を望む声が存在しており、このためこのたびの政府による無炭素化宣言をきっかけに今後原発の積極的な活用の声が高まるのではないかと懸念されます。たとえば10月に開かれた国のエネルギー政策を議論する有識者会議ではすでに「再生エネルギーだけでは脱炭素化はできない」と原発の新・増設の必要性を訴える発言も出ています(東京新聞10月27日)。
菅首相の答弁は原発の新・増設に関して「現時点においては」と条件が付けられているため、将来的にどうなるのかは極めて曖昧です。また、経産相の答弁は「あらゆる選択肢を追及する」ことを条件としていますので、現状では原発に関しては「安全性に向けた取り組み」に留まるとされているものの、菅首相の発言と同様に将来的にどうなるかは曖昧であり、原発新・増設への余地を十分に残すものであると言えます。
火力発電は温暖化ガスの発生源であること、ならびに原発は潜在的に大事故という非常な危険性を伴った技術であり、高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題が未解決であることをあることを考えるならば、脱炭素化実現のための有効な選択肢は自然エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力)以外に存在していないことは誰の目にも明らかです。この意味から、政府が今後最優先して行うべきことは、火力や原発ではなく、自然エネルギーを明確に脱炭素化政策の中心に据えること以外にありません。現状では、日本の発電量に占める自然エネルギーの発電量の割合は脱炭素化の先進国である欧州諸国などに大きく劣っています(文末の表を参照)。このため、当面まず行うべきことは自然エネルギーの発電量に占める割合を現状から飛躍的に高めるための具体的な政策を実行に移し実現することであるということができます。
上記のように脱炭素化の中心的課題は自然エネルギーであることは明白であるのですが、首相は自然エネルギーについては所信表明演説で単に「再生可能エネルギーを最大限導入する」としか言及していません。しかし、「最大限の導入」とされているものの、何を以って「最大限」とするのかは極めてあいまいであり、どのようにでも解釈可能です。このため、たとえば「最大限に導入」にしても電力が不足する場合は不足分を原発で埋め合わせることを意味していると考えることができます。すなわち、政府が再生可能エネルギーを明確に脱炭素化政策の中心に据えて最優先して再生可能エネルギーの拡大に全力を注ぐことを怠った場合は、あるいは政府にその意図がない場合は、脱炭素化実現の手段(温暖化ガスの発生源である火力発電を大幅に減らす手段)として中心的な役割を果たすのは再生可能エネルギーではなく原発であるということになります。しかし、原発に大きく依存して脱炭素化を意図することは原発の有する危険性を考えるならばとうてい許されません。これらのことを考えるならば、完全な脱炭素化を実現するためには、単に「再生可能エネルギーの最大限の導入」を目標とするだけではまったく不十分です。2050年までに再生可能エネルギーを電力需要の大半を供給することが可能な電源とすることを最終的な目標に据えて、再生可能エネルギーの飛躍的な導入を計画すべきです。
しかしながら、菅首相が示した基本方針には脱炭素化を達成するための具体的な道筋は何も示されていません。また、経産相も示していません。このため政府による脱炭素化宣言の実現可能性はきわめて心もとないものです。火力でもなく原子力でもなく、自然エネルギーの大幅な推進だけが脱炭素化のための唯一の選択肢であることを、そのほかの選択肢は存在していないことを、どの程度政府が自覚し認識してこのたびの温暖化ガス排出ゼロの宣言をしたのか、果たして原発に依存せずに温暖化ガスの発生源である火力発電を止める覚悟が日本政府にあるのか、極めて疑問ではないかと思われます。このたびの脱炭素化宣言は、地球温暖化に各国がもっと積極的に取り組むべきだとする動きが世界的に強まっており、温暖化ガス大国の日本に対して国際社会からの批判が強まっていることを受けて、とりあえず2050年までの無炭素化を世界に向けて発信したというに過ぎないのではないかと危惧されます。
また、一方において、いますぐには原発の新・増設の問題が浮上しないとしても、政府の答弁の内容を考えるならば、少なくとも脱炭素化との関連において既存の原発の再稼動を一段と強力に推し進めようとする圧力がこれまで以上に強まることは確実ではないかと考えられます。梶山経産相は、国会での答弁の後に行われたインタビューに際して「福島原発事故後まだ原発への信頼回復ができていない現状では原発の新・増設について今後十年ぐらいは云々できる段階にはない」としながらも、「《原発自体はまだ必要なエネルギー》として既存の原発を最大限に使っていく」と明言しているからです。現存する原発は建設中の3基も含めて36基ですが、経産相は「これらの原発の再稼動を後押しする、そのことがカーボンニュートラ?にもつながる」としているだけではなく、小型原子炉(SMR:発電量数万キロワットの小型原発)などの新型原発の研究開発にも前向きであるとされています(以上は2020年11月12日付け朝日新聞による)。これらのことから、政府は2050年までに脱炭素化と宣言しながら、一方において、今後もあくまでも原発に依存・固執することを意図していることは明らかです。このような政府の姿勢が貫かれるならば、原発が脱炭素化推進の「主役」になりかねません。その可能性はきわめて大きいと言うべきでしょう。
また、首相は所信表明演説において、火力発電に関して「長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する」としていますが、この政策転換は容易ではありません。日本の温室効果ガスの約4割は発電所などが発生源ですが、政府はこれまで欧州で進む石炭火力発電の削減には本腰を入れてきませんでした。たとえば、経産相は2030年までを目指すとする「非効率石炭火力の段階的休止」の方針を打ち出していると報じられていますが(2020年7月2日付け朝日、ロイターなど:現在140基ある石炭火力発電所のうち非効率な発電所は114基あり、稼働率の引き下げ、さらには休廃止する方向で進めていくとされています)、電力会社などの反発を抑えための対策を講じるには至っていません。それだけではなく、政府は火力発電所の新設・建て替え計画など石炭火力の温存を容認しています。
以上に記したように、このたびの管首相による温室効果ガス排出を2050年までにゼロとする宣言には解決が極めて困難な問題点が明らかにいくつも存在しています。いずれしても、脱炭素化の実現を口実に、原発が有する大事故の危険性などの負の側面を軽視あるいは無視して原発を今後も推進しようという姿勢は市民の立場から決して容認することはできません。今後、政府の脱炭素化の計画がどのように押しすすめられることになるのか、その行方を注視し、脱炭素化を口実とした原発の推進に対して市民として断固として強い反対の声を挙げていかなければなりません。
2020年11月21日
《脱原発市民ウォーク in 滋賀》
呼びかけ人のひとり:池田 進
〒520-0812 大津市木下町17-41
電 話:077-522-5415
Eメール:ssmcatch@nifty.ne.jp
11月の予定は → コチラ
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依然としてコロナ禍が続いていますが次回の脱原発市民ウォークを11月29日(日)午後2時よりおこないます。集合場所はJR膳所駅前の広場です。どなたでも自由に参加できます。ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。
■■原発が脱炭素化の「主役」になりかねない
政府の温室効果ガス排出ゼロ宣言■■
皆さんもご存知のように新政権の菅首相は去る10月26日に行われた臨時国会での所信表明演説において、「グリーン社会」の実現のために2050年までに日本による温室効果ガスの排出をゼロとすることを宣言しました。その内容は以下のとおりです。
『グリーン社会の実現
菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。
わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。
鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資のさらなる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。
省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。』(下線は筆者による)
(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1026shoshinhyomei.html)
このたびの政府による温室効果ガス排出ゼロ宣言の最大の焦点は再生可能エネルギーの大幅な導入と原発の取り扱いです。演説の内容から分るように、政府は再生可能エネルギーの「最大限の導入」を唱ってはいるものの、同時に脱炭素化に向けて今後も依然として原発の利用を図り「安全優先で原子力政策を進める」ことも明言しています。安倍前政権では原発は単に「脱炭素化の選択肢」という表現に留まっていましたが、菅政権は原発に関して一歩踏み込んでおり、いずれ「安全優先の原子力政策」を条件として既存原発再稼動の一層の推進、原発の新設・増設が温暖化ガス排出量ゼロ実現のための重要な選択肢とされるのではないかと懸念されます。
原発の新・増設に関しては、去る11月4日の衆院予算委員会において、「原発の新・増設も選択肢という認識か。2050年を目標にしているが、いま稼動可能な原発も(2050年までに)耐用年数が切れる。新原発をつくることはありうるのか」という野党の質問に対して、菅首相は「原発の新・増設について現時点においては考えていない」と限定的に答えています。すなわち、首相の答弁は将来的な原発の新・増設を否定しているわけではありません。一方で、梶山経産相は「あらゆる選択肢を追及するなかで必要な限りにおいて原子力も利用する。原子力が2050年においても選択肢として活用できるよう技術開発等、普段の安全性向上に向けた取り組みを進める」と答弁しています(以上は2020年11月5日付け朝日新聞)。これらの答弁は、原発による未曽有の大事故を起こしてしまったにもかかわらず、形はどうであれ原発という発電手段を今後も放棄する意図が政府にはまったくないことを意味しているものと考えられます。このため政府による無炭素化宣言は実質的に原発維持・推進宣言をも意味しているということができるでしょう。
現行の国のエネルギー基本計画には、福島原発事故の信頼回復ができていない現状や世論を考えて、原発の新・増設は盛り込まれていません。また、新たな基本計画に盛り込まれるか否かは今のところ不明です。しかし、以前から自民党内や電力業界には新・増設を望む声が存在しており、このためこのたびの政府による無炭素化宣言をきっかけに今後原発の積極的な活用の声が高まるのではないかと懸念されます。たとえば10月に開かれた国のエネルギー政策を議論する有識者会議ではすでに「再生エネルギーだけでは脱炭素化はできない」と原発の新・増設の必要性を訴える発言も出ています(東京新聞10月27日)。
菅首相の答弁は原発の新・増設に関して「現時点においては」と条件が付けられているため、将来的にどうなるのかは極めて曖昧です。また、経産相の答弁は「あらゆる選択肢を追及する」ことを条件としていますので、現状では原発に関しては「安全性に向けた取り組み」に留まるとされているものの、菅首相の発言と同様に将来的にどうなるかは曖昧であり、原発新・増設への余地を十分に残すものであると言えます。
火力発電は温暖化ガスの発生源であること、ならびに原発は潜在的に大事故という非常な危険性を伴った技術であり、高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題が未解決であることをあることを考えるならば、脱炭素化実現のための有効な選択肢は自然エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力)以外に存在していないことは誰の目にも明らかです。この意味から、政府が今後最優先して行うべきことは、火力や原発ではなく、自然エネルギーを明確に脱炭素化政策の中心に据えること以外にありません。現状では、日本の発電量に占める自然エネルギーの発電量の割合は脱炭素化の先進国である欧州諸国などに大きく劣っています(文末の表を参照)。このため、当面まず行うべきことは自然エネルギーの発電量に占める割合を現状から飛躍的に高めるための具体的な政策を実行に移し実現することであるということができます。
上記のように脱炭素化の中心的課題は自然エネルギーであることは明白であるのですが、首相は自然エネルギーについては所信表明演説で単に「再生可能エネルギーを最大限導入する」としか言及していません。しかし、「最大限の導入」とされているものの、何を以って「最大限」とするのかは極めてあいまいであり、どのようにでも解釈可能です。このため、たとえば「最大限に導入」にしても電力が不足する場合は不足分を原発で埋め合わせることを意味していると考えることができます。すなわち、政府が再生可能エネルギーを明確に脱炭素化政策の中心に据えて最優先して再生可能エネルギーの拡大に全力を注ぐことを怠った場合は、あるいは政府にその意図がない場合は、脱炭素化実現の手段(温暖化ガスの発生源である火力発電を大幅に減らす手段)として中心的な役割を果たすのは再生可能エネルギーではなく原発であるということになります。しかし、原発に大きく依存して脱炭素化を意図することは原発の有する危険性を考えるならばとうてい許されません。これらのことを考えるならば、完全な脱炭素化を実現するためには、単に「再生可能エネルギーの最大限の導入」を目標とするだけではまったく不十分です。2050年までに再生可能エネルギーを電力需要の大半を供給することが可能な電源とすることを最終的な目標に据えて、再生可能エネルギーの飛躍的な導入を計画すべきです。
しかしながら、菅首相が示した基本方針には脱炭素化を達成するための具体的な道筋は何も示されていません。また、経産相も示していません。このため政府による脱炭素化宣言の実現可能性はきわめて心もとないものです。火力でもなく原子力でもなく、自然エネルギーの大幅な推進だけが脱炭素化のための唯一の選択肢であることを、そのほかの選択肢は存在していないことを、どの程度政府が自覚し認識してこのたびの温暖化ガス排出ゼロの宣言をしたのか、果たして原発に依存せずに温暖化ガスの発生源である火力発電を止める覚悟が日本政府にあるのか、極めて疑問ではないかと思われます。このたびの脱炭素化宣言は、地球温暖化に各国がもっと積極的に取り組むべきだとする動きが世界的に強まっており、温暖化ガス大国の日本に対して国際社会からの批判が強まっていることを受けて、とりあえず2050年までの無炭素化を世界に向けて発信したというに過ぎないのではないかと危惧されます。
また、一方において、いますぐには原発の新・増設の問題が浮上しないとしても、政府の答弁の内容を考えるならば、少なくとも脱炭素化との関連において既存の原発の再稼動を一段と強力に推し進めようとする圧力がこれまで以上に強まることは確実ではないかと考えられます。梶山経産相は、国会での答弁の後に行われたインタビューに際して「福島原発事故後まだ原発への信頼回復ができていない現状では原発の新・増設について今後十年ぐらいは云々できる段階にはない」としながらも、「《原発自体はまだ必要なエネルギー》として既存の原発を最大限に使っていく」と明言しているからです。現存する原発は建設中の3基も含めて36基ですが、経産相は「これらの原発の再稼動を後押しする、そのことがカーボンニュートラ?にもつながる」としているだけではなく、小型原子炉(SMR:発電量数万キロワットの小型原発)などの新型原発の研究開発にも前向きであるとされています(以上は2020年11月12日付け朝日新聞による)。これらのことから、政府は2050年までに脱炭素化と宣言しながら、一方において、今後もあくまでも原発に依存・固執することを意図していることは明らかです。このような政府の姿勢が貫かれるならば、原発が脱炭素化推進の「主役」になりかねません。その可能性はきわめて大きいと言うべきでしょう。
また、首相は所信表明演説において、火力発電に関して「長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する」としていますが、この政策転換は容易ではありません。日本の温室効果ガスの約4割は発電所などが発生源ですが、政府はこれまで欧州で進む石炭火力発電の削減には本腰を入れてきませんでした。たとえば、経産相は2030年までを目指すとする「非効率石炭火力の段階的休止」の方針を打ち出していると報じられていますが(2020年7月2日付け朝日、ロイターなど:現在140基ある石炭火力発電所のうち非効率な発電所は114基あり、稼働率の引き下げ、さらには休廃止する方向で進めていくとされています)、電力会社などの反発を抑えための対策を講じるには至っていません。それだけではなく、政府は火力発電所の新設・建て替え計画など石炭火力の温存を容認しています。
以上に記したように、このたびの管首相による温室効果ガス排出を2050年までにゼロとする宣言には解決が極めて困難な問題点が明らかにいくつも存在しています。いずれしても、脱炭素化の実現を口実に、原発が有する大事故の危険性などの負の側面を軽視あるいは無視して原発を今後も推進しようという姿勢は市民の立場から決して容認することはできません。今後、政府の脱炭素化の計画がどのように押しすすめられることになるのか、その行方を注視し、脱炭素化を口実とした原発の推進に対して市民として断固として強い反対の声を挙げていかなければなりません。
2020年11月21日
《脱原発市民ウォーク in 滋賀》
呼びかけ人のひとり:池田 進
〒520-0812 大津市木下町17-41
電 話:077-522-5415
Eメール:ssmcatch@nifty.ne.jp
11月の予定は → コチラ
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