21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

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あれだけの 大事故を起こしても・・・・・

2018-11-09 11:06:08 | 記事
◆ 第73回・脱原発市民ウォークin滋賀のご案内 ◆

  2018年11月17日(土)午後1時半、JR膳所駅前広場 

第73回・脱原発市民ウォークを上記のとおり行います。
どなたでも自由に参加できます。
何かとお忙しいことと思いますが、都合のつく方はぜひ足をお運びください。

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■ あれだけの大事故を起こしても
原発事故の賠償制度を抜本的に改めようとしない政府 ■


 原発での大事故に対処するための原子力損害賠償法について、政府は10月31日、抜本的改正を見送り微修正に留めた改正案を臨時国会に提出する方針であることを表明しました。

 原発で事故がおきた場合の損害賠償に関して、「原子力損害賠償法」という1961年(昭和36年)に制定された法律が存在しています。この法律の概要は以下のとおりです。
◇事故を起こした電力会社には、事故の過失・無過失にかかわらず、無制限の賠償責任がある(無過失・無限責任)
◇電力会社による賠償額(正式名称は「損害措置賠償額」)は、商用原子炉の場合は(一事業所あたり)1200億円とする。電力会社は、この金額を原子力損害賠償責任保険への加入、国との原子力損害賠償補償契約により準備しておく義務がある。
◇この賠償額を超える損害のために全額を賠償できない場合は国が必要な援助を行うが、これは被害者救済の実行を目的としたものであり、原子力事業者の無限責任を免除するものではない。

(なお、この法律では、第3条の但し書きで「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱に起因した事故についてはこの法律は適用されない」と規定されていますが、地震であれば関東大震災の3倍以上の加速度をもつものをいうと解されおり、政府は隕石の落下や戦争などを想定したものとして、福島第一原発事故には適用されないとの方針を示しています)

 福島原発事故に伴う賠償額は今や8兆円超と原子力損害賠償法(原賠法)に基づく賠償額を大きく上回っています。このため2015年から原子力委員会の専門部会において、福島原発の大事故を教訓に、原賠法を見直し抜本的に改革することが議論され、そのなかで1200億円という賠償額の上限額は少なすぎるとして引き上げを求める意見が出ていました。

 原発を動かすのであれば大事故が起きた場合に備えることは電力会社の義務に他なりません。この意味から、東電福島原発の事故に関する賠償の実態を考えて、賠償額を大幅に引き上げることは当然であると考えるのが筋です。現行の最高1200億円という法定の賠償額が少なすぎることは、福島原発事故の賠償が8兆円を超えていることからまったく不十分であることは明らかだからです。それにもかかわらず、政府は最終的に現行の賠償額を最大1200億円に据え置く方針を決定しました。

 また、国の専門部会での制度見直しの議論では、原発事故が起きた際に国と電力会社がどのように責任を分担するかの線引きが焦点であったものの、このたびの制度見直しに際しては国の責任の明確化という問題の核心に踏み込むことはありませんでした。

 原発事故に対する賠償責任は、原賠法に従い事故を起こした電力会社だけに及ぶのが原則であり(無過失・無限責任)、このため法定の賠償額(1200億円)とは関係なく上限なしで電力会社に賠償金の支払いを義務づけています。しかし、福島原発の事故では東電だけでは資金が足りないために、東電による法定の賠償額を上回る賠償費用をいったん国が融資し、東電とその他の大手電力会社が協力して数十年かけて返済する相互扶助制度(原子力賠償支援機構法に基づく制度)を政府は急場しのぎに導入しており、新たな事故が起きてもこの制度を活用して対応する方針であるとされています。しかし、電力自由化の波の中で電力会社は互いが競争相手となるため、この相互扶助制度がいつまで続けられるかは疑問です。

 このたびの原賠償法の見直しに際して、電力会社や財界は法定の賠償額(1200億円)の大幅引き上げに対して電力料金の値上げにつながることなどを理由に反対しただけではなく、国が原発を最も重要なベースロード電源と規定しているのだから国も補償を担うべきだ、国の責任体制を明確にすべきだと露骨な要求をしていたとされています(2018年10月24日、朝日新聞)。これは原発によって金儲けはしたいけれども、自らの力だけで事故に備えて資金を用意するのは嫌だという、まことに身勝手極まる要求です。カネ儲けはしたいけどカネ儲けに伴う負担を担うのは嫌だとするような電力会社には原発事業を営む資格はありません。そのような電力会社は原発の事業からさっさと手を引くべきです。また、このような電力会社の身勝手を看過するようでは、国は無責任の極みであると言わざるを得ません。

 一方、現行の原賠法においては、国の責任に関しては、上記のように漠然と「必要な援助を行う」とされているに過ぎず、このたびの見直しに際して何ら改正されておらず、国にどこまで責任があるのかは規定されていません。このことは国は原発を推進するために原発の稼働は認めるものの結果は保障しないということを意味しています。しかし、福島地裁などでの民事訴訟において、福島原発事故に対する国の責任を認める判決が相ついでいることから、国は原発事故の賠償問題にも一定の責任を負っていると考えるべきです。このため、原賠法は原発事故の損害賠償における国の責任を明確に規定したものに改めるべきです。

 あれほどの大事故を経験したにもかかわらず、万一の事態への備えを強化しようとしない国や電力会社などの姿勢は、市民として看過するわけにはいきません。損害賠償のための制度を抜本的に見直して事故に備えるつもりがないのであれば、国も電力会社も、電力会社を支える財界も、原発の維持・推進の方針をすみやかに放棄すべきです。

2018年11月6日
 《脱原発市民ウォークin滋賀》呼びかけ人の一人 
池田 進  (連絡先:TEL:077-522-5415)


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