タイ国経済概況(2023年2月)

1.景気動向
(1)タイ商務省の発表によれば、2022年の輸出額が前年比+5.5%の2,870.7億米ドル、輸入額は同+13.6%の3,031.9億米ドルで、いずれも過去最高を記録した。一方で、貿易収支は▲161.2億米ドルと大幅なマイナスとなった。2022年12月単月では、輸出額が前年同月比▲14.6%の217.2億米ドル、輸入額が同▲12.0%の227.5億ドルでどちらも3ヵ月連続前年同月比で減少した。また、タイ工業連盟は2023年上半期の輸出見通しを、世界的な景気後退が予想されることを理由に減速するだろうと指摘した。

(2)盤谷日本人商工会議所(JCC)は1月31日、2022年下期日系企業景気動向調査の結果を発表した。2022年11月29日~12月23日にかけて会員企業1,627社を対象に調査を行い、508社(回答率31.9%)から回答を得た。同調査によれば、2022年下期の業況感(DI値:業況が「上向いた」と回答した数から「悪化した」と回答した数を差し引いた値)見通しは21で、プラスは維持したものの2022年上期の27からプラス幅は縮小した。また2023年上期の見通しについては、インバウンドの増加による経済への好影響や原材料不足解消等の期待から28へと伸長した。

(3)タイ工業連盟(FTI)が1月24日に発表した2022年12月の自動車生産台数は、前年同月比+2.7%の15.9万台だった。7ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は国内向けが前年同月比▲5.1%の7.3万台、輸出向けが同+10.5%の8.6万台。新型コロナ前の2019年12月の生産台数13.4万台を上回った。また、2022年12月の国内新車販売台数は前年同月比▲9.0%の8.3万台で、輸出台数は同+10.2%の11.2万台だった。2019年12月の販売台数は8.9万台、輸出台数は7.2万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を大きく上回った。

(4)FTIが1月24日に発表した2022年12月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+1.4%の22.0万台で、6ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+7.5%の18.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲19.6%の4.0万台。2019年12月の生産台数は21.9万台であり、新型コロナ前とほぼ同水準だった。また、2022年12月の国内販売台数は前年同月比+4.4%の14.4万台、輸出台数は同+45.1%の5.1万台だった。2019年12月の販売台数は11.4万台、輸出台数は3.6万台であり、ともに新型コロナ前の水準を大きく上回った。


2.投資動向
1月23日、タイ投資委員会(BOI)は2022年の投資奨励申請が合計2,119件の6,646億バーツ(約200億米ドル、前年比+39%)に達したと発表した。産業別の申請額では、首位が電子および電気機器の1,295億バーツだった。2位は自動車の1,054億バーツで、うち540億バーツはEV、PHEV、HEV等電気自動車およびバッテリーを含むEVサプライチェーン関連だった。なお、データセンターへの投資も425億バーツあった。投資申請のうちFDIは前年比+36%の4,339億7,100万バーツだった。国別申請額では、首位が中国の774億バーツ(158件)、日本の508億バーツ(293件)、米国の503億バーツ(33件)、台湾の452億バーツ(68件)、シンガポールの443億バーツ(178件)が続いた。EEC(東西経済回廊)への申請額は前年比+84%の3,588億バーツだった。また、BOI理事会はHQBizPortalと呼ばれるワンストップサービスの設置を承認した。地域本部の設立を検討する企業に対するコンサルテーションおよび円滑化サービスのリストを提供する予定。企業が地域本部設立に係るライセンス取得のための時間を短縮し、タイの国際ビジネスセンターと地域貿易ゲートウェイとしての地位を強化することが狙い。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2022年の12月末時点で金融機関預金残高は24兆5,735億バーツ(前年同月比+4.6%)、貸金残高は28兆6,195億バーツ(同+4.1%)といずれも増加。また、1月25日にBOTは政策金利を1.00%から1.50%に引き上げた。

〈1月の回顧〉
(1)(為替動向)
1月のドルバーツは上値重く推移。月初、ドルバーツは34台半ば近辺でオープンし、中国のゼロコロナ政策撤回で観光産業が活性化するとの見方からバーツ買いが進行。米消費者物価指数(CPI)が前月比▲0.1%、コアは前月比+0.3%とインフレがやや落ち着いてきている結果となったことに加えて、Fedのハーカー氏より「今後は25bp利上げが適切になるだろう」との発言が伝わるとマーケットは再度金利低下、ドル売りに拍車がかかる展開となり、ドルバーツは33を割り込んだ。その後の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決定され、日銀が大規模な景気刺激策を段階的に縮小するのではないかという織り込みが剥がれ、ドル円は2%近く急騰。ドルバーツも一時的に33台を回復する場面が見られるも、米経済指標のさえない結果や、中国経済回復期待による根強いバーツ買い圧力が続き、下旬にかけてドルバーツは一時32台半ば付近まで下落した。月末にかけて、タイ中銀金融政策委員会(MPC)を通過後もドルバーツは方向感が定まらず概ね32台後半で上値重く推移し、結局33ちょうど近辺で越月となった。

(2)(金利動向)
1月のバーツ金利は、短中期ゾーンは前月末対比上昇、長期ゾーンは下落する展開となった。上旬、グローバルに金利低下圧力がかかる中、バーツ金利に関しても全年限で下落。さらに、米ISM非製造業指数や米CPIの弱い結果により、金利低下圧力は継続し、タイ10年債利回りは一時2.38%台まで低下した。ただ、2022年中国GDPの伸び率が通年で+3.0%と新型コロナ禍当初の2020年に記録した+2.2%を除けば1976年以降で最低となったこともあり、リスクオフムードから新興国アセットは下落。加えて、タイ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利を0.25%引き上げ1.50%とすることを決定し、短中期ゾーンを中心にバーツ金利は上昇する流れとなった。月末にかけても、米国の10~12月期GDPが市場予想を上回り、他の経済指標も概ね良好だったことから米金利の上昇につれてバーツ金利も上昇し、結局タイ10年物国債利回りは2.52%台、同5年物利回りは2.08%台、同2年物利回りは1.79%台と、それぞれ前月末より▲0.12%、+0.12%、+0.16%の値動きとなった。

(3)〈今後のイベント・見通し〉
先月は、中国のゼロコロナ政策撤回に加えて、米経済指標の悪化によりドル売りバーツ買いが優勢となるも、月後半にかけてドルバーツは32台後半での狭いレンジ内で推移する展開となった。なお、今月に入り発表された注目のFOMCでは、利上げ幅を0.25%に縮小したものの、一部で期待されていた声明文中での金利政策の変更を示唆するような変更はなく、まだ利上げが続く余地があることを強調した。さらに、米雇用統計では労働市場の堅調さが再確認され、ISM非製造業景況感指数では2020年6月以来の大幅な伸びとなり、ドルバーツは33台後半まで上昇した。今月は米国やタイの中銀イベントの予定はないものの、経済指標の結果や要人発言によってドルバーツは上下に振れる可能性もあり、引き続き方向感のない展開を予想。ただし雇用・所得環境やインフレの落ち着きがFRBの想定よりも遅れていれば、もう一度インフレ警戒への姿勢を強める可能性もあり、その場合ドルバーツはまだまだ下値の堅い値動きが継続しそうだ。


4.政治動向、その他
観光・スポーツ省は1月23日、2022年の訪タイ外国人旅行者が前年比26倍の1,115万3,026人だったと発表した(新型コロナ前の2019年は3,980万人)。国別ではマレーシアからが最多で、2位がインド、3位がシンガポールだった。日本は13位。また、2022年12月の訪タイ外国人旅行者は224万1,195人だった。今年1月に中国がゼロコロナ政策による制限を撤廃したことにより、2023年はさらなる外国人旅行者の増加が見込まれる。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。ンコック支店 SBCS CO., LTD.



 
 
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タイ国経済概況(2023年1月)

1.景気動向
(1)国際協力銀行は、第34回目となる「2022年度わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告」を12月16日に発表した。本調査は同年7月から9月にかけて行われ、531社から回答を得た。中期的な有望事業展開先国・地域(今後3年程度)では、タイはインド、中国、米国、ベトナムに次ぐ5位で、昨年と同順位だった。「現地マーケットの今後の成長性」や「産業集積がある」点が引続き評価されたほか、「第三国輸出拠点」としても有望との評価だった。一方、回答企業の50%近くが、課題として「労働コストの上昇」を挙げたほか、多くの企業が「他社との厳しい競争」も課題として挙げた。

(2)世界銀行は12月14日、2023年のタイの経済成長率見通しを3.6%と発表した。また、タイ中央銀行(BOT)は同日、同じく3.7%との見通しを発表した。BOTは、この回復を支えるのは外国人観光客の増加に伴い観光セクターが牽引することだと述べ、航空座席数の増加や海外旅行規制の緩和を期待。また、外国人観光客は2023年は2,200万人、2024年には3,150万人に増加する見込みだと発表した。またサービス業を中心とした経済活動の改善により、労働市場が改善しつつあることを指摘した。新規失業給付申請者の割合が新型コロナ前の水準を下回る等、所得の増加も期待される。

(3)タイ工業連盟(FTI)が12月20日に発表した2022年11月の自動車生産台数は、前年同月比+15.0%の19.0万台だった。6ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は国内向けが前年同月比+10.1%の8.3万台、輸出向けが同+19.1%の10.7万台。新型コロナ前の2019年11月の生産台数15.4万台を上回った。また、2022年11月の国内新車販売台数は前年同月比▲4.8%の6.8万台で、輸出台数は同▲11.0%の8.8万台。2019年11月の販売台数は7.9万台、輸出台数は7.5万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。

(4)FTIが12月20日に発表した2022年11月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+2.8%の23.8万台で、5ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+0.3%の18.9万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+13.6%の4.9万台。2019年11月の生産台数は20.3万台であり、新型コロナ前を上回った。また、2022年11月の国内販売台数は前年同月比+4.4%の15.1万台、輸出台数は同+5.0%の3.9万台だった。2019年11月の販売台数は13.5万台、輸出台数は3.0万台であり、ともに新型コロナ前の水準を上回った。


2.投資動向
12月26日付のタイ商務省の発表によると、2022年11月の新規企業登録件数は前年同月比+2.33%の5,773社だった。また、登録資本金総額は同+18.17%の200億6,948万バーツだった。業種別では不動産が492社(全体の8.52%)、建設が486社(同8.42%)、飲食が252社(同4.37%)の順で多かった。年初11ヵ月では、前年同期比+4.66%の72,480社だった。一方で2022年11月の企業登録抹消件数は、前年同月比▲7.19%の2,684社で、年初11ヵ月では前年同期比+18.21%の16,096社だった。


3.金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2022年の11月末時点で金融機関預金残高は24兆5,605億バーツ(前年同月比+5.4%)、貸金残高は28兆5,489億バーツ(同+4.7%)といずれも増加。また、11月30日にBOTは政策金利を1.00%から1.25%に引き上げた。

<12月の回顧>
(1)(為替動向)
12月のドルバーツは34台後半を中心に狭いレンジ内で推移。月初、ドルバーツは前月末夜間のパウエル議長講演を受け、過度な金融引き締めへの懸念が後退し35.10近辺でギャップダウンしてオープン。上旬、11月米非製造業景況指数が市場予想を大幅に上回りドル買いが進行する場面が見られるも、中旬以降は中国でコロナ規制緩和期待や11月米CPIの弱い結果を受けドルバーツは34台半ば近辺まで下落した。しかし、14日のFOMCでは全会一致で政策金利の50bp利上げを決定し、ドット中央値を上方修正する中、ドル買いが進行。ドルバーツは再び35台に乗せる場面があるも、その後の日銀の金融政策決定会合で従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.50%に拡大すると発表したことを受けドル売りが再開。下旬にかけては、米経済指標の強い結果によりドル買いに振れる場面があるも、中国で新型コロナ対策の規制緩和が進んでいることがバーツの支援材料となり、バーツ買いが進行。ドルバーツは上下を繰り返しながらも上値を切り下げる展開となり、結局ドルバーツは34.50台後半近辺で越月となった。

(2)(金利動向)
12月のバーツ金利は短中期ゾーンを中心に全年限で前月末対比低下する展開となった。上旬、11月米ISM製造業景況指数が市場予想を下振れる結果となったことに加えて、11月タイ消費者物価指数(CPI)は前年同月比+5.55%の上昇と、3ヵ月連続で前月を下回る結果となりバーツ金利は中長期ゾーンを中心に低下。更に中旬に発表された注目の11月米CPIは10月に引続きインフレの鈍化が示唆される内容となると、債券買いが進行し、バーツ金利は全年限で大幅に低下した。その後、FOMCのタカ派な結果や日銀のイールドカーブコントロールの運営を一部修正するサプライズを受けて、バーツ金利は長期ゾーンを中心に上昇に転じるも上昇幅は限定的にとどまり、下旬にかけてはクリスマス休暇に向けてマーケットは閑散。バーツ金利は動意に欠ける展開となり、結局タイ10年物国債利回りは2.64%台、同5年物利回りは1.96%台、同2年物利回りは1.63%台と、それぞれ前月末より▲0.08%、▲0.28%、▲0.13%の値動きとなった。

(3)〈今後のイベント・見通し〉
先月は、米CPIに加えてFOMCや日銀政策決定会合等注目のイベントをこなし、ドルバーツは上下に振れる場面があったものの、中国でのゼロコロナ政策緩和発表が相次いでいたこともあり徐々に上値を切り下げる展開となった。また、発表された日銀政策決定会合では、政策金利の変更はなかったものの10年国債の許容変動幅を従来の±0.25%から±0.50%程度にすること、日本国債の各年限で更なる買い入れ額の増額や指値オペをする等、イールドカーブコントロールの運営を一部修正することが公表され、日本金利に連れて米金利やバーツ金利も上昇。為替はドル売りの流れに沿ってドルバーツも下落した。今月は25日にMPC、31日にFOMCの発表が予定されており、FOMCでは次回の利上げペースを減速させる可能性はデータ次第とし、引続き各経済指標には要注目となる。また、ドルバーツは引続き落ち着きどころを探る展開が予想され、レンジブレイクした際の値動きには要警戒。


4.政治動向、その他
2022年11月30日から12月11日にかけて開催された第39回MotorExpoでの購入予約台数は自動車が36,679台、バイクが6,089台だった。車種別の割合ではSUVが53.9%、セダンが30.3%、ピックアップトラックが11.8%、その他が4.0%だった。イベントで予約された自動車の平均価格は135.0万バーツで、バイクは25.4万バーツだった。また、イベントでの売上高は約510億バーツで、来場者数は133.6万人だった。



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タイ国経済概況(2021年6月)

1.景気動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は5月17日、2021年第1四半期の経済成長率が前年同期比▲2.6%であったと発表。新型コロナウイルス感染症の影響から民間消費支出とサービス輸出がマイナスであった一方、物品輸出および民間投資はプラスに回復、さらに公共投資の拡大が寄与し、前期(2020年第4四半期)の同▲4.2%から下げ幅は縮小した。また、同期の失業者数はおよそ76万人で失業率は2.0%、前期の1.9%からわずかに、前年同期比の1.0%からは大幅な上昇となった。なお、2021年通年の経済成長率に関しては、2月時点の予測値である前年比+2.5~+3.5%から、同+1.5~+2.5%へと下方修正した。ただし、輸出および政府支出の拡大に加え、前年の成長率が低水準であった反動でプラス成長は維持となる見込み。

(2)タイ工業連盟(FTI)が5月20日に発表した4月の自動車生産台数は、前年同月比+322.3%の10.4万台だった。前年同月の生産台数が新型コロナウイルス感染拡大による打撃のため低調だったことから大幅に増加した。内訳は国内向けが同+306.2%の4.5万台、輸出向けが同+335.2%の6.0万台だった。一方で、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年4月の生産台数は15.0万台であり、コロナ前の水準までは回復していない。1~4月の累計生産台数は、前年同期比+19.2%の57.0万台となった。また、4月の国内新車販売台数は前年同月比+93.1%の5.8万台、輸出台数は同+160.2%の5.3万台。2019年4月の販売台数は8.6万台、輸出台数が6.7万台だったことから、こちらもコロナ前の水準までは回復していない。1~4月の累計国内新車販売台数は前年同期比+9.6%の25.2万台、累計輸出台数は同+14.9%の31.1 万台だった。

(3)FTIが5月20日に発表した4月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+93.0%の16.0万台となり、4ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+106.9%の13.1万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+47.8%の2.9万台。2019年4月の生産台数は16.9万台であり、こちらはコロナ前の水準まで戻りつつある。1~4月の累計生産台数は、前年同期比+17.8%の83.5万台となった。また、4月の国内販売台数は前年同月比+69.8%の13.4万台、輸出台数は同+77.8%の6.0万台だった。2019年4月の販売台数が12.0万台、輸出台数が5.9万台であったことから、こちらはコロナ前の水準まで回復しつつある。


2.投資動向
5月5日付のタイ国投資委員会(BOI)の発表によると、2021年第1四半期(1~3月)の投資申請額は前年同期比+80%の1,233.6億バーツで、件数は同+14%の401件だった。このうち、海外直接投資(FDI)の新規申請額は同+143%の619.8億バーツで、件数は同▲17%の191件だった。国別申請額では、1位が韓国の104.8億バーツで、中国(103.6億バーツ)、シンガポール(102.8億バーツ)、ノルウェー(100.0億バーツ)が続いた。韓国企業とノルウェー企業による医療用ゴム手袋の大型共同出資事業が大きく結果に影響した。国別申請件数では、1位が中国の37件で、日本(33件)、シンガポール(28件)、香港(16件)の順となった。重点産業への新規申請額は748億バーツで、そのうち医療分野への投資が184億バーツ(29件)で前年同期比100倍以上と大幅に拡大して首位であり、2位は電気・電子分野の174億バーツ(34件)だった。 東部経済回廊(EEC)への新規申請額は前年同期比+39%の644億バーツだった。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2021年の4月末時点で金融機関預金残高は22兆796億バーツ(前年同月比+3.9%)、貸金残高は26兆5,188億バーツ
(同+3.7%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈5月の回顧〉
(1)(金利動向)
5月のバーツ金利はすべての年限において小動きに留まったが、短期および長期金利が小幅上昇となった一方で中期金利は幾分か低下。タイ国内でのコロナ感染拡大第3波が収束の気配を見せず、抑制措置が継続していることや観光業再開が遅れていること等からタイ経済の回復への懸念がバーツ金利の重しとなったが、一方で国債増発懸念が特に長期金利を押し上げる要因となった。政府による5,000億バーツの追加景気パッケージの発表後にはバーツ長期金利が顕著に上昇となった。そのため、多くの市場参加者がバーツ国債の平均残存年限を短縮。5日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)は大方の予想通り政策金利は全会一致で現行の0.50%に据え置かれた。声明文では、コロナワクチンの適切かつタイムリーな調達および供給がタイ経済にとっても最も重要な問題であると指摘したほか、十分に低い水準にある政策金利を引き下げるよりも信用政策(信用緩和)や債務再編の方が現状の経済に対してより適切な手法であると強調。また従来通り、最適かつ最大限に効果が出るタイミングで利下げカードを切るために政策余地は温存するとした。タイ10年物国債利回りは1.84%台、同5年物利回りは1.07%台、とそれぞれ0.02%、0.01%金利上昇、同2年物利回りは0.52%台と0.01%金利低下となった。

(2)(為替動向)
5月のドルバーツ相場はおおむね31台前半を中心としたレンジ内での推移に留まった。米国の金融政策がマーケット参加者の最大の注目となっている。そういった中で発表された米4月雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが市場予想を大幅に下回る伸びに留まったが、失業率、時間当たり賃金ともに改善。NFPに関しては、手厚い失業保険やコロナ禍で育児のために在宅を強いられているケース等さまざまな原因が指摘されている。米4月消費者物価指数(CPI)は予想を大きく上回ったが、米金融当局者からは供給サイドの問題によるもので一時的との見方が多く示された。米金融当局者の発言からはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長を中心に、インフレ上昇は一時的なものに留まり景気回復がまだら模様である中では緩和的な金融政策を維持とのスタンスが示されていたが、一部の当局者からは今後の会合において債券購入プログラム縮小の議論開始が可能になってくるとの見方が示され、米金融当局内で意見は分かれていそうだ。タイ国内では、5日にタイ中銀が金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を現行の0.50%に据え置きと決定。声明文では、コロナワクチンの調達と供給をいかに適切にタイムリーに行えるかがタイ経済にとって最も重要な問題だと指摘。また、十分に低い政策金利の引き下げよりも信用緩和の方が有効であることを強調した。米国のインフレ期待、それに伴う米長期金利の上昇、米金融政策変更への期待は引続き根強いものの、経済データがまだら模様であることがドルバーツの重しとなっている。一方でタイ国内でのコロナ感染拡大第3波が、内需や観光業に与える影響への懸念がドルバーツのサポート材料となっており、両方の要因からレンジ内での推移となった。

〈今後のイベント・見通し〉
6月は15~16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、23日にタイ中銀MPCが予定されているほか、欧州中央銀行(ECB)、日銀、英中銀と主要国の金融政策会合が多く予定されている。米FOMCでは金融政策の現状維持がコンセンサスながら、債券購入プログラム縮小開始に関しての議論の有無や四半期ごとに示される景気・金利見通しが注目されている。タイ中銀MPCは国際通貨基金(IMF)が利下げを推奨したものの、現段階でのコンセンサスは依然現状維持。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府は5月8日付の官報にて、個人情報保護法の複数の条項について適用時期の再延長を告示した。本法は2019年5月に一部条文が施行され、2020年5月27日より完全施行が予定されていたが、政府は新型コロナウイルス感染症の流行ならびに政府機関および民間企業への準備期間への配慮を理由に、同年5月19日の閣議において延長を決定。完全施行は2021年5月31日より後になるとされていた。しかし、タイの経済・社会は引続き新型コロナの影響を受けており、適用準備が十分に整っていない状況にある等の理由から、再延長が決定された。これにより、罰則規定等を含む本法の完全施行は2022年5月31日より後となる。

(2)タイ政府は5月27日付の官報にて、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年7月31日まで延長する旨を決定した。非常事態宣言の延長は12度目となる。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
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タイ国経済概況(2021年5月)

1.景気動向
(1)タイ商務省が4月23日に発表した貿易統計によれば、3月の輸出額は前年同月比+8.5%の242.2億米ドルだった。2ヵ月連続で200億米ドルを上回り、単月の輸出額としては過去最高を記録した。変動の激しい金・石油・武器を除いた輸出額も同+12.0%であった。輸出品目別では電気製品・部品、電子製品・部品、自動車・部品がいずれも前年同月比2桁増。国・地域別では経済回復が続く中国向け輸出(同+35.4%、31.1億米ドル)が全体の伸びをけん引した。

(2)アジア開発銀行は4月28日、「アジア経済見通し2021年版」を発表。タイの経済成長率について、2021年は3.0%、2021年は4.5%のプラス成長になるとの予測を示した。同報告によれば、世界的な新型コロナウイルスの流行による貿易および海外旅行への打撃はまだしばらく続くことが予測されるため、2021年は緩やかな回復にとどまり、経済の復調が本格化するのは2022年になる。タイの物品貿易についてはすでに回復基調にあり、日本や中国、米国といった輸出相手国の需要増を受け、自動車や電子製品、農産品等の主要品目を中心に今後も伸びが期待できるとした。一方、観光産業を主とするサービス貿易が復調し始めるのは2022年になる見通し。

(3)タイ工業連盟(FTI)が4月27日に発表した3月の自動車生産台数は、前年同月比+10.7%の16.3万台だった。2ヵ月続いて前年同月比プラスを記録した。内訳は国内向けが同+7.3%の6.6万台、輸出向けが同+13.1%の9.7万台で、国内向けは3ヵ月ぶりにプラスに転じた。1~3月の累計生産台数は、前年同期比+2.7%の46.6万台となった。また、3月の国内新車販売台数は前年同月比+25.6%の8.0万台、輸出台数は同+16.4%の10.5万台。国内新車販売台数は、3月24日から開催されたバンコク国際モーターショーに伴う販売促進が貢献し、3ヵ月ぶりのプラスを記録した。

(4)FTIが4月27日に発表した3月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+21.4%の23.6万台となり、3ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+1.3%の18.2万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+21.9%の5.4万台。1~3月の累計生産台数は、前年同期比+8.9%の67.5万台となった。また、3月の国内販売台数は前年同月比+15.6% の17.0万台、輸出台数は同+24.2%の10.2万台だった。


2.投資動向
タイ電子取引開発機構(ETDA)が発表した「THAILAND INTERNET USER BEHAVIOR 2020」によれば、2020年のタイ人のインターネット平均利用時間は1日あたり11時間25分だった。前年と比較すると、1時間3分の増加となった。新型コロナウイルスの影響により、オンラインを通じた活動が増えたことが要因として考えられる。世代別の利用時間では、Y世代(20~39歳)が最長で1日平均12時間26分であった。また、利用目的の一位はソーシャルメディア(SNS)で、動画・音楽等の視聴、情報検索がそれに続いた。また、インターネット接続の利便性の向上やオンラインのコンテンツ拡充等を背景とし、同調査が開始された2014年から2020年にかけて、タイ人のインターネット使用時間は約3倍に伸びたことが明らかになった。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2021年の3月末時点で金融機関預金残高は22兆5,431億バーツ(前年同月比+4.3%)、貸金残高は26兆4,104億バーツ(同+4.3%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のバーツ金利は長期金利が低下した一方で5年以下の金利はまちまちとなったが、長短金利差は縮小。米長期金利の低下およびタイ中銀の国債入替プログラムの終了等で、バーツ長期金利が低下。タイにおけるコロナ感染第3波による経済への影響が懸念され、タイ財務省が今年のタイ経済成長率を従来の2.7%から2.3%に下方修正したことも、投資家のタイ国債への需要を増加させた。一方で、5月初のタイ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利の維持がコンセンサスであったことから、2~3年もののタイ国債はむしろ金利上昇となった。タイ10年物国債利回りは1.82%台、同5年物利回りは1.06%台となり、それぞれ0.13%、0.02%金利低下、同2年物利回りは0.53%台となり、0.03%の金利上昇となった。

(2)(5月の展望)
長期金利を中心に、米国の景気回復とそれに伴うインフレ上昇期待を背景とした米金利動向に加え、タイ国内でのコロナ動向も注目される。コロナリスクは依然不透明であり、金融当局者のスタンスは依然景気フレンドリーで引き締めを急いでおらず、マーケット参加者のインフレ懸念との温度差があることには注意を要する。また、今月初に開催されたタイ中銀MPCでは大方の予想通り政策金利は現行維持が決定されたが、利下げの前に信用緩和等がより現状の経済には有効と強調されていた。

〈為替動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のドルバーツ相場はいったん上昇も月末にかけて失速し、前月比では小幅下落となった。月前半はバイデン米大統領が発表したインフラ投資計画や米国でのコロナワクチン接種進展による景気回復期待に加えて良好な米経済統計から、ドルバーツも節目とされた31.5を超えて上昇。一方で、前月ドルバーツ上昇をけん引した米長期金利が伸び悩んだことが、ドルバーツの重しとなりいったん反落。ただし、タイ国内でのコロナ感染者数はソンクラン以降急速に拡大、抑制措置が導入されたことがドルバーツをサポートしたが、月前半に付けた高値には届かず。月末近くに実施された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、足元の景気認識は一段階引き上げられたものの、緩和的政策の継続が示されたことを受けてドルバーツは下落し、31.1台で越月。

(2)(5月の展望)
米国の景気回復と、それに伴うインフレ上昇期待を背景とした米金利動向をテーマとした展開が継続されるが、マーケットの期待と米金融当局者のスタンスには隔たりがある。引続き、経済データおよび金融当局者の発言のほか、コロナ動向が注目される。


5.政治動向、その他
(1)4月24日、インドネシアの首都ジャカルタで東南アジア諸国連合(ASEAN)臨時首脳会議が開催され、2月のクーデター以降、国際的に注目を集めるミャンマー問題について協議が行われた。ミャンマーから軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官、タイからはドン副首相兼外務相が出席した。会議後、1)暴力の即時停止、2)平和的解決に向けた建設的対話の開始、3)ASEAN特使による対話仲介、4)ASEANによる人道支援の提供、5)ASEAN特使のミャンマー訪問、からなる「5項目合意」が発表された。
(2)タイ政府は4月29日、非常事態令第9条に基づく決定事項(第22号)を発令し、バンコク都を含む6都県を「最高度厳格管理地域」に決定した。5月1日以降、同地域において20名以上の活動は原則禁止となっており、飲食店での店内飲食も認められない。翌30日にはタイへの入国者に対する防疫措置および隔離に関する方針が変更され、一部の入国者を対象に7~10日間以上に短縮されていた隔離期間が14日間以上に戻った。この方針は5月1日から別途変更の指令があるまで適用される。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.

 
 
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新型コロナウイルスに関するお知らせ(バンコク都告示(第25号)の発表)

・ 4月25日、バンコク都は、4月26日から5月9日までの措置として、バンコク都内における施設の一時的閉鎖に関する「バンコク都告示第25号」を発出しました。
・バンコク都は同日、外出時の常時マスク着用を義務付けるバンコク都告示を別途発出しています。本告示には罰則規定も含まれ、4月26日から別途の告示があるまで適用されます。

○バンコク都告示第25号
1.以下の施設を閉鎖せしめる。
・学校、補習校および全ての種類の教育機関の建物及び場所について、授業、試験、研修、諸活動を実施するための使用を禁ずる。(ただし、感染症法によって認められた活動、遠隔式の授業及び試験のため、支援、援助、養護のため、当局による公共の活動のための使用については、これを認める。)
・娯楽施設、パブ、バー、カラオケ及び類似施設
・個室付浴場
・入浴施設、サウナ施設
・闘鶏場、闘牛場、闘魚場等
・映画館、劇場
・ウォーターパーク、遊園地、動物園
・子どもの遊戯場、子ども用遊具
・スケート・ローラーブレード場及び類似施設
・スヌーカー場、ビリヤード場
・ボーリング場、ボードゲーム場
・ゲーム店、インターネット店
・公共プール及び類似施設
・フィットネス場
・展示場、会議場
・博物館、美術館、各種学習センター・文化センター、史跡関連施設、及び類似施設
・公共図書館、民間図書館
・託児所、就学前児童施設(ただし病院内託児所及び通常宿泊を伴う施設は除く)
・介護施設(ただし通常宿泊を伴う施設は営業可能)
・ムエタイ場、ムエタイジムを含む格闘技ジム
・刺青店、ネイル店
・ダンス場、ダンス教室
・体重管理・美容増進施設、美容医療クリニック
・健康増進施設(スパ、マッサージ店、美容マッサージ店)
・各種競技場
・演劇場、遊技場
・貸会議室・宴会場、及び類似施設
・美容室・理髪店は洗髪・カット・セットのみ可能で、店内で待機客を待たせてはならない。
・公園、植物園
・屋内・屋外のスポーツ施設、ゴルフ場、ゴルフ練習場、ウォータースポーツ・レジャー施設(ただし、感染症法によって認められた活動、遠隔式の授業及び試験のため、支援、援助、養護のため、当局による公共の活動のための使用については、これを認める。)

2.施設の管理に関する措置
・飲食店、コンビニエンスストア、屋台、フードコート、学食等は、(第2項(3)に該当する施設(注:コンビニエンスストア、スーパーマーケット、市場等)を除き、)午後9時まで店内飲食が可能とし、午後11時まで持ち帰り形態での飲食物の販売を可能とする。酒類の店内消費を禁ずる。
・百貨店、ショッピングセンター等は、午後9時までの営業を認める。ただし、ゲームコーナーや遊具は閉鎖する。
・コンビニエンスストア、スーパーマーケット、市場等は、午後10時まで営業を認める。ただし、従来24時間営業を行っている施設については、営業開始時間を午前5時とする。
・集会、セミナー、宴会、食料配布といった感染拡大の恐れがある活動は、20名未満であれば実施を認める。20名以上1,000名未満の活動については、活動計画を提出の上で事前に現地保健当局の許可を得るものとする。1,000名を超える活動については、活動計画を提出の上で事前にバンコク都の許可を得るものとする。

3.施設の閉鎖に関する規制に関し、例外的に営業が認められている施設では、関係者に別表が定める防疫措置を遵守せしめる。また、一時的閉鎖の対象となっていない施設や活動においても、体温測定、マスク着用、最低1メートルのソーシャルディスタンスの確保、石鹸による手洗い・アルコール消毒、清掃、個別の配膳、施設利用者の登録といった各種防疫措置を厳格に行わなければならない。

4.本件に違反する者に対しては、感染症法に基づき、1年以下の禁錮ないし10万バーツ以下の罰金、もしくはその何れについても科される場合があり、また非常事態令に基づき、2年以下の禁錮ないし4万バーツ以下の罰金、もしくはその何れについても科される場合がある。

5.以上の措置は、4月26日から5月9日まで適用される。

(タイ語原文)
http://www.prbangkok.com/th/post/view/MDY1cDBzNnM0NHIyb3Ezc3E2NnEyNDk0cDRyOTQzcjQzMTQzMg==

○外出時の常時マスク着用に関するバンコク都告示
1. バンコク都内においては、外出する際は毎回、衛生マスクまたは布マスクを正しい方法で着用せしめる。

2. 本件に違反する者は、感染症法に基づき、2万バーツ以下の罰金が科される。

3. 以上の措置は、4月26日から、別途の告示があるまで適用される。

(タイ語原文)
http://www.prbangkok.com/th/post/view/MDY1cDBzNnM0NHIyb3Ezc3E2NnEyNDk0cDRyOTQzcjQyMTQzMg==


(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8500、696-3000
FAX:(66-2)207-8511
所在地: 177 Witthayu Road, Lumphini, Pathum Wan, Bangkok 10330
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タイ国経済概況(2021年4月)

1.景気動向
(1)世界銀行は3月26日に発表した東アジア太平洋地域経済見通し報告の最新版にて、タイの2021年の経済成長率を3.4%、2022年と2023年の経済成長率をそれぞれ4.7%、3.9%と予測した。タイ経済は徐々に回復基調にあるが、タイ政府が厳重なロックダウンを実施した場合、経済の回復は停滞するとしている。また、ASEAN8ヵ国(シンガポール、ブルネイを除く)の2021年の経済成長率予測は、ベトナムが6.6%で首位、マレーシア(6.0%)、フィリピン(5.5%)、インドネシア(4.4%)と続く。同報告のASEAN9ヵ国(ブルネイを除く)のワクチン接種状況では、もっとも接種が進んでいるシンガポールが接種率13.54%。次いでインドネシア(2.41%)、マレーシア(1.13%)、カンボジア(1.02%)となった。タイの接種率は0.08%であり、最下位のベトナム(0.02%)に次いで低い数値となっている。国際通貨基金(IMF)も4月6日に、最新の世界経済見通しを発表。タイの2021年と2022年の経済成長率をそれぞれ2.6%、5.6%と予測した。

(2)タイ工業連盟(FTI)が3月18日に発表した2月の自動車生産台数は、前年同月比+3.1%の15.5万台だった。2ヵ月ぶりに前年同月比プラスを記録した。内訳は国内向けが同▲0.5%の6.7万台、輸出向けが同+5.9%の8.8万台で、国内向けは2ヵ月連続のマイナス。1~2月の累計生産台数は、前年同期比▲1.2%の30.3万台となった。また、2月の国内新車販売台数は前年同月比▲10.9%の5.9万台、輸出台数は同▲16.5%の7.9万台。1~2月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲16.3%の11.4万台、同▲4.3%の15.4万台だった。国内新車販売台数は、昨年12月に新型コロナウイルス感染の第2波が発生した影響で新車需要が落ち、国内向け生産同様2ヵ月連続のマイナスとなった。1月にアジア向けを大きく伸ばしたことで1年7ヵ月ぶりのプラスを記録した輸出台数も、中東向けが前年同月比▲45.8%、欧州向けが同▲58.1%と大きく落ち込み、2月は再びマイナスとなった。

(3)FTIが3月18日に発表した2月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+1.3%の21.9万台となり、2ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+4.0%の16.8万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲6.8%の5.0万台。また、2月の国内販売台数は前年同月比▲6.4%の13.0万台、輸出台数は同▲1.8%の8.8万台だった。


2.投資動向
日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所は3月29日、「タイ日系企業進出動向調査2020年」を発表。同調査はタイに進出する日系企業の進出状況を調査するもので、2020年10月5日から2021年3月12日の間に、7,318社を対象に行われた。これによれば、個別のヒアリング等により実際の活動が確認された日系企業は5,856社あり、前回(2017年)の調査から412社増加。業種別では製造業(2,344社)が最多で、卸売業・小売業(1,486社)、サービス業(1,017社)がこれに続いた。サービス業は前回の896社から121社増加し、調査開始以来初めて1,000社を超えた。また、前回に引続き、中小企業および個人が出資する企業数の割合が、大企業が出資する企業数を上回る結果であった。なお、本調査における「日系企業」とは、日本法人もしくは日本人が10%以上出資している企業を指す。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2021年の2月末時点で金融機関預金残高は22兆5,658億バーツ(前年同月比+9.7%)、貸金残高は26兆3,042億バーツ(同+4.9%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(3月の回顧)
3月のバーツ金利は5年を起点に長期金利が上昇となった一方で短中期金利は低下。コロナワクチン接種進展や追加経済対策等で米景気回復が期待される中、インフレ懸念から米長期金利が上昇した一方で、タイ中銀が4月に実施の債券入替プログラムが意識されバーツ長期金利は上昇。債券入替プログラムで既存短期国債が長期国債に置き換えられることによる、長期国債の需給悪化が懸念された。短中期金利も月央までは長期金利と同様に上昇を続けたが、一部投資家による保有債券の年限短期化等から低下に転じた。16~17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、2023年末時点での利上げを示唆したメンバーは前回から1名増加したものの依然コンセンサスは据え置きであったことから米中期金利が低下したが、米長期金利は依然上昇継続となった。これを受けてバーツ中期金利も低下。その後、タイ中銀金融政策委員会(MPC)が意識され、コロナ感染第2波の影響で経済見通しが下方修正されるとの見方や、米国が2023年まで政策金利据え置きとなる見込みの中でタイ中銀が先んじて利上げをする可能性は極めて低いこともバーツ短中期金利の押し下げ要因となった。24日に開催されたタイ中銀MPCでは大方の予想通り政策金利は現行の0.50%に据え置かれ、経済見通しも下方修正された。タイ10年物国債利回りは1.95%台、同5年物利回りは1.08%台とそれぞれ0.18%、0.01%金利上昇、同2年物利回りは0.50%台と0.14%金利低下となった。

(2)(4月の展望)
長期金利を中心に米国の景気回復と、それに伴うインフレ期待を背景とした米金利動向に振らされる展開継続。コロナリスクは依然不透明であり金融当局者のスタンスは依然景気フレンドリーで引き締めを急いでおらず、マーケット参加者のインフレ懸念との温度差があることには注意を要する。

〈為替動向〉
(1)(3月の回顧)
3月のドルバーツ相場は上昇。昨年11月以来となる31台を回復。コロナワクチン接種進展や追加経済対策等で米景気が回復していく中でのインフレ高進が懸念され、米長期金利が上昇したことが主な背景。市場参加者がインフレを懸念する一方で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長をはじめとする金融当局者は現状の金融政策は適切であり、長期金利上昇に対するけん制発言は出てこずであった。上旬に発表されたタイ2月消費者物価指数(CPI)が政府による電気・水道料金引き下げ等から前年比落ち込み幅を拡大させたことや、米3月雇用統計が予想対比堅調で米長期金利が上昇したこと等を手掛かりにドルバーツ上昇。16~17日に開催された米FOMCでは全会一致で政策金利は据え置かれ、経済および物価見通しは上方修正された一方で、政策金利見通しを示すドットチャートでは2023年までの政策金利据え置きとのコンセンサスが維持された。24日のタイ中銀MPCでも全会一致で政策金利は現行の0.50%維持が決定された。声明文では、経済見通しがコロナ感染第2波の影響が勘案され、2021年は従来の前年比3.2%増から3.0%増に、2022年は同4.8%増から4.7%増に下方修正された。タイ経済は貿易相手国の経済回復に即した物品回復や景気刺激策に支えられる見込みであるとしたが、回復はセクターごとにばらつきがあるとした。また、タイ中銀MPCと同日に発表されたタイ2月貿易統計において、原油高を主要因として輸入が急増し貿易黒字額が減少したこともドルバーツ上昇を加速させた。月末にかけてもワクチン接種進展や米インフラ投資計画への期待からドルバーツは上昇継続し、31.0台を回復してクローズ。

(2)(4月の展望)
米国の景気回復とそれに伴うインフレ期待を背景とした米金利動向をテーマとした展開が継続されるが、マーケットの期待と米金融当局者のスタンスとには隔たりがある。引続き、経済データおよび金融当局者の発言に注目。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府は3月31日、タイへの入国者に対する防疫措置および隔離に関する基本方針の変更を発表。4月1日からの適用で、搭乗可能健康証明書(Fit to Fly Health Certification)の提示が不要となったほか、日本を含む、アフリカ11ヵ国以外からの入国者は隔離期間が14日間以上から10日間以上に短縮された。また、渡航14日前までにワクチン接種を終えた入国者については、隔離期間が7日間以上となった。

(2)タイ政府は3月30日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年5月31日まで延長する旨を官報に掲載。非常事態宣言の延長は11度目となる。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.

 
 
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タイ国経済概況(2021年3月)

1.景気動向
(1)国家経済社会開発委員会(NESDC)が2月15日に発表した速報値によれば、2020年第4四半期の経済成長率は前年同期比▲4.2%で、第3四半期の同▲6.4%からマイナス幅が縮小。2020年通年は前年比▲6.1%であった。2021年については、世界経済・貿易量・内需の回復、政府刺激策等により前年からの反動でプラス転換し、前年比+2.5~+3.5%と予測している。ただし、新型コロナウイルスの感染状況の改善、政治情勢の安定、観光やサービス産業の回復に加え、輸出や民間投資の促進等が前提条件となる。また、2020年通年のインフレ率は前年比▲0.8%だった。2021年は同+1.0~+2.0%が予測されている。

(2)盤谷日本人商工会議所(JCC)は2月17日、新年景気討論会をオンラインにて開催した。金融保険部会からは、タイとASEANの景気動向、タイの家計債務、為替・金利動向等を説明。2021年以降のASEAN各国の経済は、アジア通貨危機やリーマンショックの時のようなV字回復ではなく、緩やかな復調が続くとみられ、企業はこのような状況に腰を据えて付き合っていく必要があるとした。

(3)タイ工業連盟(FTI)が2月18日に発表した1月の自動車生産台数は、前年同月比▲5.2%の14.8万台だった。前年同月比マイナスは昨年10月以来、3ヵ月ぶり。内訳は国内向けが同▲12.4%の6.2万台、輸出向けが同+0.8%の8.6万台で、国内向けは5ヵ月ぶりにマイナスに転じた。また、1月の国内新車販売台数は前年同月比▲21.3%の5.5万台、輸出台数は同+13.5%の7.4万台。国内新車販売台数は昨年12月に新型コロナウイルス感染の第2波が発生した影響で新車需要が落ち、3ヵ月ぶりにマイナスとなった。一方で輸出台数は、主要仕向け地のひとつであるアジア向けが同+39.4%と大きく伸び、1年7ヵ月ぶりにプラスを記録した。

(4)FTIが2月18日に発表した1月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+4.9%の22.0万台だった。前年同月比プラスは2019年12月以来、13ヵ月ぶり。内訳は完成車(CBU)が同+1.7%の16.6万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+16.5%の5.4万台。また、1月の国内販売台数は前年同月比▲6.6%の13.6万台、輸出台数は同+2.3%の8.0万台だった。


2.投資動向
タイ投資委員会(BOI)のドゥアンジャイ長官は2月10日、2020年の投資申請統計を発表した。新規申請額は4,812億バーツで、前年比30%減少となった。申請件数は同13%増の1,717件だった。産業別では電気・電子が最も多く503億バーツ、農産品・食品加工が411億バーツ、自動車・自動車部品が378億バーツと続いた。また新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要の増加を受け、BOIが昨年4月に医療機器等の生産投資を促進する奨励策を打ち出したことで、医療産業への申請額が同2.6倍の223億バーツに拡大した。国・地域別の海外直接投資額では、日本が759億バーツ、211件で、2017年以来首位に立った。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2021年の1月末時点で金融機関預金残高は22兆4,884億バーツ(前年同月比+9.7%)、貸金残高は26兆1,950億バーツ(同+4.7%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(2月の回顧)
2月のバーツ金利はすべての年限で大幅上昇。昨年後半に一部で強まったタイ中銀の利下げ期待が後退したことに加えて、ワクチン接種進展への期待、米国の1.9兆ドル規模の追加経済対策法案も3月中旬に成立見通しとなっていることから米国景気に対しても楽観的な見方となり、インフレ期待が高まって米金利上昇。バーツ金利も米金利上昇につれて上昇した。昨年末にタイでも新型コロナウイルス感染第2波が確認されロックダウン措置が導入されたが、緩やかかつ短期間となったことから、経済への影響は前回対比限定的とみられていることもバーツ金利上昇要因となった。なお、3日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)では、大方の予想通り全会一致で政策金利は現行の0.50%維持が決定された。タイ中銀MPCでは緩和的な金融政策が引き続き必要であり、必要に応じて適切な追加政策を実施する準備はあるが、限られた政策余地を最大限に適切かつ有効に使えるよう温存するため、現状維持を決定したとのこと。タイ経済の先行きは不透明でリスクは下方にあるとしながらも、政府の景気刺激策と輸出の回復のおかげで順調に回復途上にあるとの認識を示した。一方で、今年のタイ経済成長率見通しを引き下げる可能性が指摘された。タイ10年物国債利回りは1.77%台、同5年物利回りは1.07%台、同2年物利回りは0.64%台とそれぞれ0.47%、0.36%、0.20%の金利上昇となった。

(2)(3月の展望)
米国の景気回復とそれに伴うインフレ上昇期待を背景とした米金利動向をテーマとした展開が継続。今月発表された米2月雇用統計が事前予想以上に良好な結果であったことや、米金融当局者が金利上昇に対して牽制しなかったこと等から、米金利は一段と上昇している。今後発表される米経済指標のほか、16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)も注目される。なお、24日にタイ中銀MPCも開催が予定されているが、政策金利は据え置かれるとの見方が現状のコンセンサス。

〈為替動向〉
(1)(2月の回顧)
2月のドルバーツ相場は、一段と膠着し30を巡っての攻防が継続したが30を超えて越月となった。3日に開催されたタイ中銀MPCでは、大方の予想通り全会一致で政策金利は現行の0.50%維持が決定された。依然不確実性が高くリスクは下方にあるが、政府の経済刺激策や輸出の回復により景気回復は継続との見方が示された一方で、今年の経済成長率はこれまでの見通しを下回る可能性が指摘された。為替相場に関しては前月も大きな方向感なく揉み合っていたこともあり、必要に応じて対策は打つとしながらもあまり懸念は示されなかった。また、コロナ感染第2波の発生で抑制措置が部分的であり昨年の抑制措置導入時に比べて緩やかなものであったことや、人民元高等を手掛かりとしてバーツが買い進まれる局面もあったが、タイGDPの1割以上を占めていた国際観光収入がすぐに回復する道筋は依然遠いことや、年初来サポートラインとなっていた29.8台で跳ね返さるといったテクニカルな要因等もあり、下値も攻めきれず30を中心とした狭いレンジ内での推移が継続。月末にかけては、米景気回復によるインフレ高進への期待から米金利が上昇したことや、タイ経常収支が3ヵ月連続で赤字となったことからドルバーツは30.1台まで上昇してクローズ。

(2)(3月の展望)
米国の景気回復とそれに伴うインフレ上昇期待を背景とした米金利動向をテーマとした展開が継続されるものと思われる。今月発表された米2月雇用統計が事前予想以上に良好な結果であったことや、米金融当局者が金利上昇に対して牽制しなかったこと等から米金利は一段と上昇している。今後発表される米経済指標のほか、16~17日の米FOMCも注目される。なお、24日にタイ中銀MPCも開催が予定されているが、政策金利は据え置かれるとの見方が現状のコンセンサス。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府は、核兵器の開発、保有、使用を全面禁止する初の国際法規である核兵器禁止条約に関する国連事務総長宛ての通知書を閣議承認した。同条約は2020年10月に発効に必要な50ヵ国・地域(タイを含む)が批准したことを受け、1月22日に発効。条約参加国は発効から30日以内に国連に通知書を提出することになっている。なお、日本は同条約には参加していない。

(2)タイ政府は2月25日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年3月31日まで延長する旨を官報に掲載。非常事態宣言の延長は10度目で、昨年3月26日に発令されてから1年以上の延長が確定した。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

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タイ国経済概況(2021年2月)

1.景気動向
(1)タイ商務省は1月22日、12月の輸出額が前年同月比+4.7%の200.8億米ドルで、8ヵ月ぶりにプラス成長となったと発表。農産品・加工品(同+2.1%)および主要工業製品(同+6.7%)ともに増加、中でも電子製品・部品(同+15.9%)および電気製品・部品(同+13.2%)が輸出額の押し上げに貢献した。2020年通年では、輸出額は前年比▲6.0%の2,314.7億米ドル、輸入額は同▲12.4%の2,069.9億米ドルとなり、貿易黒字額は前年比拡大となった。同省は2021年の輸出額を前年比+4%と予想。国際貿易の回復、各国の景気刺激策、2021年中の発効が見込まれるRCEP(地域的な包括的経済連携)および米国の保護主義的な政策転換が追い風となるとした。

(2)タイ工業連盟(FTI)が1月20日に発表した2020年の自動車生産台数は、前年比▲29.1%の142.7万台だった。内訳は国内向けが同▲26.0%の72.2万台、輸出向けが同▲32.1%の70.5万台。2020年12月単月の生産台数は前年同月比+6.5%の14.3万台で、内訳は国内向けが同+30.5%の8.8万台、輸出向けが同▲17.8%の5.5万台と、前月に引続き国内向けが好調だった。また、2020年の国内販売台数は前年比▲21.4%の79.2万台、輸出台数は同▲30.2%の73.6万台。12月単月の国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同月比+11.3%の10.4万台、同▲5.2%の6.8万台だった。FTIは2021年通年の生産台数について、150万台(2020年実績比+5.1%)との見通しを発表。内訳は国内向け、輸出向けがそれぞれ75万台とした。

(3)FTIが1月20日に発表した2020年の自動二輪車生産台数は、前年比▲20.1%の202.3万台だった。内訳は完成車(CBU)が同▲17.1%の161.5万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲30.2%の40.8万台。2020年12月単月の生産台数は、前年同月比▲6.5%の20.4万台で、内訳はCBUが同+0.2%の15.9万台、CKDが同▲24.2%の4.5万台だった。また、2020年の国内販売台数は前年比▲11.8%の151.6万台、輸出台数は同▲23.4%の72.7万台。12月単月の国内販売台数と輸出台数は、それぞれ前年同月比+9.0%の12.4万台、同▲19.3%の7.8万台だった。FTIは2021年通年の生産台数について、CBUが186万台(2020年実績比+15.1%)になるとの見通しを発表した。


2.投資動向
(1)国際協力銀行(JBIC)は、第32回目となる「2020年度わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」を1月15日に発表した。本調査は2020年8月から11月にかけて行われ、530社から回答を得た。中期的な有望事業展開先国・地域(今後3年程度)では、タイは中国、インド、ベトナムに続いて昨年と同順位の4位だった。当調査において、「タイは技術系人材の確保が課題として挙げられている点が、この国の産業基盤に対する期待値の高さをうかがわせる」と評されている。またベトナムとタイを対比し、ベトナムでは安価な労働力に期待が集まる一方、タイは産業集積が評価された。

(2)JCC(盤谷日本人商工会議所)は1月26日、2020年下期日系企業景気動向調査の結果を発表。2020年11月16日から12月18日にかけて会員企業1,702社を対象に調査を行い、607社(回答率35.7%)から回答を得た。当調査によれば、2020年下期の業況感(DI値:業況が「上向いた」と回答した数から「悪化した」と回答した数を差し引いた値)見通しは、同年上半期対比で大幅に改善(▲64→6)となった。さらに2021年上半期にかけても業況感は改善(6→14)する見通し。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年の12月末時点で金融機関預金残高は22兆4,920億バーツ(前年同月比+10.0%)、貸金残高は26兆1,789億バーツ(同+4.8%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(1月の回顧)
1月のバーツ金利は短中期金利を中心に上昇。一部にあった利下げ期待が後退してきたことが主な背景。前月後半にタイでも新型コロナウイルス感染第2波が発生し、部分的ながらロックダウン措置が再び導入されたが、コロナ感染第1波の時と比べて緩やかな措置であることから経済への影響も限定的との見方となっている。米上院のジョージア州での決選投票が行われ、事前予想に反して2議席とも民主党候補が勝利したことで、いわゆる「ブルーウェーブ」が実現し、大型財政出動への期待が強まり米長期金利が上昇。20日にはバイデン氏が第46代米大統領に就任。バイデン氏の大統領就任に先立って行われたイエレン次期米財務長官の指名承認公聴会では、追加景気対策に関して債務拡大につながっても恩恵は代償を上回るとの考えが示された。また月末付近に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、現行の金融政策の維持が決定された。その後の会見でパウエル議長は経済活動の再開に伴ってインフレが上昇してもすぐの利上げはないこと、および資産買い入れ縮小の議論は時期尚早と緩和的なスタンスが示された。タイ10年物国債利回りは1.29%台、同5年物利回りは0.70%台、同2年物利回りは0.44%台とそれぞれ0.01%、0.10%、0.05%の金利上昇となった。

(2)(2月の展望)
今月は3日に行われたタイ中銀金融政策委員会(MPC)で、政策金利を現行の0.50%で維持することが決定された。声明文では、今回のコロナ抑制措置による経済への影響は前回対比それほど深刻ではないとの見方が示された一方で、今年の経済成長率に関してはこれまでの見通しを下回る可能性が指摘された。今後のタイ経済およびグローバル経済はコロナ動向に強く依存していることから不透明ではあるが、当面政策金利は現状維持されると考える。

〈為替動向〉
(1)(1月の回顧)
1月のドルバーツ相場は狭いレンジ内での推移となり、月を通して30を巡っての攻防が続いた。前月後半にタイでもコロナ感染第2波が発生、部分的ながらロックダウン措置が再び導入された。しかし、経済への影響は前回のロックダウン導入時よりも限定的とみられている。また、米上院議員選挙のジョージア州における決選投票では予想に反して2議席とも民主党候補が勝利したことで、いわゆる「ブルーウェーブ」が実現し、バイデン氏が第46代米大統領に就任。バイデン氏の大統領就任式に先立って行われたイエレン次期米財務長官の指名承認公聴会では、為替政策について市場主義であることが示された。また月末付近に開催された米FOMCでは、現行の金融政策の維持が決定された。その後の会見でパウエル議長は、経済活動の再開に伴ってインフレが上昇してもすぐの利上げはないこと、および資産買い入れ縮小の議論は時期尚早と緩和的なスタンスを示した。月初、ドルバーツは昨年末の水準をさらに下回る29.8台まで下落。前月にタイでもコロナ感染第2波が発生し、正月休暇中に部分的ロックダウン措置の導入が発表されたことで警戒感はあったものの、その後発表されたバンコク都の追加ロックダウン措置も比較的緩やかなものに留まり安心感が広がったこと等が背景。しかし、初旬にタイ商工会議所大学(UTCC)が発表したタイ12月消費者信頼感指数がコロナ感染第2波の影響で5ヵ月ぶりに悪化を示したことや、UTCC以外の民間団体等も今年のタイ経済成長率見通しを下方修正したことから、ドルバーツは再び30台を回復。また米国で「ブルーウェーブ」が実現したことで大型財政出動への期待が高まったと同時に、米長期金利も上昇。ドルバーツはこれを手掛かりとして一段と上昇したが30.2台定着はできず、米長期金利の上昇一服とともに反落。その後は一貫して30を挟んでの膠着相場となり、29.9台でクローズ。

(2)(2月の展望)
今月3日に開催されたタイ中銀MPCでは、政策金利は現行の0.50%で据え置かれた。声明文では、今回のコロナ抑制措置による経済への影響は前回対比それほど深刻ではないとの見方が示されたが、一方で今年の経済成長率に関してはこれまでの見通しを下回る可能性が指摘された。コロナワクチン接種の進展、米追加経済対策、主要国景気動向等が注目される。


5.政治動向、その他
(1)タイ観光・スポーツ省の発表(速報値)によれば、2020年の訪タイ外国人旅行者数は前年比▲83.2%の670.2万人であり、観光収入は同▲86.6%の3,320億バーツだった。新型コロナウイルス感染対策のための入国規制の影響を受け、4月から9月の間は旅行者数がゼロに落ち込み、大幅な減少となった。国別の旅行者数では中国が125.0万人と最多で、全体の19%を占めた。なお、日本からの旅行客数は32.0万人。

(2)2022年に開催予定のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において議長国を務めるにあたり、タイ政府は1月18日にビデオ会議を実施した。協議の上、首脳会議においてタイは「自由で開かれた貿易および投資の促進」、「デジタル社会」、「健康と幸福」、「食料安全保障」、「包括的かつ持続的成長」について提言する予定。タイがAPEC首脳会議の議長国を務めるのは2003年以来19年ぶり。



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タイ国経済概況(2021年1月)

1.景気動向
(1)タイ中央銀行(BOT)は2020年12月30日に11月の経済報告書を発表。タイ経済は民間消費・投資等の指数が上向く等、回復が続いているものの、観光業といった依然低調なセクターもあり回復の足並みは揃っていないとした。11月の輸出額は前年同月比▲3.1%の189億米ドルで、依然としてマイナスではあるが徐々に復調しつつある。要因としては貿易相手国の需要が徐々に回復していることが挙げられ、特に自動車・自動車部品、農業製品、石油関連製品の輸出が上向いている。また、11月輸入額は同▲3.3%の170億米ドルで、10月の▲13.9%から大幅に改善。ほぼすべての品目分類でマイナス幅は縮小した。

(2)タイ工業連盟(FTI)が12月17日に発表した11月の自動車生産台数は、前年同月比+11.9%の17.2万台だった。前年同月比プラスは2019年4月以来で、19ヵ月ぶりとなる。内訳は、国内向けが同+18.6%の9.7万台、輸出向けが同+4.2%の7.5万台。1~11月の累計生産台数は、前年同期比▲31.7%の128.4万台となった。また、11月の国内販売台数は前年同月比+2.7%の7.9万台、輸出台数は同▲0.9%の7.5万台。1~11月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲24.7%の68.8万台、同▲32.0%の66.7万台だった。国内販売は18ヵ月ぶりに前年同月比プラスを記録。輸出も主要仕向け先であるアジアとオセアニアがプラスとなり、前年並みにまで回復した。

(3)FTIが12月17日に発表した11月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲8.8%の21.4万台だった。20万台超えは3ヵ月連続。内訳は完成車(CBU)が同+2.2%の17.6万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲38.9%の3.8万台。1~11月の累計生産台数は、前年同期比▲21.4%の181.9万台となった。また、11月の国内販売台数は前年同月比▲11.4%の12.0万台、輸出台数は同▲28.6%の6.7万台。1~11月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲13.3%の139.2万台、同▲23.8%の64.9万台となっている。


2.投資動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は、プラユット首相が委員長を務めた12月21日の本委員会において、政府が誘致しているターゲット産業への投資やデジタル技術の導入を促進する奨励策を承認した。ドゥアンジャイBOI長官によれば、投資金額が10億バーツ以上、かつ奨励証書の発行から12ヵ月以内に事業を開始したターゲット産業の大型投資案件には、5~8年間の法人税免税恩典に加え、追加恩典として5年間の法人税50%減免が付与される。またAIやビッグデータ分析といったデジタル技術を導入した既存事業には、3年間の法人税50%減免恩典が付与される。前者は2021年末まで、後者は2022年末までに申請を行う必要等がある。

(2)タイ国鉄(SRT)は、2021年6月にバンコクのバンスー新中央駅周辺開発事業(ゾーンA)の再入札実施を予定している。バンスー新中央駅は2021年中に開業する見込みで、周辺エリアにおいてオフィス、商業施設、住宅、ホテルのほかイベント関連施設の開発が計画されている。ゾーンA開発は2019年7月に入札を行ったものの応札者がなく、入札条件の再検討が行われていた。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年11月末の金融機関預金残高は22兆3,314億バーツ(前年同月比+9.7%)、貸金残高は25兆7,835億バーツ(同+4.0%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のバーツ金利は低下。英国でファイザー社とビオンテック社が共同開発したコロナワクチンの使用認可が下りたことを皮切りに、コロナワクチン普及への期待が高まったほか、年末近くにトランプ米大統領が追加経済対策法案および21年度歳出法案に署名、英国と欧州連合(EU)が通商合意に至ったことでノーディールブレグジット回避と好材料はあったものの、足元のコロナ感染拡大に伴う経済への懸念が勝った。コロナ禍が一段と厳しくなっていった中、米連邦公開市場委員会(FOMC)に対して、米追加経済対策案がなかなか妥結しないこともあり一段の緩和の可能性が期待され、一部では資産購入ペースや平均期間の変更等が行われるのではとの観測が台頭。実際には、量的緩和政策の長期化を示唆する方向にフォワードガイダンスを強化したが、依然緩和的なスタンスを維持。23日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)では大方の予想通り、政策金利は現行の0.50%に据え置かれた。一方で、タイ国内でも市中感染拡大およびそれによる景気への懸念から21年前半にも利下げを実施する可能性への警戒は継続。タイ10年物国債利回りは1.28%台、同5年物利回りは0.60%台、同2年物利回りは0.38%台と、それぞれ0.13%、0.23%、0.17%と金利低下となった。

(2)(1月の展望)
今月は5日に行われた米ジョージア州での上院議員選の決選投票で民主党候補が勝利し、上院も民主党が過半数を維持、いわゆるブルーウェーブが実現した。バイデン氏はすでに経済閣僚の中核となる財務長官にイエレン前連邦準備制度理事会(FRB)議長を指名していることもあり、大型財政出動が期待されている。大型財政出動による国債増発懸念で米金利は上昇となっていることから、バーツ金利も長期を中心に連れて上昇となりやすいが、一方で足元の新型コロナの感染状況から金融緩和への期待も根強く短期金利は低位で推移となるものと予想される。なお、今月26~27日には米FOMC開催が予定されている。

〈為替動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のドルバーツ相場は続落。コロナワクチン普及への期待や米財務省がタイを為替操作監視対象国に指定したこと等がドルバーツの重しとなった一方、タイでもミャンマー人労働者の集団感染を皮切りに市中感染が急拡大となり今後の経済への影響が懸念されたが、結果的には昨年に続いてドルバーツは30割れで越年となった。月初、タイ中銀は9日にバーツ高に対する追加抑制策を検討する旨を発表。前月にタイ中銀が発表したバーツ高抑制策に新味なく大きな効果が見られなかったことが背景。一方で、英国でコロナワクチンが認可となったことでワクチン普及への期待が大きく高まり、リスク選好度が高まったことに加えて、15~16日開催の米FOMCで一段と緩和的スタンスを示すのではとの期待から、ドルバーツも圧迫され下値を切り下げる展開となった。さらに8日には、タイ中銀が追加バーツ高抑制策検討の会議の中止を発表したことでドルバーツは一段と下落し、一時30割れに。また、16日には米財務省がタイを為替操作監視対象国に指定したことで、ドルバーツは再び下落。一時29.7台と昨年の最安値に迫る水準まで下落した。その後、ミャンマーから不正入国したタイ人の新型コロナ感染、ミャンマー人労働者の集団感染が立て続けに発覚。さらにこれまで抑制に成功してきた市中感染も急増したことで、ドルバーツは押し上げられ30.2台まで回復。月末にかけては、英国と欧州連合(EU)が通商合意に達しノーディールブレグジットを回避できたことや、トランプ米大統領が米追加経済対策法案および21年度歳出法案に署名したことでリスク回避が弱まったこと、またタイでのロックダウン措置が一部に留まったほか、タイ政府がアストラゼネカ社のコロナワクチンの東南アジアでの製造と供給に関する提携協定に署名したことを受けてドルバーツは弱含み、29.9台で越年となった。なお、23日に開催されたタイ中銀MPCでは大方の予想通り政策金利は0.50%に据え置かれた。

(2)(1月の展望)
新型コロナに関してはワクチン実用化への期待の一方で、欧米を中心に国・地域によっては第3波による厳格なロックダウン措置が取られているほか、タイでも市中感染の拡大で経済への影響が懸念される。また米ジョージア州での上院議員選の決選投票で民主党が2議席とも確保して、ブルーウェーブが実現することとなった。米金融緩和の長期化に加えて米財政出動への期待などからドル安の継続が見込まれる。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府が2021年の祝日追加を決定したことを受け、タイ中央銀行(BOT)は2月12日と9月24日を金融機関の祝日として追加した。元々祝日として予定されていた10月25日は平日となり、代わって22日が祝日となる。政府は4月12日と7月27日も祝日にすることを決定したが、金融機関は営業日となる。

(2)タイ政府は1月5日、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年2月28日まで延長することを閣議で決定した。非常事態宣言の延長は9度目となる。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


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タイ国経済概況(2020年12月)

1.景気動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は11月16日、第3四半期および2020~2021年の経済見通しに関するレポートを発表。第3四半期(7~9月)の経済成長率は前年同期比▲6.4%となり、第2四半期(同▲12.1%)から持ち直した。また、第2四半期比では、第3四半期の経済成長率は+6.5%(季節調整済)となった。通年の経済成長見通しは、2020年が▲6.0%、2021年は+3.5~4.5%とした。NESDCは2020年および2021年の重点施策として以下の項目を挙げた。(1)新型コロナウイルス感染の第二波の予防(2)中小企業や観光産業への経済支援(3)政府支出の加速(4)輸出の拡大(5)民間投資の促進(6)農作物価格の下支え、干ばつへの対応(7)政治情勢の安定(8)世界経済の変動によるタイ経済への影響の緩和。

(2)タイ工業連盟(FTI)が11月17日に発表した10月の自動車生産台数は、前年同月比▲2.2%の14.9万台だった。18ヵ月連続の前年同月比マイナスながら、減少幅は1桁台まで回復。内訳は国内向けが同+18.8%の8.2万台、輸出向けが同▲19.6%の6.7万台で、国内向けは前月に続き前年同月比プラスを記録した。1~10月の累計生産台数は、前年同期比▲35.5%の111.2万台となった。また、10月の国内販売台数は前年同月比▲1.4%の7.4万台、輸出台数は同▲16.6%の7.1万台。1~10月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲27.3%の60.9万台、同▲34.6%の59.3万台だった。

(3)FTIが11月17日に発表した10月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲4.2%の21.0万台で、前月に続き20万台の大台を超えた。内訳は完成車(CBU)が同+3.3%の16.7万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲25.0%の4.4万台。1~10月の累計生産台数は、前年同期比▲22.8%の160.5万台となった。また、10月の国内販売台数は前年同月比▲11.3%の12.6万台、輸出台数は同▲36.1%の5.4万台。1~10月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲13.4%の127.2万台、同▲25.2%の56.6万台となっている。


2.投資動向
(1)11月12日から4日間、第37回ASEAN関連首脳会議がオンライン形式で開催された。最終日となる15日には第4回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議が開かれ、インドを除く15ヵ国間で合意、署名に至った。ASEAN加盟国10ヵ国のうち6ヵ国以上と、残る5ヵ国(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)のうち3ヵ国以上で批准が完了次第、発効となる予定。なお、15ヵ国は同日、インドの将来的なRCEP協定加入のための閣僚宣言も発表しており、これによりインドは加入に先行して関連会合へのオブザーバー参加等が認められる。

(2)11月20日、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議がオンライン形式で開催された。加盟国である日本、タイ、米国、中国等、21ヵ国の首脳が参加し、3年ぶりとなる首脳宣言を採択。新型コロナウイルス感染症による影響に対処するため引き続き協働していくことが確認された。また、貿易および投資環境の改善、デジタル経済やイノベーションの促進、持続可能かつ包括的な成長を柱に、2040年までに開かれたダイナミックで強靭かつ平和なアジア太平洋共同体を実現する「プトラジャヤ・ビジョン2040」も発表された。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年10月末の金融機関預金残高は22兆531億バーツ(前年同月比+8.7%)、貸金残高は25兆6,333億バーツ(同+3.8%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(11月の回顧)
11月のバーツ金利は短中期を中心に低下。米大統領・上下両院議員選挙を通過したことやワクチン実用化への期待で外国人投資家の資金がタイ株式市場だけでなく国債市場にも流入したほか、来年前半にタイ中央銀行の利下げがあるのではとの期待が一部で台頭したこと、またタイ経済の低迷によるクレジットの悪化懸念から、一部のタイ地場銀行でローンの貸し出しよりもリスクの低い国債投資を選好する動きがあったと推察されること等が背景。米大統領・上下両院議員選挙に関しては、大統領選では民主党のバイデン氏が勝利を収めるも、上院選は来年1月の決選投票待ちではあるものの、共和党が過半数を維持する見込みとなっており、下院は民主党が議席数を減らしたとはいえ過半数を維持。結果、ねじれ議会となったことで事前に期待された「ブルーウェーブ」は起こらなかった。そのため、大型経済対策およびその財源確保のための国債増発、増税への懸念はいったん後退。タイ10年物国債利回りは1.41%台でほぼ横ばいとなった一方、同5年物利回りは0.84%台、同2年物利回りは0.55%台とそれぞれ0.02%ずつ金利低下となった。

(2)(12月の展望)
今月は10日に欧州中央銀行(ECB)理事会、15~16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、17~18日に日銀金融政策決定会合、23日にタイ中銀金融政策委員会(MPC)と主要中銀の会合が予定されている。ワクチン実用化への期待の一方で、欧米での感染拡大とロックダウンの動向に加え、タイ国内での感染も再びみられるようになってきたことは懸念材料ではあるが、タイ中銀MPCでは現状維持となることが足元のコンセンサス。

〈為替動向〉
(1)(11月の回顧)
11月のドルバーツ相場は約1バーツと大幅に下落。米大統領・上下両院議員選挙を通過したことやコロナワクチン開発の進展で実用化期待が大きく膨らみ、リスク選好度が高まったことでドル売りとなった。米大統領・議会選挙に関しては、大統領選は民主党のバイデン氏、上院選は来年1月の決選投票待ちながら共和党が過半数を維持の見込みで、下院は議席数を減らしたとはいえ民主党が過半数を維持となった。結果、事前にマーケットが期待していた「ブルーウェーブ」は起こらず、ねじれ議会となるとみられる。コロナワクチン開発に関しては、ファイザー社とモデルナ社が良好な治験結果を公表したことを受けてドルバーツは急落。急速なバーツ高への懸念からタイ中銀はバーツ高抑制策を発表。(1)外貨預金の統合および預入自由化、(2)対外証券投資規制の緩和、(3)バーツ建て債券投資の事前登録の義務化の3本柱であったが、新味に乏しいものであった。タイ中銀がバーツ高抑制策について発表すると表明して以降、警戒感からドルバーツも小幅上昇したが、実際の発表を受けてやや失望売りとなった。一方でその後もタイ中銀のスタンスへの警戒感は継続しドルバーツは30.2台でクローズ。

(2)(12月の展望)
欧米を中心にコロナ感染の拡大が続いており、またタイ国内でも再び感染への懸念が台頭しているが、ワクチン実用化への期待は継続するであろうことや、米政治、金融政策の面からドル売りの流れは継続する可能性が高い。今月は10日にECB理事会、15~16日に米FOMC、17~18日に日銀金融政策決定会合、23日にタイ中銀MPCが予定されている。ECBでは追加緩和パッケージの発表、米FOMCではフォワードガイダンス強化への期待等があるが、タイ中銀MPCは現状維持が足元のコンセンサス。


5.政治動向、その他
(1)タイ財務省によれば、10月末時点の公的債務残高は7兆8,292億バーツで、対GDP比率は49.53%となった。2021年度(2020年10月~2021年9月)の財政予算執行に関しては10月7日付の官報で告示されている。歳出は2020年度よりも860億バーツ多い3兆2,860億バーツ。なお、9月26日の閣議で1兆4,654億バーツの追加借入が承認されており、2021年度末には公的債務残高の対GDP比率は57.23%になる見込み。

(2)タイ政府は11月24日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年1月15日まで延長する旨を官報に掲載した。非常事態宣言の延長は8度目。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



 
 
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タイで使用されている無線用語

読み方の例:
W.0 = (ว.0 ウォー・スーン)
W.2 = (ว.2 ウォー・ソーン)
W.29 = (ว.29 ウォー・イーシップガオ)
タイ文字 ว. は W. に置き換えた。


W.0 命令
W.00 少し待て
W.01 職場/ 勤務地
W.02 宿泊場所/ 家
W.1 どこにいる?
W.2 応答せよ/聞こえるか?/聞こえた
W.3 メッセージを繰り返せ
W.4 行動する/ 実施する
W.5 秘密
W.6 応答願う/ 返事をして
W.7 援助願う
W.8 ニュース/ メッセージ
W.9 緊急事態発生
W.10 通常配置場所にいる/ 無線連絡可
W.11 休憩中/ 無線連絡可
W.12 休憩中/ 無線連絡不可
W.13 電話連絡請う
W.14 終業/ 無線スイッチオフ
W.15 会いに来い/ ・・・で約束
W.16 無線電波チェック
W.16-1 意味がわからない
W.16-2 音声不明瞭
W.16-3 音声はだいたい聞き取れる程度
W.16-4 音声明瞭
W.16-5 音声は非常に明瞭
W.17 危険につき通過禁止
W.18 テスト走行のため車両持ち出し/ 故障車両
W.19 制圧された/ 襲われた
W.20 取り押さえ/ 取り調べ
W.21 ・・・から出発
W.22 ・・・に到着
W.23 通過
W.24 時間/ 時間を知らせよ
W.25 行く
W.26 無線経由の連絡を最小限にせよ
W.27 電話で連絡せよ
W.28 会議/ 会議がある
W.29 用事がある
W.30 数を知らせよ
W.31 1 チャンネルに変更
W.32 2 チャンネルに変更
W.33 3 チャンネルに変更
W.34 4 チャンネルに変更
W.35 行動準備完了
W.36 準備 100%完了/ 準備万端
W.37 準備 50%完了
W.38 準備 1/3 完了
W.39 交通状態が混雑している
W.40 車両事故
W.41 交通整理灯
W.42 車両/先導車両
W.43 車両チェック場所
W.44 FAX 連絡請う
W.50 食事中
W.55 便宜を図る
W.60 親戚/ 兄弟/ 友達
W.61 ありがとう
W.62 アイテム
W.63 家
W.64 個人的な用事がある
W.601 無線機
W.602 無線アンテナ
W.603 車両
W.604 テレビを見る
W.605 食事中
W.606 話していることは事実ではない
W.607 私的な用事
W.608 騒ぎを起こす人/ 問題を起こす人
W.609 妨害電話
W.610 恋しい
W.621 金
W.100 すみません/ ごめんなさい


Source:
DMX CONSULTANTS (THAILAND) CO., LTD.
http://www.datamax.co.th
DMX グループはタイに進出する日系企業の成長に貢献します。


 
 
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タイ投資委員会のEV事業・医療関連事業向け新投資奨励策

タイ投資委員会(BOI)はEV事業向け・医療関連事業向けの新たな投資奨励策やIPO事業の復活を承認

11月4日、タイ投資委員会(BOI)はバッテリー型電気自動車(以下、BEV)及びその重要部品の現地生産に重点を置き、電気自動車(以下、EV)サプライチェーンの主要側面をカバーする包括的な恩典実施を承認した。これにはあらゆるサイズの商用車と船舶も含まれる。


1. EV事業向けの新たなパッケージ
この新たな投資奨励パッケージは2018年に終了した初代のEVパッケージに続く恩典で、乗用車、バス、トラック、オートバイ、三輪車、船舶など広範囲に渡る電気自動車を対象とする。これら電気自動車の恩典は、以下の通り。

・四輪車:投資額50億バーツ以上の適格プロジェクトは、プラグインハイブリッド(以下、PHEV)に対して3年間の法人所得税免税が与えられる。またBEVは8年間の法人所得税免除に加え、研究開発投資がある場合には恩典期間が延長される。投資額が50億バーツ未満の適格プロジェクトはPHEVとBEVに3年間の法人所得税免税が与えられるが、BEV生産を2022年までに開始、主要部品の追加生産、3年以内の生産台数が最低10,000台に達し、かつ研究開発投資がある等の要件を満たせば、BEVの免税期間が延長される。

・オートバイ、三輪車、バス、トラック:適格プロジェクトには、3年間の法人所得税免除が与えられ、追加の要件を満たす場合には免除期間が延長される。

・500トン未満の電動船舶生産プロジェクトには、8年間の法人所得税免除の対象となる。

BOIはまた、高電圧ハーネス、減速ギア、バッテリー冷却システム、回生ブレーキシステムの4種類のEV部品を投資奨励の重要部品リストに追加した。これらの4つカテゴリーは全て8年間の法人所得税免除を受けることが出来る。

EVバッテリーの現地生産を促進するため、BOIは現地市場向けのバッテリーモジュールおよびバッテリーセルの生産に対して、タイ国内で入手できない原材料の輸入関税を2年間にわたって90%引き下げる追加恩典も承認した。

BOIはこれまでに、ハイブリッド電気自動車(HEV)が5件、PHEVが6件、BEVが 13件、電気バス2件を含む26件の様々なタイプの電気自動車生産プロジェクトを承認しており、合計生産能力は566,000台/年以上に上る。すでに7つのプロジェクトが商業生産を開始した。それらは、日産、ホンダ、トヨタがHEVの生産を始めているほか、メルセデスベンツとBMWはPHEVをFOMMと高野がBEVの生産を開始している。


2. 臨床研究(Clinical Research)
タイにおけるヘルスケア分野の競争力を高め医療ハブとしての地位を強化するために、BOIは臨床研究を促進するための委託研究機関(Contract Research Organization: CRO)と臨床研究センター(Clinical Research Center: CRC)の運営に対して、8年間の法人所得税免除の新しい恩典を承認した。

資格を得るためには、タイ国籍を持つ新規採用の臨床研究人員の給与として年間150万バーツ以上を支出するか、プロジェクトに100万バーツ(土地、運転資金、車両代を含まない)以上を投資しなければならない。


3. 高齢者向け病院とサービス
高齢化社会に備えるため、BOIは高齢者や介護サービス事業者に対して税制上の優遇措置を与えることを承認した。

・高齢者向け病院は、50床以上の収容能力があることを条件に、5年間の法人所得税免除が受けられる。

・高齢者や介護サービスは、50床以上の収容能力があり、タイ国籍者が資本金の51%以上を保有していることを条件に、3年間の法人所得税免除が受けられる。


4. 国際調達事務所のカテゴリーの復活
BOIは、地域ビジネス及び投資ハブとしてのタイの地位を強化することを目的に、国際調達事務所(International Procurement Office: IPO)カテゴリーの復活を承認した。

IPO事業者は、国家のサプライチェーン発展を促進するための政策の一環として、機械および輸出のための生産に使用する原材料の輸入関税が免除される。


5. 生産効率向上措置の延長
4つの施策を網羅した「生産効率向上措置」の恩典申請期限が2年延長され、2022年末までとなった。また、3年間の法人所得税50%控除を含む恩典パッケージは、製造業とサービス業の両方に適用されることを明確にするため、当初の名称から「生産」という文言を削除した。
また、これまでは農産業事業のアップグレードへの投資に限定されていたが、家具工場や製紙工場などのサプライチェーン関連活動における持続可能な開発を促進するために、食品安全管理システム(ISO 22000)や持続可能な森林管理システム(ISO 14061)等の国際的持続可能性基準の実施を奨励するための条件を拡大した。

生産効率向上の4つの対策は、省エネと代替エネルギーの利用、機械の改良による生産効率向上、研究開発、効率向上のためのエンジニアリング設計、持続可能な開発を推進することを目的としている。


問い合せ先:
BOI バンコク本部 ジャパン・デスク
Tel: 0 2553 8464
E-mail : head@boi.go.th
Line:@boinews
Facebook:BOI NEWS
URL: www.boi.go.th



 
 
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タイ国経済概況(2020年11月)

(1)国際通貨基金(IMF)は10月21日、アジア大洋州地域経済見通しを発表。タイの経済成長率について、2020年は▲7.1%、2021年は+4.0%と予測した。また、タイ財務省財政局(Fiscal Policy Office:FPO)は10月29日、タイの経済成長率につき、2020年は▲7.7%(予想レンジ▲7.2~▲8.2%)、2021年は+4.5%(同+4.0~+5.0%)との予測を発表。今年7月時点では2020年の経済成長率予測を▲8.5%としており、0.8ポイントの上方修正となった。さらに同局は2020年の輸出額を▲7.8%(同▲7.3~▲8.3%)、民間消費を▲3.0%(同▲2.5~▲3.5%)、民間投資を▲9.8%(同▲9.3~▲10.3%)と予測している。

(2)タイ工業連盟(FTI)が10月19日に発表した9月の自動車生産台数は、前年同月比▲11.3%の15.0万台だった。17ヵ月連続の前年同月比マイナスだが、7ヵ月ぶりに15万台を超え、前月に続き10万台の大台を超えた。内訳は国内向けが同+5.1%の8.2万台、輸出向けが同▲25.4%の6.8万台。1~9月の累計生産台数は、前年同期比▲38.8%の96.3万台となった。また、9月の国内販売台数は前年同月比▲3.5%の7.8万台、輸出台数は同▲34.4%の6.4万台。1~9月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲29.8%の53.5万台、同▲36.5%の52.1万台だった。

(3)FTIが10月19日に発表した9月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲1.2%の20.4万台だった。20万台の大台を超えるのは7ヵ月ぶり。内訳は完成車(CBU)が同+3.6%の17.5万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲22.8%の2.9万台。1~9月の累計生産台数は、前年同期比▲25.0%の139.5万台となった。また、9月の国内販売台数は前年同月比▲1.2%の13.3万台、輸出台数は同▲12.5%の5.7万台。1~9月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲13.7%の114.6万台、同▲23.9%の51.3万台となっている。


2.投資動向
(1)タイ国投資委員会(BOI)が発表した投資統計によれば、第3四半期まで(1~9月)の新規投資申請件数は前年同期比+1%の1,098件、申請金額は同▲15%の2,237億バーツだった。このうちタイ政府が誘致を強化している重点産業への申請が金額ベースで58%を占め、中でもBOIが4月に新たな奨励策を発表していた医療産業については、申請件数が同2.3倍の65件、申請金額も同+75%の147億バーツと大幅に増加。また、1~9月の海外直接投資(FDI)は新規申請件数が同▲1%の657件、申請金額は同▲29%の1,185億バーツであった。国・地域別では日本が申請件数139件、申請金額375億バーツで件数・金額ともに最多だったが、前年同期比では件数が同▲12%、申請金額も同▲33%と落ち込んだ。

(2)タイ国鉄は10月28日、高速鉄道の敷設に関する事業費506億バーツの契約「コントラクト2.3」を中国の請負業者と締結。同契約はバンコクと東北部ナコンラチャシマ間を結ぶ第1期区間の敷設計画の一部で、線路、電気システム、機械の購入、車両の調達および人材訓練等の費用負担を含むもので、中国側との交渉が難航していた。最終的にタイ国内においては、バンコクからラオスとの国境であるノンカイまでをつなぐ607キロメートルの高速鉄道の敷設が予定されているが、まずは2026年中に第1期区間、253キロメートルの竣工を目指す。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年9月末の金融機関預金残高は22兆328億バーツ(前年同月比+9.5%)、貸金残高は25兆6,209億バーツ(同+3.5%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(10月の回顧)
10月のバーツ金利は全ての年限でほぼ横ばい。米追加経済対策を巡る協議は難航したものの、米大統領選、上下両院選挙への思惑で米金利が上昇したことで、特に米金利に連動しやすいバーツ長期金利は小幅ながら連れて上昇。米選挙に関しては大統領、上下両院ともに民主党が勝つという「ブルーウェーブ」への期待で大規模経済対策が打たれ、国債増発、増税との見方となっていたが、4年前の大統領選での予想外の結果がイメージされ、市場参加者は「ブルーウェーブ」トレードになかなか乗り切れずであった。タイ国内では、10月よりセタプット氏がタイ中銀総裁に就任。就任後の会見では、タイ経済が新型コロナ前の水準に戻るには2年以上かかるとの見通しを示し、また金融政策についてはすべての政策ツールを使う必要があり、非伝統的な手段導入の可能性も除外しないと述べた。一方、会見より前に発表されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)の議事録では、委員会は過去最低水準の政策金利は景気回復を促すとみる一方、追加利下げは現状では効果が薄く金融システムの脆弱性が増す可能性があると指摘。その上で限られた政策余地を適切でより効果的なタイミングに残しておくことが不可欠と判断したことが明らかにされており、必要に応じて政策総動員も辞さないが、適切なタイミングに限ると考えられる。またタイ国内において反政府活動が活発化し、非常事態宣言が発令され、タイSET株価指数が2%下落となる局面もあったが、タイ国債市場の反応は限定的であった。タイ10年物国債利回りは1.41%台、同5年物利回りは0.86%台とそれぞれ前月末対比では0.02%上昇、0.01%低下、同2年物利回りは0.02%上昇となった。

(2)(11月の展望)
米大統領選ではバイデン氏が勝利したが、上院は共和党、下院は民主党が過半数は維持と事前予想の「ブルーウェーブ」は起きなかった。今後は米組閣が注目とはなるであろうが、欧米での新型コロナ感染拡大およびそれに伴うロックダウン導入、経済データ等に注目が移る可能性も。今月は18日にタイ中銀MPCが予定されているが、政策金利の維持が予想されている。

〈為替動向〉
(1)(10月の回顧)
10月のドルバーツ相場は下落。米追加経済対策を巡る協議に加えて、米大統領・上下両院議員選が迫ってきたことで米選挙への思惑に振らされる展開となった。米選挙に関しては、大統領、上下両院とも民主党が勝つという「ブルーウェーブ」への期待で、大規模経済対策が打たれる一方で増税が行われるとの見方がドルの重しとなった。ただし、4年前の大統領選での予想外の結果がイメージされ、市場参加者は「ブルーウェーブ」トレードにはなかなか乗り切れずであった。新型コロナ感染に関して、欧米を中心に感染拡大に歯止めが利かない中、欧州の一部で再びロックダウンの導入が決定、タイ国内でも反政府活動の活発化への懸念といったリスク材料はあったが、米選挙への注目が勝った格好となった。タイ中銀は今月よりセタプット氏が新総裁に就任。就任後初の会見で、タイ経済が新型コロナ前の水準に戻るには2年以上かかるとの見通しを示し、また金融政策については全てのツールを使う必要があり、非伝統的な手段の導入の可能性も除外しないとの意向を示した。月初、米追加経済対策への楽観論や良好な米経済指標リスクセンチメントが改善したが、トランプ米大統領および共和党上院議員数名が新型コロナに感染したことが判明したことでリスク警戒が高まりドルバーツは上昇し月間高値を付けた。その後、トランプ米大統領が早期に退院したことを受けてドルバーツも下落に転じた。国慶節明けに人民元が大幅に上昇、約1年半ぶりの高値を付けたことを受けてドルバーツも下落し、一時31.0台半ばをつけた。その後、中国人民銀行が顧客の外貨購入時に市中銀行に対して義務付けていた準備金の撤廃を発表。これは元高抑制のための措置と見られ、人民元が下落するとバーツも連れ安となりドルバーツは反発。さらに米追加経済対策を巡る協議に進展が見られないことや、新型コロナワクチン開発への期待の後退等でドル高が進行。15日早朝、プラユット首相は前日の反政府デモを受けてバンコク都に非常事態宣言を発令したことで、ドルバーツは小幅上昇で反応。反政府デモが継続していることでタイSET株価指数が2%下落したが、ドルバーツの値動きは極めて限定的であった。月末近く、欧米での新型コロナ感染拡大に加えて米追加経済対策の進展も見られず米国株が急落し、リスク回避の動きが強まったがアジア通貨全般にこじっかりとなった。その後も海外市場ではリスク回避の動きが強まったが、ドルバーツは小動きに留まり、31.1台でクローズ。

(2)(11月の展望)
注目されていた米選挙は、バイデン氏が大統領に当選、一方で上院は共和党、下院は民主党が過半数を維持し、ねじれ議会は継続の見通し。これを受けて大幅にドル安となりドルバーツも下落となった。今後はポストトランプトレードがしばらく続くと考えられるが、欧米での新型コロナ感染拡大によるロックダウン導入が進む可能性や、経済データに再び注目が戻る可能性には注意が必要。


5.政治動向、その他
(1)タイ財務省令(2020年6月10日付)に基づき、10月より源泉徴収税の電子納税システム「e-Withholding Tax」が導入された。これにより歳入局への納税が三井住友銀行を含む11の銀行経由で可能になったほか、同局のウェブサイト上で納税履歴が確認できるようになった。また同システムを利用して納税する場合、2021年末までサービス提供や請負等の源泉徴収税率が通常の3%から2%に軽減される促進策も実施されている。

(2)タイ政府は10月29日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を11月30日まで延長する旨を官報に掲載した。非常事態宣言の延長は7度目。 



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.  


 
 
 
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タイ国経済概況(2020年10月)

1.景気動向
(1)タイ中央銀行は9月23日、タイの2020年の経済成長率を6月時点の▲8.1%から▲7.8%へ上方修正した。2021年については+5.0%から+3.6%に下方修正している。また、世界銀行は同月29日、EAST ASIA AND THE PACIFIC ECONOMIC UPDATE(東アジア・大洋州地域の経済見通し2020年10月版)を発表。これによれば、タイの2020年の経済成長率は基調シナリオで▲8.3%、下振れた場合には▲10.4%。2021年については、前者が+4.9%、後者が+3.5%としている。なお、ASEAN新興国(シンガポール・ブルネイを除く8ヵ国)の2020年の経済成長率予測(単純平均)は、基調シナリオで▲2.6%、下振れた場合には▲4.1%としている。

(2)タイ工業連盟(FTI)が9月17日に発表した8月の自動車生産台数は、前年同月比▲29.5%の11.7万台だった。16ヵ月連続の前年同月比マイナスだが、5ヵ月ぶりに10万台の大台に達した。内訳は国内向けが同▲20.7%の6.6万台、輸出向けが同▲38.3%の5.1万台。1~8月の累計生産台数は、前年同期比▲42.1%の81.3万台となった。また、8月の国内販売台数は前年同月比▲14.8%の6.9万台、輸出台数は同▲29.6%の5.7万台。1~8月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲32.9%の44.8万台、同▲36.8%の45.8万台だった。

(3)FTIが9月17日に発表した8月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲14.7%の17.0万台だった。内訳は完成車(CBU)が同▲11.9%の13.8万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲25.1%の3.2万台。1~8月の累計生産台数は、前年同期比▲28.0%の119.1万台となった。また、8月の国内販売台数は前年同月比▲4.1%の14.3万台、輸出台数は同▲21.8%の6.0万台。1~8月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲15.1%の101.2万台、同▲29.2%の45.5万台となっている。


2.投資動向
(1)タイ商務省は輸出入管理法に基づき、428品目の電子廃棄物の輸入を全面的に禁止することを決定した。9月14日付で官報に布告が掲示され、翌15日に施行となった。電気・電子部品やプリント基板等の廃棄物が禁輸の対象。タイではすでに2018年より、中国の廃棄物輸入規制に伴う輸入量急増を受け、天然資源・環境省が電子廃棄物と廃プラスチックの輸入を原則禁止していた。

(2)ASEAN加盟国間で、9月20日から認定輸出者(Certified Exporter: CE)が自ら原産地証明書を作成することが可能となる、ASEAN地域自己証明制度(ASEAN-Wide Self Certification:AWSC)が正式に導入された。原産地証明の手続を簡素化する制度として、企業活動や域内貿易の活性化が期待される。なお、AWSCを活用するにはASEAN各国の当局よりCEの認可を受ける必要がある。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年8月末の金融機関預金残高は22兆1,687億バーツ(前年同月比+10.6%)、貸金残高は25兆5,778億バーツ(同+3.5%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(9月の回顧)
9月のバーツ金利は4年を起点に短いゾーンは小幅金利上昇、長いゾーンは金利低下と長短金利差が縮小。タイ政策金利に下げ余地があまりない一方で、タイ国内での政治懸念、欧州を中心とした新型コロナ感染の再拡大およびそれに伴う再ロックダウンへの懸念、米追加経済対策を巡る先行き不透明感等、内外でのリスクの台頭が背景。月初、プリディ氏が在任26日にして突如辞任を表明したことでタイ国内政治への懸念が高まりタイSET株価指数は下落、ドルバーツは上昇となったが、追加経済対策に関してはプラユット首相が主導しており大きな影響はないであろうとの見方もあったことから債券市場への影響は限定的であった。その後、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る懸念の再燃や米株安でリスクセンチメントが悪化、米金利が低下するとバーツ長期金利もこれに伴い低下。さらにタイ航空の更生手続を裁判所が受理との報道でタイSET株価指数が下落し、タイ国債が買われバーツ金利は一段と低下。中旬に開催された米公開市場委員会(FOMC)ではフォワードガイダンスが強化され、またパウエル議長が先行きに関して慎重な見方を示したことで米株下落、米金利上昇となった。これを受けてバーツ金利も長期を中心に小幅上昇。23日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)では事前予想通り政策金利は0.50%に据え置かれた。一方、景気見通しについては、今年の経済成長率を▲7.8%と上方修正の一方で、来年の成長率見通しを+3.6%と下方修正。外国人観光客の受け入れの遅れが主な要因とした。しかし、予想の範囲内であったことから相場への影響は限定的であった。月末にかけても欧州を中心とした新型コロナ感染再拡大、米追加経済対策の行方等、懸念材料はあったがバーツ金利の反応は限定的で膠着推移となった。タイ10年物国債利回りは1.39%台、同5年物利回りは0.87%台とそれぞれ前月末対比では0.11%、0.05%低下、同2年物利回りは0.02%上昇となった。

(2)(10月の展望)
新型コロナ感染の再拡大が懸念されていたところ、トランプ米大統領および共和党上院議員数名の新型コロナ陽性が判明し、米政治への懸念が台頭している。タイ国内で反政府活動が継続していることには一定の注意は必要ながら、経済に大きな影響を与えるレベルにはまだ達していないことや、次期財務大臣が指名されたことは安心材料。タイ中銀の利下げ余地が限定的であることは相場変動を小さくしているが、特に長期金利は米金利に連動しやすいことから、大統領選を来月に控えた米国の情勢には留意が必要。

〈為替動向〉
(1)(9月の回顧)
9月のドルバーツ相場は上昇。財務相の突然の辞任や反政府活動の継続といったタイ内政問題、米追加経済対策を巡る協議に妥結の見通しが立たないこと、欧州を中心とした新型コロナ感染拡大およびそれに伴う再ロックダウンの可能性等、リスク材料が目白押しとなったことが主な背景。月初、前月末からのドル軟調地合いでドルバーツは一時30.9台半ばと約1ヵ月ぶりに31割れとなったが、プリディ氏が就任26日にして財務相辞任を表明し、タイ政治への懸念からドルバーツは反転上昇。さらに、101日ぶりに新型コロナの市中感染が確認されたことが拍車をかけてドルバーツは一気に31.4台半ばまで上昇。一方、8月タイ消費者物価指数が前年同月比▲0.50%とマイナス圏ながら予想を上回る結果となったことがドルバーツの重しとなり、上昇幅を縮める局面もあった。中旬には、欧州中央銀行(ECB)メンバーの一部が欧州圏景気見通しに自信を深めているとの報道を受けリスクセンチメントが改善したことで、ドルバーツも反落に転じた。タイ航空の更生手続を裁判所が受理との報道で株安となるとドルバーツも再び上昇に転じたが、良好な中国経済指標を受けて人民元が買われるとほかのアジア通貨と同様にバーツも買われ、ドルバーツは下落。中旬に開催された米FOMCでは、フォワードガイダンスの修正が行われたことでハト派的にとらえられたが、反対も2名いたことで内部での議論は分かれている印象も与えた。想定よりもハト派的であった米FOMCやタイ国内での大規模デモが激化しなかったこと、および1,060億ドル規模の予算案が議会通過したことでドルバーツは一段と下落し、再び30.9台半ばまで下落。23日に開催されたタイ中銀MPCでは事前予想通り政策金利は現行の0.50%維持が決定された。経済成長率見通しに関して、今年は▲7.8%(前回予想は▲8.1%)、来年は+3.6%(同+5.0%)と修正。その後、欧州での新型コロナ感染拡大およびそれに伴う再ロックダウンへの警戒、米追加経済対策を巡る協議の行方への懸念等からドルバーツは一時31.7台半ばまで急騰。月末にかけては実需フローに押され31.6台後半でクローズ。

(2)(10月の展望)
欧州を中心に新型コロナ感染拡大がかつて以上の勢いで広がっていることからロックダウン再導入への懸念が台頭しているところに、今月初めにはトランプ米大統領および共和党上院議員数名の新型コロナ感染が判明。米大統領選を来月に控える中での報道であっただけに米政治への懸念も広がっている。米政治リスクへの見方はドル高、ドル安で分かれているがいずれにしてもインパクトが出る可能性があるので注意が必要。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府は10月5日付の官報で、同月1日付で財務相にアーコム元運輸相が任命されたと発表。8月に新閣僚として就任したプリディー前財務相は、9月2日付で同ポストを辞職していた。アーコム新財務相は国家経済社会開発委員会(NESDC)長官等を経て、2014年に発足した軍事政権で運輸相を務めた経歴を持つ。

(2)タイ政府は9月29日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を10月31日まで延長する旨を官報に掲載した。非常事態宣言の延長は6度目。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.

 
 
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タイ国経済概況(2020年9月)

1.景気動向
(1)国家経済社会開発委員会(NESDC)は8月17日、2020年第2四半期の経済成長率を前年同期比▲12.2%と発表した。内訳を見ると、輸出が同▲28.3%(物品輸出:同▲15.9%、サービス輸出:同▲70.4%)、輸入が同▲23.3%(物品輸入:同▲19.3%、サービス輸入:同▲37.9%)、民間消費と民間投資はそれぞれ、同▲6.6%、同▲15.0%でともに減少。一方で、政府支出と政府投資はそれぞれ、同+1.4%、同+12.5%でともに増加した。産業別では、農業が同▲3.2%、製造業が同▲14.0%、サービスが同▲12.3%。産業別の詳細においても、建設(+7.4%)等を除き軒並みマイナスとなった。また同日、NESDCは同期の失業率を2.0%と発表。失業率はここ数年、1%前後で推移しており、大幅な悪化となった。

(2)タイ工業連盟(FTI)が8月20日に発表した7月の自動車生産台数は、前年同月比▲47.7%の8.9万台だった。15ヵ月連続で前年同月比マイナスとなった一方で、前月比では5月以降プラスが続いている。内訳は国内向けが同▲48.0%の4.6万台、輸出向けが同▲47.4%の4.4万台。1~7月の累計生産台数は、前年同期比▲43.8%の69.5万台となった。また、7月の国内販売台数は前年同月比▲24.8%の5.9万台、輸出台数は同▲39.7%の5.0万台。1~7月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲35.9%の38.8万台、同▲37.7%の40.0万台だった。

(3)FTIが8月20日に発表した7月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲26.9%の14.4万台だった。前年同月比マイナスながら、前月比では+60.6%と大幅プラスとなった。内訳は完成車(CBU)が同▲23.7%の11.9万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲38.7%の2.5万台。1~7月の累計生産台数は、前年同期比▲29.8%の102.2万台となった。また、7月の国内販売台数は前年同月比▲7.9%の13.7万台、輸出台数は同▲40.1%の3.9万台だった。


2.投資動向
(1)タイ国投資委員会(BOI)が発表した投資統計によれば、上半期(1~6月)の新規投資申請件数は前年同期比+7%の754件、申請金額は同▲17%の1,589億バーツだった。このうちタイ政府が誘致を強化している重点産業への申請が金額ベースで52%を占め、中でもBOIが4月に新たな奨励策を発表していた医療産業については、申請件数が同2.7倍の52件、申請金額も同2.2倍の131億バーツと大幅に増加。また、海外直接投資(FDI)は新規申請件数が同+5%の459件、申請金額は同▲34%の759億バーツであった。国・地域別では日本が申請件数99件、申請金額226億バーツで最多だったが、申請金額は同▲45%落ち込んだ。

(2)バンコク日本人商工会議所(JCC)は8月28日、2020年度賃金労務実態調査の概要を発表。2020年の賃上率(中央値)は製造・非製造業ともに4.0%、2019年度の賞与(中央値)は製造業が3.4ヵ月、非製造業が2.5ヵ月であった。なお、本調査は4月13日調査票発送、5月22日締切のため新型コロナウイルスのその後の影響については反映していない。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると2020年7月末の金融機関預金残高は22兆1,735億バーツ(前年同月比+11.2%)、貸金残高は25兆5,699億バーツ(同+3.8%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(8月の回顧)
8月のバーツ金利は長期を中心に上昇。米国をはじめグローバルに、新型コロナ対策として財政支出が拡大していることによる債券の需給懸念やタイ政治不安等が背景。前月の米連邦公開市場委員会(FOMC)がハト派的に捉えられたことから米金利が低下地合いとなっていた中、月初バーツ金利も弱含んで推移。5日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)では事前予想通り政策金利は現行の0.50%で据え置かれた。景気に関してはロックダウンの緩和で経済に回復の兆しが出ていると指摘した一方、経済活動が新型コロナ前の水準に戻るまでには少なくとも2年かかると指摘。政策金利については、過去と比べても近隣諸国と比較してもすでに非常に低くもはや主役ではないとしたが、緊急時には有している手段を活用する用意があるとした。またトランプ米大統領が中国の一部アプリが関わる取引を禁止する大統領令に署名したほか、香港のキャリー・ラム行政長官らに米政権が制裁を科すことを発表。中国はこれを受けて米国当局者や共和党議員等に制裁を科すと報復を発表し、米中の対立激化への懸念が高まった。一方、米国で追加経済対策の協議が難航していた中、トランプ米大統領が失業保険追加給付延長措置を含む大統領令に署名したことで米金利が上昇となった。これを受けてバーツ金利も上昇した。その後発表されたタイ第2四半期GDPが前年同期比12.2%減と予想ほどは落ち込まなかったとはいえ、アジア通貨危機以来の落ち込みを示したことで、バーツ金利は一時小幅下落となった。しかし、タイ国内で2014年のクーデター以降最大規模となるデモが行われた後、デモに関わった人権派弁護士が逮捕される等、反政府デモの活発化やタイ政治への懸念等からバーツ金利は上昇となった。さらに米FOMC議事要旨でイールドカーブ・コントロール(YCC:長短金利操作)の導入に消極的であることが明らかになったことで、米金利が上昇したことに伴いバーツ金利も上昇。ジャクソンホールでの年次シンポジウムでは、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が平均インフレ率目標の導入を示唆した。この直後、米金利は低下したが消化後には上昇に転じたことでバーツ金利も上昇。タイ10年物国債利回りは1.50%台、同5年物利回りは0.92%台とそれぞれ前月末対比では0.24%、0.14%上昇、同2年物利回りは0.09%上昇となった。

(2)(9月の展望)
今月初めにプリディー氏が財務相在任わずか26日で突然辞任を表明。タイの政治、経済への不安が高まったものの内閣改造後の追加経済対策はプラユット首相が主導権を握っていることから、財務大臣交代が財政政策に与える影響は基本的には限定的と考えられるが、不在期間が長期化すると政策の決定・執行に影響があることには留意が必要。また、特に長期金利は米金利に連動しやすいことから米金利動向にも注意が必要。今月は15~16日に米FOMC、23日にタイ中銀MPCの開催が予定されている。

〈為替動向〉
(1)(8月の回顧)
8月のドルバーツ相場は上下するも結果的には小幅下落。米FOMC議事録でYCCの導入に消極的であることが明らかとなったことや、タイ国内ではアジア通貨危機以来となるGDP成長率の落ち込みと経済が不調となっている中、2014年のクーデター以降最大規模の反政府デモが行われ、また反政府集会が活発化していったこと等でドルバーツが上昇する局面もあった。しかし、ジャクソンホールでのパウエル米FRB議長の講演で平均インフレ率目標の導入が示唆されたことで米金利が長期間にわたって低金利となるであろうとの見方となり、再びドル安の流れとなりドルバーツは月間では小幅下落となった。月初、ドルバーツは31.2台でオープン。前月の米FOMCがハト派的に受け止められた流れや米国での新型コロナ感染拡大に歯止めがかからない一方、米議会で追加経済対策が難航したことでドル安が継続しドルバーツは一時31割れに。5日に開催されたタイ中銀MPCでは事前予想通り政策金利は据え置きが決定された。景気に関してはロックダウンの緩和で経済に回復の兆しが出ているとの指摘の一方で、経済活動が新型コロナ流行前の水準に戻るまでに少なくとも2年かかるとした。またバーツ高が景気回復に水を差す可能性に懸念を示し、必要な措置を講じる方針を示したことで警戒感が出たことや、米中対立激化への懸念でドルバーツは上昇。反政府デモが活発化しタイ政治への懸念が台頭したことや、タイ第2四半期GDPが前年同期比12.2%減とアジア通貨危機以来の落ち込みを示したことで、ドルバーツは一段と上昇し一時31.6台に。しかし輸出勢のバーツ買いフローも相応にあったことから一巡後は反落。月末近くに開催されたジャクソンホールでの年次シンポジウムでの、パウエル米FRB議長の講演をきっかけにドル売りとなりドルバーツは下落し、31割れを試すも失敗。その後は印中の地政学リスク等から反転し31.1台でクローズ。

(2)(9月の展望)
今月初めにプリディー氏が財務相就任後わずか26日で辞任したことを受けて、タイ政治、経済への不安が高まり足元ドルバーツは上昇。内閣改造後、追加経済対策はプラユット首相が主導権を握っていることから、財務大臣交代が財政政策に与える影響は基本的には限定的と考えられるが、不在期間が長期化すると政策の決定・執行に影響があることには留意が必要。今月は15~16日に米FOMC、23日にタイ中銀MPCの開催が予定されている。


5.政治動向、その他
(1)7月にソムキット氏をはじめとする閣僚が辞任したことを受け、8月12日、新閣僚が正式に就任、プラユット改造内閣が発足した。以前から外務相を務めるドーン大臣も副首相を兼務することとなり、副首相は6名に増えた。しかしながら9月1日、財務相に就任していたプリディー氏が辞任を表明、同月2日付で辞職した。
(2)タイ政府は8月25日の閣議にて、付加価値税(VAT)の税率7%の適用期間について、期限となっている今年の9月末よりさらに1年延長することを承認した。VATの税率は法律で10%と定められているものの、長らく暫定税率7%が適用されており、10%への移行は先送りされ続けている。
(3)タイ政府は8月28日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を9月30日まで延長する旨を官報に掲載した。非常事態宣言の延長は5度目となる。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



 
 
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