タイ国経済概況(2023年2月)

1.景気動向
(1)タイ商務省の発表によれば、2022年の輸出額が前年比+5.5%の2,870.7億米ドル、輸入額は同+13.6%の3,031.9億米ドルで、いずれも過去最高を記録した。一方で、貿易収支は▲161.2億米ドルと大幅なマイナスとなった。2022年12月単月では、輸出額が前年同月比▲14.6%の217.2億米ドル、輸入額が同▲12.0%の227.5億ドルでどちらも3ヵ月連続前年同月比で減少した。また、タイ工業連盟は2023年上半期の輸出見通しを、世界的な景気後退が予想されることを理由に減速するだろうと指摘した。

(2)盤谷日本人商工会議所(JCC)は1月31日、2022年下期日系企業景気動向調査の結果を発表した。2022年11月29日~12月23日にかけて会員企業1,627社を対象に調査を行い、508社(回答率31.9%)から回答を得た。同調査によれば、2022年下期の業況感(DI値:業況が「上向いた」と回答した数から「悪化した」と回答した数を差し引いた値)見通しは21で、プラスは維持したものの2022年上期の27からプラス幅は縮小した。また2023年上期の見通しについては、インバウンドの増加による経済への好影響や原材料不足解消等の期待から28へと伸長した。

(3)タイ工業連盟(FTI)が1月24日に発表した2022年12月の自動車生産台数は、前年同月比+2.7%の15.9万台だった。7ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は国内向けが前年同月比▲5.1%の7.3万台、輸出向けが同+10.5%の8.6万台。新型コロナ前の2019年12月の生産台数13.4万台を上回った。また、2022年12月の国内新車販売台数は前年同月比▲9.0%の8.3万台で、輸出台数は同+10.2%の11.2万台だった。2019年12月の販売台数は8.9万台、輸出台数は7.2万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を大きく上回った。

(4)FTIが1月24日に発表した2022年12月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+1.4%の22.0万台で、6ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+7.5%の18.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲19.6%の4.0万台。2019年12月の生産台数は21.9万台であり、新型コロナ前とほぼ同水準だった。また、2022年12月の国内販売台数は前年同月比+4.4%の14.4万台、輸出台数は同+45.1%の5.1万台だった。2019年12月の販売台数は11.4万台、輸出台数は3.6万台であり、ともに新型コロナ前の水準を大きく上回った。


2.投資動向
1月23日、タイ投資委員会(BOI)は2022年の投資奨励申請が合計2,119件の6,646億バーツ(約200億米ドル、前年比+39%)に達したと発表した。産業別の申請額では、首位が電子および電気機器の1,295億バーツだった。2位は自動車の1,054億バーツで、うち540億バーツはEV、PHEV、HEV等電気自動車およびバッテリーを含むEVサプライチェーン関連だった。なお、データセンターへの投資も425億バーツあった。投資申請のうちFDIは前年比+36%の4,339億7,100万バーツだった。国別申請額では、首位が中国の774億バーツ(158件)、日本の508億バーツ(293件)、米国の503億バーツ(33件)、台湾の452億バーツ(68件)、シンガポールの443億バーツ(178件)が続いた。EEC(東西経済回廊)への申請額は前年比+84%の3,588億バーツだった。また、BOI理事会はHQBizPortalと呼ばれるワンストップサービスの設置を承認した。地域本部の設立を検討する企業に対するコンサルテーションおよび円滑化サービスのリストを提供する予定。企業が地域本部設立に係るライセンス取得のための時間を短縮し、タイの国際ビジネスセンターと地域貿易ゲートウェイとしての地位を強化することが狙い。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2022年の12月末時点で金融機関預金残高は24兆5,735億バーツ(前年同月比+4.6%)、貸金残高は28兆6,195億バーツ(同+4.1%)といずれも増加。また、1月25日にBOTは政策金利を1.00%から1.50%に引き上げた。

〈1月の回顧〉
(1)(為替動向)
1月のドルバーツは上値重く推移。月初、ドルバーツは34台半ば近辺でオープンし、中国のゼロコロナ政策撤回で観光産業が活性化するとの見方からバーツ買いが進行。米消費者物価指数(CPI)が前月比▲0.1%、コアは前月比+0.3%とインフレがやや落ち着いてきている結果となったことに加えて、Fedのハーカー氏より「今後は25bp利上げが適切になるだろう」との発言が伝わるとマーケットは再度金利低下、ドル売りに拍車がかかる展開となり、ドルバーツは33を割り込んだ。その後の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決定され、日銀が大規模な景気刺激策を段階的に縮小するのではないかという織り込みが剥がれ、ドル円は2%近く急騰。ドルバーツも一時的に33台を回復する場面が見られるも、米経済指標のさえない結果や、中国経済回復期待による根強いバーツ買い圧力が続き、下旬にかけてドルバーツは一時32台半ば付近まで下落した。月末にかけて、タイ中銀金融政策委員会(MPC)を通過後もドルバーツは方向感が定まらず概ね32台後半で上値重く推移し、結局33ちょうど近辺で越月となった。

(2)(金利動向)
1月のバーツ金利は、短中期ゾーンは前月末対比上昇、長期ゾーンは下落する展開となった。上旬、グローバルに金利低下圧力がかかる中、バーツ金利に関しても全年限で下落。さらに、米ISM非製造業指数や米CPIの弱い結果により、金利低下圧力は継続し、タイ10年債利回りは一時2.38%台まで低下した。ただ、2022年中国GDPの伸び率が通年で+3.0%と新型コロナ禍当初の2020年に記録した+2.2%を除けば1976年以降で最低となったこともあり、リスクオフムードから新興国アセットは下落。加えて、タイ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利を0.25%引き上げ1.50%とすることを決定し、短中期ゾーンを中心にバーツ金利は上昇する流れとなった。月末にかけても、米国の10~12月期GDPが市場予想を上回り、他の経済指標も概ね良好だったことから米金利の上昇につれてバーツ金利も上昇し、結局タイ10年物国債利回りは2.52%台、同5年物利回りは2.08%台、同2年物利回りは1.79%台と、それぞれ前月末より▲0.12%、+0.12%、+0.16%の値動きとなった。

(3)〈今後のイベント・見通し〉
先月は、中国のゼロコロナ政策撤回に加えて、米経済指標の悪化によりドル売りバーツ買いが優勢となるも、月後半にかけてドルバーツは32台後半での狭いレンジ内で推移する展開となった。なお、今月に入り発表された注目のFOMCでは、利上げ幅を0.25%に縮小したものの、一部で期待されていた声明文中での金利政策の変更を示唆するような変更はなく、まだ利上げが続く余地があることを強調した。さらに、米雇用統計では労働市場の堅調さが再確認され、ISM非製造業景況感指数では2020年6月以来の大幅な伸びとなり、ドルバーツは33台後半まで上昇した。今月は米国やタイの中銀イベントの予定はないものの、経済指標の結果や要人発言によってドルバーツは上下に振れる可能性もあり、引き続き方向感のない展開を予想。ただし雇用・所得環境やインフレの落ち着きがFRBの想定よりも遅れていれば、もう一度インフレ警戒への姿勢を強める可能性もあり、その場合ドルバーツはまだまだ下値の堅い値動きが継続しそうだ。


4.政治動向、その他
観光・スポーツ省は1月23日、2022年の訪タイ外国人旅行者が前年比26倍の1,115万3,026人だったと発表した(新型コロナ前の2019年は3,980万人)。国別ではマレーシアからが最多で、2位がインド、3位がシンガポールだった。日本は13位。また、2022年12月の訪タイ外国人旅行者は224万1,195人だった。今年1月に中国がゼロコロナ政策による制限を撤廃したことにより、2023年はさらなる外国人旅行者の増加が見込まれる。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。ンコック支店 SBCS CO., LTD.



 
 
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