タイ国経済概況(2021年5月)

1.景気動向
(1)タイ商務省が4月23日に発表した貿易統計によれば、3月の輸出額は前年同月比+8.5%の242.2億米ドルだった。2ヵ月連続で200億米ドルを上回り、単月の輸出額としては過去最高を記録した。変動の激しい金・石油・武器を除いた輸出額も同+12.0%であった。輸出品目別では電気製品・部品、電子製品・部品、自動車・部品がいずれも前年同月比2桁増。国・地域別では経済回復が続く中国向け輸出(同+35.4%、31.1億米ドル)が全体の伸びをけん引した。

(2)アジア開発銀行は4月28日、「アジア経済見通し2021年版」を発表。タイの経済成長率について、2021年は3.0%、2021年は4.5%のプラス成長になるとの予測を示した。同報告によれば、世界的な新型コロナウイルスの流行による貿易および海外旅行への打撃はまだしばらく続くことが予測されるため、2021年は緩やかな回復にとどまり、経済の復調が本格化するのは2022年になる。タイの物品貿易についてはすでに回復基調にあり、日本や中国、米国といった輸出相手国の需要増を受け、自動車や電子製品、農産品等の主要品目を中心に今後も伸びが期待できるとした。一方、観光産業を主とするサービス貿易が復調し始めるのは2022年になる見通し。

(3)タイ工業連盟(FTI)が4月27日に発表した3月の自動車生産台数は、前年同月比+10.7%の16.3万台だった。2ヵ月続いて前年同月比プラスを記録した。内訳は国内向けが同+7.3%の6.6万台、輸出向けが同+13.1%の9.7万台で、国内向けは3ヵ月ぶりにプラスに転じた。1~3月の累計生産台数は、前年同期比+2.7%の46.6万台となった。また、3月の国内新車販売台数は前年同月比+25.6%の8.0万台、輸出台数は同+16.4%の10.5万台。国内新車販売台数は、3月24日から開催されたバンコク国際モーターショーに伴う販売促進が貢献し、3ヵ月ぶりのプラスを記録した。

(4)FTIが4月27日に発表した3月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+21.4%の23.6万台となり、3ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+1.3%の18.2万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+21.9%の5.4万台。1~3月の累計生産台数は、前年同期比+8.9%の67.5万台となった。また、3月の国内販売台数は前年同月比+15.6% の17.0万台、輸出台数は同+24.2%の10.2万台だった。


2.投資動向
タイ電子取引開発機構(ETDA)が発表した「THAILAND INTERNET USER BEHAVIOR 2020」によれば、2020年のタイ人のインターネット平均利用時間は1日あたり11時間25分だった。前年と比較すると、1時間3分の増加となった。新型コロナウイルスの影響により、オンラインを通じた活動が増えたことが要因として考えられる。世代別の利用時間では、Y世代(20~39歳)が最長で1日平均12時間26分であった。また、利用目的の一位はソーシャルメディア(SNS)で、動画・音楽等の視聴、情報検索がそれに続いた。また、インターネット接続の利便性の向上やオンラインのコンテンツ拡充等を背景とし、同調査が開始された2014年から2020年にかけて、タイ人のインターネット使用時間は約3倍に伸びたことが明らかになった。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2021年の3月末時点で金融機関預金残高は22兆5,431億バーツ(前年同月比+4.3%)、貸金残高は26兆4,104億バーツ(同+4.3%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のバーツ金利は長期金利が低下した一方で5年以下の金利はまちまちとなったが、長短金利差は縮小。米長期金利の低下およびタイ中銀の国債入替プログラムの終了等で、バーツ長期金利が低下。タイにおけるコロナ感染第3波による経済への影響が懸念され、タイ財務省が今年のタイ経済成長率を従来の2.7%から2.3%に下方修正したことも、投資家のタイ国債への需要を増加させた。一方で、5月初のタイ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利の維持がコンセンサスであったことから、2~3年もののタイ国債はむしろ金利上昇となった。タイ10年物国債利回りは1.82%台、同5年物利回りは1.06%台となり、それぞれ0.13%、0.02%金利低下、同2年物利回りは0.53%台となり、0.03%の金利上昇となった。

(2)(5月の展望)
長期金利を中心に、米国の景気回復とそれに伴うインフレ上昇期待を背景とした米金利動向に加え、タイ国内でのコロナ動向も注目される。コロナリスクは依然不透明であり、金融当局者のスタンスは依然景気フレンドリーで引き締めを急いでおらず、マーケット参加者のインフレ懸念との温度差があることには注意を要する。また、今月初に開催されたタイ中銀MPCでは大方の予想通り政策金利は現行維持が決定されたが、利下げの前に信用緩和等がより現状の経済には有効と強調されていた。

〈為替動向〉
(1)(4月の回顧)
4月のドルバーツ相場はいったん上昇も月末にかけて失速し、前月比では小幅下落となった。月前半はバイデン米大統領が発表したインフラ投資計画や米国でのコロナワクチン接種進展による景気回復期待に加えて良好な米経済統計から、ドルバーツも節目とされた31.5を超えて上昇。一方で、前月ドルバーツ上昇をけん引した米長期金利が伸び悩んだことが、ドルバーツの重しとなりいったん反落。ただし、タイ国内でのコロナ感染者数はソンクラン以降急速に拡大、抑制措置が導入されたことがドルバーツをサポートしたが、月前半に付けた高値には届かず。月末近くに実施された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、足元の景気認識は一段階引き上げられたものの、緩和的政策の継続が示されたことを受けてドルバーツは下落し、31.1台で越月。

(2)(5月の展望)
米国の景気回復と、それに伴うインフレ上昇期待を背景とした米金利動向をテーマとした展開が継続されるが、マーケットの期待と米金融当局者のスタンスには隔たりがある。引続き、経済データおよび金融当局者の発言のほか、コロナ動向が注目される。


5.政治動向、その他
(1)4月24日、インドネシアの首都ジャカルタで東南アジア諸国連合(ASEAN)臨時首脳会議が開催され、2月のクーデター以降、国際的に注目を集めるミャンマー問題について協議が行われた。ミャンマーから軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官、タイからはドン副首相兼外務相が出席した。会議後、1)暴力の即時停止、2)平和的解決に向けた建設的対話の開始、3)ASEAN特使による対話仲介、4)ASEANによる人道支援の提供、5)ASEAN特使のミャンマー訪問、からなる「5項目合意」が発表された。
(2)タイ政府は4月29日、非常事態令第9条に基づく決定事項(第22号)を発令し、バンコク都を含む6都県を「最高度厳格管理地域」に決定した。5月1日以降、同地域において20名以上の活動は原則禁止となっており、飲食店での店内飲食も認められない。翌30日にはタイへの入国者に対する防疫措置および隔離に関する方針が変更され、一部の入国者を対象に7~10日間以上に短縮されていた隔離期間が14日間以上に戻った。この方針は5月1日から別途変更の指令があるまで適用される。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.

 
 
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