タイ国経済概況(2021年1月)

1.景気動向
(1)タイ中央銀行(BOT)は2020年12月30日に11月の経済報告書を発表。タイ経済は民間消費・投資等の指数が上向く等、回復が続いているものの、観光業といった依然低調なセクターもあり回復の足並みは揃っていないとした。11月の輸出額は前年同月比▲3.1%の189億米ドルで、依然としてマイナスではあるが徐々に復調しつつある。要因としては貿易相手国の需要が徐々に回復していることが挙げられ、特に自動車・自動車部品、農業製品、石油関連製品の輸出が上向いている。また、11月輸入額は同▲3.3%の170億米ドルで、10月の▲13.9%から大幅に改善。ほぼすべての品目分類でマイナス幅は縮小した。

(2)タイ工業連盟(FTI)が12月17日に発表した11月の自動車生産台数は、前年同月比+11.9%の17.2万台だった。前年同月比プラスは2019年4月以来で、19ヵ月ぶりとなる。内訳は、国内向けが同+18.6%の9.7万台、輸出向けが同+4.2%の7.5万台。1~11月の累計生産台数は、前年同期比▲31.7%の128.4万台となった。また、11月の国内販売台数は前年同月比+2.7%の7.9万台、輸出台数は同▲0.9%の7.5万台。1~11月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲24.7%の68.8万台、同▲32.0%の66.7万台だった。国内販売は18ヵ月ぶりに前年同月比プラスを記録。輸出も主要仕向け先であるアジアとオセアニアがプラスとなり、前年並みにまで回復した。

(3)FTIが12月17日に発表した11月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲8.8%の21.4万台だった。20万台超えは3ヵ月連続。内訳は完成車(CBU)が同+2.2%の17.6万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲38.9%の3.8万台。1~11月の累計生産台数は、前年同期比▲21.4%の181.9万台となった。また、11月の国内販売台数は前年同月比▲11.4%の12.0万台、輸出台数は同▲28.6%の6.7万台。1~11月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲13.3%の139.2万台、同▲23.8%の64.9万台となっている。


2.投資動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は、プラユット首相が委員長を務めた12月21日の本委員会において、政府が誘致しているターゲット産業への投資やデジタル技術の導入を促進する奨励策を承認した。ドゥアンジャイBOI長官によれば、投資金額が10億バーツ以上、かつ奨励証書の発行から12ヵ月以内に事業を開始したターゲット産業の大型投資案件には、5~8年間の法人税免税恩典に加え、追加恩典として5年間の法人税50%減免が付与される。またAIやビッグデータ分析といったデジタル技術を導入した既存事業には、3年間の法人税50%減免恩典が付与される。前者は2021年末まで、後者は2022年末までに申請を行う必要等がある。

(2)タイ国鉄(SRT)は、2021年6月にバンコクのバンスー新中央駅周辺開発事業(ゾーンA)の再入札実施を予定している。バンスー新中央駅は2021年中に開業する見込みで、周辺エリアにおいてオフィス、商業施設、住宅、ホテルのほかイベント関連施設の開発が計画されている。ゾーンA開発は2019年7月に入札を行ったものの応札者がなく、入札条件の再検討が行われていた。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年11月末の金融機関預金残高は22兆3,314億バーツ(前年同月比+9.7%)、貸金残高は25兆7,835億バーツ(同+4.0%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のバーツ金利は低下。英国でファイザー社とビオンテック社が共同開発したコロナワクチンの使用認可が下りたことを皮切りに、コロナワクチン普及への期待が高まったほか、年末近くにトランプ米大統領が追加経済対策法案および21年度歳出法案に署名、英国と欧州連合(EU)が通商合意に至ったことでノーディールブレグジット回避と好材料はあったものの、足元のコロナ感染拡大に伴う経済への懸念が勝った。コロナ禍が一段と厳しくなっていった中、米連邦公開市場委員会(FOMC)に対して、米追加経済対策案がなかなか妥結しないこともあり一段の緩和の可能性が期待され、一部では資産購入ペースや平均期間の変更等が行われるのではとの観測が台頭。実際には、量的緩和政策の長期化を示唆する方向にフォワードガイダンスを強化したが、依然緩和的なスタンスを維持。23日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)では大方の予想通り、政策金利は現行の0.50%に据え置かれた。一方で、タイ国内でも市中感染拡大およびそれによる景気への懸念から21年前半にも利下げを実施する可能性への警戒は継続。タイ10年物国債利回りは1.28%台、同5年物利回りは0.60%台、同2年物利回りは0.38%台と、それぞれ0.13%、0.23%、0.17%と金利低下となった。

(2)(1月の展望)
今月は5日に行われた米ジョージア州での上院議員選の決選投票で民主党候補が勝利し、上院も民主党が過半数を維持、いわゆるブルーウェーブが実現した。バイデン氏はすでに経済閣僚の中核となる財務長官にイエレン前連邦準備制度理事会(FRB)議長を指名していることもあり、大型財政出動が期待されている。大型財政出動による国債増発懸念で米金利は上昇となっていることから、バーツ金利も長期を中心に連れて上昇となりやすいが、一方で足元の新型コロナの感染状況から金融緩和への期待も根強く短期金利は低位で推移となるものと予想される。なお、今月26~27日には米FOMC開催が予定されている。

〈為替動向〉
(1)(12月の回顧)
12月のドルバーツ相場は続落。コロナワクチン普及への期待や米財務省がタイを為替操作監視対象国に指定したこと等がドルバーツの重しとなった一方、タイでもミャンマー人労働者の集団感染を皮切りに市中感染が急拡大となり今後の経済への影響が懸念されたが、結果的には昨年に続いてドルバーツは30割れで越年となった。月初、タイ中銀は9日にバーツ高に対する追加抑制策を検討する旨を発表。前月にタイ中銀が発表したバーツ高抑制策に新味なく大きな効果が見られなかったことが背景。一方で、英国でコロナワクチンが認可となったことでワクチン普及への期待が大きく高まり、リスク選好度が高まったことに加えて、15~16日開催の米FOMCで一段と緩和的スタンスを示すのではとの期待から、ドルバーツも圧迫され下値を切り下げる展開となった。さらに8日には、タイ中銀が追加バーツ高抑制策検討の会議の中止を発表したことでドルバーツは一段と下落し、一時30割れに。また、16日には米財務省がタイを為替操作監視対象国に指定したことで、ドルバーツは再び下落。一時29.7台と昨年の最安値に迫る水準まで下落した。その後、ミャンマーから不正入国したタイ人の新型コロナ感染、ミャンマー人労働者の集団感染が立て続けに発覚。さらにこれまで抑制に成功してきた市中感染も急増したことで、ドルバーツは押し上げられ30.2台まで回復。月末にかけては、英国と欧州連合(EU)が通商合意に達しノーディールブレグジットを回避できたことや、トランプ米大統領が米追加経済対策法案および21年度歳出法案に署名したことでリスク回避が弱まったこと、またタイでのロックダウン措置が一部に留まったほか、タイ政府がアストラゼネカ社のコロナワクチンの東南アジアでの製造と供給に関する提携協定に署名したことを受けてドルバーツは弱含み、29.9台で越年となった。なお、23日に開催されたタイ中銀MPCでは大方の予想通り政策金利は0.50%に据え置かれた。

(2)(1月の展望)
新型コロナに関してはワクチン実用化への期待の一方で、欧米を中心に国・地域によっては第3波による厳格なロックダウン措置が取られているほか、タイでも市中感染の拡大で経済への影響が懸念される。また米ジョージア州での上院議員選の決選投票で民主党が2議席とも確保して、ブルーウェーブが実現することとなった。米金融緩和の長期化に加えて米財政出動への期待などからドル安の継続が見込まれる。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府が2021年の祝日追加を決定したことを受け、タイ中央銀行(BOT)は2月12日と9月24日を金融機関の祝日として追加した。元々祝日として予定されていた10月25日は平日となり、代わって22日が祝日となる。政府は4月12日と7月27日も祝日にすることを決定したが、金融機関は営業日となる。

(2)タイ政府は1月5日、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年2月28日まで延長することを閣議で決定した。非常事態宣言の延長は9度目となる。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.


 
 
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