タイ国経済概況(2021年6月)

1.景気動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は5月17日、2021年第1四半期の経済成長率が前年同期比▲2.6%であったと発表。新型コロナウイルス感染症の影響から民間消費支出とサービス輸出がマイナスであった一方、物品輸出および民間投資はプラスに回復、さらに公共投資の拡大が寄与し、前期(2020年第4四半期)の同▲4.2%から下げ幅は縮小した。また、同期の失業者数はおよそ76万人で失業率は2.0%、前期の1.9%からわずかに、前年同期比の1.0%からは大幅な上昇となった。なお、2021年通年の経済成長率に関しては、2月時点の予測値である前年比+2.5~+3.5%から、同+1.5~+2.5%へと下方修正した。ただし、輸出および政府支出の拡大に加え、前年の成長率が低水準であった反動でプラス成長は維持となる見込み。

(2)タイ工業連盟(FTI)が5月20日に発表した4月の自動車生産台数は、前年同月比+322.3%の10.4万台だった。前年同月の生産台数が新型コロナウイルス感染拡大による打撃のため低調だったことから大幅に増加した。内訳は国内向けが同+306.2%の4.5万台、輸出向けが同+335.2%の6.0万台だった。一方で、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年4月の生産台数は15.0万台であり、コロナ前の水準までは回復していない。1~4月の累計生産台数は、前年同期比+19.2%の57.0万台となった。また、4月の国内新車販売台数は前年同月比+93.1%の5.8万台、輸出台数は同+160.2%の5.3万台。2019年4月の販売台数は8.6万台、輸出台数が6.7万台だったことから、こちらもコロナ前の水準までは回復していない。1~4月の累計国内新車販売台数は前年同期比+9.6%の25.2万台、累計輸出台数は同+14.9%の31.1 万台だった。

(3)FTIが5月20日に発表した4月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+93.0%の16.0万台となり、4ヵ月連続のプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+106.9%の13.1万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+47.8%の2.9万台。2019年4月の生産台数は16.9万台であり、こちらはコロナ前の水準まで戻りつつある。1~4月の累計生産台数は、前年同期比+17.8%の83.5万台となった。また、4月の国内販売台数は前年同月比+69.8%の13.4万台、輸出台数は同+77.8%の6.0万台だった。2019年4月の販売台数が12.0万台、輸出台数が5.9万台であったことから、こちらはコロナ前の水準まで回復しつつある。


2.投資動向
5月5日付のタイ国投資委員会(BOI)の発表によると、2021年第1四半期(1~3月)の投資申請額は前年同期比+80%の1,233.6億バーツで、件数は同+14%の401件だった。このうち、海外直接投資(FDI)の新規申請額は同+143%の619.8億バーツで、件数は同▲17%の191件だった。国別申請額では、1位が韓国の104.8億バーツで、中国(103.6億バーツ)、シンガポール(102.8億バーツ)、ノルウェー(100.0億バーツ)が続いた。韓国企業とノルウェー企業による医療用ゴム手袋の大型共同出資事業が大きく結果に影響した。国別申請件数では、1位が中国の37件で、日本(33件)、シンガポール(28件)、香港(16件)の順となった。重点産業への新規申請額は748億バーツで、そのうち医療分野への投資が184億バーツ(29件)で前年同期比100倍以上と大幅に拡大して首位であり、2位は電気・電子分野の174億バーツ(34件)だった。 東部経済回廊(EEC)への新規申請額は前年同期比+39%の644億バーツだった。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2021年の4月末時点で金融機関預金残高は22兆796億バーツ(前年同月比+3.9%)、貸金残高は26兆5,188億バーツ
(同+3.7%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈5月の回顧〉
(1)(金利動向)
5月のバーツ金利はすべての年限において小動きに留まったが、短期および長期金利が小幅上昇となった一方で中期金利は幾分か低下。タイ国内でのコロナ感染拡大第3波が収束の気配を見せず、抑制措置が継続していることや観光業再開が遅れていること等からタイ経済の回復への懸念がバーツ金利の重しとなったが、一方で国債増発懸念が特に長期金利を押し上げる要因となった。政府による5,000億バーツの追加景気パッケージの発表後にはバーツ長期金利が顕著に上昇となった。そのため、多くの市場参加者がバーツ国債の平均残存年限を短縮。5日に開催されたタイ中銀金融政策委員会(MPC)は大方の予想通り政策金利は全会一致で現行の0.50%に据え置かれた。声明文では、コロナワクチンの適切かつタイムリーな調達および供給がタイ経済にとっても最も重要な問題であると指摘したほか、十分に低い水準にある政策金利を引き下げるよりも信用政策(信用緩和)や債務再編の方が現状の経済に対してより適切な手法であると強調。また従来通り、最適かつ最大限に効果が出るタイミングで利下げカードを切るために政策余地は温存するとした。タイ10年物国債利回りは1.84%台、同5年物利回りは1.07%台、とそれぞれ0.02%、0.01%金利上昇、同2年物利回りは0.52%台と0.01%金利低下となった。

(2)(為替動向)
5月のドルバーツ相場はおおむね31台前半を中心としたレンジ内での推移に留まった。米国の金融政策がマーケット参加者の最大の注目となっている。そういった中で発表された米4月雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが市場予想を大幅に下回る伸びに留まったが、失業率、時間当たり賃金ともに改善。NFPに関しては、手厚い失業保険やコロナ禍で育児のために在宅を強いられているケース等さまざまな原因が指摘されている。米4月消費者物価指数(CPI)は予想を大きく上回ったが、米金融当局者からは供給サイドの問題によるもので一時的との見方が多く示された。米金融当局者の発言からはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長を中心に、インフレ上昇は一時的なものに留まり景気回復がまだら模様である中では緩和的な金融政策を維持とのスタンスが示されていたが、一部の当局者からは今後の会合において債券購入プログラム縮小の議論開始が可能になってくるとの見方が示され、米金融当局内で意見は分かれていそうだ。タイ国内では、5日にタイ中銀が金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を現行の0.50%に据え置きと決定。声明文では、コロナワクチンの調達と供給をいかに適切にタイムリーに行えるかがタイ経済にとって最も重要な問題だと指摘。また、十分に低い政策金利の引き下げよりも信用緩和の方が有効であることを強調した。米国のインフレ期待、それに伴う米長期金利の上昇、米金融政策変更への期待は引続き根強いものの、経済データがまだら模様であることがドルバーツの重しとなっている。一方でタイ国内でのコロナ感染拡大第3波が、内需や観光業に与える影響への懸念がドルバーツのサポート材料となっており、両方の要因からレンジ内での推移となった。

〈今後のイベント・見通し〉
6月は15~16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、23日にタイ中銀MPCが予定されているほか、欧州中央銀行(ECB)、日銀、英中銀と主要国の金融政策会合が多く予定されている。米FOMCでは金融政策の現状維持がコンセンサスながら、債券購入プログラム縮小開始に関しての議論の有無や四半期ごとに示される景気・金利見通しが注目されている。タイ中銀MPCは国際通貨基金(IMF)が利下げを推奨したものの、現段階でのコンセンサスは依然現状維持。


5.政治動向、その他
(1)タイ政府は5月8日付の官報にて、個人情報保護法の複数の条項について適用時期の再延長を告示した。本法は2019年5月に一部条文が施行され、2020年5月27日より完全施行が予定されていたが、政府は新型コロナウイルス感染症の流行ならびに政府機関および民間企業への準備期間への配慮を理由に、同年5月19日の閣議において延長を決定。完全施行は2021年5月31日より後になるとされていた。しかし、タイの経済・社会は引続き新型コロナの影響を受けており、適用準備が十分に整っていない状況にある等の理由から、再延長が決定された。これにより、罰則規定等を含む本法の完全施行は2022年5月31日より後となる。

(2)タイ政府は5月27日付の官報にて、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年7月31日まで延長する旨を決定した。非常事態宣言の延長は12度目となる。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.


 
 
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