タイ国経済概況(2020年12月)

1.景気動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は11月16日、第3四半期および2020~2021年の経済見通しに関するレポートを発表。第3四半期(7~9月)の経済成長率は前年同期比▲6.4%となり、第2四半期(同▲12.1%)から持ち直した。また、第2四半期比では、第3四半期の経済成長率は+6.5%(季節調整済)となった。通年の経済成長見通しは、2020年が▲6.0%、2021年は+3.5~4.5%とした。NESDCは2020年および2021年の重点施策として以下の項目を挙げた。(1)新型コロナウイルス感染の第二波の予防(2)中小企業や観光産業への経済支援(3)政府支出の加速(4)輸出の拡大(5)民間投資の促進(6)農作物価格の下支え、干ばつへの対応(7)政治情勢の安定(8)世界経済の変動によるタイ経済への影響の緩和。

(2)タイ工業連盟(FTI)が11月17日に発表した10月の自動車生産台数は、前年同月比▲2.2%の14.9万台だった。18ヵ月連続の前年同月比マイナスながら、減少幅は1桁台まで回復。内訳は国内向けが同+18.8%の8.2万台、輸出向けが同▲19.6%の6.7万台で、国内向けは前月に続き前年同月比プラスを記録した。1~10月の累計生産台数は、前年同期比▲35.5%の111.2万台となった。また、10月の国内販売台数は前年同月比▲1.4%の7.4万台、輸出台数は同▲16.6%の7.1万台。1~10月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲27.3%の60.9万台、同▲34.6%の59.3万台だった。

(3)FTIが11月17日に発表した10月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲4.2%の21.0万台で、前月に続き20万台の大台を超えた。内訳は完成車(CBU)が同+3.3%の16.7万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲25.0%の4.4万台。1~10月の累計生産台数は、前年同期比▲22.8%の160.5万台となった。また、10月の国内販売台数は前年同月比▲11.3%の12.6万台、輸出台数は同▲36.1%の5.4万台。1~10月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲13.4%の127.2万台、同▲25.2%の56.6万台となっている。


2.投資動向
(1)11月12日から4日間、第37回ASEAN関連首脳会議がオンライン形式で開催された。最終日となる15日には第4回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議が開かれ、インドを除く15ヵ国間で合意、署名に至った。ASEAN加盟国10ヵ国のうち6ヵ国以上と、残る5ヵ国(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)のうち3ヵ国以上で批准が完了次第、発効となる予定。なお、15ヵ国は同日、インドの将来的なRCEP協定加入のための閣僚宣言も発表しており、これによりインドは加入に先行して関連会合へのオブザーバー参加等が認められる。

(2)11月20日、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議がオンライン形式で開催された。加盟国である日本、タイ、米国、中国等、21ヵ国の首脳が参加し、3年ぶりとなる首脳宣言を採択。新型コロナウイルス感染症による影響に対処するため引き続き協働していくことが確認された。また、貿易および投資環境の改善、デジタル経済やイノベーションの促進、持続可能かつ包括的な成長を柱に、2040年までに開かれたダイナミックで強靭かつ平和なアジア太平洋共同体を実現する「プトラジャヤ・ビジョン2040」も発表された。


3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年10月末の金融機関預金残高は22兆531億バーツ(前年同月比+8.7%)、貸金残高は25兆6,333億バーツ(同+3.8%)といずれも増加。


4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(11月の回顧)
11月のバーツ金利は短中期を中心に低下。米大統領・上下両院議員選挙を通過したことやワクチン実用化への期待で外国人投資家の資金がタイ株式市場だけでなく国債市場にも流入したほか、来年前半にタイ中央銀行の利下げがあるのではとの期待が一部で台頭したこと、またタイ経済の低迷によるクレジットの悪化懸念から、一部のタイ地場銀行でローンの貸し出しよりもリスクの低い国債投資を選好する動きがあったと推察されること等が背景。米大統領・上下両院議員選挙に関しては、大統領選では民主党のバイデン氏が勝利を収めるも、上院選は来年1月の決選投票待ちではあるものの、共和党が過半数を維持する見込みとなっており、下院は民主党が議席数を減らしたとはいえ過半数を維持。結果、ねじれ議会となったことで事前に期待された「ブルーウェーブ」は起こらなかった。そのため、大型経済対策およびその財源確保のための国債増発、増税への懸念はいったん後退。タイ10年物国債利回りは1.41%台でほぼ横ばいとなった一方、同5年物利回りは0.84%台、同2年物利回りは0.55%台とそれぞれ0.02%ずつ金利低下となった。

(2)(12月の展望)
今月は10日に欧州中央銀行(ECB)理事会、15~16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、17~18日に日銀金融政策決定会合、23日にタイ中銀金融政策委員会(MPC)と主要中銀の会合が予定されている。ワクチン実用化への期待の一方で、欧米での感染拡大とロックダウンの動向に加え、タイ国内での感染も再びみられるようになってきたことは懸念材料ではあるが、タイ中銀MPCでは現状維持となることが足元のコンセンサス。

〈為替動向〉
(1)(11月の回顧)
11月のドルバーツ相場は約1バーツと大幅に下落。米大統領・上下両院議員選挙を通過したことやコロナワクチン開発の進展で実用化期待が大きく膨らみ、リスク選好度が高まったことでドル売りとなった。米大統領・議会選挙に関しては、大統領選は民主党のバイデン氏、上院選は来年1月の決選投票待ちながら共和党が過半数を維持の見込みで、下院は議席数を減らしたとはいえ民主党が過半数を維持となった。結果、事前にマーケットが期待していた「ブルーウェーブ」は起こらず、ねじれ議会となるとみられる。コロナワクチン開発に関しては、ファイザー社とモデルナ社が良好な治験結果を公表したことを受けてドルバーツは急落。急速なバーツ高への懸念からタイ中銀はバーツ高抑制策を発表。(1)外貨預金の統合および預入自由化、(2)対外証券投資規制の緩和、(3)バーツ建て債券投資の事前登録の義務化の3本柱であったが、新味に乏しいものであった。タイ中銀がバーツ高抑制策について発表すると表明して以降、警戒感からドルバーツも小幅上昇したが、実際の発表を受けてやや失望売りとなった。一方でその後もタイ中銀のスタンスへの警戒感は継続しドルバーツは30.2台でクローズ。

(2)(12月の展望)
欧米を中心にコロナ感染の拡大が続いており、またタイ国内でも再び感染への懸念が台頭しているが、ワクチン実用化への期待は継続するであろうことや、米政治、金融政策の面からドル売りの流れは継続する可能性が高い。今月は10日にECB理事会、15~16日に米FOMC、17~18日に日銀金融政策決定会合、23日にタイ中銀MPCが予定されている。ECBでは追加緩和パッケージの発表、米FOMCではフォワードガイダンス強化への期待等があるが、タイ中銀MPCは現状維持が足元のコンセンサス。


5.政治動向、その他
(1)タイ財務省によれば、10月末時点の公的債務残高は7兆8,292億バーツで、対GDP比率は49.53%となった。2021年度(2020年10月~2021年9月)の財政予算執行に関しては10月7日付の官報で告示されている。歳出は2020年度よりも860億バーツ多い3兆2,860億バーツ。なお、9月26日の閣議で1兆4,654億バーツの追加借入が承認されており、2021年度末には公的債務残高の対GDP比率は57.23%になる見込み。

(2)タイ政府は11月24日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を2021年1月15日まで延長する旨を官報に掲載した。非常事態宣言の延長は8度目。



(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



 
 
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