タイ国経済概況(2024年8月)


1.景気動向
(1)タイ商務省の7月26日の発表によれば、2024年上半期の輸出額は前年同期比+2.0%の1,452.9億米ドル、輸入額は同+3.0%の1,505.3億米ドルで、貿易収支は52.4億米ドルの赤字となった。品目別輸出額は、自動車・同部品が同▲3.4%(197.0億米ドル)、電子製品・同部品が同+11.7%(248.4億米ドル)、農産物・加工品は同+3.3%(265.2億米ドル)、そのうち米は同+48.1%(33.0億米ドル)、天然ゴムは同+30.6%(22.8億米ドル)だった。国・地域別輸出額は、首位が米国で前年同期比+11.2%の257.7億米ドル、次いで中国が同▲1.2%の176.0億米ドル、日本が同▲7.5%の115.7億米ドルだった。2024年通年の輸出額目標の+1~2%を達成できると予想される。

(2)工業連盟(FTI)が7月25日に発表した6月の自動車生産台数は、前年同月比▲20.1%の11.6万台だった。内訳は国内向けが同▲43.08%の3.5万台、輸出向けが同▲3.7%の8.2万台。新型コロナ前の2019年6月の生産台数17.3万台を下回った。また、6月の国内新車販売台数は同▲26.0%の4.8万台で、輸出台数は同+0.3%の8.9万台。新型コロナ前の2019年6月の販売台数が8.6万台、輸出台数が9.8万台であり、ともに新型コロナ前の水準を下回った。

(3)FTIが6月25日に発表した6月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲25.8%の18.4万台で、12ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年6月の生産台数は20.4万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲24.4%の15.7万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲32.8%の2.7万台。また、6月の国内販売台数は同▲16.1%の15.0万台、輸出台数は同▲31.4%の2.7万台だった。2019年6月の販売台数が15.0万台、輸出台数が3.0万台であり、販売台数は新型コロナ前の水準と同程度だった。

(4)FTIが7月17日に発表した2024年6月の産業景況感指数(TISI)は、前月比▲1.3ポイントの87.2で3ヶ月連続下落し、過去2年間の最低値となった。FTIはタイ国内政治の不安定、家計債務の拡大により購入能力の低下していること等が景気回復に悪い影響を与えていると指摘した。業種別では46業種中21業種が上昇。企業規模別では、小規模企業が前月比▲2.7ポイントの78.9、中堅企業が同▲2.5ポイントの84.4、大企業が同+1.5ポイントの97.6だった。また、今後の最低賃金の引き上げやエネルギーコスト上昇等の懸念で、3ヶ月後のTISIの見通しが同▲2.3ポイントの93.4で、2021年10月以降の最低値となった。


2. 投資動向
(1)7月26日付のBOIの発表によると、ハイブリッド車の物品税を一時的に引き下げることを国家EV政策委員会が承認した。これは、ハイブリッド車メーカーの投資を前提としており、措置導入により見込まれる投資金額は500億バーツとのこと。BOI長官のナリット氏は、軽減税率の適用を受けるには、BOIの承認を前提とし、メーカーに対し2024年から2027年までの3年間にタイ国内で最低でも30億バーツの新規投資を行うことを求めると述べた。期間は2028年から2032年の間で、10人乗り以下のハイブリッド車が対象。適用条件として、タイ国内で生産された主要部品の使用、6つの先進運転支援システム(ADAS)のうち、少なくとも4つを導入することが必要となる。税率は2種類に分けられ、走行1キロメートル当たりのCO2排出量が100グラム未満の車両は税率6%、同排出量が101~120グラムの車両は税率9%となる。この措置案は今後内閣へ提出され、審議が行われる予定。

(2)タイ投資委員会(BOI)の発表によると、2024年1月~6月の新規投資申請件数は1,412件で前年同期比+63.6%、新規投資申請額は4,583億6,000万バーツで同比+34.9%だった。業種別の内訳を見ると、1位は「電気・電子」で同比▲12.5%の1,397億バーツ。次いで「インフラ」が同比+178.8%の867億バーツ。「機械・車両」が同比+113.4%の538億バーツで続いた。また、新規申請の中で、タイランド4.0の重点産業「Sカーブ産業」向けの新規申請件数は、同比+62.1%の723件。投資金額は同比+9.8%の2,897億バーツだった。地域別の内訳を見ると、東部経済回廊(EEC)向けが最大で、+17.0%の1,800億バーツだった。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2024年の6月末時点で金融機関預金残高は25兆1,599億バーツ(前年同月比+2.5%)、貸金残高は30兆8,465億バーツ(同+1.5%)といずれも増加。政策金利は2.5%に据え置かれた。


4. 政治動向、その他
(1)選挙管理委員会が7月10日に、6月26日に行われた上院議員選挙結果(候補者200人および補欠99人)を承認し、官報に公示した。また、7月23日に議長および副議長2名が選出された。3名とも連立与党であるタイ誇り党との関係があると報道されている。なお、新上院は首相指名への投票権は無いが、憲法改正案の可決(3分の1、約67名の賛成が必要)および国家汚職防止委員会等の独立機関の役員任命の承認に権限を持つ。

(2)憲法裁判所は8月7日、最大野党であった前進党の解党および2021年3月5日から2023年1月31日まで党幹部(計11名)を務めた人々に対し10年間の政治活動禁止を命じた。判決理由は不敬罪の改正を2023年総選挙の公約に掲げたことであるとのこと。ピター氏含め5名の元比例代表は補欠無しに解任され、元小選挙区代表1名は解任された後、該当選挙区の再選挙が行われる。また、野党党首および下院第1副議長が解任されたため、再選出が必要となる。元前進党の残りの議員143名は60日以内に、他の政党へ転籍することが必要。元前進党のメンバーは8月9日に受け皿の政党として新政党「People's Party」を立ち上げたと発表した。党首には前進党の元副幹事長のナタポン氏が就任した。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



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