大 愚 言 ・一億総国民は馬鹿で居ればよい 大愚叢林庵主 大愚東洋

先の大愚言（平成二十九年三月二十一日付）において自由民権運動の旗頭・板垣退助の都々逸を紹介したが、幕末の志士の都々逸といえば、高杉晋作の

三千世界の　烏を殺し
　　　　　主と朝寝が　してみたい

が有名である。
高杉と同じ松下村塾門人でも堅物といわれた久坂玄瑞の都々逸に

立田川　無理に渡れば　紅葉が散るし
　　　　　渡らにゃ　聴かれぬ　鹿の声

というのがある。
高杉の「主」も久坂の「鹿」も「天皇」を指していると、僕は読む。
高杉は、三千世界の烏（幕府）を殺して主と朝寝（天皇親政の御世）がしてみたい、と詠っている。
久坂は、立田川（幕府）を無理に渡ろうととすると紅葉（犠牲）が散るが、渡らねば鹿の声（天皇親政の御世）が聴かれない、と詠っている。

いまどきの人には耳馴れないとは思うが、「恋闕」という言葉がある。
「闕」とは皇居の御門のことである。つまり「天皇」と直に言うことが、畏れ多いので「尊皇の赤心」を婉曲に置き換えて「御門を恋うる」と酒脱に表現しているのである。「御門」は「ミカド」でもある。
高杉の「主」と久坂の「鹿」も、同様の酒脱な表現である。

幕末の志士たちが、祇園で酒を呑んで勤皇だ、倒幕だと談じたなどとは、虚構の世界である。
志士たるもの、国家存亡の一大事を酒席で論うようなことは、下の下の野暮の骨頂である。
従って、僕は酒席で天下国家を談ずることは勿論のこと、軍歌ですら放吟することを好まない。
これを言うと、僕が敬愛してやまない軍歌好きの鎌倉の老大にいつも叱られるのだが、老大にしてもその狂歌で

面壁九年　達磨が坐る
　　　　わたしゃ　呑み屋で　目が坐る

と詠い、自らを「目禅」と号されている。高杉や久坂に通じる酒脱さがある。

今上陛下の「生前退位」のご意向を受けて、政府は有識者会議を設置し、譲位について議論を進めている。
しかし、陛下のお言葉を国会議員や学者如きが憲法次元にまで貶めて、右顧左眄すべき問題ではない。
天皇陛下の発せられたお言葉は、詔勅（みことのり）である。只々、敬みて承け止めればよい。

安倍首相はじめ一億総国民は、三島由紀夫の「英靈の聲」にある

などてすめろぎは人間（ひと）と
なりたまひし

という絶哭を深く噛みしめ、肚に落し込み、酒脱な馬鹿で居ればよい。

「嫡々相承」―――一切を無条件に承け継いで伝えること、余計な解釈や論議は不要である。

（平成二十九年四月十五日認）

大 愚 言 ・「存在が犯罪」と云われた馬鹿 大愚叢林庵主 大愚東洋

先の大愚言（平成二十九年三月二十一日付）において、かつて僕が不当逮捕されたことについて、少し触れた。
その事件について詳しく知りたいとの声が多くあった。
また、この事件が、国会において審議中の「テロ等準備罪」に関わることでもあるので、審議の参考の一片にでもなろうかと考え、敢えて事件を回顧してみることにした。
話は少し長くなるので、ご興味のない方は、ここで読了されたい。

平成二十年九月十三日、六十回目の誕生日に、僕を襲った異常な逮捕。東京のマンションで逮捕され、岐阜中署へ移送・勾留された。
事件とされるのは、前年十月二十六日のこと。
岐阜市民病院に入院中の早田純市会議員に仕事を依頼し、断られた腹いせに看護婦に嫌がらせをした？という「寝耳に水」の逮捕理由。
早田市議に仕事を依頼したこともないし、その腹いせに看護婦に嫌がらせをしたこともない。しかも、一年も経った今の逮捕。家宅捜索も全国四十数ヶ所に及び、押収品も一千点以上。
特に、僕が当時、常任顧問をしていた外務省外郭法人・日本マレーシア協会は理事長・事務局長をはじめ職員まで事情聴取をされている。
岐阜市民病院の看護婦に嫌がらせをしたという事件に、そんな必要性があるのだろうか。
何が狙いなのか、何か根が深い。

僕が逮捕された二日後、日本マレーシア協会の会長をしていた平沼赳夫元経産相は、予定していた新党立ち上げ声明を断念した。

根が深いと感じたのは、僕だけではなく、入院加療中であった旧知の羽田辰男弁護士も新聞記事を読み、そう感じた。
早速、森川幸江弁護士に連絡し、国家賠償で有名な名古屋の浅井正弁護士とタッグを組んで「花房を救う」よう指示された。

取調中、岐阜中署の松井正平組織暴力対策課長から聞かされたことだが、岐阜県警本部長命令（実はもっと上の方からの指令）で、一年半前（何故か事件より前？）から八十人態勢で、僕のことを調べていたとのこと。
松井課長曰く「岐阜県警の面子にかけて、どうにでもお前を起訴して刑務所にブチ込んでやる。お前が事件をやっていようがいまいが、いくらだって事件は作れるのだ。
犯行を認めなければ、いくらでも逮捕権を行使して、お前とお前の関係者らを間断なく逮捕してやる」と豪語していた。
岐阜地検の福田直俊検事から「看護師は上使や警察から強要されて被害届を出したと言っている。看護師に被害者意識がない。これでは公判維持が出来ない。しかし、警察はまだやるといってますよ。気を付けてください」と忠告を受け、二十日間の勾留から釈放された。

福田検事の忠告は本当であった。
先の釈放後も、家宅捜索があり、押収品も返却されず、周辺聞き込みが続いていた。その挙句、同年十二月五日、警察当局は十年前に遡り、齋藤恵美の児童扶養手当を不正受給とし、僕と恵美の逮捕に踏み切ったのである。
逮捕理由は、恵美と僕が事実婚であるのを隠して虚偽の申請をし、不当に手当を受給した。僕がその教唆をしたというのである。（月額四万五千円欲しさに…？）
僕には、共に暮らしていないので「事実婚」という認識はなかったし、それを受給させるために教唆した憶えもない。
この逮捕・勾留のため、恵美は留置場、三人の子供達は離れ離れに暮らすという一家離散の状態で、クリスマス、正月を迎える有様であった。
この程度の事犯で逮捕し、四十日以上もの勾留をすること自体、前例のない異常な措置である。
僕は、松井課長に「八十人態勢で一年半もかけ、四十数ヶ所の家宅捜索をし、一千点以上も押収し、多くの関係者から事情聴取し、捜査してきたのだから、僕に犯罪性がないことは、警察が一番知っているのではないか」と訊いたことがある。
松井課長から「そんなことは関係ない。アンタの存在が犯罪なのだ」と云われた。
随分、伝法な人だと思ったが「存在が犯罪」とはうまいこと云うなと妙に納得。
確かに、僕が目障りだと思う勢力にとっては、僕の存在が「犯罪」なのだ。
「存在が犯罪」である僕を社会的に葬ってしまうことが目的であるのだとしたら、結果として、東京のマンションは追い出され、日本マレーシア協会の常任顧問を辞任し、決まっていたポーランドや北京での要人との会談も拘禁によって果たせず、経済的にも追い詰められた。そういった意味では、目的は達成された訳である。
それが、誰の意図なのか、真の狙いは判らないが、警察という組織が至上命令で動く機構である限り、その命令に従うのは世の仕組みと云えばそれまでだが、裁判所が家宅捜索や逮捕・勾留の令状を何の吟味もせず出すことは、警察との癒着か怠慢としかいいようがない。
翌年一月二十四日の岐阜地裁法廷においても、宮本聡裁判官は「十月に逮捕され、二ヶ月もしない内に再逮捕されている。反省の色が全く見られない」というから「お言葉ですが、前回の事件とされた件は一年
前のこと。今回の事件は十年前のことです。
ただ逮捕されたのが、どちらも二ヵ月の間のことなのです。調書を読んで頂いたのでしょうか」と述べた。
宮本裁判官は、気まずそうな顔をしただけであった。

聞くところによると、警察当局は判事リストを作っていて、杜撰な判事が当番のときに令状請求をするという。判事は警察からの書類をロクに目も通さず、流れ作業的に令状を発付するのだ。
ことほど左様に「裁判所の令状」というものは、軽佻浮薄なものである。
国会において審議中の「テロ等準備罪」なる法案が如何なるものか、僕の知るところではないが、こんな「裁判所の令状」を金科玉条の如く、この法案の担保として信託することは非常に危険である。
国会議員の諸氏は、このことを充分に留意されて、「テロ等準備罪」を慎重に審議して頂きたいものである。
「存在が犯罪」と云われた馬鹿が、実体験に基づいて、敢えて愚見を呈する次第である。

余談になるが、この一連の不当逮捕・勾留に対し、浅井正弁護士から、国家賠償の手続きをすすめられたが、どうも体質に合わないのでお断わりした。
しかし、今もなお、ネットなどの風評被害を蒙っている。
しかしまた、一連の事件とされている被害者側である「岐阜市」の副市長であった森川幸江弁護士や「厚生労働省」の瀬田公和元児童家庭局長が、僕の弁護をし、僕の証人として立って頂いたことが「心の支え」であり「心の救い」であった。

（平成二十九年四月六日認）