日 日 是 好 日
花房東洋
どんな日でも佳き日と思って感謝を忘れずに
――――という雲門の「日日是好日」は耐え
難きを耐える格言として人気がある。
小生と親交の深かった故杉田有窓子氏は、こ
れに対し「日日是好日と禅家は軽々しく口に
するが、好日などというものは、地球上から
涙が無くならない限りありえない。人生長途
好日無しだ」とおっしゃっていた。
成程、好日とは所詮、恵まれた者が恵まれた
境遇にあってこそいえる言葉だ。死にたくな
る位、辛い日々を送っている者に好日を説い
ても、余程の悟者でない限り承服しかねるだ
ろう。
この世は絶好の好日も、悪日も存在しない。
好日と感じるか否かは、各人の主観で、これ
は諸法を実相と観るか、空相と観るかの違い
であり、過ぎゆく日々を好日と観るか否か、
また、その内容が如何なるものかは、各人が
その胸に聞き質す他はないだろう。