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大愚記 花房東洋 

大 愚 言 ・馬鹿の創った映画が全国公開された  大愚叢林庵主 大愚東洋

2019年02月06日 14時49分23秒 | 大愚言
僕が企画製作した映画「輪違屋糸里」も、一部地方を残し、ほぼ全国上映が了えた。
予想外の大入りではあったが、売上の殆どは劇場と配給会社への配当金に消え、元にも子にもならなかった。
素より、馬鹿な僕は採算を度外視してでも「本物の時代劇づくり」を志向してきたので、多くの方々に観て頂けただけで有難い。
向後は海外に発信して、日本文化の素晴らしさを伝えていきたい。
本映画については、手紙やネットに多数ご好評を寄せて頂いている。中から、旧知の友人である東海民報社の林幸雄社長のご投稿を、ここにご紹介する。

感想文として思いつくままを書きました。的はずれなところもあるかと思いますが、何かの参考にしていただければ幸いです。まず映画を観る前に家内が「新選組の映画なんて・、・・」と言って乗り気になっていませんでしたが、見終わるや「糸里の一途な頑張りに感動した。面白くて二時間があっという間に過ぎた」などと興奮していました。いわく、糸里はじめ輪違屋の女性たちの生き様にいたく感動したようで、糸里やお梅、吉栄の配役が良かったようです。ことに糸里役の藤野涼子が初めの頃、弱々しく頼りなげだったのが、最後の方では見栄を切るまで成長、変化した姿が良かった。吉栄役の松井玲奈はSKE出身と聞いて驚くほど、けな気で一途な女の姿を演じて可哀想で感動したと言っておりました。
劇場ロビーでのお喋りに耳を傾けても概ね女性たちの感想は良かったようです。女性たちに感動を与える共感を呼ぶ映画に仕上がっていたようで、その意味でも原作者浅田次郎の「女性の目から見た新選組・・・」の意図は十分に伝わったと思います。またその狙いを崩さずに映画化できた成功例だと思いました。それだけに、もっと若い女性たちに観てもらいたいと思いました。

劇場はやっぱり年配の人が多かったです。個人的には技術的にとてもしっかりした作品だと思いました。台詞もよく聞こえ、虫の音、雨音など小さな音も効果的によく聞くことができました。昔の黒澤映画とは大違いでした。照明も明る過ぎず、よく当時の雰囲気が出ていると感心しました。TVの時代劇のような、いかにもスポット当てましたというような画面は一ショットも無かったです。大道具、小道具、衣装のこだわりはむろんのことですが、それが画面の中でわざとらしく見えず自然にとけ込んでいるのはよほど苦心をしてのことだと思われました。個人的には障子の向こうに見える霧雨というか驟雨の雰囲気や、ろうそくの明かりの中での酒席の場面などは、思わずS・キューブリックが「バリー・リンドン」の中で用いたNASAの高感度レンズを借りて撮影したシーンを思い出しました。それだけに撮影スタッフの苦労が思いはかられますが、見事に全体の雰囲気にとけ込んでいると思います。いわゆる殺陣も近年の派手なアクションではなく刃を持って斬り合う緊張感と恐さがよく伝わってきました。第一に刃で切られると血がたくさん出るんだという臨場感と痛みが体感されるようで北野武の「座頭市」とは雲泥の差です。
平山五郎役の佐藤隆太や土方歳三役の溝端淳平、さらに芹沢鴨役の塚本高史のふてぶてしくも何かイラついた演技はとても良く、キャスティングはもちろん、監督の演出も細かいところまで行き届いているようで、登場人物がそれぞれいい個性を出していましたね。松平容保役の榎木孝明も貫禄あり、最後を良くしめていました。ロケハンもよくされており、丹念な作品づくりが偲ばれます。きっと日本アカデミー賞などで主に技術部門での評価が正当にされることと思います。
以上、勝手な感想をだらだらと述べさせていただきました。失礼をお許し下さい。今はいただいた脚本を読み直し、なるほどなと感慨を新たにしております。

(平成三十一年二月六日認)