一、汨羅(べき ら)の渕に波騒ぎ 巫山(ふ ざん)の雲は乱れ飛ぶ
混濁(こん だく)の世に我立てば 義憤に燃えて血潮湧く
二、権門上に傲(おご)れども 国を憂ふる誠なし
財閥富を誇れども 社稷(しゃ しょく)を念(おも)ふ心なし
三、嗚呼(あ あ)人栄え国亡ぶ 盲(めし)ひたる民世に踊る
治乱興亡夢に似て 世は一局の碁(ご)なりけり
四、昭和維新の春の空 正義に結ぶ益良夫(ます ら お)が
胸裡(きょう り)百万兵足りて 散るや万朶(ばん だ)の桜花
五、古びし死骸(むく ろ)乗り越えて 雲漂揺(ひょう よう)の身は一つ
国を憂ひて起つときに 大丈夫(ます ら お)の歌無からめや 六、天の怒りか地の声か そも只ならぬ響きあり
民永劫(えい ごう)の眠りより 醒(さ)めよ日本の朝ぼらけ
七、見よ九天の雲は垂れ 四海の水は雄叫びて
革新の機(とき)到りぬと 吹くや日本の夕嵐
八、あゝうらぶれし天地の 迷ひの道を人は行く
栄華を誇る塵の世に 誰(た)が高楼の眺めぞや
九、功名何か夢の跡 消えざるものはただ誠
人生意気に感じては 成否を誰か論(あげつ)らふ
十、やめよ離騒(り そう)の一悲曲 悲歌慷慨の日は去りぬ
吾等が剣(つるぎ)今こそは 廓清(かく せい)の血に躍るかな
(三上 卓 作)