そんなある日のお昼休み。
やはり2人用長テーブルに3人詰めて座っての昼食だった。
今日も決まって右側のカジキさんは左の肘を僕が座るまで張り気味だった。
何回もこのテーブルで同じように食べるけれども狭さには慣れなかった。
僕の左には決まってお調子者の先輩が座る。
お調子者の先輩は周りの人とも分け隔てなく喋る。
お調子者の先輩は僕の上を経由して右側に座っているカジキさんともたまに喋る。
お調子者の先輩はたまに僕にも喋りかけてくれた。
僕とカジキさんは仕事中は仕事の話のみ頻繁にしていたが、その昼食現場では全くと言っていいほど喋ったことがなかった。
僕はご飯を食べるのが早い方ではないが、ここのプレハブ小屋に詰められている感覚が凄く嫌で元々よく噛んで食べる方だったが、可能な限り早く食べるようにしていた。
食べ終わったらハチロクに乗り込み、そこでヤングバージョンを読んで15分シートを倒して寝るのが日課だった。
早めに食べ終わりたい‥。
給食弁当を食べ始めて間もなく、僕はおかずのグリンピースを割り箸で挟んだ。
クニっと、箸がXに交差すると思うやグリンピースは踊りテーブルにワンバウンドし、僕の左側に落ちて行った。
あっ、床に落ちる‥。
ポロン、とグリンピースはテーブル上で1回弾み。
左に座っているお調子者の先輩の右膝のズボンのシワにすっぽりハマり込んでしまった。
‥‥。
‥多分、‥ちょうど角度的にお調子者の先輩の目線からは見えない膝の外側だ。
お調子者の先輩は気付かずたんたんと食べている。
‥恐らく、グリンピースには気づいていない。
‥‥、どうしよう。
「先輩、僕のグリンピースが転がって先輩の右足のズボンのシワにすっぽりハマっています。」なんて、言えない‥。
どうしよう。
悟られたくなかったので、僕の給食弁当を食べている手は止めていない。
悩んでいる内にお調子者の先輩は食べ終わり、席を立った。
‥ポロッ。コロコロ‥。
お調子者の先輩はそのまま給食弁当の空箱を給湯テーブルに戻して出て行った。
グリンピースを落とした時、僕はお調子者の先輩に正直に言うべきだったんじゃないか‥。
だって、お調子者の先輩の身体に僕の落とした物が当たったのだから‥。
カジキさんが珍しく僕に話しかけて来た。
カジキ 「アイツさー、最近新車買ったんだよ。カローラのセダン買ったんだよ。見たか?」
お調子者の先輩のことだった。
坂本 「あ、はい。見ましたよ。」
カジキ 「だせーよな。思ってること言っちゃっていいぞ。」
坂本 「あー‥、僕も人の事言えないですね。僕は新車買えないですから‥。」
カジキさんが折角打ち解けようと話してきたのに、僕は話を途切れさせてしまった。
僕はそのプレハブ小屋でタモリの「明日も見てくれるかな!」を聞くことは無かった。