嶋田君のカルタスやR34の横に乗って観察していても、岡ちゃんの180SXの横に乗って観察していても同じような車幅感覚の雰囲気だった。
他の人の助手席に乗っても大体同じ様な感じだった。
走り屋でさえ、特に車の左側がどこまであるのかハッキリとわかっていないような気がする。
狭い道で対向車の左タイヤが端の白線を踏んでいるか確認をしていると白線より大分内側を通っていることもある。
あれは左側がどこまで大丈夫なのか分からないから大事をとって内気味を走っているのだと思う。
もしかしたら、当たり前のことかもしれない。
「私が通りますんで避けてください。」とこっちにプレッシャーを掛けてくる車も中にはいる。
僕は左側の白線の外側にタイヤを通し、左側ガードレールのギリギリもしくは道端に生えている茂みの草をパシパシっと通るくらい左に詰めていた。
その方が対抗車は走りやすいし、何よりも自分のドラテクのレベルアップに繋がると思っていたからだ。
でも、嶋田君と岡ちゃんの2人はしていなかった。
車が大事だからだろうか‥。
僕は中古だから左側を詰められるのかな。
金山を速く走るにはスタートからゴールまで走りきる時間が短い方が当たり前だが速いと思う。
ドリキン土屋圭市が言っていたが「コーナーはアウトインアウトが基本」らしい。
だから、コーナーのできるだけ外から進入して、コーナーのクリッピングポイント(内側)をかすめて、コーナーの出口では外ギリギリで立ち上がる走りが最短距離を走ることになり、速いのだ。
それをコーナー全部ですることでやはり最短距離を走り、速いはずだ。
だから、道幅は最大限に使いたいのだ。
だから、感覚が曖昧な車の左側をいつもどこにあるか意識しているのだ。
金山の道は左右に必ずガードレールがあるわけではない。
所々ガードレールが無く、側溝になっていたり、道路の端はアスファルトが無かったりする。
だから、車幅感覚は大切だと思う。
特にタイヤがどこにあるか、はアウトギリギリからコーナーに入る時は側溝にタイヤが落ちるか落ちないか、を分けると思った。
そこが落ちるか落ちないか曖昧では恐怖心と一緒に走ることになる、と思った。
そもそも速く走るというより、走っている時の恐怖を一つでも減らしたかった。
1番大きな『アオられる恐怖』は今の所どうにもできないが、自分ができそうなことはやっていきたい。
そして拓海に近付くのだ。
だから、攻めない街中では集中して左側の感覚を鍛えたのだ。
その方法が『左サイドミラーでいつも白線を確認する』というものだ。
サイドミラーは後方の車の動きを確認するものだが、ミラーの角度を路面が見えるように下に向け、更にリアフェンダーも一緒に見えるように内側にセットして走るというものだ。
こうすると後続車はかなり確認しづらくなるが、いつもボディと路面の白線が映ることになる。
そしてボディの端と白線の内側をピタリと合わせて走るのだ。
そうすれば、リアタイヤの外側と白線の内側が一直線になる。
それを常に意識して走っていた。
感覚が鋭くなると白線に乗った時にズンと振動が伝わってくるのがわかるようになる。
右側もやりたかったが、対向車がいるので空いている時しかできなかった。
(意外と右の見切りも難しい。)
白線がある限りできる、この練習法をしていると感じさせる車はいなかった。
でも、どう考えても車幅感覚は大切だと思った。
この白線練習法で大切なのは、『頭の位置』だと織戸学のドラテク本を読んでいる時に気付いた。
織戸学は土屋圭市の弟子みたいな存在でやはりマニアックなレーサーの様だ。しかも女性のファンは多いと思う。
走り屋ビギナーの時には、フロントをジャッキアップした車に乗り込みステアリングのロックトゥーロックを散々やった、と書いていた。
その織戸学の本から気付きを得て、頭がブレてはサイドミラーとの距離もブレるし、左の車幅も右の車幅も感覚がブレるだろうと推察できた。
でも、身体をがっちりサポートしてくれるバケットシートが欲しくても買えないでいた。
白線練習法は慣れてくると白線だけではスリルが無くなってきて、道路脇の縁石に寄せてみたくなる。
それもできてくると、自信が出てきて今度はガードレールにギリギリ寄せたくなった。
一回、ガードレールに寄せ過ぎて上に突き出た丸い反射板にバコッとサイドミラーを当てて畳んでしまったことがある。
その時はサイドミラーは大丈夫だった。
流石にいつかはサイドミラーだけでなく、左のドアを擦りそうなので守りに入った。